×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1912.06456
Scheirich et al. (2019)
A satellite orbit drift in binary near-Earth asteroids (66391) 1999 KW4 and (88710) 2001 SL9 -- Indication of the BYORP effect
(地球近傍連星小惑星 (66391) 1999 KW4 と (88710) 2001 SL9 での衛星軌道ドリフト - BYORP 効果の示唆)
(66391) 1999 KW4 については,相互軌道の極,軌道長半径および軌道離心率を導出した.これらの値は,レーダー観測から導出された値と一致した (Ostro et al. 2006).
しかし,軌道周期が一定だとするとデータと矛盾することを見出し,また衛星の平均近点離角の二次ドリフトを伴う単一の解が得られ,その値は -0.65 ± 0.16 deg/yr2 であった.
これは,お互いの軌道要素の軌道長半径が,1 年あたり 1.2 ± 0.3 cm の割合で増加していることを意味している.
(88710) 2001 SL9 に関しては,相互軌道は 10° 程度以内の極を持ち,離心率は 0.07 未満と円軌道に近いと決定された.データはこちらも一定の軌道周期とは非整合であり,平均近点離角の二次ドリフトを伴う 2 つの可能な解を得た.それぞれ 2.8 ± 0.2 もしくは 5.2 ± 0.2 deg/yr2 である.
お互いの軌道要素の軌道長半径は,それぞれの場合において 1 年あたり -2.8 ± 0.2 cm あるいは -5.1 ± 0.2 cm と減少していることが示唆される.
(66391) 1999 KW4 の徐々に拡大する軌道は,連星 YORP 効果 (binary YORP, BYORP) と相互作用する相互潮汐によって説明できる可能性がある (McMahon & Scheeres 2010).
しかしレーダーで導出された連星天体の形状を用いた BYORP 移動のモデル化では,観測されたものよりもずっと大きな軌道移動が予測される.このことは,レーダーで導出された伴星天体の形状は BYORP 効果を計算するのには適していないか,もしくは現在の BYORP 効果の理論は軌道移動の速度を過大評価をしているか,あるいはその両方かであると考えられる.
BYORP 係数が予測とは反対の符号になることもありうる.この場合,この系は BYORP 効果と潮汐効果の間の平衡状態に向かって移動している可能性がある.(88710) 2001 SL9 の場合,相互軌道の内側移動を引き起こしうる既知の物理過程としては BYORP 効果が唯一の可能性である.
別の連星系 (175706) 1996 FG3 では平均近点離角の移動がゼロと整合的であり,BYORP 効果と相互潮汐の安定平衡に位置していることが示唆されている (Scheirich et al. 2015).これと合わせると,観測されている連星小惑星系のうち長周期の力学モデルが示唆されているものに関しては,3 つの異なるケースがあることになる.
(88710) 2001 SL9 はパロマー山天文台の Near-Earth Asteroid Tracking で 2001 年 9 月 18 日に発見され,連星であることは Pravec et al. (2001) で明らかにされた.
arXiv:1912.06456
Scheirich et al. (2019)
A satellite orbit drift in binary near-Earth asteroids (66391) 1999 KW4 and (88710) 2001 SL9 -- Indication of the BYORP effect
(地球近傍連星小惑星 (66391) 1999 KW4 と (88710) 2001 SL9 での衛星軌道ドリフト - BYORP 効果の示唆)
概要
地球近傍の連星小惑星 (66391) 1999 KW4 (固有名 Moshup) および (88710) 2001 SL9 の測光観測を,2000 年 6 月から 2019 年 6 月まで行った.観測データをモデル化し,連星系の物理的および力学的特性を導出した.(66391) 1999 KW4 については,相互軌道の極,軌道長半径および軌道離心率を導出した.これらの値は,レーダー観測から導出された値と一致した (Ostro et al. 2006).
しかし,軌道周期が一定だとするとデータと矛盾することを見出し,また衛星の平均近点離角の二次ドリフトを伴う単一の解が得られ,その値は -0.65 ± 0.16 deg/yr2 であった.
これは,お互いの軌道要素の軌道長半径が,1 年あたり 1.2 ± 0.3 cm の割合で増加していることを意味している.
(88710) 2001 SL9 に関しては,相互軌道は 10° 程度以内の極を持ち,離心率は 0.07 未満と円軌道に近いと決定された.データはこちらも一定の軌道周期とは非整合であり,平均近点離角の二次ドリフトを伴う 2 つの可能な解を得た.それぞれ 2.8 ± 0.2 もしくは 5.2 ± 0.2 deg/yr2 である.
お互いの軌道要素の軌道長半径は,それぞれの場合において 1 年あたり -2.8 ± 0.2 cm あるいは -5.1 ± 0.2 cm と減少していることが示唆される.
(66391) 1999 KW4 の徐々に拡大する軌道は,連星 YORP 効果 (binary YORP, BYORP) と相互作用する相互潮汐によって説明できる可能性がある (McMahon & Scheeres 2010).
しかしレーダーで導出された連星天体の形状を用いた BYORP 移動のモデル化では,観測されたものよりもずっと大きな軌道移動が予測される.このことは,レーダーで導出された伴星天体の形状は BYORP 効果を計算するのには適していないか,もしくは現在の BYORP 効果の理論は軌道移動の速度を過大評価をしているか,あるいはその両方かであると考えられる.
BYORP 係数が予測とは反対の符号になることもありうる.この場合,この系は BYORP 効果と潮汐効果の間の平衡状態に向かって移動している可能性がある.(88710) 2001 SL9 の場合,相互軌道の内側移動を引き起こしうる既知の物理過程としては BYORP 効果が唯一の可能性である.
別の連星系 (175706) 1996 FG3 では平均近点離角の移動がゼロと整合的であり,BYORP 効果と相互潮汐の安定平衡に位置していることが示唆されている (Scheirich et al. 2015).これと合わせると,観測されている連星小惑星系のうち長周期の力学モデルが示唆されているものに関しては,3 つの異なるケースがあることになる.
観測対象について
(66391) 1999 KW4 は固有名が Moshup と命名されており,ニューメキシコ・ソコロの Lincoln Near-Earth Asteroid Research によって 1999 年 5 月 20 日に発見された小惑星である.この小惑星が連星であることは Benner et al. (2001) によって明らかにされた.(88710) 2001 SL9 はパロマー山天文台の Near-Earth Asteroid Tracking で 2001 年 9 月 18 日に発見され,連星であることは Pravec et al. (2001) で明らかにされた.
PR
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック