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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:2002.04075
Noll et al. (2020)
Trans-Neptunian binaries (2018)
(海王星以遠の連星 (2018))

概要

太陽系外縁天体の連星についてのレビュー論文.

直接撮像

太陽系外縁天体の連星の大部分は,ハッブル宇宙望遠鏡を用いた直接撮像で観測されている.2008 年の段階では 43 個の連星系が知られていた (Noll et al. 2008).現在では,86 個と倍の天体が 1 つ以上の伴星を持つことが知られている.

連星はカイパーベルト天体のすべての力学的なグループで発見されている.冷たい古典的なグループ (海王星との共鳴に入っておらず,散乱されておらず,軌道傾斜角が小さい天体のグループ) に連星が多く見られ,また力学的に熱い天体にも多数発見されている.例えば,海王星と平均運動共鳴に入っているもの,海王星に散乱されたもの,などで連星系が発見されている.

光度曲線

小天体の光度曲線では,細長い天体,近接した連星,あるいは二葉状 (bilobed) 天体 (接触連星) を示す特徴が,大部分の小天体の集団内に発見されている.例えば地球近傍小惑星 (Benner et al. 2015),メインベルトの小惑星 (Agarwal et al. 2017),トロヤ群 (Ryan et al. 2017),彗星 (Harmon et al. 2010など),太陽系外縁天体 (Sheppard & Jewitt 2004など) でそのような特徴が検出されている.

太陽系外縁天体の 30% 程度は,bilobed 形状をしているか,あるいは接触連星などの状態にあると推定される.カイパーベルト天体の近接連星は直接解像することはできないが,自転の光度曲線や掩蔽から同定することはできる.一例として,Plutino に属する天体のひとつである 2001 QG298 は,光度曲線が 1.14 mag の振幅を持ち,13.77 時間の二重極大の自転周期を示し,これは必要とされる軸比を持った平衡流体天体とは一致しない特徴である.そのため,この天体は接触連星であるとの説が提唱されている (Sheppard & Jewitt 2004).

連星の頻度

最も興味があるとされるのが,どれくらいの天体が連星をなしているのかということである.しかしこれに答えるためには,観測限界やバイアス,ポピュレーション間で連星頻度に違いが存在する可能性,サイズ依存性が存在する可能性,軌道安定の領域など,多数の知識が必要とされ,難しい問題である.

古典的天体での連星割合

力学的に冷たい古典的カイパーベルト天体では,連星になっている割合は ~20% と推定される.これは,同じ明るさの天体で比較すると,力学的に熱い古典的天体の割合を超える.

共鳴天体の連星

力学的に励起された集団で連星になっているものが発見されており,これらは天体の経験した力学的な摂動の診断に使える可能性がある.

Noll et al. (2012) では,低傾斜角の連星 Plutino が少ないことが顕著な特徴として報告されており,軌道傾斜角が 12° 未満で絶対等級が 5 ≦ H ≦ 8 mag の中では連星頻度は 5% (+6%, -2%) であった.そのデータセット中には,軌道傾斜角が 5.5° 未満の Plutino には連星をなしている天体はいなかった.それに対して 12° 未満の 2:1 共鳴天体では 27 (+16, -9)% が連星となっており,これは冷たい古典的カイパーベルト天体と似ている (29 (+7,-6)%).これは,海王星の低軌道離心率移動の振る舞いにおいて,もし 2:1 共鳴が冷たい古典的天体を掃いたが 3:2 共鳴は掃かなかった場合に予測される傾向と整合的である.

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