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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1809.04107
Wang et al. (2018)
Dynamical Constraints on the HR 8799 Planets with GPI
(GPI による HR 8799 惑星への力学的制約)
観測結果を用いて,異なる制約レベルでの 4 つの惑星軌道モデルを評価した.その結果,各惑星が 1:2:4:8 の軌道周期尽数関係に近いと仮定することや,各惑星の軌道が同一平面上にあると仮定することは,軌道フィットの結果を悪化させないことを見出した.
また,惑星の質量を変化させて N 体シミュレーションを行って惑星の軌道配置を計算した.この計算では,この系の年齢 (4000 万年) に渡って惑星軌道は安定でなければならないという前提を加えてパラメータに制約を与えた.
その結果,惑星が同一平面上にあり,1:2:4:8 周期尽数関係にあることを仮定した場合のみ,広いパラメータで力学的に安定な軌道を再現できることを見出した.
計算から得られた惑星軌道に関する事後情報から,惑星の軌道に強い制約を与えた.また,最も外側を公転する惑星 HR 8799b が,その外側に存在するデブリ円盤の特徴を形作っていることへの応用について議論を行った.
この系の 4 惑星が現在まで安定に存在しているために,4 惑星の全てが軌道共鳴に固定されている必要はない.しかし,HR 8799d, e ペアおよび HR 8799c, d ペアは,質量がそれぞれ 6 木星質量と 7 木星質量以上の場合は,安定性の条件を満たすためにはお互いに 2 体共鳴に入っている必要があると考えられる.
さらに,力学的な制約と光度からの制約を組み合わせて惑星質量の推定を行った,ホットスタートの進化モデル (惑星が形成時により多くのエントロピーを持ち込んだというモデル) を使用し,この系の年齢を 4200 万歳 ± 500 万歳とすると,HR 8799b は 5.8 ± 0.5 木星質量,HR 8799c, d, e は 7.2 (+0.6, -0.7) 木星質量と推定される.
・軌道配置に関する 20 以上の次元空間を探査するため,MCMC 法を使用し,ベイズパラメータ推定を行った.
・HR 8799 系の 4 惑星の軌道が同一平面上にあるという仮定や,軌道周期が 1:2:4:8 の共鳴にあるという仮定は,軌道データのフィットを悪化させず,実際には良くする可能性もあることを見出した.両方の仮定を含めることでデータをフィットし,Konopacky et al. (2016) と一致する結論を得た.
・REBOUND コードを用いて N 体計算を行い,系の年齢の 4000 万年に渡って現在の時点から逆向きに時間積分し,惑星質量を変化させて安定な軌道配置を調べた.
・各惑星が同一平面軌道で 1:2:4:8 共鳴に近い軌道配置の場合,その他のあらゆる軌道配置よりも一桁ほど惑星軌道は安定である.
・惑星の軌道平面は,ハーシェルで観測されたこの恒星を取り巻くデブリ円盤の平面と同一平面上であるという仮定と整合的である.しかし SMA と ALMA で観測された円盤平面とは 16° ほどずれている.惑星 HR 8799b の軌道は,軌道が同一平面上にあると仮定した場合,この惑星がミリメートル波長でのデブリ円盤の内縁を形作っていると解釈することが出来る.
・惑星 HR 8799c, d, e が 6 木星質量以上の場合,系の安定性のためには HR 8799e は HR 8799d と共鳴に固定されている必要がある.同様に HR 8799c, d, e が 7 木星質量以上の場合は,安定性を満たすためには HR 8799d は HR 8799c と共鳴に入っていると考えられる.今回の計算では内側の 3 惑星が 1:2:4 のラプラス共鳴に入っているという安定な軌道配置を発見したものの,このような 3 体共鳴は軌道安定の必要条件というわけではなく,2 個の惑星のみが共鳴に入っている状態の安定な軌道配置も複数発見した.なお,惑星 HR 8799b が系の安定性のために共鳴に入っている必要はない.
arXiv:1809.04107
Wang et al. (2018)
Dynamical Constraints on the HR 8799 Planets with GPI
(GPI による HR 8799 惑星への力学的制約)
概要
Gemini Planet Imager (GPI) を用いて,最小で 1 ミリ秒角精度で HR 8799 系の 4 つの惑星のアストロメトリ観測を行った.観測結果を用いて,異なる制約レベルでの 4 つの惑星軌道モデルを評価した.その結果,各惑星が 1:2:4:8 の軌道周期尽数関係に近いと仮定することや,各惑星の軌道が同一平面上にあると仮定することは,軌道フィットの結果を悪化させないことを見出した.
また,惑星の質量を変化させて N 体シミュレーションを行って惑星の軌道配置を計算した.この計算では,この系の年齢 (4000 万年) に渡って惑星軌道は安定でなければならないという前提を加えてパラメータに制約を与えた.
その結果,惑星が同一平面上にあり,1:2:4:8 周期尽数関係にあることを仮定した場合のみ,広いパラメータで力学的に安定な軌道を再現できることを見出した.
計算から得られた惑星軌道に関する事後情報から,惑星の軌道に強い制約を与えた.また,最も外側を公転する惑星 HR 8799b が,その外側に存在するデブリ円盤の特徴を形作っていることへの応用について議論を行った.
この系の 4 惑星が現在まで安定に存在しているために,4 惑星の全てが軌道共鳴に固定されている必要はない.しかし,HR 8799d, e ペアおよび HR 8799c, d ペアは,質量がそれぞれ 6 木星質量と 7 木星質量以上の場合は,安定性の条件を満たすためにはお互いに 2 体共鳴に入っている必要があると考えられる.
さらに,力学的な制約と光度からの制約を組み合わせて惑星質量の推定を行った,ホットスタートの進化モデル (惑星が形成時により多くのエントロピーを持ち込んだというモデル) を使用し,この系の年齢を 4200 万歳 ± 500 万歳とすると,HR 8799b は 5.8 ± 0.5 木星質量,HR 8799c, d, e は 7.2 (+0.6, -0.7) 木星質量と推定される.
観測と解析結果の要点
・2014 年から 2016 年にかけて取得された GPI IFS データを使用し,HR 8799 のアストロメトリ観測を 1 ミリ秒角の精度で行った.・軌道配置に関する 20 以上の次元空間を探査するため,MCMC 法を使用し,ベイズパラメータ推定を行った.
・HR 8799 系の 4 惑星の軌道が同一平面上にあるという仮定や,軌道周期が 1:2:4:8 の共鳴にあるという仮定は,軌道データのフィットを悪化させず,実際には良くする可能性もあることを見出した.両方の仮定を含めることでデータをフィットし,Konopacky et al. (2016) と一致する結論を得た.
・REBOUND コードを用いて N 体計算を行い,系の年齢の 4000 万年に渡って現在の時点から逆向きに時間積分し,惑星質量を変化させて安定な軌道配置を調べた.
・各惑星が同一平面軌道で 1:2:4:8 共鳴に近い軌道配置の場合,その他のあらゆる軌道配置よりも一桁ほど惑星軌道は安定である.
・惑星の軌道平面は,ハーシェルで観測されたこの恒星を取り巻くデブリ円盤の平面と同一平面上であるという仮定と整合的である.しかし SMA と ALMA で観測された円盤平面とは 16° ほどずれている.惑星 HR 8799b の軌道は,軌道が同一平面上にあると仮定した場合,この惑星がミリメートル波長でのデブリ円盤の内縁を形作っていると解釈することが出来る.
・惑星 HR 8799c, d, e が 6 木星質量以上の場合,系の安定性のためには HR 8799e は HR 8799d と共鳴に固定されている必要がある.同様に HR 8799c, d, e が 7 木星質量以上の場合は,安定性を満たすためには HR 8799d は HR 8799c と共鳴に入っていると考えられる.今回の計算では内側の 3 惑星が 1:2:4 のラプラス共鳴に入っているという安定な軌道配置を発見したものの,このような 3 体共鳴は軌道安定の必要条件というわけではなく,2 個の惑星のみが共鳴に入っている状態の安定な軌道配置も複数発見した.なお,惑星 HR 8799b が系の安定性のために共鳴に入っている必要はない.
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