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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1604.07461
Parker et al. (2016)
Discovery of a Makemakean Moon
(マケマケの衛星の発見)
これまでの観測で発見されなかったのは,この衛星が edge-on の軌道 (衛星の軌道面を真横から見ている位置関係) にあり,軌道上の多くの期間でマケマケの光に隠されてしまっていた事が原因だと考えられる.
衛星の軌道を決定するための軌道運動の検出はまだ不十分である.そのため,マケマケ・衛星系の質量を今回の観測だけから決めるのは困難である.暫定的な結果としては,衛星が円軌道だと仮定すると,軌道周期は 12.4 日よりも長く,軌道長半径は 21000 km 程度より大きいと考えられる.
今回のこの衛星の観測から,これまでにマケマケの熱観測から得られていた暗い物質の大部分は,マケマケの表面に存在するのではなく,衛星表面の一様な暗い物質の影響である可能性が示唆される.この "暗い月仮説" は,将来のジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡 (James-Webb Space Telescope, JWST) の観測で検証することが出来るだろう.
これらの観測によると,放射の大部分は非常に明るい表面から起きているが,一部は非常に暗い表面である必要がある.これはマケマケの表面に暗い地形が存在することを示唆する説であるが,マケマケの (自転に伴う) 光度曲線の振幅は非常に小さいという観測事実とは非整合的である (Brown 2013).ただしマケマケが地球に自転軸を向けているような位置関係であれば問題ない.
Lim et al. (2010) では,暗い領域は等価直径 (equivalent diameter) にして 310 - 380 km の大きさで,幾何学的アルベドが 0.02 - 0.12 であれば観測を説明できるとした.仮に衛星の幾何学的アルベドが 0.02 とすると,今回得られた衛星の H 等級から推測した衛星の直径は ~ 250 km となる.この大きさは,過去の観測から示唆される暗い領域の全てを説明するには小さいが,大部分を担っていると考えることは出来る.
もし,他の準惑星が持つ衛星とは異なり,マケマケと衛星の表面の様子が大きく異なるという説が正しい場合,衛星の起源は他の太陽系外縁天体 (Trans-Neptunian Object, TNO) の捕獲である可能性がある.あるいは,過去に起きたマケマケからの大気の散逸の影響が原因であるかもしれない.
準惑星の一つであるマケマケに衛星が発見されたことを報告する論文です.
現在 5 つある準惑星のうち,冥王星は 5 つ,ハウメアは 2 つ,エリスは 1 つの衛星を持っていることが確認されており,マケマケでは初めての発見となりました.これで準惑星の中で衛星が無い (確認されていない) のは,メインベルトに存在するケレスのみとなりました.
この衛星の仮の名称は S/2015 (136472) 1 です.衛星が発見された場合はこのように,S/ の後に,初めて発見の元になった観測が行われた年,中心天体を表す文字か数字,通し番号が振られます.
この場合は,発見の元になった観測が 2015 年に行われていること,準惑星マケマケの小惑星番号が 136472 であること,発見が 1 個中の 1 個であることから,このような仮符号が与えられています.また,正式なものではありませんが,一部では MK2 というニックネームでも呼ばれているようです.
軌道長半径や軌道周期,大きさなどは現段階では詳細には判明していません.軌道長半径が 21000 km 程度以上,軌道周期は 12.4 日以上というのは,軌道が円軌道であると仮定したうえでの暫定的な結果で,今後の観測で正確な値が明らかになることが期待されています.また,衛星の大きさは,観測で得られた光度に,幾何学的アルベドの大きさを仮定して推定しており,幾何学的アルベドが 0.02 の場合は直径が ~ 250 km と推定されています.幾何学的アルベドがもっと大きい値だった場合は,直径は小さいものになります.
arXiv:1604.07461
Parker et al. (2016)
Discovery of a Makemakean Moon
(マケマケの衛星の発見)
概要
準惑星マケマケ (Makemake) に衛星を発見した.この衛星の仮符号は S/2015 (136472) 1 であり,ハッブル宇宙望遠鏡の Wide Field Camera 3 (WFC3) で 2015 年 4 月 27 日に取得したデータの中に,マケマケよりも 7.80 ± 0.04 等暗い光源として観測された.これまでの観測で発見されなかったのは,この衛星が edge-on の軌道 (衛星の軌道面を真横から見ている位置関係) にあり,軌道上の多くの期間でマケマケの光に隠されてしまっていた事が原因だと考えられる.
衛星の軌道を決定するための軌道運動の検出はまだ不十分である.そのため,マケマケ・衛星系の質量を今回の観測だけから決めるのは困難である.暫定的な結果としては,衛星が円軌道だと仮定すると,軌道周期は 12.4 日よりも長く,軌道長半径は 21000 km 程度より大きいと考えられる.
今回のこの衛星の観測から,これまでにマケマケの熱観測から得られていた暗い物質の大部分は,マケマケの表面に存在するのではなく,衛星表面の一様な暗い物質の影響である可能性が示唆される.この "暗い月仮説" は,将来のジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡 (James-Webb Space Telescope, JWST) の観測で検証することが出来るだろう.
マケマケの過去の観測
過去のマケマケの熱観測
過去のマケマケのスピッツァー宇宙望遠鏡による熱観測 (Stansberry et al. 2008),ハーシェルによる熱観測 (Lim et al. 2010) からは,マケマケのスペクトルエネルギー分布 (Spectral Energy Distribution, SED) には少なくとも 2 つの異なる性質を持つ表面からの寄与があることが分かっている.これらの観測によると,放射の大部分は非常に明るい表面から起きているが,一部は非常に暗い表面である必要がある.これはマケマケの表面に暗い地形が存在することを示唆する説であるが,マケマケの (自転に伴う) 光度曲線の振幅は非常に小さいという観測事実とは非整合的である (Brown 2013).ただしマケマケが地球に自転軸を向けているような位置関係であれば問題ない.
"暗い月仮説" について
衛星が発見されたことによって,マケマケの熱放射の問題を衛星の存在で説明できる可能性がある.これは,衛星の表面の全領域,あるいは一部領域が非常に暗い物質で出来ているという仮説 ("dark moon hypothesis") である.Lim et al. (2010) では,暗い領域は等価直径 (equivalent diameter) にして 310 - 380 km の大きさで,幾何学的アルベドが 0.02 - 0.12 であれば観測を説明できるとした.仮に衛星の幾何学的アルベドが 0.02 とすると,今回得られた衛星の H 等級から推測した衛星の直径は ~ 250 km となる.この大きさは,過去の観測から示唆される暗い領域の全てを説明するには小さいが,大部分を担っていると考えることは出来る.
もし,他の準惑星が持つ衛星とは異なり,マケマケと衛星の表面の様子が大きく異なるという説が正しい場合,衛星の起源は他の太陽系外縁天体 (Trans-Neptunian Object, TNO) の捕獲である可能性がある.あるいは,過去に起きたマケマケからの大気の散逸の影響が原因であるかもしれない.
準惑星の一つであるマケマケに衛星が発見されたことを報告する論文です.
現在 5 つある準惑星のうち,冥王星は 5 つ,ハウメアは 2 つ,エリスは 1 つの衛星を持っていることが確認されており,マケマケでは初めての発見となりました.これで準惑星の中で衛星が無い (確認されていない) のは,メインベルトに存在するケレスのみとなりました.
この衛星の仮の名称は S/2015 (136472) 1 です.衛星が発見された場合はこのように,S/ の後に,初めて発見の元になった観測が行われた年,中心天体を表す文字か数字,通し番号が振られます.
この場合は,発見の元になった観測が 2015 年に行われていること,準惑星マケマケの小惑星番号が 136472 であること,発見が 1 個中の 1 個であることから,このような仮符号が与えられています.また,正式なものではありませんが,一部では MK2 というニックネームでも呼ばれているようです.
軌道長半径や軌道周期,大きさなどは現段階では詳細には判明していません.軌道長半径が 21000 km 程度以上,軌道周期は 12.4 日以上というのは,軌道が円軌道であると仮定したうえでの暫定的な結果で,今後の観測で正確な値が明らかになることが期待されています.また,衛星の大きさは,観測で得られた光度に,幾何学的アルベドの大きさを仮定して推定しており,幾何学的アルベドが 0.02 の場合は直径が ~ 250 km と推定されています.幾何学的アルベドがもっと大きい値だった場合は,直径は小さいものになります.
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マケマケの表面の明るさが場所によって大きく異なる場合,マケマケの自転に伴って見え方が変わるため,自転によるマケマケの明るさの振幅も大きくなるはずである.しかし観測では自転によるマケマケの光度変化は非常に小さい.
ただし,表面の明るさが大きく異なるとしても,マケマケの自転軸が地球の方向を向いているような位置関係 (pole-on) であった場合は,自転によってマケマケ表面の見え方は大きく変化しないため,光度変化が小さくても良い.