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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:2003.06522
Li et al. (2020)
Planet-induced Vortices with Dust Coagulation in Protoplanetary Disks
(原始惑星系円盤におけるダストの凝集を伴った惑星が誘起する渦)

概要

2 次元の大局的高分解能流体力学シミュレーションを行い,粘性の低い円盤の中にある重い惑星によって誘起される渦の進化および観測的な特徴が,ダストの凝縮と破壊によってどう影響を受けるかを調査した.

渦の中ではガスの面密度が大きく圧力勾配が急であるため,ダストの凝集と破壊,および渦中心に向かう移動は全て非常に効率的であり,マイクロメートルから 1 cm の範囲の粒子が形成され,また全体として高いダストガス比 (1 以上) が実現される.さらに,渦の中ではダストのサイズ分布も非常に非一様になり,渦中心での質量で重み付けした平均ダストサイズは ~4.0 mm と,他の渦領域よりも 10 倍近く大きいものになる.

渦の中のガスの運動に対しては,~mm サイズの大きい粒子も 10 µm 程度の小さい粒子のどちらも強い影響を与える.したがってダストの凝集の効果を含めることで,渦の寿命に大きな影響があることを見出し,渦の典型的な寿命はおよそ 1000 周であることが判明した.

初期に存在したガスの渦が破壊された後,渦内のダストはリング状に広がり,いくつかの小さいガスの渦が残る.ダストの濃集度は高く,またダストの最大サイズは ~mm と大きい.
進化の後期には,凝集を考慮した場合でのダスト連続波の合成画像は,1.33 mm バンドではいくつかのホットスポットが埋め込まれたリングとして見えるが,7.0 mm では明確なホットスポットのみが残って見える.

円盤内の渦について

原始惑星系円盤内の渦は,微惑星形成を引き起こす理想的な環境になり得る.観測でも,偏った馬蹄形や三日月状の非対称構造が,ミリ波・サブミリ波で観測されている.これらの構造は,粘性の低い円盤に埋もれた重い惑星によって開けられたギャップの縁におけるロスビー波不安定性や,降着的に非活発な dead zone の縁,連星天体,傾圧不安定性などで形成されうる.

円盤全体が進化する間のダストのサイズ進化は,大局的な 2 次元円盤モデルで最近になって調べ始められたばかりであり,これまでの多数の研究ではダストのサイズ進化は考慮されていない.

ダスト・ガス比が 1 近くになると,ダストからガスへのフィードバックが重要となる.半径方向のダストの移動と収集過程により,渦領域ではダストガス比が時間とともに増加する.これらのプロセスは,ストークス数が大きい場合,あるいはストークス数が小さくダストサイズが大きい時に早くなるが,ダストの収集過程は動径方向移動よりもずっと速い.そのため,ダストのサイズ成長をコントロールする凝縮は,ダストのフィードバックの効率を左右する重要な役割を果たす.

しかしダストの破壊により,表面密度は大きな粒子から小さい粒子へと分布するようになるため,ダストガス比の増加は単一粒子モデルと比較するとそこまで効率的にはならない.ダストのフィードバックの効率,そして大規模な渦の進化は,ダストの凝集・破壊と,動径ドリフトの間の複雑な相互作用の結果として発生することとなる.ここではダストの凝集と破壊を考慮したモデルを構築した.

計算手法

ここでは,2 太陽質量の恒星の周りを公転する 5 木星質量の惑星を仮定した.これは IRS 48 での観測結果を想定したものである.

惑星は円軌道で固定し,軌道長半径は 20 au,円盤の粘性パラメータは 7 × 10-5 とした.ガスの渦を維持するため,円盤全体でこの低い粘性パラメータの値を採用した.

ガスの面密度分布は指数関数的に減少するモデルを採用した.円盤の内側領域は r-0.8 で分布し,80 au から指数関数的なカットオフを持つ分布とした.ガス面密度の規格化は 1.3 g cm-3 で行った.

円盤の分布は 8-320 au とした.また円盤質量は 4.5 × 10-3 太陽質量と軽いため,円盤とダストの自己重力は無視できる.これは Toomre’s Q で言うと,円盤全体で Q ~150 であることに相当する.
円盤は局所等温で,h0 = 0.06,cs/vK = h0 (r/r0)0.25 とする.これは円盤内の温度分布が T = 89.0 (r/r0)-0.5 K であることに相当する.

ガスとダストの間の摩擦によるフィードバックは運動量方程式に含まれている.
ダスト粒子の内部密度は 0.8 g cm-3 とした.この円盤パラメータでは,サイズが 4.0 mm のダストの r0 の位置でのストークス数は 0.16 となる.また初期のガス分布では,20 au にある 2.4 cm のダストでストークス数が 1 になる.

ダストサイズ分布に関して,サイズ分布を扱う計算の場合は,1.0 µm から 100 cm までを 151 分割して計算を行った.また 10 m s-1 を境界として,ダストが接着するか破壊されるかを判断する.

ダストの付着・破壊のための乱流パラメータは α = 10-3 を使用した.これはガスの粘性とは異なる値である.ガス粘性の α を小さくするのは RWI を引き起こすため,乱流の α を大きくするのは凝集による大きすぎるダストを作るのを防ぐためである.なおサイズ分布を入れずシングルサイズで解く場合は,ダストサイズを 4.0 mm か 0.2 mm に固定した.

計算は二次元の計算コード LA-COMPASS を使用した.円盤の動径方向に 4096 メッシュ,方位角方向に 3456 メッシュの解像度の計算を行った.

結果

ダスト凝集あり

惑星ギャップ外縁でロスビー波不安定性によって渦が形成される.円盤の外側から流れてきたダストは渦に集められる.渦に集められるダスト量は少なく,17% 程度,合計で 2.0 地球質量程度である.これは粒子が内側に流れる円盤の外側領域では粒子サイズが小さいためである.

ダストサイズは破壊サイズと radial drift barrier のサイズで決まっている.その後ダストは渦中心へ螺旋状に落下する.渦の中心に向かってダスト面密度とダスト/ガス面密度比は上昇する.

面密度比の進化は 2 段階に分けられる.400 周までの間に 1 µm から最大サイズまで成長する.これは Birnstiel et al. (2012) や Laune et al. (2020) よりファクター 2 大きい.これはおそらくダストの相対速度が,外側円盤での乱流よりも動径方向ドリフトによって決まっているためである.

この段階ではストークス数が小さいため面密度比の上昇は非常に非効率的である.ダストが最大サイズまで成長した後に効率的なダスト収集プロセスが開始する.ダスト収集が続くと渦中心でのダストガス比が 600 周くらいで 1 を超え,その後飽和する.ダストからガスへのフィードバックは渦ストリーミング不安定性を引き起こしうる.

単一粒子モデルとの比較

ダストのサイズ進化を考慮しないモデルでは,4.0 mm と 0.2 mm の 2 つサイズのダストの計算を行った.

4.0 mm のダストの計算では,大規模な渦は 500 周程度で消失した.面密度比の等高線は非常に clumpy な構造となる.
ダストサイズを 0.2 mm にした場合,渦はより長時間生き残る.ガス渦は依然として強く,面密度比の等高線は 1000 周程度までなめらかな形状となる.

4.0 mm モデルでは収集プロセスが非常に効率的で,0.2 mm モデルよりもずっと速い.4.0/0.2 mm 間の違いは単純に 2 モデルでのダストのストークス数が違うためである.

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