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天文・宇宙物理関連メモ vol.524 Lund et al. (2017) および Talens et al. (2017) A 型星をトランジットするホットジュピター KELT-20b/MASCARA-2b の発見
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1707.01518
Lund et al. (2017)
KELT-20b: A giant planet with a period of P~ 3.5 days transiting the V~ 7.6 early A star HD 185603
(KELT-20b:V ~ 7.6 の早期 A 型星 HD 185603 をトランジットする軌道周期 ~ 3.5 日の巨大惑星)
この惑星のトランジットを,まず KELT-North のサーベイデータの中から同定した.さらに,Gaia の視差データ,視線速度,ドップラートモグラフィーと補償光学を用いた撮像観測のアーカイブデータおよびフォローアップ観測のデータから,このトランジットシグナルが惑星由来であることを確定させ,また系を特徴づけた.
中心星の HD 185603 は高速で自転する恒星で,射影した自転速度は 120 km s-1 である.スペクトル型は A2Vで,有効温度は 8730 K,質量と半径はそれぞれ 1.76 太陽質量,1.561 太陽半径であった,
表面重力は log g = 4.292,年齢は 600 Myr 程度未満である.
惑星 KELT-20b は半径が 1.735 木星半径,軌道長半径が 0.0542 AU である,質量の 3 σ での上限は ~ 3.5 木星質量であった.
ドップラートモグラフィーでの測定から,惑星の軌道は,射影された恒星の自転軸と揃っている事が示唆される (3.4 ± 2.1 度).また,恒星の自転軸の傾斜は 24.4 - 155.6 度の間に制約された.このことから,3 次元的な spin-orbit alignment は 1.3 - 69.8 度の範囲と推定される.
惑星は 8 × 109 erg s-1 cm-2 の日射を受けており,ここから推定される平衡温度は ~ 2250 K である.この温度は,惑星のアルベドが 0 で,また完全な熱の再分配が行われているという仮定での数値である.
恒星の有効温度が高いため,惑星は紫外線 (波長 91.2 nm 以下) のフラックスを 9.1 × 104 erg s-1 cm-2 受けており,これによって惑星の大気は蒸発していると考えられる.
KELT-20 は,WASP-33,ケプラー13A,HAT-P-57,KELT-17,KELT-9 に続く,6 個目のトランジット巨大惑星を持つ A 型星である.またトランジット惑星を持つ恒星の中では V バンド等級で 3 番目に明るい恒星である.この系は KELT-9 系よりわずかに軌道周期が長い類似した惑星系である.
半径:1.561 太陽半径
光度:12.6 太陽光度
有効温度:8730 K
金属量:[Fe/H] = -0.29
軌道長半径:0.0542 AU
質量:3.518 木星質量未満
半径:1.735 木星半径
平衡温度:2261 K
arXiv:1707.01500
Talens et al. (2017)
MASCARA-2 b: A hot Jupiter transiting a mV=7.6 A-star
(MASCARA-2b:7.6 等の A 型星をトランジットするホットジュピター)
この惑星は,Multi-site All-Sky CAmeRA (MASCARA) によって発見された 2 つ目の惑星である.このサーベイは,明るい恒星まわりでのトランジット惑星系を発見することを目的とし,2015 年前半から観測を行ってきた.
その結果,トランジットを 3.474135 日毎に,1.4%の深さで起こしているシグナルを検出した,さらに,他の測光観測からトランジットの存在を確定させた.
SONG 望遠鏡を用いて分光観測を行い,主星のパラメータの特徴付けを行った.また,惑星による視線速度の変動の測定も行った.さらに,惑星の軌道傾斜角を測定するため,トランジット分光観測を 2 回行った.
惑星半径は 2.2 (+0.5, -0.3) 木星半径,惑星質量は 99%の上限値で < 15 木星質量と推定される.
早期型星をトランジットするその他のホットジュピターとは対照的に,この惑星の射影された公転軸と恒星の自転軸は揃っているようにみえる.
半径:1.9 太陽半径
有効温度:8981 K
射影された自転速度:114 km s-1
金属量:[Fe/H] = -0.05
質量:15 木星質量未満
平衡温度:2230 K
軌道周期:3.474135 日
軌道長半径:0.067 AU
射影された軌道傾斜角:0.6 ± 4度
それぞれ KELT-20b と MASCARA-2b と異なる名前で呼ばれている惑星ですが,観測プロジェクトが異なるため呼び方が異なるだけで,中心星 HD 185603 は同じ天体であり,全く同じ惑星の別グループによる同時の発見報告になっています.
なお同じ惑星を検出・解析していたことはどちらも事前に知っていたようで,前者の Lund et al. (2017) の論文中には
これによると,この論文の準備中に,MASCARA チームによる同じ恒星の周りの惑星天体についての動きがあることに気がついた.その惑星天体はここで報告しているものと同一だと思われるが,解析やその結果については MASCARA チームとは情報を共有していない,とのことです.また発表を同時に行うことに同意した MASCARA チームへの感謝も記されています.
また後者の Talens et al. (2017) の論文中にも,
arXiv:1707.01518
Lund et al. (2017)
KELT-20b: A giant planet with a period of P~ 3.5 days transiting the V~ 7.6 early A star HD 185603
(KELT-20b:V ~ 7.6 の早期 A 型星 HD 185603 をトランジットする軌道周期 ~ 3.5 日の巨大惑星)
概要
新しい系外惑星 KELT-20b の発見を報告する.この惑星は,V バンド等級 ~ 7.6 の,早期 A 型星を 3.47 日で公転するホットジュピターである.この惑星のトランジットを,まず KELT-North のサーベイデータの中から同定した.さらに,Gaia の視差データ,視線速度,ドップラートモグラフィーと補償光学を用いた撮像観測のアーカイブデータおよびフォローアップ観測のデータから,このトランジットシグナルが惑星由来であることを確定させ,また系を特徴づけた.
中心星の HD 185603 は高速で自転する恒星で,射影した自転速度は 120 km s-1 である.スペクトル型は A2Vで,有効温度は 8730 K,質量と半径はそれぞれ 1.76 太陽質量,1.561 太陽半径であった,
表面重力は log g = 4.292,年齢は 600 Myr 程度未満である.
惑星 KELT-20b は半径が 1.735 木星半径,軌道長半径が 0.0542 AU である,質量の 3 σ での上限は ~ 3.5 木星質量であった.
ドップラートモグラフィーでの測定から,惑星の軌道は,射影された恒星の自転軸と揃っている事が示唆される (3.4 ± 2.1 度).また,恒星の自転軸の傾斜は 24.4 - 155.6 度の間に制約された.このことから,3 次元的な spin-orbit alignment は 1.3 - 69.8 度の範囲と推定される.
惑星は 8 × 109 erg s-1 cm-2 の日射を受けており,ここから推定される平衡温度は ~ 2250 K である.この温度は,惑星のアルベドが 0 で,また完全な熱の再分配が行われているという仮定での数値である.
恒星の有効温度が高いため,惑星は紫外線 (波長 91.2 nm 以下) のフラックスを 9.1 × 104 erg s-1 cm-2 受けており,これによって惑星の大気は蒸発していると考えられる.
KELT-20 は,WASP-33,ケプラー13A,HAT-P-57,KELT-17,KELT-9 に続く,6 個目のトランジット巨大惑星を持つ A 型星である.またトランジット惑星を持つ恒星の中では V バンド等級で 3 番目に明るい恒星である.この系は KELT-9 系よりわずかに軌道周期が長い類似した惑星系である.
パラメータ
KELT-20
質量:1.76 太陽質量半径:1.561 太陽半径
光度:12.6 太陽光度
有効温度:8730 K
金属量:[Fe/H] = -0.29
KELT-20b
軌道周期:3.4741085 日軌道長半径:0.0542 AU
質量:3.518 木星質量未満
半径:1.735 木星半径
平衡温度:2261 K
arXiv:1707.01500
Talens et al. (2017)
MASCARA-2 b: A hot Jupiter transiting a mV=7.6 A-star
(MASCARA-2b:7.6 等の A 型星をトランジットするホットジュピター)
概要
ここでは,新しい惑星 MASCARA-2b の発見を報告する.これは,7.6 等級の A2 型星 HD 185603 をトランジットするホットジュピターである.この惑星は,Multi-site All-Sky CAmeRA (MASCARA) によって発見された 2 つ目の惑星である.このサーベイは,明るい恒星まわりでのトランジット惑星系を発見することを目的とし,2015 年前半から観測を行ってきた.
その結果,トランジットを 3.474135 日毎に,1.4%の深さで起こしているシグナルを検出した,さらに,他の測光観測からトランジットの存在を確定させた.
SONG 望遠鏡を用いて分光観測を行い,主星のパラメータの特徴付けを行った.また,惑星による視線速度の変動の測定も行った.さらに,惑星の軌道傾斜角を測定するため,トランジット分光観測を 2 回行った.
惑星半径は 2.2 (+0.5, -0.3) 木星半径,惑星質量は 99%の上限値で < 15 木星質量と推定される.
早期型星をトランジットするその他のホットジュピターとは対照的に,この惑星の射影された公転軸と恒星の自転軸は揃っているようにみえる.
パラメータ
MASCARA-2
質量:2.0 太陽質量半径:1.9 太陽半径
有効温度:8981 K
射影された自転速度:114 km s-1
金属量:[Fe/H] = -0.05
MASCARA-2b
半径:2.2 (+0.5, -0.3) 木星半径質量:15 木星質量未満
平衡温度:2230 K
軌道周期:3.474135 日
軌道長半径:0.067 AU
射影された軌道傾斜角:0.6 ± 4度
それぞれ KELT-20b と MASCARA-2b と異なる名前で呼ばれている惑星ですが,観測プロジェクトが異なるため呼び方が異なるだけで,中心星 HD 185603 は同じ天体であり,全く同じ惑星の別グループによる同時の発見報告になっています.
なお同じ惑星を検出・解析していたことはどちらも事前に知っていたようで,前者の Lund et al. (2017) の論文中には
Note: During the preparation of this paper, our team became aware of another paper by The Multi-site All-Sky CAmeRA (MASCARA) collaboration (Talens et al. 2017) reporting the discovery of a planetary companion to the host star discussed here, HD 185603 (Talens et al. submitted). While we assume this planetary companion is indeed KELT-20b, no information about the analysis procedure or any results were shared between our groups prior to the submission of both papers. We would like the thank the MASCARA collaboration for their collegiality and willingness to work with the KELT collaboration to coordinate our announcements of these discoveries simultaneously.という注記がされています.
これによると,この論文の準備中に,MASCARA チームによる同じ恒星の周りの惑星天体についての動きがあることに気がついた.その惑星天体はここで報告しているものと同一だと思われるが,解析やその結果については MASCARA チームとは情報を共有していない,とのことです.また発表を同時に行うことに同意した MASCARA チームへの感謝も記されています.
また後者の Talens et al. (2017) の論文中にも,
During the preparation of this paper, our team became aware of another paper reporting the discovery of a planet orbiting HD 185603 (Lund et al. 2017, Submitted). There was no information about any results or analysis shared between the groups prior to the submission of both papers.とあり,この論文の準備中に別のグループも同じ恒星周りの惑星の報告をしようとしていることに気が付いたが,お互いに情報は交換していないとの旨が書かれています.
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