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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1911.04524
Higuchi & Kokubo (2019)
Hyperbolic Orbits in the Solar System: Interstellar Origin or Perturbed Oort Cloud Comets?
(太陽系内での双曲線軌道:恒星間起源か摂動を受けたオールト雲彗星か?)
双方の起源候補に対して,軌道離心率 e と近日点距離 q の確率分布を解析的に導出し,これらの量の関数として,単位時間あたりに生成される天体の個数を推定した.2 つの起源からの個数を比較し,任意の離心率と近日点距離を持つ双曲線天体のもっともらしい起源を評価した.
その結果,ある双曲線天体が星間空間起源である可能性は,離心率と近日点距離の減少に伴って増加することを見出した.逆に,双曲線天体が通過する恒星によってオールト雲から散乱されたものである可能性は,天体の離心率が減少し,近日点距離が増加するにつれて増加する.
軌道要素を注意深く考慮した結果,恒星間天体オウムアムア (1I/2017 U1 ’Oumuamua) (e ≃ 1.2,q ≃ 0.26 au) とボリソフ彗星 (2I/2019 Q4 Borisov) (e ≃ 3.3,q ≃ 2 au) はどちらも星間起源である可能性が高く,オールト雲からの散乱ではないと考えられる.
しかしこれらの 2 つの天体は,亜恒星質量,あるいは木星未満の質量の擾乱天体によっても,オールト雲から観測された双曲線軌道へと散乱可能であることも見出した.このことは,自由浮遊褐色矮星と惑星の集団の質量下端のより良い特徴付けを行う必要性があることを強調する結果である.
この天体については,形状や熱特性,色や彗星活動の欠乏,タンブリング状態の自転,非重力的加速などが報告されており,これらは Bannister et al. (2019) にまとめられている.これらの特性はその他の小さい太陽系天体には見られないものである.しかしこれらの物理的な特徴のみでは,この天体がオールト雲から外れた太陽系内の天体である可能性を否定するには不十分である.
2 番目の双曲線天体は C/2019 Q4 (2I/Borisov) (ボリソフ彗星) である.この天体の離心率は 3.3 と非常に大きく,彗星の特徴を示し,スペクトルは D 型小惑星に類似している.
大部分の長周期彗星は e < 1 であるが,いくつかは e ≳ 1 の離心率を持つことが知られている.
Kr ́olikowska & Dybczyn ́ski (2017) は,長周期彗星の軌道を惑星の摂動と非重力的な力を注意深く考慮して計算した.その結果,大部分の場合において長周期彗星の最後の近日点通過前の軌道は楕円軌道 (太陽の重力に束縛された軌道) に従うことを見出した.
これらの e > 1 の長周期彗星は星間空間から来た可能性はあるが,位置天文測定の不定性によって離心率が 1 を超えているだけである可能性が高い.この場合,これらの双曲線軌道の彗星は,力学的には他の長周期彗星とは同じであるが,オウムアムアとボリソフ彗星とは異なる.
(2) オウムアムアとボリソフ彗星は,どちらも星間起源であるとすると最も整合的である.散乱されたオールト雲が起源である可能性は否定できないが,その可能性は近い過去に非常に近い恒星遭遇がない場合に発生する確率は非常に低く,またそのような遭遇が起きた証拠はない.
(3) 恒星より軽い天体 (~0.2 木星質量まで) の太陽近傍の通過によって,オールト雲の天体を散乱させてオウムアムアやボリソフ彗星のような双曲線軌道へと変えることは可能である.
arXiv:1911.04524
Higuchi & Kokubo (2019)
Hyperbolic Orbits in the Solar System: Interstellar Origin or Perturbed Oort Cloud Comets?
(太陽系内での双曲線軌道:恒星間起源か摂動を受けたオールト雲彗星か?)
概要
内太陽系を通過する双曲線軌道にある天体の力学的特性を,2 つの異なる起源を想定して調査した.一つは星間空間 (太陽系外) 起源,もう一つは太陽系のオールト雲起源である.双方の起源候補に対して,軌道離心率 e と近日点距離 q の確率分布を解析的に導出し,これらの量の関数として,単位時間あたりに生成される天体の個数を推定した.2 つの起源からの個数を比較し,任意の離心率と近日点距離を持つ双曲線天体のもっともらしい起源を評価した.
その結果,ある双曲線天体が星間空間起源である可能性は,離心率と近日点距離の減少に伴って増加することを見出した.逆に,双曲線天体が通過する恒星によってオールト雲から散乱されたものである可能性は,天体の離心率が減少し,近日点距離が増加するにつれて増加する.
軌道要素を注意深く考慮した結果,恒星間天体オウムアムア (1I/2017 U1 ’Oumuamua) (e ≃ 1.2,q ≃ 0.26 au) とボリソフ彗星 (2I/2019 Q4 Borisov) (e ≃ 3.3,q ≃ 2 au) はどちらも星間起源である可能性が高く,オールト雲からの散乱ではないと考えられる.
しかしこれらの 2 つの天体は,亜恒星質量,あるいは木星未満の質量の擾乱天体によっても,オールト雲から観測された双曲線軌道へと散乱可能であることも見出した.このことは,自由浮遊褐色矮星と惑星の集団の質量下端のより良い特徴付けを行う必要性があることを強調する結果である.
背景
1I/2017 U1 ’Oumuamua (オウムアムア) は太陽系内で大きな離心率 (e ≃ 1.2) を持つことが確認された初めての天体で,無限遠での実効速度は 26 km s-1 である (Williams 2017など).オウムアムアは惑星との遭遇を起こしていないため,この速度は惑星による摂動では説明できない (Meech et al. 2017).この天体については,形状や熱特性,色や彗星活動の欠乏,タンブリング状態の自転,非重力的加速などが報告されており,これらは Bannister et al. (2019) にまとめられている.これらの特性はその他の小さい太陽系天体には見られないものである.しかしこれらの物理的な特徴のみでは,この天体がオールト雲から外れた太陽系内の天体である可能性を否定するには不十分である.
2 番目の双曲線天体は C/2019 Q4 (2I/Borisov) (ボリソフ彗星) である.この天体の離心率は 3.3 と非常に大きく,彗星の特徴を示し,スペクトルは D 型小惑星に類似している.
大部分の長周期彗星は e < 1 であるが,いくつかは e ≳ 1 の離心率を持つことが知られている.
Kr ́olikowska & Dybczyn ́ski (2017) は,長周期彗星の軌道を惑星の摂動と非重力的な力を注意深く考慮して計算した.その結果,大部分の場合において長周期彗星の最後の近日点通過前の軌道は楕円軌道 (太陽の重力に束縛された軌道) に従うことを見出した.
これらの e > 1 の長周期彗星は星間空間から来た可能性はあるが,位置天文測定の不定性によって離心率が 1 を超えているだけである可能性が高い.この場合,これらの双曲線軌道の彗星は,力学的には他の長周期彗星とは同じであるが,オウムアムアとボリソフ彗星とは異なる.
結論
(1) 小さい e と小さい q を持つ双曲線天体は,太陽系外に起源を持つ天体である可能性が高い.反対に,小さい e だが大きな q を持つ双曲線天体は,オールト雲から太陽系の内側へ散乱された天体である可能性が高くなる.(2) オウムアムアとボリソフ彗星は,どちらも星間起源であるとすると最も整合的である.散乱されたオールト雲が起源である可能性は否定できないが,その可能性は近い過去に非常に近い恒星遭遇がない場合に発生する確率は非常に低く,またそのような遭遇が起きた証拠はない.
(3) 恒星より軽い天体 (~0.2 木星質量まで) の太陽近傍の通過によって,オールト雲の天体を散乱させてオウムアムアやボリソフ彗星のような双曲線軌道へと変えることは可能である.
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