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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1708.07033
Angerhausen et al. (2017)
Simultaneous multicolour optical and near-IR transit photometry of GJ 1214b with SOFIA
(SOFIA による GJ 1214b の可視光と近赤外線多色同時トランジット測光)
この惑星は,岩石組成の地球サイズの惑星と,巨大ガス惑星もしくは巨大氷惑星の遷移領域に位置している.このようなスーパーアース/ミニネプチューンのクラスの惑星は太陽系には存在していないが,系外惑星では最もよく検出されるクラスの一つである.
岩石惑星からガス惑星への遷移を理解することは,特にこれらの惑星の居住可能性について考慮する場合,系外惑星系の探査をする上で重要な一歩となる.
GJ 1214b は,既に多くの波長で異なる手段によって詳細に観測されている.ここでは,SOFIA を用いた空中からの観測によって,Paschen-α 連続波 1.9 µm 赤外線バンドの情報を新たに加えることを目的としている.この波長は,地球大気による吸収,もしくは観測機器のスペクトル範囲の限界により,現在の他の地上観測や宇宙空間からの観測装置では観測できない波長である.
SOFIA に搭載されている FLIPO と FPI+ を用いて,水が存在する可能性がある惑星である GJ 1214b の透過光シグナルを,3 つの可視光と 1 つの赤外線チャンネルでのトランジット中の測光観測から包括的に分析した.これらのチャンネルにおける,同時取得したトランジット光度曲線と,それに対応したトランジット深さを導出した.これを過去の観測および最新の GJ 1214b の合成大気モデルと比較した.
解析したトランジット深さの最終的な精度は,理論的なフォトンノイズ限界の 1.5 - 2.5 倍の間であり,過去のいずれの観測と比べても,理論モデルに制約を与えるほどの十分な精度ではなかった.
今回の観測は,系外惑星の分光測光観測に使用できる機器のすべてを用いた,SOFIA による最初の系外惑星観測である.今回の観測結果を元に,SOFIA の系外惑星科学分野におけるポテンシャルを評価し,また将来の改良についての提言を行う.
中心星の GJ 1214b はスペクトル型 M4.5V であり,地球からの距離は 12.95 pc と比較的近傍の恒星である.惑星は 2.7 地球半径,6.5 地球質量であり,軌道周期 1.5804 日,軌道長半径は 0.0197 AU である (Harpsøe et al. 2013).
この惑星の大気の観測も多数行われている.
宇宙望遠鏡による観測としては,ハッブル宇宙望遠鏡 (Berta et al. 2011など),スピッツァー宇宙望遠鏡 (Desert et al. 2011など),地上からの観測では VLT (Bear et al. 2010, 2011),CFHT (Vroll et al. 2011),GTC (Murgas et al. 2012など),IRSF (Narita et al. 2013),LBT (Nascimbeni et al. 2015) による観測が行われている.
初めての大気観測では,この惑星の大気透過スペクトルは短波長側でフラットな構造を示した (Bean et al. 2010).この結果は,大気は体積にして少なくとも 70%は水蒸気で占められているとするモデルと整合的であった.この結果の異なる解釈としては,GJ 1214b の大気は水素主体であるというものがある.この場合は,高高度の雲やヘイズは短波長での分子吸収特性を長波長側よりも効率的に減少させるが,水に富んだ大気ではすべての波長に渡って平坦なスペクトルを生む.
一方で特徴に欠けたスペクトルを支持する観測結果もあるが,g バンドと K バンドに大きな吸収の特徴を示唆する観測もあり,これは水素分子が豊富な大気を持っている事を示唆する.
ここでは,水主体の大気 (より大きな平均分子量を持ち,大気のスケールハイトは小さい) と,水素主体の大気 (より小さな平均分子量を持ち,大気のスケールハイトは大きい) を区別するため,SOFIA を用いた GJ 1214b のトランジット観測を行った.
SOFIA を用いた系外惑星の観測例としては, cycle 1 観測での HD 189733b の観測がある.この観測では,~ 150 ppm の精度を上げた (Angerhausen et al. 2015).
今回の観測は,openblue 0.3 - 0.6 µm,i’ 0.8 µm,z’ 0.9 µm と,赤外線の 1.9 µm の波長帯で行われた.残念ながら今回の観測では,過去の観測で行われたような,大気モデルへの制限をするほどの精度は得られなかった.
arXiv:1708.07033
Angerhausen et al. (2017)
Simultaneous multicolour optical and near-IR transit photometry of GJ 1214b with SOFIA
(SOFIA による GJ 1214b の可視光と近赤外線多色同時トランジット測光)
概要
GJ 1214b は,最も盛んに研究されているトランジット惑星の一つである.この惑星は,岩石組成の地球サイズの惑星と,巨大ガス惑星もしくは巨大氷惑星の遷移領域に位置している.このようなスーパーアース/ミニネプチューンのクラスの惑星は太陽系には存在していないが,系外惑星では最もよく検出されるクラスの一つである.
岩石惑星からガス惑星への遷移を理解することは,特にこれらの惑星の居住可能性について考慮する場合,系外惑星系の探査をする上で重要な一歩となる.
GJ 1214b は,既に多くの波長で異なる手段によって詳細に観測されている.ここでは,SOFIA を用いた空中からの観測によって,Paschen-α 連続波 1.9 µm 赤外線バンドの情報を新たに加えることを目的としている.この波長は,地球大気による吸収,もしくは観測機器のスペクトル範囲の限界により,現在の他の地上観測や宇宙空間からの観測装置では観測できない波長である.
SOFIA に搭載されている FLIPO と FPI+ を用いて,水が存在する可能性がある惑星である GJ 1214b の透過光シグナルを,3 つの可視光と 1 つの赤外線チャンネルでのトランジット中の測光観測から包括的に分析した.これらのチャンネルにおける,同時取得したトランジット光度曲線と,それに対応したトランジット深さを導出した.これを過去の観測および最新の GJ 1214b の合成大気モデルと比較した.
解析したトランジット深さの最終的な精度は,理論的なフォトンノイズ限界の 1.5 - 2.5 倍の間であり,過去のいずれの観測と比べても,理論モデルに制約を与えるほどの十分な精度ではなかった.
今回の観測は,系外惑星の分光測光観測に使用できる機器のすべてを用いた,SOFIA による最初の系外惑星観測である.今回の観測結果を元に,SOFIA の系外惑星科学分野におけるポテンシャルを評価し,また将来の改良についての提言を行う.
GJ 1214b について
この惑星は,MEarth プログラムの一環として,トランジット法で検出された (Charbonneau et al. 2009).中心星の GJ 1214b はスペクトル型 M4.5V であり,地球からの距離は 12.95 pc と比較的近傍の恒星である.惑星は 2.7 地球半径,6.5 地球質量であり,軌道周期 1.5804 日,軌道長半径は 0.0197 AU である (Harpsøe et al. 2013).
この惑星の大気の観測も多数行われている.
宇宙望遠鏡による観測としては,ハッブル宇宙望遠鏡 (Berta et al. 2011など),スピッツァー宇宙望遠鏡 (Desert et al. 2011など),地上からの観測では VLT (Bear et al. 2010, 2011),CFHT (Vroll et al. 2011),GTC (Murgas et al. 2012など),IRSF (Narita et al. 2013),LBT (Nascimbeni et al. 2015) による観測が行われている.
初めての大気観測では,この惑星の大気透過スペクトルは短波長側でフラットな構造を示した (Bean et al. 2010).この結果は,大気は体積にして少なくとも 70%は水蒸気で占められているとするモデルと整合的であった.この結果の異なる解釈としては,GJ 1214b の大気は水素主体であるというものがある.この場合は,高高度の雲やヘイズは短波長での分子吸収特性を長波長側よりも効率的に減少させるが,水に富んだ大気ではすべての波長に渡って平坦なスペクトルを生む.
一方で特徴に欠けたスペクトルを支持する観測結果もあるが,g バンドと K バンドに大きな吸収の特徴を示唆する観測もあり,これは水素分子が豊富な大気を持っている事を示唆する.
ここでは,水主体の大気 (より大きな平均分子量を持ち,大気のスケールハイトは小さい) と,水素主体の大気 (より小さな平均分子量を持ち,大気のスケールハイトは大きい) を区別するため,SOFIA を用いた GJ 1214b のトランジット観測を行った.
SOFIA を用いた系外惑星大気観測
1.85 µm 付近の水のバンドの測定は,SOFIA のみで可能である.地上観測の場合,H と K バンドの間の波長は地球大気の吸収によってほとんど完全にシャットアウトされてしまうためである.また宇宙望遠鏡には,この波長帯を観測できるものがない.SOFIA を用いた系外惑星の観測例としては, cycle 1 観測での HD 189733b の観測がある.この観測では,~ 150 ppm の精度を上げた (Angerhausen et al. 2015).
今回の観測は,openblue 0.3 - 0.6 µm,i’ 0.8 µm,z’ 0.9 µm と,赤外線の 1.9 µm の波長帯で行われた.残念ながら今回の観測では,過去の観測で行われたような,大気モデルへの制限をするほどの精度は得られなかった.
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