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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1705.01836
Lecavelier des Etangs et al. (2017)
Search for rings and satellites around the exoplanet CoRoT-9b using Spitzer photometry
(スピッツァー測光観測を用いた系外惑星 CoRoT-9b まわりの環と衛星の探査)

概要

スピッツァー宇宙望遠鏡の 4.5 µm での測光観測を用いて,長周期のトランジット惑星 CoRoT-9b のまわりの環と衛星の探査を行った.合計 2 回のトランジットを 2010 年と 2011 年に観測してその解析を行った.

解析の結果は検出無しであり,そこから惑星周辺環境における環や衛星の物理的特徴への上限値を与えた.CoRoT-9b の周囲では,3 σ の確度で,2.5 地球半径よりも大きい衛星の存在は排除された.
また 2 回の観測をあわせ,存在しうる環の広い範囲のサイズと傾きに対して,存在を排除した.仮に環がロッシュ限界まで広がっているとした場合,地球から見た場合の環の傾斜角は,環がシリケイトの場合は 13°より小さい必要があり,水氷の密度の物質の場合は 3°より小さい必要があるという事が分かった.

太陽系外の衛星と環の探査

太陽系内の衛星と環

太陽系内の惑星は水星と金星を除く惑星が衛星を持っており,直径が 10 km を超える衛星の個数は 80 個を超える.そのうち最も大きい 6 個の衛星の直径は 3000 - 5300 km の範囲にある.惑星だけではなくいくつかの準惑星,冥王星,エリス,ハウメアも衛星を持つ

また,環は 4 つの巨大惑星,木星,土星,天王星,海王星の周りに存在している.最近では細く濃い環が,土星以遠にある小さいケンタウルス族天体であるカリクローの周囲に発見されている.

系外惑星でも,系外衛星 (exomoon) や系外環の存在が期待される.
惑星の周りに存在する衛星は,惑星への影響が特に大きい.ハビタブルな環境にある衛星の有無に加え,衛星の存在は惑星自体の生命存在可能性にも重要な役割を及ぼすためである.有名なケースは地球の衛星である月で,月は地球の自転軸傾斜角の変動を安定化させ,大規模な気候変動を起こすのを抑える効果を持っている.これは,地球での生命の進化に影響があると考えられる (Lasker et al. 1993).

系外衛星と環の探査

系外衛星や環の検出手法はいくつか提案されている.

例えば,トランジットする惑星周辺に存在する物質を,トランジット測光で検出するというものである.衛星や環によるトランジットは,惑星のトランジット光度曲線に明確な特徴を残す (Satoretti & Schneider 1999など).

衛星による力学的な効果としては,衛星の存在によるトランジット時刻変動 (Simon et al. 2007など),あるいはトランジット継続時間変動 (Kipping 2009など) がある.また,マイクロレンズ法を含む系外衛星の検出手法 (Han & Han 2002など),分光観測 (Simon et al. 2010など) も提案されている,さらに直接撮像 (Agol et al. 2015) なども提案されている.

環の検出に関しては,反射光と分光観測の手法が提案されている (Arnold & Schneider 2004など).


系外衛星と環の検出についてはいくつかの試みがあるが,これまでに系外衛星も環も明確に検出されていない.
ケプラーデータからの探査では,信頼できる検出は無かった (Kipping et al. 2015).
Bennett et al. (2014) ではマイクロレンズイベント MOA-2011-BLG-262Lb の検出を報告している.これは自由浮遊ガス惑星を公転する,地球より軽い程度の質量の衛星である可能性がある.しかし衛星ではないシナリオも排除されていないため未確定である.

21 の惑星 (うち大部分がホットジュピター) のトランジットを,ケプラーの測光観測データから分析した研究でも検出は無かった (Heising et al. 2015).

惑星周囲を取り囲む固体の物質の検出の示唆は,いくつかの系外惑星系で報告がある.がか座ベータ星b (β Pictoris b, Lecavelier des Etangs et al. 1995, 2016),フォーマルハウトb (Kalas et al. 2013) などがその例である.

1SWASP J140747.93-394542.6 では,不確実だが,不可視の惑星 J1407b の周囲に存在する環が,その中にある衛星の存在によって切り取られているのを示唆する観測結果が得られている (Kenworthy & Mamajek 2015).

CoRoT-9b の探査

CoRoT-9b (Deeg et al. 2010) は,衛星や環の探査に適した系外惑星である.この惑星は 0.84 木星質量であり,中心星はスペクトル型 G3 の主系列星である.軌道長半径は 0.402 AU でほぼ円軌道で公転し,公転周期 95.3 日である.トランジットのインパクトパラメータはほぼ 0 であり,トランジット継続時間は 8 時間である.


衛星や環が安定に存在するためには,惑星の重力が恒星からの重力よりも支配的になる領域であるヒル球の十分内側に環や衛星が存在している必要がある.安定な順行軌道は,ヒル球半径の 0.4 倍以内である (Hinse et al. 2010など).

惑星のヒル球のサイズは,近星点の距離に比例する (Lecavelier des Etangs et al. 1995).CoRoT-9b 発見以前のトランジット惑星はホットジュピター型か,HD 80606b のように恒星に非常に近い近星点を持つ軌道であった.例えば HD 209458b のヒル球の半径は 0.4 × 106 km,もしくは 4 惑星半径と小さい.
それに対して CoRoT-9b はいくらか低温な惑星で,近星点は 0.33 AU より小さくはならない (Bonomo et al. 2017).ヒル球半径は 3.5 × 106 km である.この半径は,木星の衛星カリストや土星の衛星タイタンの軌道長半径よりも 2 - 3 倍大きい値である.なお,木星や土星の衛星は,小さいものも含めて全て惑星のヒル球半径の半分以内の範囲に存在している.

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