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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1705.03491
Sinukoff et al. (2017)
K2-66b and K2-106b: Two extremely hot sub-Neptune-size planets with high densities
(K2-66b と K2-106b:2 つの高密度の極めて高温なサブネプチューンサイズ惑星)
K2-66 は,近接した軌道にサブネプチューンサイズ (2.49 地球半径) の惑星 K2-66b を持つ.この惑星の質量は 21.3 地球質量であった.中心星は準巨星枝 (sub-giant branch) に進化している最中であるため惑星は高いレベルの放射を受けており,受けている日射量は中心星が主系列の段階のおおよそ 2 倍である.
K2-66b はおそらく,いわゆる “photoevaporation desert” の中に位置している.これは,惑星サイズと入射フラックスにおける,ほとんど惑星が存在しないパラメータ領域のことである.
惑星の質量と半径からは,せいぜい < 5% の僅かな量のエンベロープを持つことが示唆され,おそらくエンベロープが無い惑星であろうと考えられる.そのためこの惑星は,大量のエンベロープを持たない惑星の中では最も大きいものの一つである.
K2-106 は超短周期の惑星 K2-106b を持ち,軌道周期は 13.7 時間である.この惑星は,これまでに発見されている中で最も高温なサブネプチューンサイズの惑星のうちの一つである.惑星の半径は 1.82 地球半径,質量は 9.0 地球質量であり.岩石組成と整合的である.これは,その他の小型の超短周期惑星のうち質量がよく測定されているものと同様の傾向である.
K2-106 はより大きな長周期の惑星を持つ.この惑星は半径が 2.77 地球半径,軌道周期は 13.3 日である.質量は 99.7%の確度で 24.4 地球質量未満である.これら 2 つの惑星は,極端な輻射の環境での惑星の物理を探る良い対象である.
K2-66b と K2-106b の密度が高いという事実は,このような極端な環境では一定量のガスエンベロープを保持しておくことが困難であるという事を反映している.
これまでに発見されているサブネプチューンのほとんどは,初期のケプラーミッション (2009-2013) で発見されている.ケプラーでは多数の惑星の半径を測定しているが,サブネプチューンを持つ恒星のうちのわずかなものだけが,現在の視線速度法での質量測定のための十分な明るさを持っているため,惑星の質量はあまりよく分かっていない.
その他の惑星の質量はトランジット時刻変動 (transit timing variation, TTV) で測定されている (Holman & Murray 2005など).ただしこの技術はコンパクトで複数の惑星を持つ系のみにしか使えない.
惑星の質量と半径がわかると,その惑星の平均密度が得られる.惑星の密度は,全体の組成と惑星形成の歴史を知るのに重要な情報である.1.6 地球半径程度より小さい惑星は主に岩石主体.それより大きい惑星は低い密度を持っており,水素・ヘリウムの広がったエンベロープか,その他の低密度の揮発性物質を持つと考えられる (Weiss & Marcy 2014など).
最近の研究では,惑星の存在頻度の半径と温度の関数について興味が持たれている.ケプラーミッションでは,10 日未満の短周期の軌道 では,2-4 地球半径の惑星の存在頻度が有意に少ないことが指摘されている (Howard et al. 2012など).また,星震学を用いた中心星の特徴付けを元に,地球の 650 倍よりも大きい日射量を受けている環境では,2.2 - 3.8 地球半径の惑星は完全に欠乏していることも指摘されている(Lundkvist et al. 2016).このサイズと温度の領域にいる惑星は光蒸発でエンベロープを失うため,この惑星の欠乏領域は “photoevaporation desert” (光蒸発砂漠) と呼ばれている (Owen & Wu 2013).
その他の小型惑星のレアなサブクラスとしては,軌道周期が 1 日未満の “ultra-short-period” 惑星 (超短周期惑星) と呼ばれるものがある.これらは太陽型星の周りに ~ 1% 程度の頻度で存在する (Sanchis-Ojeda et al. 2014).
超短周期惑星がどのように形成されて現在の軌道にいるのかは不明だが,幾つかの観測的な示唆はある.超短周期惑星を持つ系は他にも惑星を持っており,惑星形成や惑星移動の過程でその惑星の影響があったかもしれない.
また,Sanchis-Ojeda et al. (2014) によると,~ 1.4 地球半径よりも大きい超短周期惑星は急激にその個数が減少し,2.0 地球半径より大きいものは完全に欠乏している.Lopez (2016) では,2 - 4 地球半径の超短周期惑星の欠乏は,それらが元々水に乏しい水素・ヘリウムエンベロープを持つ惑星として形成され,その後光蒸発でエンベロープを失った結果であると提案している.
K2-66 (EPIC 206153219) はスペクトル型が G1 の準巨星である.K2 ミッションの Campaign 3 で観測された恒星である.この恒星は,photoevaporation desert 内にあるサブネプチューンを持つ.
K2-106 (EPIC 220674823) は G 型星で,K2 ミッションの Campaign 8 で観測された.この恒星は 2 つのトランジットするサブネプチューンを持ち,そのうちの一つ K2-106b は超短周期惑星である.
K2-66b は Vanderburg et al. (2015) により惑星候補として報告され,その後 Crossfield et al. (2016) によって統計的に確認された.K2-106 の 2 つの惑星は Adams et al. (2016) によって報告,確認された.
arXiv:1705.03491
Sinukoff et al. (2017)
K2-66b and K2-106b: Two extremely hot sub-Neptune-size planets with high densities
(K2-66b と K2-106b:2 つの高密度の極めて高温なサブネプチューンサイズ惑星)
概要
2 つの極めて高温なサブネプチューンサイズの惑星の,詳細な質量と密度の測定について報告する.測定には,視線速度観測,ケプラー K2 による測光観測,および補償光学を用いた撮像観測を行った.K2-66 は,近接した軌道にサブネプチューンサイズ (2.49 地球半径) の惑星 K2-66b を持つ.この惑星の質量は 21.3 地球質量であった.中心星は準巨星枝 (sub-giant branch) に進化している最中であるため惑星は高いレベルの放射を受けており,受けている日射量は中心星が主系列の段階のおおよそ 2 倍である.
K2-66b はおそらく,いわゆる “photoevaporation desert” の中に位置している.これは,惑星サイズと入射フラックスにおける,ほとんど惑星が存在しないパラメータ領域のことである.
惑星の質量と半径からは,せいぜい < 5% の僅かな量のエンベロープを持つことが示唆され,おそらくエンベロープが無い惑星であろうと考えられる.そのためこの惑星は,大量のエンベロープを持たない惑星の中では最も大きいものの一つである.
K2-106 は超短周期の惑星 K2-106b を持ち,軌道周期は 13.7 時間である.この惑星は,これまでに発見されている中で最も高温なサブネプチューンサイズの惑星のうちの一つである.惑星の半径は 1.82 地球半径,質量は 9.0 地球質量であり.岩石組成と整合的である.これは,その他の小型の超短周期惑星のうち質量がよく測定されているものと同様の傾向である.
K2-106 はより大きな長周期の惑星を持つ.この惑星は半径が 2.77 地球半径,軌道周期は 13.3 日である.質量は 99.7%の確度で 24.4 地球質量未満である.これら 2 つの惑星は,極端な輻射の環境での惑星の物理を探る良い対象である.
K2-66b と K2-106b の密度が高いという事実は,このような極端な環境では一定量のガスエンベロープを保持しておくことが困難であるという事を反映している.
イントロ
惑星の平均密度と組成
太陽類似の恒星のおよそ 3 分の 1 が,軌道周期 100 日未満の,地球から海王星の間のサイズの惑星 ("sub-Neptunes”) を持っている (Howard et al. 2012など).これまでに発見されているサブネプチューンのほとんどは,初期のケプラーミッション (2009-2013) で発見されている.ケプラーでは多数の惑星の半径を測定しているが,サブネプチューンを持つ恒星のうちのわずかなものだけが,現在の視線速度法での質量測定のための十分な明るさを持っているため,惑星の質量はあまりよく分かっていない.
その他の惑星の質量はトランジット時刻変動 (transit timing variation, TTV) で測定されている (Holman & Murray 2005など).ただしこの技術はコンパクトで複数の惑星を持つ系のみにしか使えない.
惑星の質量と半径がわかると,その惑星の平均密度が得られる.惑星の密度は,全体の組成と惑星形成の歴史を知るのに重要な情報である.1.6 地球半径程度より小さい惑星は主に岩石主体.それより大きい惑星は低い密度を持っており,水素・ヘリウムの広がったエンベロープか,その他の低密度の揮発性物質を持つと考えられる (Weiss & Marcy 2014など).
光蒸発砂漠と超短周期惑星
惑星の全体の組成は温度の依存性を持つと思われるが,まだ完全には分かっていない.最近の研究では,惑星の存在頻度の半径と温度の関数について興味が持たれている.ケプラーミッションでは,10 日未満の短周期の軌道 では,2-4 地球半径の惑星の存在頻度が有意に少ないことが指摘されている (Howard et al. 2012など).また,星震学を用いた中心星の特徴付けを元に,地球の 650 倍よりも大きい日射量を受けている環境では,2.2 - 3.8 地球半径の惑星は完全に欠乏していることも指摘されている(Lundkvist et al. 2016).このサイズと温度の領域にいる惑星は光蒸発でエンベロープを失うため,この惑星の欠乏領域は “photoevaporation desert” (光蒸発砂漠) と呼ばれている (Owen & Wu 2013).
その他の小型惑星のレアなサブクラスとしては,軌道周期が 1 日未満の “ultra-short-period” 惑星 (超短周期惑星) と呼ばれるものがある.これらは太陽型星の周りに ~ 1% 程度の頻度で存在する (Sanchis-Ojeda et al. 2014).
超短周期惑星がどのように形成されて現在の軌道にいるのかは不明だが,幾つかの観測的な示唆はある.超短周期惑星を持つ系は他にも惑星を持っており,惑星形成や惑星移動の過程でその惑星の影響があったかもしれない.
また,Sanchis-Ojeda et al. (2014) によると,~ 1.4 地球半径よりも大きい超短周期惑星は急激にその個数が減少し,2.0 地球半径より大きいものは完全に欠乏している.Lopez (2016) では,2 - 4 地球半径の超短周期惑星の欠乏は,それらが元々水に乏しい水素・ヘリウムエンベロープを持つ惑星として形成され,その後光蒸発でエンベロープを失った結果であると提案している.
K2-66b と K2-106b
今回観測対象としたのは,K2-66 系と K2-106 系の 2 つである.K2-66 (EPIC 206153219) はスペクトル型が G1 の準巨星である.K2 ミッションの Campaign 3 で観測された恒星である.この恒星は,photoevaporation desert 内にあるサブネプチューンを持つ.
K2-106 (EPIC 220674823) は G 型星で,K2 ミッションの Campaign 8 で観測された.この恒星は 2 つのトランジットするサブネプチューンを持ち,そのうちの一つ K2-106b は超短周期惑星である.
K2-66b は Vanderburg et al. (2015) により惑星候補として報告され,その後 Crossfield et al. (2016) によって統計的に確認された.K2-106 の 2 つの惑星は Adams et al. (2016) によって報告,確認された.
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