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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1705.04163
Guenther et al. (2017)
K2-106, a system containing a metal rich planet and a planet of lower density
(K2-106,金属豊富な惑星と低密度の惑星を含む系)
ここでは過去に発見されていた K2-106 まわりの 2 つのトランジット惑星の質量・半径と密度を測定した.内側の惑星は超短周期惑星で軌道周期が 0.57 日であり,外側の惑星は軌道周期が 13.3 日である.
2 つの惑星は似た質量を持っているが,その密度は大きく異なる.K2-106b は 7.69 地球質量,1.52 地球半径であり,平均密度は 12.0 (+4.8, -3.2) g cm-3 である.一方,K2-106c は 6.79 地球質量,2.59 地球半径で,比較的低密度の 2.4 (+1.6, -1.1) g cm-3 である.
この 2 つの惑星は似た質量を持っており,しかし中心星からの距離が異なるため,大気散逸を研究する良い対象である.大気散逸プロセスの理論からは,外側の惑星は水素主体の大気を持つと考えられる.内側の惑星について,質量と半径を組成モデルと比較することにより,質量の少なくとも 50%を占める鉄のコアの存在が示唆される.このような高い金属の割合は驚くべきことである.なぜなら中心星の金属量は太陽組成だからである.
ここでは,これらの普通でない惑星系の複数の形成シナリオについても議論する.
2 つの惑星の半径は,過去の観測ではそれぞれ 1.46 地球半径,2.53 地球半径と推定されている (Adams et al. 2017).この系は,強い輻射に晒されている超短周期惑星と,比較的中心星から距離が遠く,大気散逸率が小さいと期待される外側の惑星の 2 つを持つという,興味深い系である.
相対的な視線速度測定は 3 箇所の装置を用いた.
1 つ目は Carnegie Planet Finder Spectrograph (PFS) で,これはチリの Las Campanas Observatory の 6.5 m Magellan/Clay Telecope のエシェル分光器に搭載されている装置である.この装置では,合計 13 のスペクトルを取得した.
2 つ目は,8 m すばる望遠鏡の High DIpsersion Spectrograph (HDS,高分散分光器) である.この装置では合計 3 つの視線速度観測を行った.
また,スペインの La Palma の Observatorio del Roque de los Muchashos にある 2.56 m Nordic Optical Telescope (NOT) の FIbre-fed Echelle Spectrograph (FIES) で 6 つの視線速度測定.
これらに加えて,2 つの装置で絶対視線速度測定も行った.
La Palma の 3.58 m Telescopio Nazionale Galileo (TNG) の HARPS-N 分光器で 12 の視線速度測定を行い,また La Silla の 3.6 m ESO telescope の HAPRS 分光器で 20 の視線速度測定を行った.
他に,惑星候補としては sdB 星 (B型準矮星) の KIC 05807616 (Charpinet et al. 2011) がある.
Adams et al. (2016) では,軌道周期が 1 日未満の惑星候補をさらに 19 個リストアップしている.そのうちの 1 つ EPIC 203533312 は,軌道周期が 4.22 時間であり,これが惑星と確認された場合は,密度は 8.9 g cm-3 より大きい必要がある.
低質量の超短周期惑星は全て高密度であり,これらは基本的に裸の岩石主体惑星か,あるいはいくらか金属が豊富な組成を持っていることが示唆される.
arXiv:1705.04163
Guenther et al. (2017)
K2-106, a system containing a metal rich planet and a planet of lower density
(K2-106,金属豊富な惑星と低密度の惑星を含む系)
概要
2 - 15 地球質量の範囲にある惑星は非常に多様性がある.そのうちのいくつかは非常に低密度で,その他は非常に高密度である,惑星の質量・半径と平均密度を測定することで,その惑星の構造と組成に制約を付けることが出来る.これらのパラメータは惑星の形成や進化,特に大気散逸プロセスについての重要な情報を与える.ここでは過去に発見されていた K2-106 まわりの 2 つのトランジット惑星の質量・半径と密度を測定した.内側の惑星は超短周期惑星で軌道周期が 0.57 日であり,外側の惑星は軌道周期が 13.3 日である.
2 つの惑星は似た質量を持っているが,その密度は大きく異なる.K2-106b は 7.69 地球質量,1.52 地球半径であり,平均密度は 12.0 (+4.8, -3.2) g cm-3 である.一方,K2-106c は 6.79 地球質量,2.59 地球半径で,比較的低密度の 2.4 (+1.6, -1.1) g cm-3 である.
この 2 つの惑星は似た質量を持っており,しかし中心星からの距離が異なるため,大気散逸を研究する良い対象である.大気散逸プロセスの理論からは,外側の惑星は水素主体の大気を持つと考えられる.内側の惑星について,質量と半径を組成モデルと比較することにより,質量の少なくとも 50%を占める鉄のコアの存在が示唆される.このような高い金属の割合は驚くべきことである.なぜなら中心星の金属量は太陽組成だからである.
ここでは,これらの普通でない惑星系の複数の形成シナリオについても議論する.
背景
K2-106 系について
K2-106 (EPIC 220674823) は,2 つのトランジット惑星を持つことが分かっている (Adams et al. 2017).内側の惑星 K2-106b は軌道周期が 0.571308 日の超短周期惑星 (ulta-short-period planet, 周期 1 日未満の惑星) である.外側の惑星 K2-106c は軌道周期が 13.341245 日である.2 つの惑星の半径は,過去の観測ではそれぞれ 1.46 地球半径,2.53 地球半径と推定されている (Adams et al. 2017).この系は,強い輻射に晒されている超短周期惑星と,比較的中心星から距離が遠く,大気散逸率が小さいと期待される外側の惑星の 2 つを持つという,興味深い系である.
質量の測定
視線速度測定を用いて 2 つの惑星の質量を測定した.相対的な視線速度測定は 3 箇所の装置を用いた.
1 つ目は Carnegie Planet Finder Spectrograph (PFS) で,これはチリの Las Campanas Observatory の 6.5 m Magellan/Clay Telecope のエシェル分光器に搭載されている装置である.この装置では,合計 13 のスペクトルを取得した.
2 つ目は,8 m すばる望遠鏡の High DIpsersion Spectrograph (HDS,高分散分光器) である.この装置では合計 3 つの視線速度観測を行った.
また,スペインの La Palma の Observatorio del Roque de los Muchashos にある 2.56 m Nordic Optical Telescope (NOT) の FIbre-fed Echelle Spectrograph (FIES) で 6 つの視線速度測定.
これらに加えて,2 つの装置で絶対視線速度測定も行った.
La Palma の 3.58 m Telescopio Nazionale Galileo (TNG) の HARPS-N 分光器で 12 の視線速度測定を行い,また La Silla の 3.6 m ESO telescope の HAPRS 分光器で 20 の視線速度測定を行った.
議論
K2-106b は低質量の超短周期惑星である.このようなタイプの惑星には,他に CoRoT-7b (Leger et al. 2009),55 Cnc e (かに座55番星b, Winn et al. 2011),ケプラー10b (Batalha et al. 2011),ケプラー78b (Sanchis-Ojeda et al. 2013),WASP-47e (Dai et al. 2015) がある.他に,惑星候補としては sdB 星 (B型準矮星) の KIC 05807616 (Charpinet et al. 2011) がある.
Adams et al. (2016) では,軌道周期が 1 日未満の惑星候補をさらに 19 個リストアップしている.そのうちの 1 つ EPIC 203533312 は,軌道周期が 4.22 時間であり,これが惑星と確認された場合は,密度は 8.9 g cm-3 より大きい必要がある.
低質量の超短周期惑星は全て高密度であり,これらは基本的に裸の岩石主体惑星か,あるいはいくらか金属が豊富な組成を持っていることが示唆される.
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