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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1512.05154
Wright et al. (2015)
Three planets orbiting Wolf 1061
(ウォルフ1061を公転する3つの惑星)
ウォルフ1061cは、ウォルフ1061のハビタブルゾーン内を公転している。ウォルフ1061dはハビタブルゾーンの外側境界のすぐ外を公転している。恒星の活動によって見せかけの惑星のシグナルが検出されている可能性を考慮したが、bisector span、相互相関の半値全幅、カルシウムの H, K 線のインデックス、ナトリウムの D 線のインデックス、Hα インデックスの全てで、惑星の公転周期に近いものは見られなかった。
観測期間は 10.3年であり、典型的な露光時間は 900秒である。6000 Å でのシグナルノイズ比は 65/pixel である。
距離:4.29 pc
スペクトル型:M3/3.5V (Bonfils et al. 2013, Maldonaldo et al. 2015)
有効温度:3393 K
質量:0.25太陽質量
光度:0.007870太陽光度
Kopparapu et ak (2013, 2014)のハビタブルゾーンの定義より、保守的なハビタブルゾーン (conservative habitable zone)の範囲は 0.092 - 0.18 AU、楽観的なハビタブルゾーン (optimistic habitable zone)の範囲は 0.073 - 0.19 AUである。
最小質量:1.36地球質量
視線速度:1.29 m s-1
軌道離心率:0.0 (解析時に固定)
軌道長半径:0.035509 AU
トランジット確率:14.0%
トランジットした場合の減光:2.6 mmag
最小質量:4.25地球質量
視線速度:2.70 m s-1
軌道離心率:0.19
軌道長半径:0.08427 AU
トランジット確率:5.9%
トランジットした場合の減光:3.3 mmag
最小質量:5.21地球質量
視線速度:2.24 m s-1
軌道離心率:0.32
軌道長半径:0.2039 AU
トランジット確率:2.6%
トランジットした場合の減光:5.2 mmag
一方、ウォルフ1061dは楽観的なハビタブルゾーンのすぐ外側に位置している。
惑星の質量と半径の関係性 (Weiss & Marcy 2014)より、惑星の真の質量が最小質量と等しいと仮定した場合、これらの惑星の半径はそれぞれ 1.44, 1.64, 2.04地球半径と推定される。これらの推定半径から、仮にトランジットした場合のトランジット深さを計算すると、それぞれ 2.6, 3.3, 5.2 mmag となる。この値は、良い観測条件での地上観測で検出可能であり、次にウォルフ1061が観測できる 2016年初頭には、MEarth や MINERVA (Nutzman & Charbonneau 2008, Swift et al. 2015)などで観測を行うことが推奨される。
「最も近いハビタブル惑星か?」ということでニュースにもなった惑星系の発見報告論文です。太陽系からわずか 14光年という、これまでのハビタブル惑星候補の中でも最も近距離に位置するものの一つであることから、ニュースでも大きく取り上げられたようです。
しかしハビタブルゾーンとはいうものの、地球が存在しているような「保守的なハビタブルゾーン」からは内側に外れていて、「楽観的なハビタブルゾーン」の内部であるということから、地球よりは日射量も多く高温になっている可能性がありそうです。
ハビタブルゾーンには色々な決め方がありますが、太陽系で言うと「保守的なハビタブルゾーン」に入っているのは地球のみ、「楽観的なハビタブルゾーン」の場合は金星や火星の軌道まで入る事があります。
arXiv:1512.05154
Wright et al. (2015)
Three planets orbiting Wolf 1061
(ウォルフ1061を公転する3つの惑星)
概要
HARPS の視線速度のアーカイブデータから、ウォルフ1061 (Wolf 1061, GJ 628)の周りに 3つの系外惑星を発見した。それぞれ、最小質量が 1.36地球質量、軌道周期 4.888日のウォルフ1061b、4.25地球質量、18.867日のウォルフ1061cと、おそらく5.21地球質量、17.867日のウォルフ1061dである。いずれも岩石惑星とみなすには十分質量が小さい。ウォルフ1061cは、ウォルフ1061のハビタブルゾーン内を公転している。ウォルフ1061dはハビタブルゾーンの外側境界のすぐ外を公転している。恒星の活動によって見せかけの惑星のシグナルが検出されている可能性を考慮したが、bisector span、相互相関の半値全幅、カルシウムの H, K 線のインデックス、ナトリウムの D 線のインデックス、Hα インデックスの全てで、惑星の公転周期に近いものは見られなかった。
観測
ウォルフ1061を HAPRS で観測した、148 の公開データの解析を行った。このデータは、380 - 680 nmの波長域を、~ 110000 の分解能で観測したものである。観測期間は 10.3年であり、典型的な露光時間は 900秒である。6000 Å でのシグナルノイズ比は 65/pixel である。
系のパラメータ
ウォルフ1061
等級:V = 10.1距離:4.29 pc
スペクトル型:M3/3.5V (Bonfils et al. 2013, Maldonaldo et al. 2015)
有効温度:3393 K
質量:0.25太陽質量
光度:0.007870太陽光度
Kopparapu et ak (2013, 2014)のハビタブルゾーンの定義より、保守的なハビタブルゾーン (conservative habitable zone)の範囲は 0.092 - 0.18 AU、楽観的なハビタブルゾーン (optimistic habitable zone)の範囲は 0.073 - 0.19 AUである。
惑星
ウォルフ1061b
軌道周期:4.8876日最小質量:1.36地球質量
視線速度:1.29 m s-1
軌道離心率:0.0 (解析時に固定)
軌道長半径:0.035509 AU
トランジット確率:14.0%
トランジットした場合の減光:2.6 mmag
ウォルフ1061c
軌道周期:17.867日最小質量:4.25地球質量
視線速度:2.70 m s-1
軌道離心率:0.19
軌道長半径:0.08427 AU
トランジット確率:5.9%
トランジットした場合の減光:3.3 mmag
ウォルフ1061d
軌道周期:67.27日最小質量:5.21地球質量
視線速度:2.24 m s-1
軌道離心率:0.32
軌道長半径:0.2039 AU
トランジット確率:2.6%
トランジットした場合の減光:5.2 mmag
議論
ウォルフ1061cは楽観的なハビタブルゾーンの内部を公転している。また、保守的なハビタブルゾーンの内側境界のすぐ内側を公転している。一方、ウォルフ1061dは楽観的なハビタブルゾーンのすぐ外側に位置している。
惑星の質量と半径の関係性 (Weiss & Marcy 2014)より、惑星の真の質量が最小質量と等しいと仮定した場合、これらの惑星の半径はそれぞれ 1.44, 1.64, 2.04地球半径と推定される。これらの推定半径から、仮にトランジットした場合のトランジット深さを計算すると、それぞれ 2.6, 3.3, 5.2 mmag となる。この値は、良い観測条件での地上観測で検出可能であり、次にウォルフ1061が観測できる 2016年初頭には、MEarth や MINERVA (Nutzman & Charbonneau 2008, Swift et al. 2015)などで観測を行うことが推奨される。
「最も近いハビタブル惑星か?」ということでニュースにもなった惑星系の発見報告論文です。太陽系からわずか 14光年という、これまでのハビタブル惑星候補の中でも最も近距離に位置するものの一つであることから、ニュースでも大きく取り上げられたようです。
しかしハビタブルゾーンとはいうものの、地球が存在しているような「保守的なハビタブルゾーン」からは内側に外れていて、「楽観的なハビタブルゾーン」の内部であるということから、地球よりは日射量も多く高温になっている可能性がありそうです。
ハビタブルゾーンには色々な決め方がありますが、太陽系で言うと「保守的なハビタブルゾーン」に入っているのは地球のみ、「楽観的なハビタブルゾーン」の場合は金星や火星の軌道まで入る事があります。
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