×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1606.02294
Sheppard et al. (2016)
Beyond the Kuiper Belt Edge: New High Perihelion Trans-Neptunian Objects With Moderate Semi-major Axes and Eccentricities
(カイパーベルトの外縁を越えて:中程度の軌道長半径と軌道離心率を持つ近日点の遠い新しい太陽系外縁天体)
観測の結果,extreme trans-Neptunian objects (ETNOs) の発見に加え,大きな近日点距離を持つ (> 40 AU),ETNO とも内オールトの雲 (inner Oort) とも異なるグループに属する天体を複数発見した.これらが ETNO とも 内オールトの雲とも異なるとした理由は,軌道長半径が中程度 (50 ~ 100 AU) であり,軌道離心率も中程度である (~ 0.3 以下) という特徴があったからである.
新しく発見された 2014 FZ71 と 2015 FJ 345 は,セドナと 2012 VP 113 に次いで大きな近日点距離を持つ天体である.しかしその軌道は高軌道離心率でもなく極端に大きな軌道長半径を持ってもいない.これらの天体は海王星との平均運動共鳴 (mean motion resonance) に近く,また軌道傾斜角は大きい (> 20°).これらの異常な軌道は,2004 XR190 の軌道の原因のシナリオとして考えられているように,海王星との平均運動共鳴と古在共鳴 (Kozai resonance) の組み合わせで実現されると考えられる.
軌道長半径:76.4 AU
軌道離心率:0.268
軌道傾斜角:25.440°
現在の距離:56.8 AU
推定直径:150 km
海王星との関係:4:1 の平均運動共鳴
軌道長半径:62.5 AU
軌道離心率:0.17
軌道傾斜角:35.00°
現在の距離:58.5 AU
推定直径:100 km
海王星との関係:3:1 の平均運動共鳴
軌道長半径:63.2 AU
軌道離心率:0.27
軌道傾斜角:25.70°
現在の距離:66.8 AU
推定直径:250 km
海王星との関係:3:1 の平均運動共鳴
軌道長半径:61.9 AU
軌道離心率:0.33
軌道傾斜角:28.8°
現在の距離:58.8 AU
推定直径:800 km
海王星との関係:3:1 の平均運動共鳴
軌道長半径:72.3 AU
軌道離心率:0.44
軌道傾斜角:30.1°
現在の距離:83.7 AU
推定直径:500 km
海王星との関係:11:3 の平均運動共鳴?
軌道長半径:55 AU
軌道離心率:0.27
軌道傾斜角:24.23°
現在の距離:68.2 AU
推定直径:200 km
海王星との関係:5:2 の平均運動共鳴?
軌道長半径:56.4 AU
軌道離心率:0.24
軌道傾斜角:3.62°
現在の距離:68.1 AU
推定直径:150 km
海王星との関係:5:2 の平均運動共鳴?
また上 6 つは,海王星との平均運動共鳴 + 古在共鳴,下 1 つは古典的カイパーベルト天体の外縁部の天体である.この他にも複数発見したが,詳細は Sheppard & Trujilo (in prep) で紹介することとし,ここでは上記 7 天体に注目する.
しかし 2014 FZ71 はセドナとも 2012 VP113 とも異なり,軌道長半径と軌道離心率は中程度の値となっている.そのため,2014 FZ71 はセドナや 2012 VP113 とは異なる起源を持つ事が示唆される.
2014 FZ71 は海王星との 4:1 平均運動共鳴に近く,海王星の影響を受けたと考えられる.興味深いことに,この天体の大きな近日点距離は,現在では海王星の影響を強く受けてはいないことを意味する.また,海王星との平均運動共鳴と古在共鳴の両方の影響を受けていると考えられる.
これが正しい場合,軌道離心率と軌道傾斜角の間に存在する保存量より,2014 FZ71 は軌道離心率が最も大きい時は近日点距離は ~ 38.5 AU になると考えられる.これは,Gomes et al. (2008) が示した,古在共鳴と海王星との平均運動共鳴を起こしている天体にとっても上限値 (40 AU) のわずか内側である.
しかし 2014 FZ71 が 2004 XR190 に近い起源を持つ天体なのか,セドナや 2012 VP113 に近い期限を持つのかは不明瞭である.2014 FZ71 は,海王星との 4:1 平均運動共鳴と古在共鳴の組み合わせで出来たと考えられる 2005 TB190 (Gomes et al. 2008) の,極端な事例であるかもしれない.
arXiv:1606.02294
Sheppard et al. (2016)
Beyond the Kuiper Belt Edge: New High Perihelion Trans-Neptunian Objects With Moderate Semi-major Axes and Eccentricities
(カイパーベルトの外縁を越えて:中程度の軌道長半径と軌道離心率を持つ近日点の遠い新しい太陽系外縁天体)
概要
すばる望遠鏡の 8 m 望遠鏡と CTIO 4 m 望遠鏡を用いて,エッジワース・カイパーベルトの外縁 (~ 50 AU) 以遠で天体の探査を行った.この観測の主な興味は,Trujillo & Sheppard (2014) で初めて存在が示唆された数百 AU での重い惑星が存在するかどうかを含めた,太陽系の遠方・外側領域の探査である.このような領域は,巨大惑星の影響下にはないと考えられる.観測の結果,extreme trans-Neptunian objects (ETNOs) の発見に加え,大きな近日点距離を持つ (> 40 AU),ETNO とも内オールトの雲 (inner Oort) とも異なるグループに属する天体を複数発見した.これらが ETNO とも 内オールトの雲とも異なるとした理由は,軌道長半径が中程度 (50 ~ 100 AU) であり,軌道離心率も中程度である (~ 0.3 以下) という特徴があったからである.
新しく発見された 2014 FZ71 と 2015 FJ 345 は,セドナと 2012 VP 113 に次いで大きな近日点距離を持つ天体である.しかしその軌道は高軌道離心率でもなく極端に大きな軌道長半径を持ってもいない.これらの天体は海王星との平均運動共鳴 (mean motion resonance) に近く,また軌道傾斜角は大きい (> 20°).これらの異常な軌道は,2004 XR190 の軌道の原因のシナリオとして考えられているように,海王星との平均運動共鳴と古在共鳴 (Kozai resonance) の組み合わせで実現されると考えられる.
発見された太陽系外縁天体
2014 FZ71
近日点距離:55.9 AU軌道長半径:76.4 AU
軌道離心率:0.268
軌道傾斜角:25.440°
現在の距離:56.8 AU
推定直径:150 km
海王星との関係:4:1 の平均運動共鳴
2015 FJ345
近日点距離:51.8 AU軌道長半径:62.5 AU
軌道離心率:0.17
軌道傾斜角:35.00°
現在の距離:58.5 AU
推定直径:100 km
海王星との関係:3:1 の平均運動共鳴
2013 FQ28
近日点距離:45.8 AU軌道長半径:63.2 AU
軌道離心率:0.27
軌道傾斜角:25.70°
現在の距離:66.8 AU
推定直径:250 km
海王星との関係:3:1 の平均運動共鳴
2015 KH162
近日点距離:41.4 AU軌道長半径:61.9 AU
軌道離心率:0.33
軌道傾斜角:28.8°
現在の距離:58.8 AU
推定直径:800 km
海王星との関係:3:1 の平均運動共鳴
2014 FC69
近日点距離:40.3 AU軌道長半径:72.3 AU
軌道離心率:0.44
軌道傾斜角:30.1°
現在の距離:83.7 AU
推定直径:500 km
海王星との関係:11:3 の平均運動共鳴?
2015 GP50
近日点距離:40.2 AU軌道長半径:55 AU
軌道離心率:0.27
軌道傾斜角:24.23°
現在の距離:68.2 AU
推定直径:200 km
海王星との関係:5:2 の平均運動共鳴?
2012 FH84
近日点距離:42.7 AU軌道長半径:56.4 AU
軌道離心率:0.24
軌道傾斜角:3.62°
現在の距離:68.1 AU
推定直径:150 km
海王星との関係:5:2 の平均運動共鳴?
補足
天体の直径は,アルベド 0.10 を仮定した場合の大きさである.また上 6 つは,海王星との平均運動共鳴 + 古在共鳴,下 1 つは古典的カイパーベルト天体の外縁部の天体である.この他にも複数発見したが,詳細は Sheppard & Trujilo (in prep) で紹介することとし,ここでは上記 7 天体に注目する.
2014 FZ71 の大きな近日点について
太陽系内の天体で,最も近日点距離が大きいのは 2012 VP 113,2 番目がセドナである.今回発見された 2014 FZ71 が 3 番目,2015 FJ345 が 4 番目であり,5 番目は 2004 XR190 となっている.しかし 2014 FZ71 はセドナとも 2012 VP113 とも異なり,軌道長半径と軌道離心率は中程度の値となっている.そのため,2014 FZ71 はセドナや 2012 VP113 とは異なる起源を持つ事が示唆される.
2014 FZ71 は海王星との 4:1 平均運動共鳴に近く,海王星の影響を受けたと考えられる.興味深いことに,この天体の大きな近日点距離は,現在では海王星の影響を強く受けてはいないことを意味する.また,海王星との平均運動共鳴と古在共鳴の両方の影響を受けていると考えられる.
これが正しい場合,軌道離心率と軌道傾斜角の間に存在する保存量より,2014 FZ71 は軌道離心率が最も大きい時は近日点距離は ~ 38.5 AU になると考えられる.これは,Gomes et al. (2008) が示した,古在共鳴と海王星との平均運動共鳴を起こしている天体にとっても上限値 (40 AU) のわずか内側である.
しかし 2014 FZ71 が 2004 XR190 に近い起源を持つ天体なのか,セドナや 2012 VP113 に近い期限を持つのかは不明瞭である.2014 FZ71 は,海王星との 4:1 平均運動共鳴と古在共鳴の組み合わせで出来たと考えられる 2005 TB190 (Gomes et al. 2008) の,極端な事例であるかもしれない.
PR
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック