×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:2002.02455
Mordasini et al. (2020)
Planetary evolution with atmospheric photoevaporation I. Analytical derivation and numerical study of the evaporation valley and transition from super-Earths to sub-Neptunes
(大気の光蒸発を伴った惑星進化 I.蒸発の谷の解析的な導出と数値的研究とスーパーアースからサブネプチューンへの遷移)
ここでは,この蒸発の谷のパラメータ空間状での位置を解析的に導出し,それが惑星の特性と恒星の XUV 光度にどう依存するかの理解を目的とした研究を行った.また,惑星形成モデルへの制約を導出した.
まず,水素・ヘリウムが散逸している,中心星に近接した低質量惑星の進化を数値シミュレーションを用いて検証した.惑星のコア質量と軌道間隔を区切ってパラメータ研究を行い,また事後形成の水素・ヘリウム質量や蒸発の強度を変化させ,さらに大気とコアの組成も変化させて調査を行った.次に,蒸発の谷の位置の解析的なモデルを開発した.
その結果,蒸発の谷の底 (惑星の存在個数が最も小さくなる場所) は,それぞれの軌道距離における最も大きな剥ぎ取られたコアの半径によって定量化され,これは惑星形成後に捕獲された水素・ヘリウム質量にはわずかにしか依存しないことを見出した.このことは,初期の水素・ヘリウムの質量が大きい場合は惑星から蒸発するガスが多く存在していることを意味するが,この場合惑星の平均密度は低くなり,惑星からの質量散逸が増加することが原因である.
恒星の XUV 光度を考慮すると,コアの半径は \(L_{\rm XUV}^{0.135}\) でスケールする.同じ弱い依存性は,エネルギー律速散逸の効率係数である ε にも適用される.
数値的及び解析的に見出されているように,惑星コアの半径は軌道周期の関数として,ε が定数の場合 \(P^{-2p_{c}/3}\approx P^{-0.18}\) に依存する.ここで,\(M_{c}\propto R_{c}^{p_{c}}}\) は固体コアの質量半径関係である.コア半径は,10 日周期の地球類似組成の場合 1.7 地球半径で,氷の質量割合に対して線形で増加する.
結果として数値シミュレーションは,惑星に吸収される恒星の XUV 輻射の時間的な積分値が,コアの重力ポテンシャル中のエンベロープの束縛エネルギーよりも大きい場合,エンベロープの完全な蒸発が発生するとする解析的なモデルを非常によく説明する.
形成後に捕獲した水素・ヘリウム大気の量への依存性が弱いことは,蒸発の谷は惑星形成の間のガス降着への強い制約は与えないことを意味する.しかし,初期の水素・ヘリウム質量,恒星の XUV 光度と ε への依存性が弱いことは,蒸発の谷が非常に明確に観測されていることと,理論的な様々なモデルが同様な結果を見出していることの理由になりうる.同時に,XUV 光度は観測的に大きく広がっていることから,それへの依存性によって蒸発の谷がなぜ完全に空白ではないのかを説明可能である.
arXiv:2002.02455
Mordasini et al. (2020)
Planetary evolution with atmospheric photoevaporation I. Analytical derivation and numerical study of the evaporation valley and transition from super-Earths to sub-Neptunes
(大気の光蒸発を伴った惑星進化 I.蒸発の谷の解析的な導出と数値的研究とスーパーアースからサブネプチューンへの遷移)
概要
ケプラーによる系外惑星の観測データでは,小さいスーパーアースと大きいサブネプチューンの間を区分する,惑星の存在個数が欠乏している領域があることが明らかになっている.この特徴は,大気散逸によって水素・ヘリウムを持つ惑星と持たない惑星が別れた,「蒸発の谷」(evaporation valley) として説明される.ここでは,この蒸発の谷のパラメータ空間状での位置を解析的に導出し,それが惑星の特性と恒星の XUV 光度にどう依存するかの理解を目的とした研究を行った.また,惑星形成モデルへの制約を導出した.
まず,水素・ヘリウムが散逸している,中心星に近接した低質量惑星の進化を数値シミュレーションを用いて検証した.惑星のコア質量と軌道間隔を区切ってパラメータ研究を行い,また事後形成の水素・ヘリウム質量や蒸発の強度を変化させ,さらに大気とコアの組成も変化させて調査を行った.次に,蒸発の谷の位置の解析的なモデルを開発した.
その結果,蒸発の谷の底 (惑星の存在個数が最も小さくなる場所) は,それぞれの軌道距離における最も大きな剥ぎ取られたコアの半径によって定量化され,これは惑星形成後に捕獲された水素・ヘリウム質量にはわずかにしか依存しないことを見出した.このことは,初期の水素・ヘリウムの質量が大きい場合は惑星から蒸発するガスが多く存在していることを意味するが,この場合惑星の平均密度は低くなり,惑星からの質量散逸が増加することが原因である.
恒星の XUV 光度を考慮すると,コアの半径は \(L_{\rm XUV}^{0.135}\) でスケールする.同じ弱い依存性は,エネルギー律速散逸の効率係数である ε にも適用される.
数値的及び解析的に見出されているように,惑星コアの半径は軌道周期の関数として,ε が定数の場合 \(P^{-2p_{c}/3}\approx P^{-0.18}\) に依存する.ここで,\(M_{c}\propto R_{c}^{p_{c}}}\) は固体コアの質量半径関係である.コア半径は,10 日周期の地球類似組成の場合 1.7 地球半径で,氷の質量割合に対して線形で増加する.
結果として数値シミュレーションは,惑星に吸収される恒星の XUV 輻射の時間的な積分値が,コアの重力ポテンシャル中のエンベロープの束縛エネルギーよりも大きい場合,エンベロープの完全な蒸発が発生するとする解析的なモデルを非常によく説明する.
形成後に捕獲した水素・ヘリウム大気の量への依存性が弱いことは,蒸発の谷は惑星形成の間のガス降着への強い制約は与えないことを意味する.しかし,初期の水素・ヘリウム質量,恒星の XUV 光度と ε への依存性が弱いことは,蒸発の谷が非常に明確に観測されていることと,理論的な様々なモデルが同様な結果を見出していることの理由になりうる.同時に,XUV 光度は観測的に大きく広がっていることから,それへの依存性によって蒸発の谷がなぜ完全に空白ではないのかを説明可能である.
PR
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック