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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1708.01363
Tasker et al. (2017)
The language of exoplanet ranking metrics needs to change
(系外惑星のランク付け方法の用語は変更する必要がある)
地球と似たサイズの惑星は,そこに生命がいるかどうかという興味の対象となる.次の十年では,このような疑問への取り組みが出来る能力を持った望遠鏡が使えるようになる.
しかし,数千もの惑星が発見されていることと,観測機器の高い需要を考えると,観測する対象の優先順位付けが必要となる.この事は,将来的な居住可能性の研究において系外惑星をランク付けする動機にもなってきた.
一般的に用いられる系外惑星のランク付けの基準には 3 種類が挙げられる (後述).これまでのランク付けの全ては,生命の徴候を示すと思われる系外惑星を同定しようとする試みによるものである.
しかし残念なことに,これらの基準は影の側面を持つ.これらの基準の重要性はしばしばメディアによって誤って解釈される.また科学コミュニティの中でさえも,これらの基準は惑星の居住可能性の定量的な測定を表しているものだと誤解される.系外惑星の居住可能性の定量的な測定は,現状では不可能である.我々が観測できる特徴は惑星の居住可能性に直接結びつくものではなく,また我々のハビタブル惑星についての一つの基準点 (すなわち我々が立っているこの惑星である地球) は,我々の依存性因子の理解を制限する.
このターゲット選定の基準の濫用は,科学的な結果を宣伝しようとする目的のもと,意図的に行われることがある.これは実効的に疑似科学であり,その結果は重大である.
系外惑星のランク付けに関する基準の不十分な理解は観測リソースの無駄遣いにつながり,大衆の興味を失わせ,系外惑星研究の社会的地位にダメージを与えることにも繋がる.
例えばエウロパに存在するような地下海は生態系を持つ可能性があるが,エウロパ表面との有機物の一定量の交換がない限り,ロボットによる探査では到達出来ない場所にあるため未発見のままとなる.
同様に,分光観測には遠すぎる惑星も,生命の検出という文脈においては興味の対象とならない.
検出可能な居住可能性に関連するのは,惑星の表面での条件である.しかし系外惑星表面の観測は,最も野心的な将来ミッションにおいてもなお困難なものであり,さらに惑星表面の特徴の観測はその惑星の大気によって阻まれる可能性がある.そのため現状では,観測可能な特性にもとづいて惑星の表面状態を推定することを余儀なくされる.
多くの系外惑星において,観測可能な特性は,恒星からの入射フラックスと,惑星の半径か最小質量である.この情報はまばらであるばかりではなく,その惑星の居住可能性との関係は直線的ではない.
しかし,惑星の '平衡温度' は,表面温度と同じではない.平衡温度と表面温度の関係は,惑星の大気に依存する.
地球の平衡温度は 255 K であり,これは水の凝固点である 273 K よりもずっと低い値である.大気中の温室効果ガスによって地球の表面温度は 33 K 上昇し,全球平均で 288 K となる.
対照的に金星大気は遥かに高密度で,系外惑星でよく行われるように,地球的なアルベドを用いて計算した場合の平衡温度であるおよそ 300 K よりもずっと高い表面温度を持つ.金星の表面温度は,鉛が溶ける温度である 735 K にもなる.
分光学的研究の観点で最も観測可能なターゲットである,低温な M 型星の近くを公転する惑星の場合は,状況はより複雑になる.このような惑星は自転周期と公転周期が同期した状態,つまり潮汐固定された状態になっている可能性があり,その場合は惑星の片側が永久に恒星に面した状態になっている.
平衡温度の計算からは,これらの惑星は夜側の半球において気体が凝縮することに伴う大気の '崩壊' に晒されることが示唆される (※注:大気成分が低温の夜側の半球で凝結して失われてしまう状態).しかしこれは,惑星の大気が熱を昼側から全球へ再分配することで回避できる.
これと似たような考察が,軌道離心率が大きく,季節変化が大きい惑星に適用できる可能性がある.
惑星の平衡温度と表面温度を結びつけるために,惑星の大気モデルを使用することが出来る,これは理論的には厳密なアプローチだが,これらのモデルは時間を必要とし,また惑星の大気組成,圧力,温度構造などの大気パラメータの詳細な情報に依存している.そのため,観測ターゲット選定のツールとしては使用できない.居住可能であるかもしれない系外惑星を同定するのに平衡温度を用いる場合は,地球的な大気を持っている仮定する必要がある.
惑星の平衡温度が表面温度の代用とはならないように,惑星のサイズが地球と似ていることは,その惑星が地球的な組成であることを意味しない.
地球的な大気や地球的な生命が存在するための最小限の条件は,惑星が固体の表面を持つことである.これは,惑星が視線速度法による検出である場合は惑星の最小質量から,トランジット法による検出である場合は惑星の半径から推測する必要がある.もし惑星が木星程度の半径を持っている場合は,この惑星には岩石の表面がないと言っても問題ない.一方で,1 - 4 地球半径の範囲を持つ 'スーパーアース' のクラスが,巨大な岩石惑星なのか,小型のガス惑星なのかは明らかではない.
我々が言える最も確実な事は,1.5 地球半径程度以上の大きさを持ち,質量と半径が測定されている系外惑星は,一般的に海王星的な組成と同程度の平均密度を持つということだけである.バルク密度が分かっているこれらの少数のケースに関しては混乱が小さい.
惑星の組成として可能性があるパターンが複数あり,それぞれ大きく異なる表面の特性を持ちうる.
高密度の鉄を含む岩石に分厚い水素・ヘリウムの大気を持つ場合は,シリケイトが主成分の惑星と同程度の平均密度を持ちうる.同様に,純粋なシリケイトよりも低密度な惑星は,分厚い大気を保持しているか,あるいは全球にに海を持つ惑星である可能性がある.
恒星の組成が異なることによって,系外惑星の岩石組成も大きく変化した地質にする可能性がある.そのため惑星の平衡温度と同様に,惑星の材質も表面状態の良い指標とはならない.惑星の表面環境は,惑星磁場,水の供給と保持,恒星の活動度,惑星への衝突の歴史,自転,年齢,岩石組成,テクトニクスと地球化学的循環を含む,多くの事象の影響を受ける.系外惑星に関して我々が測定できる 2 - 3 種類の観測量はこれらの要素の一部のみと弱く関係しているだけであり,惑星の '居住可能性’ への外挿はほとんど無意味である.
この領域内では,地球の温室効果ガスを考慮した場合,平衡温度が 0 - 100℃の間になる.
HZ の中にある事は,表面に水が存在することや,地球とは異なる環境の表面に水が維持されるかどうかを保証するものではない.しかし,地球の双子惑星が存在するのであれば,それらは HZ 内に発見されるだろう.
大まかに言うと,HITE は惑星の半径と軌道離心率に基いて修正された HZ で重み付けをした指数である.HITE の計算の際は,大気中での化学プロセスは地球的なものが保たれていると仮定している.
惑星半径が 1.5 地球半径より小さく,修正された HZ の中心を公転する惑星が高い HITE を持つ.
ESI は,異なるサイズと平衡温度を持つ地球類似惑星を実効的に比較している指数である.この基準において,ESI が 0.8 - 1.0 となるものがが ‘Earth-like’ と呼ばれる.
観測可能な惑星の特性の縮退が,これらと居住可能性の関連付けを困難にすることは,太陽系内の例で簡単に実証することが出来る.
例えば,地球と金星は半径と平衡温度 (※注:理論的な平衡温度であり,実際に測定されている表面温度ではない) は似ているため,金星の ESI は 0.9 という値を与える.実際の金星の表面温度は既知であるが,ここでは全ての系外惑星と同じく真の表面温度は不明であると仮定して計算している).
しかし金星の表面は,宇宙探査機でさえも 2 時間を超えて生き残ることは不可能なほどの環境になっている.
これらの基準の誤用として最も広く見られるものは,「HZ の位置が生命のある惑星の存在の代用として使える」というものである.そのような推測がされる唯一の理由は,地球は生命を持っており,太陽の HZ の中にあるということである.
この間違った解釈は,我々が既に ‘Earth 2.0’ を発見したと広く信じられてしまう事に繋がり,バイキングミッションによる生命の検出に関する論争をきっかけに惑星科学界が直面した,火星探査プログラムの資金調達における 20 年にわたる戦いと同じ戦いにコミュニティをさらす危険がある.
まず,ターゲット選定のための基準は,その惑星の分光観測データが得られる可能性が無い場合はゼロになるべきである.これは生命の検出可能性に焦点を当てたものである.
使用されている基準の名前を変更するのは簡単ではないが,現在の基準は特に誤解を招くものである.そのため,目標もしくは測定された量のどちらかを反映するものへの改善が考えられる.
例えば,HZ を ’Temperate Zone’ (温暖な領域) と呼ぶことで,恒星の輻射に正しく重点が置かれている名称になる.同様に,HITE に関しては ’Detectable Environment Index’ (検出可能環境指数) とすると,観測目的が明確になる.’Similarity index’ (類似度指数) は認知されている用語だが,より直感的な表現としては ‘Earth Scalability Index’ (地球拡張性指数) とすると,与えられた基準からの偏差による値であることを示す表現になるだろう.
別の方法としては,「生命の存在しない要素」を基準にした数値を割り当てることであり,地球外生命との関連性が低い ’undetectable index’ (検出不可能性指数) を作ることが挙げられる.
最も重要なステップは,ハビタブルゾーンや HITE,ESI などの系外惑星のランク付けの基準を観測対象を選定するためのツールとして議論し,科学的な文献やより広い聴衆向けの資料として,それらの基準の適用範囲を過度に超えないようにすることである.我々が現在持つ知識は,系外惑星が生命を持つかどうかを比較してランク付けするほど十分ではない.「地球が独特の存在であるかどうか」を知る機会を奪う危険に晒されたくない限り,我々は自分達は既になんでも知っているように取り繕うことをやめる必要がある.
系外惑星に関してしばしば使用される「ハビタブルゾーン」や「地球類似度指数」などの用語はミスリーディングなものであり,その濫用に警鐘を鳴らしている論文です.
arXiv:1708.01363
Tasker et al. (2017)
The language of exoplanet ranking metrics needs to change
(系外惑星のランク付け方法の用語は変更する必要がある)
概要
太陽系の外に 3000 個を超える惑星が確認されている,そのうちの 3 分の 1 は,地球の半径の 2 倍より小さい半径を持つ.地球と似たサイズの惑星は,そこに生命がいるかどうかという興味の対象となる.次の十年では,このような疑問への取り組みが出来る能力を持った望遠鏡が使えるようになる.
しかし,数千もの惑星が発見されていることと,観測機器の高い需要を考えると,観測する対象の優先順位付けが必要となる.この事は,将来的な居住可能性の研究において系外惑星をランク付けする動機にもなってきた.
一般的に用いられる系外惑星のランク付けの基準には 3 種類が挙げられる (後述).これまでのランク付けの全ては,生命の徴候を示すと思われる系外惑星を同定しようとする試みによるものである.
しかし残念なことに,これらの基準は影の側面を持つ.これらの基準の重要性はしばしばメディアによって誤って解釈される.また科学コミュニティの中でさえも,これらの基準は惑星の居住可能性の定量的な測定を表しているものだと誤解される.系外惑星の居住可能性の定量的な測定は,現状では不可能である.我々が観測できる特徴は惑星の居住可能性に直接結びつくものではなく,また我々のハビタブル惑星についての一つの基準点 (すなわち我々が立っているこの惑星である地球) は,我々の依存性因子の理解を制限する.
このターゲット選定の基準の濫用は,科学的な結果を宣伝しようとする目的のもと,意図的に行われることがある.これは実効的に疑似科学であり,その結果は重大である.
系外惑星のランク付けに関する基準の不十分な理解は観測リソースの無駄遣いにつながり,大衆の興味を失わせ,系外惑星研究の社会的地位にダメージを与えることにも繋がる.
居住可能性ではなく,検出可能性
‘habitable’ という単語は,一般的にどのような生命の形態をも持ちうる環境であると理解されている.実際のところ,この定義は助けにならない.なぜなら,地球外生命はそれが検出できる場合においてのみ科学的に価値があるからである.そのため,惑星大気の組成に大きな変化を及ぼすような生物学的活動か,惑星表面で反射される放射の波長に大きな変化を及ぼすような生物学的活動のみが観測可能な量である.例えばエウロパに存在するような地下海は生態系を持つ可能性があるが,エウロパ表面との有機物の一定量の交換がない限り,ロボットによる探査では到達出来ない場所にあるため未発見のままとなる.
同様に,分光観測には遠すぎる惑星も,生命の検出という文脈においては興味の対象とならない.
検出可能な居住可能性に関連するのは,惑星の表面での条件である.しかし系外惑星表面の観測は,最も野心的な将来ミッションにおいてもなお困難なものであり,さらに惑星表面の特徴の観測はその惑星の大気によって阻まれる可能性がある.そのため現状では,観測可能な特性にもとづいて惑星の表面状態を推定することを余儀なくされる.
多くの系外惑星において,観測可能な特性は,恒星からの入射フラックスと,惑星の半径か最小質量である.この情報はまばらであるばかりではなく,その惑星の居住可能性との関係は直線的ではない.
我々が決定できること
惑星の平衡温度と表面温度
恒星からの入射フラックスからは,その惑星の位置における '平衡温度’ を計算することが出来る.これは,恒星の光度,恒星と惑星の距離と,惑星の軌道離心率とアルベド (判明している場合) に依存する.しかし,惑星の '平衡温度' は,表面温度と同じではない.平衡温度と表面温度の関係は,惑星の大気に依存する.
地球の平衡温度は 255 K であり,これは水の凝固点である 273 K よりもずっと低い値である.大気中の温室効果ガスによって地球の表面温度は 33 K 上昇し,全球平均で 288 K となる.
対照的に金星大気は遥かに高密度で,系外惑星でよく行われるように,地球的なアルベドを用いて計算した場合の平衡温度であるおよそ 300 K よりもずっと高い表面温度を持つ.金星の表面温度は,鉛が溶ける温度である 735 K にもなる.
分光学的研究の観点で最も観測可能なターゲットである,低温な M 型星の近くを公転する惑星の場合は,状況はより複雑になる.このような惑星は自転周期と公転周期が同期した状態,つまり潮汐固定された状態になっている可能性があり,その場合は惑星の片側が永久に恒星に面した状態になっている.
平衡温度の計算からは,これらの惑星は夜側の半球において気体が凝縮することに伴う大気の '崩壊' に晒されることが示唆される (※注:大気成分が低温の夜側の半球で凝結して失われてしまう状態).しかしこれは,惑星の大気が熱を昼側から全球へ再分配することで回避できる.
これと似たような考察が,軌道離心率が大きく,季節変化が大きい惑星に適用できる可能性がある.
惑星の平衡温度と表面温度を結びつけるために,惑星の大気モデルを使用することが出来る,これは理論的には厳密なアプローチだが,これらのモデルは時間を必要とし,また惑星の大気組成,圧力,温度構造などの大気パラメータの詳細な情報に依存している.そのため,観測ターゲット選定のツールとしては使用できない.居住可能であるかもしれない系外惑星を同定するのに平衡温度を用いる場合は,地球的な大気を持っている仮定する必要がある.
惑星組成の縮退
上記のことは,惑星のサイズの問題にも通じる.惑星の平衡温度が表面温度の代用とはならないように,惑星のサイズが地球と似ていることは,その惑星が地球的な組成であることを意味しない.
地球的な大気や地球的な生命が存在するための最小限の条件は,惑星が固体の表面を持つことである.これは,惑星が視線速度法による検出である場合は惑星の最小質量から,トランジット法による検出である場合は惑星の半径から推測する必要がある.もし惑星が木星程度の半径を持っている場合は,この惑星には岩石の表面がないと言っても問題ない.一方で,1 - 4 地球半径の範囲を持つ 'スーパーアース' のクラスが,巨大な岩石惑星なのか,小型のガス惑星なのかは明らかではない.
我々が言える最も確実な事は,1.5 地球半径程度以上の大きさを持ち,質量と半径が測定されている系外惑星は,一般的に海王星的な組成と同程度の平均密度を持つということだけである.バルク密度が分かっているこれらの少数のケースに関しては混乱が小さい.
惑星の組成として可能性があるパターンが複数あり,それぞれ大きく異なる表面の特性を持ちうる.
高密度の鉄を含む岩石に分厚い水素・ヘリウムの大気を持つ場合は,シリケイトが主成分の惑星と同程度の平均密度を持ちうる.同様に,純粋なシリケイトよりも低密度な惑星は,分厚い大気を保持しているか,あるいは全球にに海を持つ惑星である可能性がある.
恒星の組成が異なることによって,系外惑星の岩石組成も大きく変化した地質にする可能性がある.そのため惑星の平衡温度と同様に,惑星の材質も表面状態の良い指標とはならない.惑星の表面環境は,惑星磁場,水の供給と保持,恒星の活動度,惑星への衝突の歴史,自転,年齢,岩石組成,テクトニクスと地球化学的循環を含む,多くの事象の影響を受ける.系外惑星に関して我々が測定できる 2 - 3 種類の観測量はこれらの要素の一部のみと弱く関係しているだけであり,惑星の '居住可能性’ への外挿はほとんど無意味である.
The best of all possible world
系外惑星のランク付けに一般的に使用される 3 つの指標がある.それぞれ,観測可能な系外惑星の特徴を数値化するために,異なる手法を用いている.星周ハビタブルゾーン
星周ハビタブルゾーン (the circumsteller habitable zone, HZ) は,恒星の周りにおいて,地球と完全に同一な惑星の表面に液体の水が存在し得る領域の事を指す.この領域内では,地球の温室効果ガスを考慮した場合,平衡温度が 0 - 100℃の間になる.
HZ の中にある事は,表面に水が存在することや,地球とは異なる環境の表面に水が維持されるかどうかを保証するものではない.しかし,地球の双子惑星が存在するのであれば,それらは HZ 内に発見されるだろう.
The Habitability Index for Transiting Exoplanets
The Habitability Index for Transiting Exoplanets (HITE,トランジット惑星の居住可能性指数) は,トランジットする系外惑星のランク付けのために最近考案されたものである.大まかに言うと,HITE は惑星の半径と軌道離心率に基いて修正された HZ で重み付けをした指数である.HITE の計算の際は,大気中での化学プロセスは地球的なものが保たれていると仮定している.
惑星半径が 1.5 地球半径より小さく,修正された HZ の中心を公転する惑星が高い HITE を持つ.
The Earth Similarity Index
The Earth Similarity Index (ESI,地球類似度指数) は,観測可能な量から導出された惑星の特性を,地球の値からの偏差に基いてランク付けをするものである.ESI は,異なるサイズと平衡温度を持つ地球類似惑星を実効的に比較している指数である.この基準において,ESI が 0.8 - 1.0 となるものがが ‘Earth-like’ と呼ばれる.
既存の基準の問題点
将来の系外惑星の居住可能性の研究において観測対象を選定するための指標の目標は,地球のような惑星を含む可能性のある,観測可能なパラメータ空間の範囲を定義することである.しかし,観測可能な特性と居住可能性の間の複雑な関係は,指標の値を解釈する時にはしばしば無視される.この事は,「ランク付けが高い場合は生命が存在する可能性が高い」という,間違った仮定に繋がる.観測可能な惑星の特性の縮退が,これらと居住可能性の関連付けを困難にすることは,太陽系内の例で簡単に実証することが出来る.
例えば,地球と金星は半径と平衡温度 (※注:理論的な平衡温度であり,実際に測定されている表面温度ではない) は似ているため,金星の ESI は 0.9 という値を与える.実際の金星の表面温度は既知であるが,ここでは全ての系外惑星と同じく真の表面温度は不明であると仮定して計算している).
しかし金星の表面は,宇宙探査機でさえも 2 時間を超えて生き残ることは不可能なほどの環境になっている.
これらの基準の誤用として最も広く見られるものは,「HZ の位置が生命のある惑星の存在の代用として使える」というものである.そのような推測がされる唯一の理由は,地球は生命を持っており,太陽の HZ の中にあるということである.
この間違った解釈は,我々が既に ‘Earth 2.0’ を発見したと広く信じられてしまう事に繋がり,バイキングミッションによる生命の検出に関する論争をきっかけに惑星科学界が直面した,火星探査プログラムの資金調達における 20 年にわたる戦いと同じ戦いにコミュニティをさらす危険がある.
What’s in a number?
観測対象を選定する必要性 (また,天体のカタログを並び替えるという欲求) を考えると,これらの基準の使用をやめることは現実的ではない.しかし,誤った解釈をなくすためには以下の対策が必要である.まず,ターゲット選定のための基準は,その惑星の分光観測データが得られる可能性が無い場合はゼロになるべきである.これは生命の検出可能性に焦点を当てたものである.
使用されている基準の名前を変更するのは簡単ではないが,現在の基準は特に誤解を招くものである.そのため,目標もしくは測定された量のどちらかを反映するものへの改善が考えられる.
例えば,HZ を ’Temperate Zone’ (温暖な領域) と呼ぶことで,恒星の輻射に正しく重点が置かれている名称になる.同様に,HITE に関しては ’Detectable Environment Index’ (検出可能環境指数) とすると,観測目的が明確になる.’Similarity index’ (類似度指数) は認知されている用語だが,より直感的な表現としては ‘Earth Scalability Index’ (地球拡張性指数) とすると,与えられた基準からの偏差による値であることを示す表現になるだろう.
別の方法としては,「生命の存在しない要素」を基準にした数値を割り当てることであり,地球外生命との関連性が低い ’undetectable index’ (検出不可能性指数) を作ることが挙げられる.
最も重要なステップは,ハビタブルゾーンや HITE,ESI などの系外惑星のランク付けの基準を観測対象を選定するためのツールとして議論し,科学的な文献やより広い聴衆向けの資料として,それらの基準の適用範囲を過度に超えないようにすることである.我々が現在持つ知識は,系外惑星が生命を持つかどうかを比較してランク付けするほど十分ではない.「地球が独特の存在であるかどうか」を知る機会を奪う危険に晒されたくない限り,我々は自分達は既になんでも知っているように取り繕うことをやめる必要がある.
系外惑星に関してしばしば使用される「ハビタブルゾーン」や「地球類似度指数」などの用語はミスリーディングなものであり,その濫用に警鐘を鳴らしている論文です.
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