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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1508.03350
Kenyon & Bromley (2015)
Collisional Cascade Caclulations for Irregular Satellite Swarms in Fomalhaut b
(フォーマルハウトbでの不規則衛星群の衝突カスケード計算)
10 - 100地球質量の惑星においては、衛星群の初期質量が惑星質量の ~1%を持つ場合は、観測されているフォーマルハウトbの断面積と同程度の断面積を持つことが分かった。
30 - 300地球質量の惑星の場合は、1 - 10 Myrの間は光学的に厚い衛星群を維持できる。
このような系がどの程度の頻度で存在するのかは、β Pictoris moving group (がか座ベータ運動星団)中の恒星をハッブル宇宙望遠鏡や地上から補償光学を用いて観測することによって、制限をかけることが出来る。また、他の近傍の若い恒星のアソシエーションの観測でも同様である。
光学観測での色と、1 μmより長波長での観測では検出できていないことから、フォーマルハウトbは惑星ではなく、ダスト雲からの放射であるという主張が存在する (Marengo et al. 2009, Jansen et al. 2012, Currie et al. 2012, Kalas et al. 2013, Jansen et al. 2015)。
また、可視光での放射の観測からは、この天体の合計の断面積 (cross-sectional area)は、~ 1023 cm2と推定されている(Kalas et al. 2008, Currie et al. 2012, Galicher et al. 2012, Kalas et al. 2013)。
半径が 100 km程度の2天体からの脱出速度で拡大するダスト雲は、50 - 100年のタイムスケールでは分離して観測することが出来ない(Galicher et al. 2013, Kenyon et al. 2014, Lawler et al. 2015)。
より小さく、大きな光学的厚みを持つ粒子は、一般に速く拡散する。従ってこの粒子が一定の質量を持っている場合は、ハッブル宇宙望遠鏡やジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡を用いた次の10年の観測で検出できるだろう。
また拡大していくダスト雲が内部速度分散を持っていれば、差動運動によってダスト雲はリングを形成するだろう(Kenyon & Bromley 2005, Kenyon et al. 2014)。
これも、同じくハッブル宇宙望遠鏡やジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡で次の10年で検証可能だろう。
半径が 500 - 1000 km以下の粒子の衝突カスケードによって、200 - 400 Myr (フォーマルハウトの年齢と同程度)の間、惑星周りの大量のダスト粒子を維持するというものである。
長時間進化の解析的モデルでは、べき乗則に従ったサイズ分布を持つ粒子を仮定した場合、~ 10地球質量まわりにある 0.1地球質量程度の不規則衛星群で説明できるとしている。
しかし、カスケード中の最大物体の半径 rmaxは、べき乗則の指数 qに依存する。
小さいqの場合は、観測結果の説明のためには大きなrmaxが必要とされる。大きなrmaxには、重い不規則衛星群が必要とされる。
従って惑星の重力圏から放出された粒子によって尾が形成される。この痕跡は検出可能であると考えられる(Kenyon et al. 2014)。
これを検証するためには、衛星群から放出される粒子についてさらなる解析が必要である。
よって、ここではスーパーアースまわりの球対称に分布した不規則衛星群のシミュレーションを行った。
スタンダードなモデルでは、0.01惑星質量、rmax ~ 200 - 400 kmの初期条件での不規則衛星群で観測されているフォーマルハウトbの断面積を説明することが出来る。
より小さな衛星も考慮して計算することによって、より小さな衛星群でも観測を説明することが出来る。
これは集積計算を行うためのコードである。
本来は原始惑星系円盤中での固体の集積計算のために開発されたものであるが、これを球殻中での計算を行うために改良した。
また、Orchestraコードは大きい天体の力学的相互作用と軌道計算を行うためのN体計算も含んでいる。
ここでは、集積粒子間の相互作用、トレーサー粒子を介したN体計算は無効化してある。
基本のモデルでは、10 - 100地球質量周りでの衛星群は、100 - 400 Myrの間にわたって、観測されているフォーマルハウトbの断面積と同じ断面積を持つ。
この計算中では、惑星と衛星群の質量比は 0.01、粒子の最小半径は 100 μmである。
質量比が小さく、最小半径が大きい場合は、より重い惑星周りの衛星群でも観測結果を説明することが出来る。
最小半径が小さい場合は、観測結果を説明するためには惑星質量は軽い必要がある。
不規則衛星群の初期サイズ分布は、この結果には大きな影響を与えない。
また太陽系での現象にも言及した。
木星周りにある 0.1 - 1 kmサイズの不規則衛星が、モデルに興味深い制限を与えるだろう。
また、フォーマルハウトbでは小さい粒子の散逸による痕跡は検出可能であると推測される。
フォーマルハウトbは、直接撮像で発見された系外惑星であり、初めて可視光領域の直接撮像で発見された系外惑星でもあります。
中心星から遠く離れた位置にある木星型惑星だと考えられていますが、様々な観測からその地位に疑義を呈する意見もあります。
例えば円盤中での小天体の衝突によって生成されたダストからの放射を見ているというものや、より軽い惑星の周りの衛星やダストを見ているというものです。
変わったものでは、"フォーマルハウトとは無関係の、背景の中性子星を観測している"などという説まで出されています(Neuhaeuser et al. 2015)。
The companion candidate near Fomalhaut - a background neutron star?
この論文は、スーパーアース程度の惑星の周りにある衛星群と、それらの衝突で生み出されるダストによってフォーマルハウトbの放射を説明するという説を、集積シミュレーションから検証したものです。
arXiv:1508.03350
Kenyon & Bromley (2015)
Collisional Cascade Caclulations for Irregular Satellite Swarms in Fomalhaut b
(フォーマルハウトbでの不規則衛星群の衝突カスケード計算)
概要
フォーマルハウトにおける、軌道長半径 120 AUの位置にある 1 - 300地球質量の惑星まわりでの、不規則衛星群 (Irregular satellite swarms)の衝突進化の数値計算を行った。10 - 100地球質量の惑星においては、衛星群の初期質量が惑星質量の ~1%を持つ場合は、観測されているフォーマルハウトbの断面積と同程度の断面積を持つことが分かった。
30 - 300地球質量の惑星の場合は、1 - 10 Myrの間は光学的に厚い衛星群を維持できる。
このような系がどの程度の頻度で存在するのかは、β Pictoris moving group (がか座ベータ運動星団)中の恒星をハッブル宇宙望遠鏡や地上から補償光学を用いて観測することによって、制限をかけることが出来る。また、他の近傍の若い恒星のアソシエーションの観測でも同様である。
フォーマルハウトbについて
フォーマルハウトbの発見と疑義
フォーマルハウトb (Formalhaut b)は、A型主系列星フォーマルハウトを公転する、~ 120 AUにある惑星候補天体である。光学観測での色と、1 μmより長波長での観測では検出できていないことから、フォーマルハウトbは惑星ではなく、ダスト雲からの放射であるという主張が存在する (Marengo et al. 2009, Jansen et al. 2012, Currie et al. 2012, Kalas et al. 2013, Jansen et al. 2015)。
また、可視光での放射の観測からは、この天体の合計の断面積 (cross-sectional area)は、~ 1023 cm2と推定されている(Kalas et al. 2008, Currie et al. 2012, Galicher et al. 2012, Kalas et al. 2013)。
ダスト雲の生成機構
A型星まわりの遠距離におけるダスト雲の放射は、大きく分けると2タイプの衝突モデルによって説明ができると考えられている。小天体の高速衝突
最もシンプルなモデルが、半径 ~ 100 kmの2天体が高速で衝突し、拡大する小粒子の雲が生成されるというものである(Kalas et al. 2008, Galicher et al. 2013, Kenyon et al. 2014, Lawler et al. 2015)。半径が 100 km程度の2天体からの脱出速度で拡大するダスト雲は、50 - 100年のタイムスケールでは分離して観測することが出来ない(Galicher et al. 2013, Kenyon et al. 2014, Lawler et al. 2015)。
より小さく、大きな光学的厚みを持つ粒子は、一般に速く拡散する。従ってこの粒子が一定の質量を持っている場合は、ハッブル宇宙望遠鏡やジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡を用いた次の10年の観測で検出できるだろう。
また拡大していくダスト雲が内部速度分散を持っていれば、差動運動によってダスト雲はリングを形成するだろう(Kenyon & Bromley 2005, Kenyon et al. 2014)。
これも、同じくハッブル宇宙望遠鏡やジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡で次の10年で検証可能だろう。
不規則衛星群
円盤状、または半球状に分布した不規則衛星の群れが、スーパーアース質量の惑星の周りを覆っていると仮定する説がある(Kalas et al. 2008, Kennedy & Wyatt 2011, Kenyon et al. 2014)。半径が 500 - 1000 km以下の粒子の衝突カスケードによって、200 - 400 Myr (フォーマルハウトの年齢と同程度)の間、惑星周りの大量のダスト粒子を維持するというものである。
長時間進化の解析的モデルでは、べき乗則に従ったサイズ分布を持つ粒子を仮定した場合、~ 10地球質量まわりにある 0.1地球質量程度の不規則衛星群で説明できるとしている。
しかし、カスケード中の最大物体の半径 rmaxは、べき乗則の指数 qに依存する。
小さいqの場合は、観測結果の説明のためには大きなrmaxが必要とされる。大きなrmaxには、重い不規則衛星群が必要とされる。
不規則衛星群のシミュレーション
輻射圧は、半径が 100 μm以下の粒子が惑星の重力圏に留まり続けるのを妨げる。従って惑星の重力圏から放出された粒子によって尾が形成される。この痕跡は検出可能であると考えられる(Kenyon et al. 2014)。
これを検証するためには、衛星群から放出される粒子についてさらなる解析が必要である。
よって、ここではスーパーアースまわりの球対称に分布した不規則衛星群のシミュレーションを行った。
スタンダードなモデルでは、0.01惑星質量、rmax ~ 200 - 400 kmの初期条件での不規則衛星群で観測されているフォーマルハウトbの断面積を説明することが出来る。
より小さな衛星も考慮して計算することによって、より小さな衛星群でも観測を説明することが出来る。
計算
計算には、Orchestraコードを用いた。これは集積計算を行うためのコードである。
本来は原始惑星系円盤中での固体の集積計算のために開発されたものであるが、これを球殻中での計算を行うために改良した。
また、Orchestraコードは大きい天体の力学的相互作用と軌道計算を行うためのN体計算も含んでいる。
ここでは、集積粒子間の相互作用、トレーサー粒子を介したN体計算は無効化してある。
結果概要
中心星質量が1.4太陽質量、軌道長半径が 120 AU、1 - 300地球質量の惑星周りでの、不規則衛星群の集積計算を行った。基本のモデルでは、10 - 100地球質量周りでの衛星群は、100 - 400 Myrの間にわたって、観測されているフォーマルハウトbの断面積と同じ断面積を持つ。
この計算中では、惑星と衛星群の質量比は 0.01、粒子の最小半径は 100 μmである。
質量比が小さく、最小半径が大きい場合は、より重い惑星周りの衛星群でも観測結果を説明することが出来る。
最小半径が小さい場合は、観測結果を説明するためには惑星質量は軽い必要がある。
不規則衛星群の初期サイズ分布は、この結果には大きな影響を与えない。
また太陽系での現象にも言及した。
木星周りにある 0.1 - 1 kmサイズの不規則衛星が、モデルに興味深い制限を与えるだろう。
また、フォーマルハウトbでは小さい粒子の散逸による痕跡は検出可能であると推測される。
フォーマルハウトbは、直接撮像で発見された系外惑星であり、初めて可視光領域の直接撮像で発見された系外惑星でもあります。
中心星から遠く離れた位置にある木星型惑星だと考えられていますが、様々な観測からその地位に疑義を呈する意見もあります。
例えば円盤中での小天体の衝突によって生成されたダストからの放射を見ているというものや、より軽い惑星の周りの衛星やダストを見ているというものです。
変わったものでは、"フォーマルハウトとは無関係の、背景の中性子星を観測している"などという説まで出されています(Neuhaeuser et al. 2015)。
The companion candidate near Fomalhaut - a background neutron star?
この論文は、スーパーアース程度の惑星の周りにある衛星群と、それらの衝突で生み出されるダストによってフォーマルハウトbの放射を説明するという説を、集積シミュレーションから検証したものです。
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