×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1910.01607
Wong et al. (2019)
Exploring the atmospheric dynamics of the extreme ultra-hot Jupiter KELT-9b using TESS photometry
(TESS 測光を用いた極端なウルトラホットジュピター KELT-9b の大気力学の探査)
惑星の輝度変動は,二次食の中心点の 26 分前に最大に到達した.これは,昼側のホットスポットが東側にややずれていることを示唆する.
また中心星の KELT-9 の脈動を検出し,特徴的な周期は 7.58678 時間であった.
幾何学的アルベドが 0 であると仮定した場合の KELT-9b の昼側の輝度温度は 4570 K,夜側の温度は 3020 K と推定され,この夜側の温度は最も高温な部類の既知の系外惑星の昼側温度と同程度である.
加えて,軌道周波数の基本成分において有意な位相曲線信号を検出し,また第二高調波で暫定的な信号を検出した.基本成分の要素の振幅は,平衡潮汐を仮定した楕円体変形による変動の予測と整合的である一方で,この測光変動の位相は予想と比較するとずれがあった.
KELT-9b を,他の位相曲線観測が行われている系外惑星と比較すると,夜側の温度がより高く,また昼夜間温度差は比較的小さいことを見出した.これは,水素分子の解離と再結合を含んだ大気モデルの予測と一致する.
この惑星の夜側の温度からは,大気の組成として水素分子が 52%,水素原子が 48% であることが示唆される.
この惑星のスペクトルは,より低温なホットジュピターでは顕著である広帯域の分子の特徴が欠けたものとなることが予測される.その一方で,近赤外線の透過スペクトルも同様に特徴に欠けていることが予想され,H- の不透明度によりスペクトルは正の傾きを持つことが予測される.
・惑星の大気の輝度変動は,極大から極大までの振幅が 569 ppm である.惑星のホットスポットは恒星直下点から東側にわずかにずれており,ずれの大きさは 4.4° である.
・恒星 KELT-9 の脈動のシグナルを検出し,その周期は 7.58678 時間,振幅は 235 ppm である.
・中心星の測光変動は,42.5 ppm の半振幅を持った,惑星の軌道周波数の主要成分で特徴付けられる.この振幅は潮汐による恒星の楕円変形によるとする予測と整合的だが,測定されたシグナルの相対位相は,想定よりも 軌道周期の 0.2 倍分だけ遅い.この違いは,高温の A 型主星の励起された力学的潮汐と,公転する惑星によって引き起こされた潮汐バルジとの相互作用からくるものである可能性を提唱する.惑星の軌道がほぼ極軌道であることも,潮汐バルジの振幅と位相に影響を及ぼす可能性があり,また同時に軌道周期の半分の周期で惑星の軌道に追加の変動を誘起する可能性がある.また,二次高調波を 2.9σ の確度で検出したが,この起源は未決定である.
・KELT=9b の昼夜間温度差は比較的小さく,効率的な熱輸送の存在が示唆される.これは過去に提案されていた,昼側の輻射水準が大きくなるにつれて熱の再循環効率の傾向が転換するというモデルを確認する結果である.この惑星の昼夜間温度差が小さいことは,水素分子の解離と再結合の効果と整合的である.
・この惑星の高温な夜面は,Keating et al. (2019) で報告されていた,ほぼ平坦な夜側温度の傾向とは大きく乖離している.夜側の温度が上昇すると,惑星の夜側で凝縮物の雲が形成されなくなり,水素分子と原子がほぼ等しい大気の組成と整合的となる.
・この惑星の放射スペクトルおよび透過スペクトルは,どちらも特徴に欠けたものになると予測される.前者は単純な黒体放射に似た形状に,後者は H- イオンの不透明度により,近赤外線の波長帯にわたって上昇する分布になるだろう.
arXiv:1910.01607
Wong et al. (2019)
Exploring the atmospheric dynamics of the extreme ultra-hot Jupiter KELT-9b using TESS photometry
(TESS 測光を用いた極端なウルトラホットジュピター KELT-9b の大気力学の探査)
概要
NASA の Transiting Exoplanet Survey Satellite (TESS) を用いた KELT-9 系の測光観測から,位相曲線の解析を実行し,惑星の二次食の深さと,位相曲線の極大から極大までの輝度変動を測定した.解析の結果,二次食の深さは 651 ppm,輝度変動は 569 ppm であった.惑星の輝度変動は,二次食の中心点の 26 分前に最大に到達した.これは,昼側のホットスポットが東側にややずれていることを示唆する.
また中心星の KELT-9 の脈動を検出し,特徴的な周期は 7.58678 時間であった.
幾何学的アルベドが 0 であると仮定した場合の KELT-9b の昼側の輝度温度は 4570 K,夜側の温度は 3020 K と推定され,この夜側の温度は最も高温な部類の既知の系外惑星の昼側温度と同程度である.
加えて,軌道周波数の基本成分において有意な位相曲線信号を検出し,また第二高調波で暫定的な信号を検出した.基本成分の要素の振幅は,平衡潮汐を仮定した楕円体変形による変動の予測と整合的である一方で,この測光変動の位相は予想と比較するとずれがあった.
KELT-9b を,他の位相曲線観測が行われている系外惑星と比較すると,夜側の温度がより高く,また昼夜間温度差は比較的小さいことを見出した.これは,水素分子の解離と再結合を含んだ大気モデルの予測と一致する.
この惑星の夜側の温度からは,大気の組成として水素分子が 52%,水素原子が 48% であることが示唆される.
この惑星のスペクトルは,より低温なホットジュピターでは顕著である広帯域の分子の特徴が欠けたものとなることが予測される.その一方で,近赤外線の透過スペクトルも同様に特徴に欠けていることが予想され,H- の不透明度によりスペクトルは正の傾きを持つことが予測される.
観測と解析のまとめ
・KELT-9b の二次食の深さは 651 ppm で,これはこの惑星の昼側の温度が 4570 K であることを示唆している.なおこの温度は,惑星の幾何学的アルベドが 0 であることを仮定している.アルベドが 0 - 0.2 の場合,昼側の温度範囲は 4320 - 4570 K となる.また夜側は 3020 K と非常に高温であり,これは中期 M 型星の大気に匹敵する温度である.・惑星の大気の輝度変動は,極大から極大までの振幅が 569 ppm である.惑星のホットスポットは恒星直下点から東側にわずかにずれており,ずれの大きさは 4.4° である.
・恒星 KELT-9 の脈動のシグナルを検出し,その周期は 7.58678 時間,振幅は 235 ppm である.
・中心星の測光変動は,42.5 ppm の半振幅を持った,惑星の軌道周波数の主要成分で特徴付けられる.この振幅は潮汐による恒星の楕円変形によるとする予測と整合的だが,測定されたシグナルの相対位相は,想定よりも 軌道周期の 0.2 倍分だけ遅い.この違いは,高温の A 型主星の励起された力学的潮汐と,公転する惑星によって引き起こされた潮汐バルジとの相互作用からくるものである可能性を提唱する.惑星の軌道がほぼ極軌道であることも,潮汐バルジの振幅と位相に影響を及ぼす可能性があり,また同時に軌道周期の半分の周期で惑星の軌道に追加の変動を誘起する可能性がある.また,二次高調波を 2.9σ の確度で検出したが,この起源は未決定である.
・KELT=9b の昼夜間温度差は比較的小さく,効率的な熱輸送の存在が示唆される.これは過去に提案されていた,昼側の輻射水準が大きくなるにつれて熱の再循環効率の傾向が転換するというモデルを確認する結果である.この惑星の昼夜間温度差が小さいことは,水素分子の解離と再結合の効果と整合的である.
・この惑星の高温な夜面は,Keating et al. (2019) で報告されていた,ほぼ平坦な夜側温度の傾向とは大きく乖離している.夜側の温度が上昇すると,惑星の夜側で凝縮物の雲が形成されなくなり,水素分子と原子がほぼ等しい大気の組成と整合的となる.
・この惑星の放射スペクトルおよび透過スペクトルは,どちらも特徴に欠けたものになると予測される.前者は単純な黒体放射に似た形状に,後者は H- イオンの不透明度により,近赤外線の波長帯にわたって上昇する分布になるだろう.
PR
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック