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無題
通りすがり
「こざいきこう」の変換が全て「古材」になってしまっているようです.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1712.06638
Bourrier et al. (2017)
Orbital misalignment of the Neptune-mass exoplanet GJ 436b with the spin of its cool star
(海王星質量系外惑星 GJ 436b の軌道のその低温な恒星の自転とのずれ)

概要

恒星の自転軸と惑星の軌道平面の成す角度は,その惑星系の歴史を追う鍵となる.
低温の恒星に近い軌道を公転する系外惑星は,離心率が小さい円軌道で,恒星の自転軸と惑星の公転軸が揃った軌道を持つことが期待される.これは,低温の恒星の場合は恒星の対流エンベロープと惑星が強い潮汐相互作用を起こし,軌道が円軌道化され,軸も揃う向きに力がはたらくからである.

Spin-orbit angle (恒星の自転軸と惑星の公転軸が成す角度) は,惑星が恒星をトランジットする際に測定できる.しかし,中心星が低温で自転が遅い場合は,トランジットの分光観測を行うことは一般に難しい.

ここでは,M 型矮星まわりの惑星の 3 次元軌道配置の特徴付けの結果について報告する.これは,惑星が恒星表面をトランジットした弦に沿って,恒星の光球のスペクトルをマッピングすることによって導出することが出来る.

その結果,海王星質量の系外惑星 GJ 436b の離心軌道は,恒星の赤道に対してほぼ垂直に傾いた配置でであることを発見した

離心率の大きな軌道と,自転軸と公転軸の不一致は,低温の恒星の周りでは驚くべき事象である.これらは,未発見の外側の天体との力学的相互作用 (Kozai migration) に起因している可能性がある.また,GJ 436b に起きた可能性がある内側移動によって,現在この惑星が持つ巨大な外気圏を維持している大気散逸を引き起こした可能性がある.

低温な恒星の近傍を,離心軌道かつ軸がずれた軌道で公転している系外惑星は,系内における不可視の擾乱天体の存在をほのめかすものであり,系外惑星系にみられる軌道構造の多様性を示す結果でもある.

観測

GJ 436b のトランジットは 2.64 日おきに発生する.ここでは,2007/5/9 (visit 1),2016/3/18 (visit 2),2016/4/11 (visit 3) に発生したトランジットの観測を解析した.これらのうち,visit 1 は HARPS で,visit 2, 3 は HARPS-N での観測である.
いずれのトランジットも,惑星がトランジットしている期間を全てカバーし,さらにトランジット前後の光度も測定した.


これらのトランジット分光観測の結果から,ロシター効果の測定を行った.
3 つの visit での表面視線速度は,2 つの機器で 9 年にわたる間隔を置いて取得されたものにもかかわらず,トランジットのほとんどにわたって整合的なものであった.

また,視線速度成分の大部分は正の値となった.これは,中心星の円盤面のうち,我々から遠ざかる赤方偏移領域が GJ 436b のトランジットによって主に隠されていることを示し,そのため恒星の自転軸と惑星の公転軸が揃っている可能性は否定される.

MCMC フィッティングの結果,中心星の自転速度 (の天球面上への射影した成分) は v sini = 330 (+90, -70) m s-1,天球に射影した spin-orbit angle は 72 (+33, -24)° という値が得られた.

中心星 GJ 436 の自転速度が遅いという結果は,過去の観測からの推定の上限値と整合的である.
また,3 回のトランジット時の解析から,GJ 436 は低活動度の恒星であり,紫外線,可視光,赤外線の波長で安定な放射をしているという結果とも整合的である.

しかし,可視光での小さい周期的な変動と,HARPS と Keck chromospheric indices での周期的な変調が見られ,これらは恒星の表面に活動領域があることを示唆している.14 年にわたる地上からの微分測光観測からは,恒星の自転周期は 44.09 日と推定される,これは,この恒星の年齢は 40 億年よりも大きいということを示唆する.

GJ 436b の軌道進化

GJ 436b は e = 0.16 という謎めいた大きさの離心率を持つ.惑星の内部が異常に弱い潮汐を起こすような構造になっているか,あるいは仮説上の遠方天体 GJ 436c が GJ 436b の軌道を擾乱していない限り,恒星との潮汐相互作用によって 10 億年程度の間に円軌道化されてしまう.

GJ 436b と類似した系として WASP-8b があり,この惑星は軌道離心率が e = 0.3 で,spin-orbit angle はずれている (-143°).WASP-8 系では,特異な軌道構造を説明するために長周期の重い天体との力学的相互作用が提案されている.

同様に,GJ 436b の離心率と傾斜角は擾乱天体による Kozai migration (古在機構による惑星の軌道移動) に起因する可能性がある.以後,系内に存在するかもしれない擾乱天体を GJ 436c とする.この場合の軌道移動の経路を調べる.

惑星系形成後のおよそ 40 億年間は,GJ 436c は GJ 436b の軌道離心率と,c と b の相互軌道傾斜角に強い振動を誘起する.これにより GJ 436b の軌道平面を自然にずらすことが出来る.

次のフェーズでは,GJ 436b の軌道長半径と相互軌道傾斜角が,現在の値にまで急激に減衰する.この間,GJ 436b と c の相互軌道傾斜角は僅かな振動を維持する.これが GJ 436b の 3 次元傾斜角の大きな振動となり,今回観測された値と整合的な範囲になる.

最初のフェーズで高軌道離心率に励起された GJ 436b の軌道は,その後の 10 億年程度の間に,現在の値にまでゆっくりと軌道離心率が減衰され円軌道化される.

もし初期に ~ 0.2 au より遠い位置に GJ 436b が存在していた場合,GJ 436c は質量が ~ 0.04 - 40 木星質量で,軌道周期が ~ 3 - 400 年の惑星か褐色矮星伴星であれば,GJ 436b を Kozai サイクルにすることが出来る.

内側への軌道移動によって,GJ 436b の性質は変化する可能性がある.例えば大気散逸を駆動するなどの変化である.その間の潮汐散逸は弱いため GJ 436b と c の相互軌道傾斜角の変化を除くと,GJ 436c の軌道はほとんど変化しない.

GJ 436b の軌道進化の詳細

GJ 436 系の進化のシミュレーションは,N 体計算に潮汐相互作用の効果を加えて行った.
初期条件として,GJ 436b は現在より大きな軌道長半径を持っていたと仮定する.

シミュレーションの最初のフェーズでは,GJ 436c は古在機構によって GJ 436b の軌道離心率と傾斜角に強い振動を引き起こす.古在機構によるこの振動は,GJ 436b の軌道離心率が極大になっている時,軌道傾斜角と近星点は極小になるという性質を持つ (軌道離心率が極小の時は,軌道傾斜角と近星点は極大になっている).
また,潮汐摩擦によって軌道長半径はゆっくりと減衰する.

古在サイクルでの軌道離心率の極小値は,軌道離心率の極大値に到達するまで時間とともに徐々に増加する.そして,極小値が極大値に到達した段階でサイクルは停止する.その後,潮汐の影響で GJ 436b の軌道長半径および GJ 436c との相互傾斜角は鋭く減衰して現在の値になる.

この最初のフェーズでの古在サイクルが,GJ 436b の大きな軌道傾斜角をもたらし,また 3 次元軌道配置での軌道傾斜角の強い振動を引き起こす.その次のフェーズで GJ 436b の軌道は軸がずれた状態に保たれたままであり,3 次元傾斜角は 40 - 105° の間をゆっくりと振動する.

古在機構による軌道要素への影響は,GJ 436c の質量と軌道長半径に大きく依存する.ここでは全パラメータ空間の探査は行わないが,現在の GJ 436b の値を再現できるパラメータについての調査を行った.

古在機構による軌道移動が速いパラメータ領域 (40 億年未満) は,GJ 436b が早い段階で円軌道化されてしまうことになるため,現在の値を説明できず除外される.反対に,遅いパラメータ領域 (80 億年以上) は,古在サイクルが現在も続いていることになってしまうため,こちらも除外される.

その結果, 現在の GJ 436b の軌道要素を説明するためには,GJ 436c の質量は ~ 0.04 - 40 木星質量,軌道周期は 3 - 400 年周期の範囲である必要があることが分かった.ただし,異なる軌道移動の経路も考えられ,GJ 436b の初期条件の違いによって適したパラメータ領域の幅と位置は変わる.

GJ 436c に期待される質量と周期の関係は,GJ 436c の軌道周期が ~ 8 年以上の場合は質量が単調増加であり,軌道周期 ~ 8 年あたりで質量は最小の ~ 0.04 木星質量となる.それよりも短周期側では,GJ 436c に必要な質量は増大する.

ただし,軌道周期が ~ 4 年未満かつ質量が ~ 0.1 木星質量以上の領域は,視線速度観測から惑星が存在しない領域と被る (この領域に惑星が存在した場合,既に視線速度法で検出されているはずだが,そのような報告は無い).
また長周期側では, 軌道周期が ~ 400 年より長く,質量が ~ 40 木星質量よりも重い場合は,直接撮像から天体が存在しない限界と被る (この領域に褐色矮星が存在した場合,既に直接撮像で検出されているはずだが,そのような報告は無い).

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【2018/01/17 (水) 20:29】 | 天文・宇宙物理
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無題
「こざいきこう」の変換が全て「古材」になってしまっているようです.
2018/01/18(木) 11:31 |   | 通りすがり #5ced718f20[編集]
[管理者用 返信]
Re:無題
>「こざいきこう」の変換が全て「古材」になってしまっているようです.
ご指摘ありがとうございます.修正しました.
2018/01/18(木) 19:17 | HJ

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