×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:2001.06060
Khain et al. (2020)
Dynamical Classification of Trans-Neptunian Objects Detected by the Dark Energy Survey
(ダークエネルギーサーベイで検出された太陽系外縁天体の力学的分類)
ここでは,外部太陽系の天体についてのアップデートされた力学的な分類方法を提案する.また,この方法を Dark Energy Survey (DES) で観測された TNO のデータセットに対して適用した.
この分類スキームでは,1 個が inner centaur,19 個が outer centaurs,21 個が散乱円盤天体,47 個が分離天体, 48 個が共鳴天体,7 個が共鳴天体候補,97 個が古典的カイパーベルト天体に分類される.
散乱円盤天体と分離天体のうち,検出した 8 個の TNOs は軌道長半径が 150 AU より大きい.
\[
T_{\rm J}=\frac{a_{\rm J}}{a}+2\sqrt{\frac{a}{a_{\rm J}}\left(1-e^{2}\right)}\cos i
\]
で表され,\(a_{\rm J}\) は木星の軌道長半径,\(a\),\(e\),\(i\) は小天体の軌道長半径,軌道離心率,軌道傾斜角である.
ここでは,\(T_{\rm}<3.05\) で近日点距離が q < 7.35 AU のものを Jupiter-coupled objects と分類すうr.ただし DES ではこのような彗星に似た軌道を持つ天体は検出しておらず,以降の議論や分類では省略する.
Centeur (ケンタウルス族) は,巨大惑星との強い相互作用を経験する天体を指す.ここではケンタウルス族を inner centaur と outer centaur の 2 つの分類に分けることを提案する.
Inner centaur は Gladman et al. (2008) で記述されている従来のケンタウルス族で,軌道長半径が海王星のものより小さい (30 AU 程度未満) 天体を指す.また outer centaur を,近日点距離が海王星の軌道長半径よりも小さいが,軌道長半径は海王星の軌道長半径よりも大きいものとして定義する.
どちらのタイプも巨大惑星が存在する領域で大部分の時間を過ごすが,惑星との相互作用の頻度は両者で異なる.Inner centaur は巨大惑星との強い相互作用をその軌道の大部分において経験するが,outer centaur は近日点周辺を通過する間のみ相互作用が発生する.また outer は inner より軌道周期が長いため,単位時間あたりの相互作用は小さくなる.
この違いは,軌道の不安定性のタイムスケールの違いにつながる.つまり,outer は inner よりも長寿命である.
この分類では,従来のケンタウルス族天体であるキロンなどは inner centaur となり,Drac や Niku と行った高軌道離心率の長周期天体は outer centaur となる.
現在の DES でのサンプルはこの分類の天体を含んでいない.
SDO は,現在海王星によって軌道が散乱されている天体であり,結果として軌道長半径において急速で大きな変化を経験するものである.Outer centaur とは異なり,SDO の軌道は巨大惑星領域からは完全に外れており,そのため海王星とはいくらか弱い相互作用のみをする.
Gladman の定義と整合的になるよう,積分時間にわたる初期の軌道長半径との違いが数 AU より大きくなるものと定義した (積分時間は a < 100 AU の天体では 10 Myr,100 AU 以上の場合は 100 Myr).
\[
\frac{\Delta a}{a}=\frac{{\rm max}\left(a\left(t\right)-a_{0}\right)}{a_{0}}
\]
とした時に
\[
\frac{\Delta a}{a}>0.0375
\]
となるものを境界とする.つまり,積分時間内における軌道長半径の最大変化量で区別する.この値は,40 AU における典型的な古典的 TNO に対して軌道の変化量が 1.5 AU となるものである.
一般的に,大きな近日点距離を持つ TNO が存在している.ここでは Gladman の定義に従い,軌道離心率が 0.24 より大きい,散乱されておらず共鳴もしていない天体を分離天体とした.これらの天体の大部分は海王星との 1:2 共鳴の位置 (47.7 AU) より遠方にある.
arXiv:2001.06060
Khain et al. (2020)
Dynamical Classification of Trans-Neptunian Objects Detected by the Dark Energy Survey
(ダークエネルギーサーベイで検出された太陽系外縁天体の力学的分類)
概要
外部太陽系は多数の小天体を持ち,これらは太陽系外縁天体 (trans-Neptunian objects, TNOs) として知られている.これらの遠方天体は異なる力学的な振る舞いを持っており.それぞれ似た軌道進化を経験した下位集団として分類可能である.ここでは,外部太陽系の天体についてのアップデートされた力学的な分類方法を提案する.また,この方法を Dark Energy Survey (DES) で観測された TNO のデータセットに対して適用した.
この分類スキームでは,1 個が inner centaur,19 個が outer centaurs,21 個が散乱円盤天体,47 個が分離天体, 48 個が共鳴天体,7 個が共鳴天体候補,97 個が古典的カイパーベルト天体に分類される.
散乱円盤天体と分離天体のうち,検出した 8 個の TNOs は軌道長半径が 150 AU より大きい.
太陽系外縁天体の新しい分類手法
ここで提案する太陽系外縁天体の新しい分類手法は,基本的には Gladman et al. (2008) での分類手法を適用するが,最近十年における進展を反映していくつかの変更を施したものである.いずれの分類手法においても,各カテゴリの境界はいくらか恣意的なものであり,これらのいくつかの力学的な特徴は広い範囲にまたがる.Jupiter-coupled object
Jupiter-coupled object は,小天体の木星に対するティスランパラメータ \(T_{\rm J}\) によって定義される.ティスランパラメータは\[
T_{\rm J}=\frac{a_{\rm J}}{a}+2\sqrt{\frac{a}{a_{\rm J}}\left(1-e^{2}\right)}\cos i
\]
で表され,\(a_{\rm J}\) は木星の軌道長半径,\(a\),\(e\),\(i\) は小天体の軌道長半径,軌道離心率,軌道傾斜角である.
ここでは,\(T_{\rm}<3.05\) で近日点距離が q < 7.35 AU のものを Jupiter-coupled objects と分類すうr.ただし DES ではこのような彗星に似た軌道を持つ天体は検出しておらず,以降の議論や分類では省略する.
Centaur (ケンタウルス族)
ここでのケンタウルス族の分類は,Gladman による分類との違いがある.Centeur (ケンタウルス族) は,巨大惑星との強い相互作用を経験する天体を指す.ここではケンタウルス族を inner centaur と outer centaur の 2 つの分類に分けることを提案する.
Inner centaur は Gladman et al. (2008) で記述されている従来のケンタウルス族で,軌道長半径が海王星のものより小さい (30 AU 程度未満) 天体を指す.また outer centaur を,近日点距離が海王星の軌道長半径よりも小さいが,軌道長半径は海王星の軌道長半径よりも大きいものとして定義する.
どちらのタイプも巨大惑星が存在する領域で大部分の時間を過ごすが,惑星との相互作用の頻度は両者で異なる.Inner centaur は巨大惑星との強い相互作用をその軌道の大部分において経験するが,outer centaur は近日点周辺を通過する間のみ相互作用が発生する.また outer は inner より軌道周期が長いため,単位時間あたりの相互作用は小さくなる.
この違いは,軌道の不安定性のタイムスケールの違いにつながる.つまり,outer は inner よりも長寿命である.
この分類では,従来のケンタウルス族天体であるキロンなどは inner centaur となり,Drac や Niku と行った高軌道離心率の長周期天体は outer centaur となる.
オールト雲天体
ここでは,軌道長半径が 2000 AU を超えるものをオールト雲の天体と分類する.軌道が非常に大きいため,主に銀河潮汐や近傍を通過する恒星による影響を受ける.現在の DES でのサンプルはこの分類の天体を含んでいない.
Resonant object (共鳴天体)
外部太陽系には,海王星と軌道共鳴に入っている天体が多数存在している.ここでは共鳴について Gladman et al. (2008) と同様に離心率型の共鳴を考慮した.ただし理論的には TNO は傾斜角型の共鳴も経験する.これは高次の効果であるため,傾斜角型の共鳴は将来的な研究での課題とする.Scattering disk object (SDO,散乱円盤天体)
ここでの散乱円盤天体の分類は,Gladman による分類との違いがある.SDO は,現在海王星によって軌道が散乱されている天体であり,結果として軌道長半径において急速で大きな変化を経験するものである.Outer centaur とは異なり,SDO の軌道は巨大惑星領域からは完全に外れており,そのため海王星とはいくらか弱い相互作用のみをする.
Gladman の定義と整合的になるよう,積分時間にわたる初期の軌道長半径との違いが数 AU より大きくなるものと定義した (積分時間は a < 100 AU の天体では 10 Myr,100 AU 以上の場合は 100 Myr).
\[
\frac{\Delta a}{a}=\frac{{\rm max}\left(a\left(t\right)-a_{0}\right)}{a_{0}}
\]
とした時に
\[
\frac{\Delta a}{a}>0.0375
\]
となるものを境界とする.つまり,積分時間内における軌道長半径の最大変化量で区別する.この値は,40 AU における典型的な古典的 TNO に対して軌道の変化量が 1.5 AU となるものである.
Detached object (分離天体)
分離天体は,力学的に海王星の影響から切り離された天体を指す.一般的に,大きな近日点距離を持つ TNO が存在している.ここでは Gladman の定義に従い,軌道離心率が 0.24 より大きい,散乱されておらず共鳴もしていない天体を分離天体とした.これらの天体の大部分は海王星との 1:2 共鳴の位置 (47.7 AU) より遠方にある.
Classical belt objects
古典的なカイパーベルト天体は,散乱されておらず離心率が 0.24 より小さいものを指す.PR
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック