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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:2001.06269
Tan & Showman (2020)
Atmospheric circulation of tidally locked gas giants with increasing rotation and implications for white-dwarf-brown-dwarf systems
(増加する自転周期の潮汐固定巨大惑星の大気循環と白色矮星-褐色矮星系への応用)
しかし,白色矮星の周りを極めて短い軌道で公転する褐色矮星という,強い輻射を受ける天体の分類も存在する.これらの軌道と自転周期は 1-2 時間程度と短い.これらの天体における位相曲線とその他の観測は既に行われており,大気循環における惑星の自転速度の影響に関しては根本的な疑問が投げかけられている.
これまでに,大部分のモデル研究は 1 日を超える自転周期の惑星について考えてきており,これは典型的なホットジュピターを想定したものである.ここでは,潮汐固定された惑星の大気で,惑星の自転周期を 2.5 時間にまで減らしたもの (すなわち自転速度を上げたもの) を想定して大気循環を研究した.
惑星の自転周期が減少すると赤道の東向きジェットの幅が減少し,これは赤道の変形半径の減少による赤道の導波路が細くなることと整合的である.それに従って赤道のホットスポットの東向きのずれも減少し,赤道から外れた緯度での西向きの高温領域のずれは次第に顕著になる.また,高緯度領域では風は弱くなり,自転の影響がより支配的になる.天体の昼夜間の温度差は,自転の強い影響により大きくなる.
ここでシミュレートした大気は変動性を示し,これはおそらく不安定性と波の相互作用によって引き起こされている.典型的なホットジュピターのモデルとは異なり,高速自転モデルの熱位相曲線は,極大のフラックスは二次食のタイミングと揃っている.この結果は,ホットジュピターとは異なり,白色矮星を公転する多くの褐色矮星が赤外線のフラックスの極大が二次食と揃っていることを説明できる可能性がある.
今回の結果は,高速自転の潮汐固定された惑星の大気の物理現象への理解を助けるものとなる.
これらの系は,連星進化の生き残りであると考えられる.太陽類似の恒星が年老いて半径が拡大し,その近傍を公転する伴星を飲み込む.伴星の軌道はガス抵抗によって次第に縮小する.進化した恒星の外層はその後希薄になり,後には残骸の白色矮星と,近接して公転する低質量の伴星 (褐色矮星など) を残すと考えられる (Hellier 2001,Percy 2007).
このようにして形成された二次的な褐色矮星の多くは,その大気から白色矮星へと物質を供給しており,その観測的な特徴は降着円盤だけではなく,潮汐力によって褐色矮星が非球形に変形している影響により,しばしば複雑なものになる.
幸いにも,このような系のうちいくつかは白色矮星と褐色矮星が離れており,二次褐色矮星からの大気の流出が存在しないものがある.そのためそのような系は,3 次元の大気構造と循環の研究を行う良い対象である.
観測的な利点として,褐色矮星の方から放射された近赤外線の光子は,一般には高温の白色矮星から波長域としては分離しやすい (白色矮星のフラックスのピークは典型的には紫外線の波長域にある).典型的には褐色矮星は白色矮星よりも遥かに大きなエネルギーを赤外線で放射しており,そのため観測的な特徴付けが行いやすくなる.
このような系のいくつかにおいて,様々な波長での位相曲線が得られている.例えば,NLTT 5306 (軌道周期 102 分,Steele et al. 2013),WD0137-349 (116 分,Casewell et al. 2015など),EPIC 21223532 (68 分,Casewell et al. 2018),WD 1202-024 (71 分,Rappaport et al. 2017) である.
これらの位相曲線はしばしば大きな昼夜間の温度差を示し,二次食と輻射のピークの位相のずれがほぼゼロであることが分かっている.またいくつかのケースではフラックスのピークは二次食よりもわずかに後に見られており,これは大部分のホットジュピターの近赤外線の位相曲線では二次食の後に極大が来ていることとは対照的である.このことは,潮汐固定された天体の大気における全球的な循環と昼夜間の熱輸送には,自転の強い影響があるとする考え方に対して根本的な疑問を投げかけるものである.
白色矮星まわりの極めて近接した褐色矮星と,軌道周期が典型的には数日程度の一般的なホットジュピターの間には,軌道周期が 1 日程度かそれ未満で太陽類似星を公転するいくつかの巨大惑星や褐色矮星が発見され,特徴付けられている.例えば WASP-12b は軌道周期が 1.1 日,WASP-103b は 0.93 日,WASP-18b は 0.94 日,WASP-19b は 0.78 日,NGTS-7Ab は 0.68 日,TOI 263.01 は 0.56 日である.
Matsuno-Gill パターンは,ロスビー数が 1 程度で,赤道のロスビー変形半径が惑星半径と同程度になる低速な自転の場合に顕著に発生する.ロスビー変形半径は \(L_{\rm D}0\sqrt{c/\beta}\) で表され,\(c\) は重力波の速度,\(\beta=df/dy\) はコリオリパラメータ \(f\) の子午面方向の勾配で,これは北に行くほど大きくなる.またコリオリパラメータは \(f=2\Omega\sin\phi\) で,\(\phi\) は緯度,\(\Omega\) は惑星の自転率 (自転速度) であり,したがって \(\beta=2\Omega\cos\phi/a\) で表される.\(a\) は惑星半径である.また,赤道では \(\beta=2\Omega/a\) となることが示唆される.
鉛直方向に長い波長を持つ重力波の水平方向の位相速度は,\(c\sim2NH\) が良い近似である.ここで \(N\) はブラント・バイサラ振動数,\(H\) は大気のスケールハイトである.赤道の変形半径は \(L_{\rm D}=\sqrt{NHa/\Omega}\) と書ける.
Showman & Polvani (2011) では,同期自転する惑星での赤道ジェットの子午面の半値幅は,赤道の変形半径で近似できると予測している.
惑星の自転周期が減少するにつれ (自転率が上昇するにつれ),ロスビー変形半径は惑星半径に対して減少する.これに付随する定常波の子午面の広がりは小さくなると予想され,波の構造は赤道に近くなる.波の導波路を超えた高緯度での力の釣り合いは,摩擦力が弱い場合は圧力勾配とコリオリの力が主要になる.これは地衡レジームと呼ばれる状態である.
この枠組みに基づき,自転周期が短くなるにつれて 2 つの異なる振る舞いが出現すると予測される.定常波は引き起こされるが赤道に近い領域に制限され,高緯度では流れは急速に地衡風的になる.赤道のスーパーローテーションは依然として存在するが,子午線方向の広がりは赤道の変形半径が小さくなることにより減少すると予想される.
この循環パターンの変化は,熱位相曲線とその他の観測量に直接影響を及ぼす.低速自転の場合は東向きにずれたホットスポットが支配的であり,これにより二次食より前に惑星からのフラックスの極大が現れる.しかし高速自転の場合,つまり Matsuno-Gill パターンが赤道により近い領域に制限されている場合,赤道ジェットと東向きのホットスポットのずれは惑星の領域の小さい領域のみを占めるようになる.その一方で,赤道から外れたロスビー渦に伴った西向きにずれた高温領域と,地衡風レジームにおける非シフト-シフトのパターン (短い自転周期の場合惑星の大部分の緯度で支配的になる) が熱位相曲線に大きな寄与をし,そのためフラックスのピークの遺贈に影響を及ぼす.この効果は Penn & Valis (2017) において浅水モデルを用いて示されている.
過去の研究では,ホットジュピターにおける大気循環に対する自転の影響が調査されてきた.この研究には,同期自転するホットジュピターを想定したものから,同期から外れた状態まで自転周期を変化させたものもある.また,擬同期自転をしたエキセントリック・プラネットを想定したシミュレーションも行われている (Kataria et al. 2013).
一般に,自転が高速であるほど赤道ジェットは細くなるという描像が支持されている.しかし,非同期自転や恒星の日射の変化,離心率などの複雑な影響により,自転周期のみの影響の理解を複雑にしている.さらに,白色矮星・褐色矮星連星のような極めて高速で自転しているパラメータ領域の調査は行われていない.
arXiv:2001.06269
Tan & Showman (2020)
Atmospheric circulation of tidally locked gas giants with increasing rotation and implications for white-dwarf-brown-dwarf systems
(増加する自転周期の潮汐固定巨大惑星の大気循環と白色矮星-褐色矮星系への応用)
概要
昼夜間の熱強制と極端な恒星輻射を受ける潮汐固定された巨大惑星は,典型的には軌道周期は数日程度であり,大気循環における自転の役割はあまり大きいものではない.しかし,白色矮星の周りを極めて短い軌道で公転する褐色矮星という,強い輻射を受ける天体の分類も存在する.これらの軌道と自転周期は 1-2 時間程度と短い.これらの天体における位相曲線とその他の観測は既に行われており,大気循環における惑星の自転速度の影響に関しては根本的な疑問が投げかけられている.
これまでに,大部分のモデル研究は 1 日を超える自転周期の惑星について考えてきており,これは典型的なホットジュピターを想定したものである.ここでは,潮汐固定された惑星の大気で,惑星の自転周期を 2.5 時間にまで減らしたもの (すなわち自転速度を上げたもの) を想定して大気循環を研究した.
惑星の自転周期が減少すると赤道の東向きジェットの幅が減少し,これは赤道の変形半径の減少による赤道の導波路が細くなることと整合的である.それに従って赤道のホットスポットの東向きのずれも減少し,赤道から外れた緯度での西向きの高温領域のずれは次第に顕著になる.また,高緯度領域では風は弱くなり,自転の影響がより支配的になる.天体の昼夜間の温度差は,自転の強い影響により大きくなる.
ここでシミュレートした大気は変動性を示し,これはおそらく不安定性と波の相互作用によって引き起こされている.典型的なホットジュピターのモデルとは異なり,高速自転モデルの熱位相曲線は,極大のフラックスは二次食のタイミングと揃っている.この結果は,ホットジュピターとは異なり,白色矮星を公転する多くの褐色矮星が赤外線のフラックスの極大が二次食と揃っていることを説明できる可能性がある.
今回の結果は,高速自転の潮汐固定された惑星の大気の物理現象への理解を助けるものとなる.
白色矮星周りの褐色矮星
白色矮星を公転する褐色矮星は非常に短い軌道を持ち,軌道周期とそれに潮汐固定された自転周期は 1-2 時間である.これらの系は,連星進化の生き残りであると考えられる.太陽類似の恒星が年老いて半径が拡大し,その近傍を公転する伴星を飲み込む.伴星の軌道はガス抵抗によって次第に縮小する.進化した恒星の外層はその後希薄になり,後には残骸の白色矮星と,近接して公転する低質量の伴星 (褐色矮星など) を残すと考えられる (Hellier 2001,Percy 2007).
このようにして形成された二次的な褐色矮星の多くは,その大気から白色矮星へと物質を供給しており,その観測的な特徴は降着円盤だけではなく,潮汐力によって褐色矮星が非球形に変形している影響により,しばしば複雑なものになる.
幸いにも,このような系のうちいくつかは白色矮星と褐色矮星が離れており,二次褐色矮星からの大気の流出が存在しないものがある.そのためそのような系は,3 次元の大気構造と循環の研究を行う良い対象である.
観測的な利点として,褐色矮星の方から放射された近赤外線の光子は,一般には高温の白色矮星から波長域としては分離しやすい (白色矮星のフラックスのピークは典型的には紫外線の波長域にある).典型的には褐色矮星は白色矮星よりも遥かに大きなエネルギーを赤外線で放射しており,そのため観測的な特徴付けが行いやすくなる.
このような系のいくつかにおいて,様々な波長での位相曲線が得られている.例えば,NLTT 5306 (軌道周期 102 分,Steele et al. 2013),WD0137-349 (116 分,Casewell et al. 2015など),EPIC 21223532 (68 分,Casewell et al. 2018),WD 1202-024 (71 分,Rappaport et al. 2017) である.
これらの位相曲線はしばしば大きな昼夜間の温度差を示し,二次食と輻射のピークの位相のずれがほぼゼロであることが分かっている.またいくつかのケースではフラックスのピークは二次食よりもわずかに後に見られており,これは大部分のホットジュピターの近赤外線の位相曲線では二次食の後に極大が来ていることとは対照的である.このことは,潮汐固定された天体の大気における全球的な循環と昼夜間の熱輸送には,自転の強い影響があるとする考え方に対して根本的な疑問を投げかけるものである.
白色矮星まわりの極めて近接した褐色矮星と,軌道周期が典型的には数日程度の一般的なホットジュピターの間には,軌道周期が 1 日程度かそれ未満で太陽類似星を公転するいくつかの巨大惑星や褐色矮星が発見され,特徴付けられている.例えば WASP-12b は軌道周期が 1.1 日,WASP-103b は 0.93 日,WASP-18b は 0.94 日,WASP-19b は 0.78 日,NGTS-7Ab は 0.68 日,TOI 263.01 は 0.56 日である.
理論的なモチベーション
一般的なホットジュピター大気における昼夜間の輻射強制に対する主要な動的応答は,定常的な全球規模の赤道ロスビー波およびケルビン波である.赤道ロスビー波とケルビン波の重ね合わせ (いわゆる Matsuno-Gill パターン,Matsuno 1966,Gill 1980) は,高緯度から赤道へ東向きの運動量を送り込む渦速度の位相の傾斜を引き起こし,これが高速な東向きの赤道ジェット,もしくはスーパーローテーションを誘起する.赤道でのスーパーローテーションによる移流とケルビン波の東向きの伝播が組み合わさることによって,惑星のホットスポットを恒星直下点から東向きに移動させるのを助ける.Matsuno-Gill パターンは,ロスビー数が 1 程度で,赤道のロスビー変形半径が惑星半径と同程度になる低速な自転の場合に顕著に発生する.ロスビー変形半径は \(L_{\rm D}0\sqrt{c/\beta}\) で表され,\(c\) は重力波の速度,\(\beta=df/dy\) はコリオリパラメータ \(f\) の子午面方向の勾配で,これは北に行くほど大きくなる.またコリオリパラメータは \(f=2\Omega\sin\phi\) で,\(\phi\) は緯度,\(\Omega\) は惑星の自転率 (自転速度) であり,したがって \(\beta=2\Omega\cos\phi/a\) で表される.\(a\) は惑星半径である.また,赤道では \(\beta=2\Omega/a\) となることが示唆される.
鉛直方向に長い波長を持つ重力波の水平方向の位相速度は,\(c\sim2NH\) が良い近似である.ここで \(N\) はブラント・バイサラ振動数,\(H\) は大気のスケールハイトである.赤道の変形半径は \(L_{\rm D}=\sqrt{NHa/\Omega}\) と書ける.
Showman & Polvani (2011) では,同期自転する惑星での赤道ジェットの子午面の半値幅は,赤道の変形半径で近似できると予測している.
惑星の自転周期が減少するにつれ (自転率が上昇するにつれ),ロスビー変形半径は惑星半径に対して減少する.これに付随する定常波の子午面の広がりは小さくなると予想され,波の構造は赤道に近くなる.波の導波路を超えた高緯度での力の釣り合いは,摩擦力が弱い場合は圧力勾配とコリオリの力が主要になる.これは地衡レジームと呼ばれる状態である.
この枠組みに基づき,自転周期が短くなるにつれて 2 つの異なる振る舞いが出現すると予測される.定常波は引き起こされるが赤道に近い領域に制限され,高緯度では流れは急速に地衡風的になる.赤道のスーパーローテーションは依然として存在するが,子午線方向の広がりは赤道の変形半径が小さくなることにより減少すると予想される.
この循環パターンの変化は,熱位相曲線とその他の観測量に直接影響を及ぼす.低速自転の場合は東向きにずれたホットスポットが支配的であり,これにより二次食より前に惑星からのフラックスの極大が現れる.しかし高速自転の場合,つまり Matsuno-Gill パターンが赤道により近い領域に制限されている場合,赤道ジェットと東向きのホットスポットのずれは惑星の領域の小さい領域のみを占めるようになる.その一方で,赤道から外れたロスビー渦に伴った西向きにずれた高温領域と,地衡風レジームにおける非シフト-シフトのパターン (短い自転周期の場合惑星の大部分の緯度で支配的になる) が熱位相曲線に大きな寄与をし,そのためフラックスのピークの遺贈に影響を及ぼす.この効果は Penn & Valis (2017) において浅水モデルを用いて示されている.
過去の研究では,ホットジュピターにおける大気循環に対する自転の影響が調査されてきた.この研究には,同期自転するホットジュピターを想定したものから,同期から外れた状態まで自転周期を変化させたものもある.また,擬同期自転をしたエキセントリック・プラネットを想定したシミュレーションも行われている (Kataria et al. 2013).
一般に,自転が高速であるほど赤道ジェットは細くなるという描像が支持されている.しかし,非同期自転や恒星の日射の変化,離心率などの複雑な影響により,自転周期のみの影響の理解を複雑にしている.さらに,白色矮星・褐色矮星連星のような極めて高速で自転しているパラメータ領域の調査は行われていない.
結論
ここでは,天体の自転周期を 80 時間から最短 2.5 時間まで変化させて,大気循環のパターンの 3 次元計算を行った.- 天体の自転周期を減少 (自転速度を増大) させると,スーパーローテーションする赤道ジェットの子午線方向の幅,およびそれに付随したホットスポットの東向きのずれが狭くなり,定常ロスビー波のパターン (Matsuno-Gill パターン) は低緯度領域に限定される.高速自転の場合,極方向の領域はロスビー数が小さい地衡風平衡の状態に入り,この領域はロスビー数が 1 程度である従来の低速自転のホットジュピターとは大きく異なる力学的特性を示す.
- 全球的には,昼夜間の温度差は自転周期が減少するにつれて大きくなる.同様に全球的には,昼側のホットスポットの東向きのずれは自転周期の減少につれて減少する.
- ここでの高速自転モデルでの熱位相曲線は,二次食と位相曲線の極大のタイミングがほぼ揃っており,これは典型的なホットジュピターとは異なる特徴である.この結果は,高速自転している白色矮星・褐色矮星系で見られているフラックスの極大と二次食の位相のずれが小さいことの説明を助ける (Casewell et al. 2015など).一般的に,同様の輻射水準のホットジュピターと比較すると,短周期で白色矮星を公転する褐色矮星は大きな昼夜間の放射の違いがあるが,二次食とのフラックスの極大のずれは小さくなる.何らかの大気摩擦 (磁気抵抗など) が存在した場合は位相曲線に大きな影響を及ぼすが,このモデルでローレンツ力の影響を適切に取り扱うには,より現実的なモデルが必要である.
- 高速自転天体では,低緯度と高緯度の両方で多くの小規模の渦と,その時間変動が存在する.これは順圧不安定と傾圧不安定に由来する可能性がある.どちらの不安定性も,帯状風の構造と温度を含む,平均の大気の状態を形成するのに重要である.曲がりくねった赤道上の特徴は,全てのモデルのスーパーローテーションジェットで見られ,おそらくは順圧不安定性によるものである.
- 赤道のスーパーローテーションジェットは全ての自転周期のモデルに存在する.赤道ジェットの子午線方向の半値幅は赤道でのロスビー変形半径で概ねスケールし,これは Showman & Polvani (2011) で予測されていた振る舞いである.高速自転モデルでは,赤道から離れると,強い昼夜間の強制により多数の交互に流れる東向きと西向きの帯状風が生成される.これは,我々に馴染みの深い天体である木星を想定したシミュレーションにおける,対流もしくは傾圧不安定性によって引き起こされる帯状風と類似している.しかしここでは,これらのジェットは木星とは非常に異なるタイプの強制に応答して形成されている.これらの赤道から離れたジェットは,リネススケール (Rhines scale) でよくスケールする.
- 輻射のタイムスケールが長いモデルについても調査を行った.短い輻射タイムスケールを持つモデルと比べて,これらのモデルはより小さい水平方向の温度差しか生じない.若干の赤道・極域の温度差は示し,風は主に帯状に揃っているが,短い輻射時定数を持つ高速自転天体では一般的な,小スケールの交互に流れるジェット構造を示さない.
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