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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1708.05737
Lendl et al. (2017)
Signs of strong Na and K absorption in the transmission spectrum of WASP-103b
(WASP-103b の透過スペクトル中の強いナトリウムとカリウムの吸収の兆候)
最近の観測では,系外惑星のスペクトルは非常に多様性に富んでいることが明らかになっている.Na,K や水分子の吸収特性が見られたり,幾つかの惑星ではそれらの吸収特性が大気中のエアロゾルによって,部分的にあるいは全てがかき消されたりしている.
エアロゾル (雲とヘイズ) 自身は,粒子の散乱特性によって引き起こされる波長依存性のあるスペクトルのスロープの存在によって,幾つかの惑星の透過スペクトル中に検出されている.
ここでは,極めて強く輻射を受けているホットジュピター WASP-103b の透過スペクトルを,可視光の 550 - 960 nm の波長帯で観測した.これまでに透過光スペクトルが調べられた惑星の中では, WASP-103b は平衡温度が 2500 K と最も温度が高いもののうちの一つである.また,最も重い (1.5 木星質量) もののひとつでもある.
WASP-103b はロッシュ限界の 1.2 倍より短い軌道距離で中心星を公転しており,潮汐的に強く変形を受けていると予測される.
観測には,Gemini/GMOS の分光観測装置を用い,3 回のトランジットを観測した.相対分光測光観測を行い,スペクトルの分割のサイズは 20 - 2 nm の範囲で行った.
観測の結果,この惑星の大気は,アルカリ金属 (ナトリウム,カリウム) のスペクトルのコア部分における大きな吸収特性を示した.しかし,過去に検出が示唆されていた強い散乱スロープの存在は確認できなかった.
そのためこの惑星は,エアロゾルに乏しい,晴れた大気を持っている事が示唆される.スペクトルの解析から,0.01 bar より上層の領域での雲層の上限値を与えた.
今回の観測結果は,雲は低温で表面重力が小さい惑星の透過スペクトル中によく見られる一方で,高温で大きな表面重力を持つ惑星の場合は雲を持たない大気であるか,あるいは透過スペクトルで探査出来る高度よりも低い位置にに雲が存在しているという,過去の系外惑星の雲の存在傾向についての研究と一致する.
arXiv:1708.05737
Lendl et al. (2017)
Signs of strong Na and K absorption in the transmission spectrum of WASP-103b
(WASP-103b の透過スペクトル中の強いナトリウムとカリウムの吸収の兆候)
概要
近接トランジット惑星の大気特性は,トランジット時の大気の透過光を分光観測することで探ることが出来る.最近の観測では,系外惑星のスペクトルは非常に多様性に富んでいることが明らかになっている.Na,K や水分子の吸収特性が見られたり,幾つかの惑星ではそれらの吸収特性が大気中のエアロゾルによって,部分的にあるいは全てがかき消されたりしている.
エアロゾル (雲とヘイズ) 自身は,粒子の散乱特性によって引き起こされる波長依存性のあるスペクトルのスロープの存在によって,幾つかの惑星の透過スペクトル中に検出されている.
ここでは,極めて強く輻射を受けているホットジュピター WASP-103b の透過スペクトルを,可視光の 550 - 960 nm の波長帯で観測した.これまでに透過光スペクトルが調べられた惑星の中では, WASP-103b は平衡温度が 2500 K と最も温度が高いもののうちの一つである.また,最も重い (1.5 木星質量) もののひとつでもある.
WASP-103b はロッシュ限界の 1.2 倍より短い軌道距離で中心星を公転しており,潮汐的に強く変形を受けていると予測される.
観測には,Gemini/GMOS の分光観測装置を用い,3 回のトランジットを観測した.相対分光測光観測を行い,スペクトルの分割のサイズは 20 - 2 nm の範囲で行った.
観測の結果,この惑星の大気は,アルカリ金属 (ナトリウム,カリウム) のスペクトルのコア部分における大きな吸収特性を示した.しかし,過去に検出が示唆されていた強い散乱スロープの存在は確認できなかった.
そのためこの惑星は,エアロゾルに乏しい,晴れた大気を持っている事が示唆される.スペクトルの解析から,0.01 bar より上層の領域での雲層の上限値を与えた.
今回の観測結果は,雲は低温で表面重力が小さい惑星の透過スペクトル中によく見られる一方で,高温で大きな表面重力を持つ惑星の場合は雲を持たない大気であるか,あるいは透過スペクトルで探査出来る高度よりも低い位置にに雲が存在しているという,過去の系外惑星の雲の存在傾向についての研究と一致する.
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