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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1705.06090
Santos et al. (2017)
Observational evidence for two distinct giant planet populations
(2 つの異なる巨大惑星の分布の観測的証拠)
データの解析の結果,系外惑星の質量の分布は 4 木星質量の周辺で変化する, 2 つ以上のグループに分かれているように思われる.4 木星質量より大きい場合,その惑星を持つ恒星は金属量が少なく,より質量が重く,また同程度の質量の散在星で観測されているものと統計的に似た [Fe/H] の分布を持つという傾向がある.
その一方で 4 木星質量よりも軽い惑星を持つ場合,中心星は,恒星の金属量とガス惑星の存在頻度によく知られている相関を示す.
この結果について,多数の惑星形成モデルの観点から議論した.特に,巨大惑星に関する 2 つの分離した集団の存在は,惑星形成において 2 つの異なる過程が働いていることを示唆する結果である.
4 木星質量より重い惑星の中心星は,平均的に金属量に乏しい.この傾向は,1.5 太陽質量より重い恒星に対しては統計的に有意であった.また 4 木星質量より重い惑星を持つ恒星は,低質量の惑星を持つ恒星に比べて金属量分布の幅が広い.
また中心星の金属量 [Fe/H] の分布は,同程度の質量を持つ散在星 (field star) と似ている.金属量の分布が,重い惑星を持つ恒星は低い傾向にあるという事実は興味深い.恒星の金属量は巨大惑星の存在頻度と密接に関連していることが知られている.これは,観測的に確かめられており,また惑星形成のコア降着に基づいた理論モデルでも言及されている傾向である.
必ずしも強く出る傾向とは限らないが,金属量がさらに多い恒星は質量がより大きい惑星を形成する可能性がある (Mordasini et al. 2012).コア降着理論の文脈では,少なくとも 3 太陽質量のあたりまでは,惑星の存在頻度は恒星質量の増加関数であることが示唆されている (Kennedy & Kenyon 2008).この結果は観測的な証拠により支持されている (Reffert et al. 2015など).
質量の大きい恒星は,より重い円盤を持つことも知られている (Natta et al. 2000).そのため重いガス惑星を形成する可能性がある.そのため,重い恒星が重い惑星を持つ傾向にあることを示唆するという今回の結果は,恒星の金属量が低かったとしても,重い恒星周りの重い円盤から重い惑星が形成されるという単純な事実で説明可能である.
コア降着理論の文脈では,このことが惑星の 2 つの集団の存在を説明出来る可能性がある.しかしこれが本当だとしても,~ 4 木星質量周辺でレジームの変化が起きる理由が説明できなければならない.
2 つの集団に分かれていることに対する別の説明は,円盤の不安定プロセス (Boss 1997など) がある.円盤不安定で形成された惑星は原理的に大きな質量を持ち,このような惑星は重い円盤では容易に形成される (Rafikov 2005など).さらに,重力不安定は金属量に乏しい円盤ではより効率的に起きることが示唆されている (あるいは,少なくともコア降着過程よりは金属量への依存性が弱い).
このシナリオでは,今回判明した傾向は,2 つの異なる物理過程によって形成された 2 つの巨大惑星のグループが存在することを示唆する.低質量の惑星 (ここでは 4 木星質量未満) はコア降着過程で形成され,これは金属量豊富な環境では発生しやすい.一方でより重い惑星の場合は,形成過程は重力不安定か,円盤不安定性が役割を果たすプロセスによって占められていると考えられる.
これに関連して,褐色矮星を持つ恒星の金属量分布は,太陽近傍の恒星での分布に非常に似ているというものがある (Mata Sanchez et al. 2014など).しかし,太陽型星周りでは,30 - 50 木星質量の褐色矮星の伴星が少ないという,いわゆる “brown-dwarf desert” が存在する.この事は,重い惑星は,”恒星” の分布の低質量側の末端では無いことを示唆している.
さらに最近の研究では,”brown-dwarf desert” の上下では中心星の金属量分布の違いがあることが示唆されている (Maldonado & Villaver 2017).このことは,2 つの異なる形成過程が存在していることの反映であるという説が提案されている.つまり,低質量側の褐色矮星は円盤不安定,高質量側の褐色矮星は “普通の” 恒星のように分子雲の分裂で生まれたというものである (Ma & Ge 2015).
金属量と巨大惑星の存在頻度の相関は主系列星に関してはよく知られているが,巨星に関しては議論がある.主系列星周りと比べてこの傾向が弱いか,存在しないことを示唆する結果もある (Pasquini et al. 2007など).上述のシナリオでは,重い恒星の周りで巨大惑星の 2 つの集団が見られるのは,進化した恒星 (平均的にはより重い) は明確な金属量-巨大惑星存在頻度の相関を示さないことと深い関係がある可能性がある.
arXiv:1705.06090
Santos et al. (2017)
Observational evidence for two distinct giant planet populations
(2 つの異なる巨大惑星の分布の観測的証拠)
概要
系外惑星の統計的性質の解析とそれらの中心星の統計的性質を合わせることで,惑星形成と進化の過程に関する独特の見識が得られる.ここでは,太陽型星まわりの巨大惑星の質量分布の特性について研究した.それらの形成過程を探るため.系外惑星のデータを exoplanet.eu から取得し,またそれらの惑星の中心星のデータを SWEET-Cat データベースから取得した.データの解析の結果,系外惑星の質量の分布は 4 木星質量の周辺で変化する, 2 つ以上のグループに分かれているように思われる.4 木星質量より大きい場合,その惑星を持つ恒星は金属量が少なく,より質量が重く,また同程度の質量の散在星で観測されているものと統計的に似た [Fe/H] の分布を持つという傾向がある.
その一方で 4 木星質量よりも軽い惑星を持つ場合,中心星は,恒星の金属量とガス惑星の存在頻度によく知られている相関を示す.
この結果について,多数の惑星形成モデルの観点から議論した.特に,巨大惑星に関する 2 つの分離した集団の存在は,惑星形成において 2 つの異なる過程が働いていることを示唆する結果である.
解析の結果と議論
惑星質量が ~ 4 木星質量の前後で,惑星の中心星の示す統計的性質が分かれていることが分かった.4 木星質量より重い惑星の中心星は,平均的に金属量に乏しい.この傾向は,1.5 太陽質量より重い恒星に対しては統計的に有意であった.また 4 木星質量より重い惑星を持つ恒星は,低質量の惑星を持つ恒星に比べて金属量分布の幅が広い.
また中心星の金属量 [Fe/H] の分布は,同程度の質量を持つ散在星 (field star) と似ている.金属量の分布が,重い惑星を持つ恒星は低い傾向にあるという事実は興味深い.恒星の金属量は巨大惑星の存在頻度と密接に関連していることが知られている.これは,観測的に確かめられており,また惑星形成のコア降着に基づいた理論モデルでも言及されている傾向である.
必ずしも強く出る傾向とは限らないが,金属量がさらに多い恒星は質量がより大きい惑星を形成する可能性がある (Mordasini et al. 2012).コア降着理論の文脈では,少なくとも 3 太陽質量のあたりまでは,惑星の存在頻度は恒星質量の増加関数であることが示唆されている (Kennedy & Kenyon 2008).この結果は観測的な証拠により支持されている (Reffert et al. 2015など).
質量の大きい恒星は,より重い円盤を持つことも知られている (Natta et al. 2000).そのため重いガス惑星を形成する可能性がある.そのため,重い恒星が重い惑星を持つ傾向にあることを示唆するという今回の結果は,恒星の金属量が低かったとしても,重い恒星周りの重い円盤から重い惑星が形成されるという単純な事実で説明可能である.
コア降着理論の文脈では,このことが惑星の 2 つの集団の存在を説明出来る可能性がある.しかしこれが本当だとしても,~ 4 木星質量周辺でレジームの変化が起きる理由が説明できなければならない.
2 つの集団に分かれていることに対する別の説明は,円盤の不安定プロセス (Boss 1997など) がある.円盤不安定で形成された惑星は原理的に大きな質量を持ち,このような惑星は重い円盤では容易に形成される (Rafikov 2005など).さらに,重力不安定は金属量に乏しい円盤ではより効率的に起きることが示唆されている (あるいは,少なくともコア降着過程よりは金属量への依存性が弱い).
このシナリオでは,今回判明した傾向は,2 つの異なる物理過程によって形成された 2 つの巨大惑星のグループが存在することを示唆する.低質量の惑星 (ここでは 4 木星質量未満) はコア降着過程で形成され,これは金属量豊富な環境では発生しやすい.一方でより重い惑星の場合は,形成過程は重力不安定か,円盤不安定性が役割を果たすプロセスによって占められていると考えられる.
これに関連して,褐色矮星を持つ恒星の金属量分布は,太陽近傍の恒星での分布に非常に似ているというものがある (Mata Sanchez et al. 2014など).しかし,太陽型星周りでは,30 - 50 木星質量の褐色矮星の伴星が少ないという,いわゆる “brown-dwarf desert” が存在する.この事は,重い惑星は,”恒星” の分布の低質量側の末端では無いことを示唆している.
さらに最近の研究では,”brown-dwarf desert” の上下では中心星の金属量分布の違いがあることが示唆されている (Maldonado & Villaver 2017).このことは,2 つの異なる形成過程が存在していることの反映であるという説が提案されている.つまり,低質量側の褐色矮星は円盤不安定,高質量側の褐色矮星は “普通の” 恒星のように分子雲の分裂で生まれたというものである (Ma & Ge 2015).
金属量と巨大惑星の存在頻度の相関は主系列星に関してはよく知られているが,巨星に関しては議論がある.主系列星周りと比べてこの傾向が弱いか,存在しないことを示唆する結果もある (Pasquini et al. 2007など).上述のシナリオでは,重い恒星の周りで巨大惑星の 2 つの集団が見られるのは,進化した恒星 (平均的にはより重い) は明確な金属量-巨大惑星存在頻度の相関を示さないことと深い関係がある可能性がある.
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