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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1608.00056
Stevenson et al. (2016)
Spitzer Phase Curve Constraints for WASP-43b at 3.6 and 4.5 microns
(3.6 と 4.5 µm での WASP-43b のスピッツァー位相曲線の制限)
潮汐固定されている系外惑星においては,理論モデルでは熱再分配効率と惑星の表面温度は相関があると予測されている.しかし,WASP-43b での最近のハッブル宇宙望遠鏡による分光光度曲線は,モデルの予測とは非整合的であるとされている.
ここでは,スピッツァー宇宙望遠鏡による,WASP-43b の 3.6 µm, 4.5 µm での 3 回にわたる光度曲線を得たので,その結果を報告する.
3.6 µm での 1 回目の光度曲線では,大気組成の復元のための解析において非物理的な条件を要求する,正しいかどうか疑わしい夜側からの放射を検出した.他の 2 回の観測では,ハッブル宇宙望遠鏡での観測結果と整合的な,大きな昼夜間の温度差があるという結果が得られた.
理論予測との差異を埋めるためには,WASP-43b は夜側に熱放射を遮蔽するための,高高度の雲・ヘイズ層を持っている必要がある.雲・ヘイズは,夜側の高高度で拡散する前に,惑星大気中の低温でほぼ逆行の中緯度にある流れによって形成され得る.中緯度の流れは,周期が 1 日程度未満の高速自転の惑星のみで実現しうる.そのため,スピッツァーの観測データ中に現れている,昼夜間の温度差と惑星の自転周期との間にあるように思われる傾向を説明できる可能性がある.
独立した複数回の惑星からの放射の観測から,惑星の昼側半球の水の存在度は,2.5 × 10-5 - 1.1 × 10-4 である (1 σ の確度).
また,化学平衡と太陽組成のスケーリングから,大気の金属量は太陽の金属量の 0.4 - 1.7 倍の範囲とするものと整合的であった.同じ過程で全球の CO + CO2 の存在度も求め,その結果から得られる金属量も,太陽の 0.3 - 1.7 倍と,整合的な結果であった.
この観測は,トランジット惑星において,複数の分子種をトレーサーとして用いて詳細な化学組成と金属量に制約を与えた初めての例である.
しかし惑星大気中の雲やヘイズの影響についてはよくわかっていない.
雲・ヘイズが昼側にあれば,測定されている熱の再分配を変えうる (Pont et al. 2013).1 次的には,雲・ヘイズの存在は,赤外線領域での光球面を,輻射のタイムスケールが短い低密度領域にまで押し上げる効果がある.この効果は,測定される昼夜間の温度差を大きくし,位相曲線の位相のずれを小さくする効果がある.しかし,雲の不均等性 (あるいは非一様性) はこれらの効果を減らす (Parmentier et al. 2016).
夜側の雲についても同様で,光球面を押し上げ,昼夜間温度差を大きく見せる効果がある (Katarina et al. 2015).
また,2.09 µm での熱放射が検出されている.後に,H, Ks バンド (Wang et al. 2013),K バンド (Chen et al. 2014) も検出されている.
これらの結果はお互いにおおむね整合的だが,Stevenson et al. (2014) でのハッブル宇宙望遠鏡の Wide Field Camera 3 を用いた観測による食の深さと,モデルとのベストフィットの大気とは非整合的な結果を示していた.
arXiv:1608.00056
Stevenson et al. (2016)
Spitzer Phase Curve Constraints for WASP-43b at 3.6 and 4.5 microns
(3.6 と 4.5 µm での WASP-43b のスピッツァー位相曲線の制限)
概要
これまでの系外惑星大気の熱再分配効率 (heat redistribution efficiency, 強い輻射を受けている昼側の面から,恒久的に暗い夜側の面へエネルギーを運ぶ能力) の測定では,惑星によって大きなばらつきがあるということが示されている.潮汐固定されている系外惑星においては,理論モデルでは熱再分配効率と惑星の表面温度は相関があると予測されている.しかし,WASP-43b での最近のハッブル宇宙望遠鏡による分光光度曲線は,モデルの予測とは非整合的であるとされている.
ここでは,スピッツァー宇宙望遠鏡による,WASP-43b の 3.6 µm, 4.5 µm での 3 回にわたる光度曲線を得たので,その結果を報告する.
3.6 µm での 1 回目の光度曲線では,大気組成の復元のための解析において非物理的な条件を要求する,正しいかどうか疑わしい夜側からの放射を検出した.他の 2 回の観測では,ハッブル宇宙望遠鏡での観測結果と整合的な,大きな昼夜間の温度差があるという結果が得られた.
理論予測との差異を埋めるためには,WASP-43b は夜側に熱放射を遮蔽するための,高高度の雲・ヘイズ層を持っている必要がある.雲・ヘイズは,夜側の高高度で拡散する前に,惑星大気中の低温でほぼ逆行の中緯度にある流れによって形成され得る.中緯度の流れは,周期が 1 日程度未満の高速自転の惑星のみで実現しうる.そのため,スピッツァーの観測データ中に現れている,昼夜間の温度差と惑星の自転周期との間にあるように思われる傾向を説明できる可能性がある.
独立した複数回の惑星からの放射の観測から,惑星の昼側半球の水の存在度は,2.5 × 10-5 - 1.1 × 10-4 である (1 σ の確度).
また,化学平衡と太陽組成のスケーリングから,大気の金属量は太陽の金属量の 0.4 - 1.7 倍の範囲とするものと整合的であった.同じ過程で全球の CO + CO2 の存在度も求め,その結果から得られる金属量も,太陽の 0.3 - 1.7 倍と,整合的な結果であった.
この観測は,トランジット惑星において,複数の分子種をトレーサーとして用いて詳細な化学組成と金属量に制約を与えた初めての例である.
研究背景
系外惑星の雲・ヘイズの影響
系外惑星の位相曲線は,惑星の経度方向の大気組成,大気の熱的構造,エネルギー輸送などの大気に関する様々な情報を与える.熱赤外線領域では,位相変動は惑星の昼側と夜側の温度差の情報を,位相のずれは惑星で最も高温になっている領域の経度についての情報を与える.しかし惑星大気中の雲やヘイズの影響についてはよくわかっていない.
雲・ヘイズが昼側にあれば,測定されている熱の再分配を変えうる (Pont et al. 2013).1 次的には,雲・ヘイズの存在は,赤外線領域での光球面を,輻射のタイムスケールが短い低密度領域にまで押し上げる効果がある.この効果は,測定される昼夜間の温度差を大きくし,位相曲線の位相のずれを小さくする効果がある.しかし,雲の不均等性 (あるいは非一様性) はこれらの効果を減らす (Parmentier et al. 2016).
夜側の雲についても同様で,光球面を押し上げ,昼夜間温度差を大きく見せる効果がある (Katarina et al. 2015).
過去の観測
WASP-43 はスペクトル型が K7 の恒星であり,惑星が発見されている (Hellier et al. 2011).惑星はホットジュピターであり,Gillon et al. (2012) では複数回のトランジットが観測されており,型のパラメータが細かく決定されており.また,2.09 µm での熱放射が検出されている.後に,H, Ks バンド (Wang et al. 2013),K バンド (Chen et al. 2014) も検出されている.
これらの結果はお互いにおおむね整合的だが,Stevenson et al. (2014) でのハッブル宇宙望遠鏡の Wide Field Camera 3 を用いた観測による食の深さと,モデルとのベストフィットの大気とは非整合的な結果を示していた.
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