灼熱の木星へようこそ
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日々の感想などどうでもよいことを書き連ねるためだけのブログ。ja2020-07-20T13:02:43+09:00
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天文・宇宙物理関連メモ vol.1369 Armstrong et al. (2020) 高温の海王星砂漠の中の惑星の残骸コア論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:2003.10314
Armstrong et al. (2020)
A remnant planetary core in the hot Neptunian desert
(高温の海王星砂漠の中の惑星の残骸コア)概要巨大惑星の内部はあまり分かって...
arXiv:2003.10314 Armstrong et al. (2020) A remnant planetary core in the hot Neptunian desert
(高温の海王星砂漠の中の惑星の残骸コア)
この惑星は晩期 G 型星を 18.4 時間で公転しており,平衡温度は 1800 K である.
この惑星の質量は,暴走ガス降着を起こしうる理論的なしきい値よりも重い.そのため,惑星は巨大ガス惑星として形成され,熱的自己破壊や巨大惑星衝突による極端な質量放出を経験したか,もしくはギャップ形成や後期形成などにより大きなガス降着を回避したかのどちらかで現在の姿になったものと予想される.
この場合,典型的には破壊後にはコアを残さないと思われることや,そのようなコアは短寿命であると思われるが (Winn et al. 2017),この惑星はコアが残る希少なケースだった可能性は考えられる.この惑星の位置を考えると,惑星が木星質量でサイズが 1.5 木星半径より大きい場合,潮汐破壊が発生することが期待される.
潮汐熱化
別の可能性としては,潮汐熱化イベントを介したエンベロープ散逸が挙げられる.この現象も 1-2 桁質量を減らしうる.もしこの惑星が,現在の近接軌道に他の惑星による高離心率散乱で到達した場合,潮汐円軌道化の最中に惑星内部の f モードのエネルギー生成は惑星内部の束縛エネルギーの大きな割合に到達し,熱化イベントを引き起こしうる (Vick et al. 2019; Veras & Fuller 2019).これにより惑星のエンベロープ層を取り除きうる.
しかしどちらのケースでも,40 地球質量の残骸を残すほど十分なコアを持つかどうかは不明瞭である.これは,数地球質量のコアを取り囲むガスエンベロープは,降着してくる微惑星をエンベロープ内で溶解させるからである.そのため大きなコアを生成するためには,エンベロープ内で溶解した固体成分がその後に rain out してコアに降り注ぐ必要がある.
初期に存在したガスの渦が破壊された後,渦内のダストはリング状に広がり,いくつかの小さいガスの渦が残る.ダストの濃集度は高く,またダストの最大サイズは ~mm と大きい.
進化の後期には,凝集を考慮した場合でのダスト連続波の合成画像は,1.33 mm バンドではいくつかのホットスポットが埋め込まれたリングとして見えるが,7.0 mm では明確なホットスポットのみが残って見える.
円盤内の渦について
原始惑星系円盤内の渦は,微惑星形成を引き起こす理想的な環境になり得る.観測でも,偏った馬蹄形や三日月状の非対称構造が,ミリ波・サブミリ波で観測されている.これらの構造は,粘性の低い円盤に埋もれた重い惑星によって開けられたギャップの縁におけるロスビー波不安定性や,降着的に非活発な dead zone の縁,連星天体,傾圧不安定性などで形成されうる.
ガスの面密度分布は指数関数的に減少するモデルを採用した.円盤の内側領域は r-0.8 で分布し,80 au から指数関数的なカットオフを持つ分布とした.ガス面密度の規格化は 1.3 g cm-3 で行った.
円盤の分布は 8-320 au とした.また円盤質量は 4.5 × 10-3 太陽質量と軽いため,円盤とダストの自己重力は無視できる.これは Toomre’s Q で言うと,円盤全体で Q ~150 であることに相当する.
円盤は局所等温で,h0 = 0.06,cs/vK = h0 (r/r0)0.25 とする.これは円盤内の温度分布が T = 89.0 (r/r0)-0.5 K であることに相当する.
ガスとダストの間の摩擦によるフィードバックは運動量方程式に含まれている.
ダスト粒子の内部密度は 0.8 g cm-3 とした.この円盤パラメータでは,サイズが 4.0 mm のダストの r0 の位置でのストークス数は 0.16 となる.また初期のガス分布では,20 au にある 2.4 cm のダストでストークス数が 1 になる.
ダストサイズ分布に関して,サイズ分布を扱う計算の場合は,1.0 µm から 100 cm までを 151 分割して計算を行った.また 10 m s-1 を境界として,ダストが接着するか破壊されるかを判断する.
ダストの付着・破壊のための乱流パラメータは α = 10-3 を使用した.これはガスの粘性とは異なる値である.ガス粘性の α を小さくするのは RWI を引き起こすため,乱流の α を大きくするのは凝集による大きすぎるダストを作るのを防ぐためである.なおサイズ分布を入れずシングルサイズで解く場合は,ダストサイズを 4.0 mm か 0.2 mm に固定した.
ダストのサイズ進化を考慮しないモデルでは,4.0 mm と 0.2 mm の 2 つサイズのダストの計算を行った.
4.0 mm のダストの計算では,大規模な渦は 500 周程度で消失した.面密度比の等高線は非常に clumpy な構造となる.
ダストサイズを 0.2 mm にした場合,渦はより長時間生き残る.ガス渦は依然として強く,面密度比の等高線は 1000 周程度までなめらかな形状となる.
4.0 mm モデルでは収集プロセスが非常に効率的で,0.2 mm モデルよりもずっと速い.4.0/0.2 mm 間の違いは単純に 2 モデルでのダストのストークス数が違うためである.]]>天文・宇宙物理2020-07-21T21:12:01+09:00HJNINJA BLOGHJ
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天文・宇宙物理関連メモ vol.1366 von Essen et al. (2020) ウルトラホットジュピター WASP-76b でのナトリウムの検出の確認論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:2003.06424
von Essen et al. (2020)
HST/STIS transmission spectrum of the ultra-hot Jupiter WASP-76 b confirms the presence of...
arXiv:2003.06424 von Essen et al. (2020) HST/STIS transmission spectrum of the ultra-hot Jupiter WASP-76 b confirms the presence of sodium in its atmosphere
(ウルトラホットジュピター WASP-76b の HST/STIS 透過スペクトルから大気中のナトリウムの存在を確認)
概要
ウルトラホットジュピター WASP-76b の大気の透過スペクトルについて報告する.ハッブル宇宙望遠鏡の Space Telescope Imaging Spectrograph (STIS) を用いて得られたアーカイブデータの解析を行った.
観測データは 3 回のトランジットからなり,2 回は波長域が 2900-5700 Å,3 番目は 5250-10300 Å でのデータである.1 次元の時間依存のスペクトルから,白色光での光度曲線と波長依存性のある光度曲線を構築した.後者の典型的な積分バンド幅は ~200 Å である.
大気中の中性の鉄原子に起因する吸収の特徴は,公転に後行する側の縁では -11 ± 0.7 km s-1 青方偏移しており,これは惑星の自転と高温の昼側からの風で説明可能な値である.
一方で,朝の境界線に近い夜側からはシグナルが検出されなかった.このことは,この領域では鉄元素は恒星光を吸収していないことを意味する.そのため,鉄は惑星の夜側大気を進む途中で凝縮しているはずである.]]>天文・宇宙物理2020-07-14T17:52:56+09:00HJNINJA BLOGHJ
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天文・宇宙物理関連メモ vol.1364 McKinnon et al. (2020) 太陽系外縁天体アロコスは固体粒子雲の中で低速度の集積によって形成された可能性論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:2003.05576
McKinnon et al. (2020)
The solar nebula origin of (486958) Arrokoth, a primordial contact binary in the Kuiper bel...
arXiv:2003.05576 McKinnon et al. (2020) The solar nebula origin of (486958) Arrokoth, a primordial contact binary in the Kuiper belt
(カイパーベルトの始原的な接触連星アロコスは太陽系星雲起源である)
概要
冥王星探査機ニューホライズンズが,冷たい古典的カイパーベルト天体の (486958) Arrokoth (アロコス,仮符号 2014 MU69,非公式に Ultima Thule とも呼称) に接近して観測を行った結果,この天体が接触連星の微惑星であることが明らかになった.
アロコスへの接近観測では,この天体が二葉形状であることが明らかになった.それぞれの球相当径は 15.9 km と 12.9 km であり,”neck” と呼ばれる細い接触領域で接続している.]]>天文・宇宙物理2020-07-10T20:27:37+09:00HJNINJA BLOGHJ
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天文・宇宙物理関連メモ vol.1363 Nielsen et al. (2020) TESS による 3 つの短周期木星型惑星の発見論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:2003.05932
Nielsen et al. (2020)
Three Short Period Jupiters from TESS
(TESS による 3 つの短周期木星型惑星)概要Transiting Exoplanet Survey S...
arXiv:2003.05932 Nielsen et al. (2020) Three Short Period Jupiters from TESS
(TESS による 3 つの短周期木星型惑星)
スペクトル型:G1V
等級:V = 12.36
質量:1.147 太陽質量
半径:1.288 太陽半径
光度:1.789 太陽光度
有効温度:5880 K
金属量:[Fe/H] = 0.24
年齢:47 億歳
距離:412.5 pc
TOI-169b
半径:1.086 木星半径
質量:0.791 木星質量
軌道周期:2.2554477 日
軌道長半径:0.03524 AU
平衡温度:1715 K
TOI-169 系について
TOI-169b (TIC 183120439) は膨張したホットジュピターである.
今回発見された 3 惑星の中で最も長周期だが,惑星が受ける輻射は一番大きく,海王星砂漠の右端に位置している.惑星が受けている輻射の強度を考えるとこの惑星は非常に高密度であり,これは大気の揮発性物質の層が光蒸発で剥ぎ取られ,惑星の自己重力が大気散逸に対抗できる程度にまでなったという見方を支持している.]]>天文・宇宙物理2020-07-09T21:43:08+09:00HJNINJA BLOGHJ
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天文・宇宙物理関連メモ vol.1362 Chandler et al. (2020) ケンタウルス族天体 2014 OG<sub>392</sub> における水ではない揮発性物質による彗星活動論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:2003.04904
Chandler et al. (2020)
Cometary Activity Discovered on a Distant Centaur: A Non-Aqueous Sublimation Mechanism
(遠方ケ...
arXiv:2003.04904 Chandler et al. (2020) Cometary Activity Discovered on a Distant Centaur: A Non-Aqueous Sublimation Mechanism
(遠方ケンタウルス族で発見された彗星活動:非水揮発メカニズム)
ここでは,ケンタウルス族天体 2014 OG392 における活動の発見を報告する.過去の観測データと,Dark Energy Camera (Cerro Tololo Inter-American Observatory Blanco 4 m telescope),Inamori-Magellan Areal Camera & Spectrograph (Las Campanas Observatory 6.5 m Walter Baade Telescope),Large Monolithic Imager (Lowell Observatory 4.3 m Discovery Channel Telescope) での観測から.天体から 400000 km 離れた位置でのコマを検出した.また昇華過程と力学的な寿命の最新の解析から,二酸化炭素かアンモニア,もしくはその両方がこの天体と活発なケンタウルス族天体の活動を引き起こしている可能性が高いと示唆した.
この天体は可視光では赤いが,二酸化炭素とアンモニアはこの波長領域ではスペクトル的に中間的であるため,赤みの原因となっている要因は不明である.]]>天文・宇宙物理2020-07-08T21:11:41+09:00HJNINJA BLOGHJ
http://hotjupiter.blog-sim.com/Entry/1379/
天文・宇宙物理関連メモ vol.1361 Fujii & Ogihara (2020) 巨大惑星周りでの単一衛星系の形成論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:2003.05052
Fujii &amp; Ogihara (2020)
Formation of single-moon systems around gas giants
(巨大惑星周りでの単一衛星系の形成)概要衛星系の形成過程を説明するために...
arXiv:2003.05052 Fujii & Ogihara (2020) Formation of single-moon systems around gas giants
(巨大惑星周りでの単一衛星系の形成)
円盤内での衛星の軌道移動について調査を行った.衛星の軌道移動の方向と速度は,周惑星円盤の特性に依存する.円盤の温度構造の効果を取り入れた,散逸する周惑星円盤をモデル化し,様々な周惑星円盤の最終進化段階におけるタイタン質量の衛星の軌道進化を計算した.
また N 体シミュレーションを用いて,初期に複数の衛星を持っている系が最終的に単一の衛星を維持するかを調査した.
N 体シミュレーションで衛星同士の相互作用を入れて計算した場合,7 個のタイタン質量衛星を置いて計算すると,内側は落下し外側一つが生き残る解があり得る.またタイタンの半分の質量の衛星を 9 個置いたケースでは,外側 2 つが合体,残りの内側は合体しつつ落下した.結果として,タイタン質量の衛星が一つだけ残される解がありうる.]]>天文・宇宙物理2020-07-07T22:28:06+09:00HJNINJA BLOGHJ
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天文・宇宙物理関連メモ vol.1360 Gan et al. (2020) TESS による初めての厚い円盤に属する系外惑星 LHS 1815b の発見論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:2003.04525
Gan et al. (2020)
LHS 1815b: The First Thick-Disk Planet Detected By TESS
(LHS 1815b:TESS で検出された初めての厚い円盤の惑星)概要銀河系の...
arXiv:2003.04525 Gan et al. (2020) LHS 1815b: The First Thick-Disk Planet Detected By TESS
(LHS 1815b:TESS で検出された初めての厚い円盤の惑星)