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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1904.02069
Arcangeli et al. (2019)
Climate of an Ultra hot Jupiter: Spectroscopic phase curve of WASP-18b with HST/WFC3
(ウルトラホットジュピターの気候:HST/WFC3 での WASP-18b の分光位相曲線)
観測結果から,この惑星の規格化した昼夜間の光度コントラストは 0.96 以上と測定された.
惑星からの円盤面で積分した昼側の放射は 964 ppm であり,これは有効温度 2894 K に対応する,また夜側の放射への上限に <32 ppm="" 1430="" k="" 3="" br="">
また位相曲線の極大は,東向きに 4.5 ± 0.5° の,小さいが有意なずれを示した.
抽出した位相曲線と位相分解したスペクトルを,3次元 Global Circulation Models と比較し,これらのいくつかのモデルによってデータが広く再現できることを示した.この比較から,惑星の大気特性へのいくつかの制約を与えた.
まず,観測された非常に非効率的な昼夜再循環を説明するためには,効率的な大気の摩擦が必要である.この摩擦は 10 ガウス程度の弱さの磁場による,ローレンツ力による摩擦である可能性がある.
次に,昼夜間の大きな温度差を説明するために大気の大きな金属量は必要ではないことを示す.実際,ウルトラホットジュピターの大気の金属量が位相曲線に与える影響は,低温な巨大ガス惑星の場合とは異なる.これは,この惑星の大気では非常に高温の化学過程がはたらくからである.
さらに,これまでのウルトラホットジュピターの分光位相曲線と比較した.比較した対象は WASP-103b である.
その結果この 2 つの惑星は,測定された特性と示唆された特性に置いて特筆すべき類似性を示すことが分かった.しかし重要な違いも見られることも分かった.例えば輝度の東方向へのずれと半径異常である.そのため,ウルトラホットジュピターは巨大ガス惑星の膨張へ寄与する,競合する理論を切り分けるのに使える可能性がある.
WASP-103b は,1.49 木星質量,1.55 木星半径,平衡温度 2508 K,軌道周期 22.2 時間の,同じくウルトラホットジュピターである.中心星の WASP-103 の有効温度は 6110 K である.
WASP-18b の昼夜間の輝度コントラストは >0.96 と大きく,WASP-103b では 0.93 である.
輝度の東方向へのオフセットはそれぞれ -4.5° と -0.3° と,違いが大きい.後者の WASP-103b ではほぼ対称な輝度分布を示すように思える.
昼側の光球の圧力は,それぞれ 0.33 bar と 0.01 bar である.
WASP-18b は半径異常は示さないが,WASP-103b は 41% の半径異常を示す.
しかし WASP-18b の昼夜間コントラストは WASP-103b よりも大きく,シンプルな描像とは一致しない.WASP-18b でのオフセットはおそらく磁場の結果であり,WASP-103b にオフセットが存在しないのは,この惑星がより弱い磁場を持っているからである可能性がある.これは後者の惑星が低質量であることからも期待される (Yadav & Thongren 2017).
WASP-103b に膨張機構が働いていない場合は 1.10 木星半径になるはずであり,観測された半径を維持するためには追加の熱源 1029 erg s-1 が必要とされる.これと同じ追加の加熱があった場合,WASP-18b は 1.3 木星半径になる (Miller et al. 2009).これは観測されている半径よりもやや大きい.
そのため,ほぼ同一の恒星を公転しているものの WASP-18b は膨張していないということになる.この違いは,例えばオーム加熱がより質量の大きい惑星の半径を膨張させるには非効率であることに由来する可能性がある.
arXiv:1904.02069
Arcangeli et al. (2019)
Climate of an Ultra hot Jupiter: Spectroscopic phase curve of WASP-18b with HST/WFC3
(ウルトラホットジュピターの気候:HST/WFC3 での WASP-18b の分光位相曲線)
概要
ウルトラホットジュピター WASP-18b の全軌道周期の分光位相曲線の解析について報告する.これは,ハッブル宇宙望遠鏡の Wide Field Camera 3 を用いて観測されたものである.観測結果から,この惑星の規格化した昼夜間の光度コントラストは 0.96 以上と測定された.
惑星からの円盤面で積分した昼側の放射は 964 ppm であり,これは有効温度 2894 K に対応する,また夜側の放射への上限に <32 ppm="" 1430="" k="" 3="" br="">
また位相曲線の極大は,東向きに 4.5 ± 0.5° の,小さいが有意なずれを示した.
抽出した位相曲線と位相分解したスペクトルを,3次元 Global Circulation Models と比較し,これらのいくつかのモデルによってデータが広く再現できることを示した.この比較から,惑星の大気特性へのいくつかの制約を与えた.
まず,観測された非常に非効率的な昼夜再循環を説明するためには,効率的な大気の摩擦が必要である.この摩擦は 10 ガウス程度の弱さの磁場による,ローレンツ力による摩擦である可能性がある.
次に,昼夜間の大きな温度差を説明するために大気の大きな金属量は必要ではないことを示す.実際,ウルトラホットジュピターの大気の金属量が位相曲線に与える影響は,低温な巨大ガス惑星の場合とは異なる.これは,この惑星の大気では非常に高温の化学過程がはたらくからである.
さらに,これまでのウルトラホットジュピターの分光位相曲線と比較した.比較した対象は WASP-103b である.
その結果この 2 つの惑星は,測定された特性と示唆された特性に置いて特筆すべき類似性を示すことが分かった.しかし重要な違いも見られることも分かった.例えば輝度の東方向へのずれと半径異常である.そのため,ウルトラホットジュピターは巨大ガス惑星の膨張へ寄与する,競合する理論を切り分けるのに使える可能性がある.
WASP-103b との比較
各惑星のパラメータの概要
WASP-18b は,10.43 木星質量,1.17 木星半径,平衡温度 2413 K,軌道周期 22.6 時間のウルトラホットジュピターである.中心星の WASP-18 の有効温度は 6400 K である.WASP-103b は,1.49 木星質量,1.55 木星半径,平衡温度 2508 K,軌道周期 22.2 時間の,同じくウルトラホットジュピターである.中心星の WASP-103 の有効温度は 6110 K である.
WASP-18b の昼夜間の輝度コントラストは >0.96 と大きく,WASP-103b では 0.93 である.
輝度の東方向へのオフセットはそれぞれ -4.5° と -0.3° と,違いが大きい.後者の WASP-103b ではほぼ対称な輝度分布を示すように思える.
昼側の光球の圧力は,それぞれ 0.33 bar と 0.01 bar である.
WASP-18b は半径異常は示さないが,WASP-103b は 41% の半径異常を示す.
大気循環の比較
惑星の大気循環について,輻射と移流のタイムスケールのバランスとしての大気循環のシンプルな描像を考えた時,WASP-18b の昼夜コントラストは WASP-103b より小さくなることが期待される.これは,輝度のオフセットはやや効率的な風駆動の循環と対応しているべきだからである.しかし WASP-18b の昼夜間コントラストは WASP-103b よりも大きく,シンプルな描像とは一致しない.WASP-18b でのオフセットはおそらく磁場の結果であり,WASP-103b にオフセットが存在しないのは,この惑星がより弱い磁場を持っているからである可能性がある.これは後者の惑星が低質量であることからも期待される (Yadav & Thongren 2017).
半径以上の有無
2 番目に重要な違いは,WASP-103b は非常に膨張しているが,WASP-18b は膨張なしの理論モデルと整合的である点である.WASP-103b に膨張機構が働いていない場合は 1.10 木星半径になるはずであり,観測された半径を維持するためには追加の熱源 1029 erg s-1 が必要とされる.これと同じ追加の加熱があった場合,WASP-18b は 1.3 木星半径になる (Miller et al. 2009).これは観測されている半径よりもやや大きい.
そのため,ほぼ同一の恒星を公転しているものの WASP-18b は膨張していないということになる.この違いは,例えばオーム加熱がより質量の大きい惑星の半径を膨張させるには非効率であることに由来する可能性がある.
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