×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1508.04116
Mommert et al. (2015)
ExploreNEOs VIII: Dormant Short-Period Comets in the Near-Earth Asteroid Population
(地球近傍小惑星中の短周期休眠彗星)
統計的なアプローチから、小天体の木星に対するティスランパラメータ (Tisserand's parameter)、遠日点距離、木星との最小軌道交差距離を用いて、短周期地球近傍彗星に類似した軌道を持つ小惑星を識別した。
彗星状の軌道を持つNEAのサンプルから、幾何学的アルベドが 0.064以下のものを "dormant comet"として選択した。
彗星状の軌道を持つNEAのうち、~ 50%のみが彗星と同程度のアルベドを持っていた。
23個のNEAを休眠状態の彗星候補として識別した。
また、NEOWISEによる超低温サーベイに用いられたバイアスを外すためのプロシージャを用いて、小天体の光度とサイズから、単酒気の休眠状態の彗星のNEA中の個数について制限を与えた。
結果、等級 H が21以下のNEAのうち 0.3 - 3.3%と、直径が 1 km以上のもののうち ~ 9%は、短周期の休眠状態の彗星であると考えられる。
この多様性から、NEAは異なる起源と進化をしてきた天体たちの集合であるということが示唆されている。
NEAの力学的な寿命は、107年程度と考えられており(Morbidelli & Gladman 1998)、これは太陽系の年齢よりもずっと短いものである。
従って、現在のNEAの状態からは、何らかの供給源が存在する必要があるということが言える。
NEAの供給源としては大部分はメインベルト (小惑星帯)に起源を持つと考えられており、NEAへの輸送メカニズムはよく理解されている。
彗星は長い間、NEAの集団のうちの彗星的な天体だけではなく、小惑星的な天体の供給にも関わっていると疑われてきた。
彗星は太陽系の外縁領域からやってくる天体であり、氷を含み、巨大惑星の重力によって軌道が擾乱を受け太陽系の内側領域までやってくるものである。
軌道周期が 200年を超える長周期彗星と、20年以下の短周期彗星である。
短周期彗星は低い軌道離心率を持ち、木星の強い影響下にある。
これらの黄道面に近い軌道と短い周期からは、短周期彗星はカイパーベルト天体、特に散乱円盤とケンタウルス族に起源を持つものだという事が強く示唆される(Duncan et al. 2004)。
一方の長周期彗星は、軌道傾斜角はほぼ等方的に分布しており、また大きな軌道離心率を持っている。
これらの事実は、長周期彗星はオールトの雲起源であるということが示唆されている(Lowry et al.2008)。
ほとんどのハレー彗星タイプの彗星は 20 - 200年の周期を持ち、これらは長周期彗星の分布のうちの短周期側のテールだと考えられている(Weissman 1996)。
これらの起源にはまだ議論があり、モデルによってはカイパーベルト起源を示唆したり(Levison et al. 2006)、オールトの雲起源を示唆したりする(Wang & Brasser 2014)。
ここでは、地球近傍天体の分布における短周期彗星、短周期の地球近傍彗星(bear-Earth comet, NEC)に着目する。
表面付近の揮発性物質の昇華によって彗星の活動が起こり、コマと尾を形成する。
Levison & Duncan (1997)によると、短周期彗星の活動寿命のもっともらしい値は ~ 12000年であり、これは短周期彗星の力学的な寿命の平均である 4.5 × 107年やNEAの力学的な寿命の平均 (107)よりもずっと短い値である。
従って、地球近傍の空間で長時間を過ごした彗星はその活動を終え、"dormant" (休眠した)、あるいは"extinct" (死んだ)彗星となり、アルベドが低い小惑星との区別がつかなくなる(Wetherill 1991)。
彗星が活動を終えて小惑星場の天体になるというのは、彗星の運命の一つの可能性にすぎない。
観測からは、彗星は小さい破片に分解することもあるし、また最近ISON彗星が起こしたように完全に破壊することもあることが分かっている。
しかし Whitman et al. (2006)によると、短周期惑星の活動の寿命になる頃には、彗星は破壊するよりも休眠した状態になる方が多いという事が示されている。
Levison & Duncan (1997)の推定によると、短周期彗星の78%は死んでいると考えられる。
さらに、これまで小惑星だと思われていたが再び彗星活動を起こした天体もある。
一例が地球近傍小惑星の 4015 Wilson-Harrington (ウィルソン・ハリントン彗星)で、1949年には彗星活動が観測されたが、その後は観測されていない。
また地球近傍小惑星 3522 Don Quixote (ドン・キホーテ)も、小惑星として発見された後に30年近く経ってから彗星活動が確認されたものもある (Mommert et al. 2014)。
ドン・キホーテは死んだ彗星 (extinct comet)と考えられているが、休眠した彗星 (dormant comet)とするほうがより正確である。
なぜなら、それらの活動が継続的で弱いものなのか、一時的なものなのかは明確ではないからである。
これら全ての天体が実際に死んでいるのかははっきりしないため、ここでは"dormant comet"、休眠した彗星という言葉を用いている。
その他の活動的な彗星と同様、休眠した彗星も地球に衝突して、地球に揮発性物質を運ぶ可能性がある。
そのためこれらの理解は、太陽系や惑星形成の理解にも繋がるものである。
ここでは、地球近傍天体の統計的な解析から、彗星起源の天体を識別している。
・NEOWISEサーベイのde-biasingから、等級 Hが21以下のNEAの 0.3 - 3.3%、直径が 1 km以下の天体の およそ9% (4 - 11%)のNEAが休眠した短周期NEC候補である。光度による制限から得られた値はこれまでの推定よりわずかに低い。しかしサイズからの制限はこれまでのものと一致する。
・今回用いたサンプル中の地球近傍彗星に類似した天体のうち~ 50%だけが、彗星と同じ程度のアルベドを持つ。しかし、NEAの中で木星とのティスランパラメータが 2.0 - 2.8で、幾何学的アルベドが 0.064以下のものは 96%の割合で彗星起源である。
arXiv:1508.04116
Mommert et al. (2015)
ExploreNEOs VIII: Dormant Short-Period Comets in the Near-Earth Asteroid Population
(地球近傍小惑星中の短周期休眠彗星)
概要
地球近傍小惑星 (Near-Earth asteroid, NEA)中の、彗星に起源を持つ小惑星天体、"dormant comet" (休眠状態の彗星)について調査した。統計的なアプローチから、小天体の木星に対するティスランパラメータ (Tisserand's parameter)、遠日点距離、木星との最小軌道交差距離を用いて、短周期地球近傍彗星に類似した軌道を持つ小惑星を識別した。
彗星状の軌道を持つNEAのサンプルから、幾何学的アルベドが 0.064以下のものを "dormant comet"として選択した。
彗星状の軌道を持つNEAのうち、~ 50%のみが彗星と同程度のアルベドを持っていた。
23個のNEAを休眠状態の彗星候補として識別した。
また、NEOWISEによる超低温サーベイに用いられたバイアスを外すためのプロシージャを用いて、小天体の光度とサイズから、単酒気の休眠状態の彗星のNEA中の個数について制限を与えた。
結果、等級 H が21以下のNEAのうち 0.3 - 3.3%と、直径が 1 km以上のもののうち ~ 9%は、短周期の休眠状態の彗星であると考えられる。
研究背景
地球近傍天体とその起源
地球近傍小惑星 (Near-Earth asteroid, NEA)の個体群は、彗星と小惑星の両方に起源を持つと考えられており、力学的パラメータと物理量は広範囲に分布している。この多様性から、NEAは異なる起源と進化をしてきた天体たちの集合であるということが示唆されている。
NEAの力学的な寿命は、107年程度と考えられており(Morbidelli & Gladman 1998)、これは太陽系の年齢よりもずっと短いものである。
従って、現在のNEAの状態からは、何らかの供給源が存在する必要があるということが言える。
NEAの供給源としては大部分はメインベルト (小惑星帯)に起源を持つと考えられており、NEAへの輸送メカニズムはよく理解されている。
彗星は長い間、NEAの集団のうちの彗星的な天体だけではなく、小惑星的な天体の供給にも関わっていると疑われてきた。
彗星は太陽系の外縁領域からやってくる天体であり、氷を含み、巨大惑星の重力によって軌道が擾乱を受け太陽系の内側領域までやってくるものである。
彗星の起源
力学的な観点から、彗星は2つの主要なグループに分類することが出来る。軌道周期が 200年を超える長周期彗星と、20年以下の短周期彗星である。
短周期彗星は低い軌道離心率を持ち、木星の強い影響下にある。
これらの黄道面に近い軌道と短い周期からは、短周期彗星はカイパーベルト天体、特に散乱円盤とケンタウルス族に起源を持つものだという事が強く示唆される(Duncan et al. 2004)。
一方の長周期彗星は、軌道傾斜角はほぼ等方的に分布しており、また大きな軌道離心率を持っている。
これらの事実は、長周期彗星はオールトの雲起源であるということが示唆されている(Lowry et al.2008)。
ほとんどのハレー彗星タイプの彗星は 20 - 200年の周期を持ち、これらは長周期彗星の分布のうちの短周期側のテールだと考えられている(Weissman 1996)。
これらの起源にはまだ議論があり、モデルによってはカイパーベルト起源を示唆したり(Levison et al. 2006)、オールトの雲起源を示唆したりする(Wang & Brasser 2014)。
ここでは、地球近傍天体の分布における短周期彗星、短周期の地球近傍彗星(bear-Earth comet, NEC)に着目する。
休眠した、あるいは死んだ彗星
彗星が太陽に近づくに連れて受け取るエネルギーが増加するため、表面温度は上昇する。表面付近の揮発性物質の昇華によって彗星の活動が起こり、コマと尾を形成する。
Levison & Duncan (1997)によると、短周期彗星の活動寿命のもっともらしい値は ~ 12000年であり、これは短周期彗星の力学的な寿命の平均である 4.5 × 107年やNEAの力学的な寿命の平均 (107)よりもずっと短い値である。
従って、地球近傍の空間で長時間を過ごした彗星はその活動を終え、"dormant" (休眠した)、あるいは"extinct" (死んだ)彗星となり、アルベドが低い小惑星との区別がつかなくなる(Wetherill 1991)。
彗星が活動を終えて小惑星場の天体になるというのは、彗星の運命の一つの可能性にすぎない。
観測からは、彗星は小さい破片に分解することもあるし、また最近ISON彗星が起こしたように完全に破壊することもあることが分かっている。
しかし Whitman et al. (2006)によると、短周期惑星の活動の寿命になる頃には、彗星は破壊するよりも休眠した状態になる方が多いという事が示されている。
Levison & Duncan (1997)の推定によると、短周期彗星の78%は死んでいると考えられる。
さらに、これまで小惑星だと思われていたが再び彗星活動を起こした天体もある。
一例が地球近傍小惑星の 4015 Wilson-Harrington (ウィルソン・ハリントン彗星)で、1949年には彗星活動が観測されたが、その後は観測されていない。
また地球近傍小惑星 3522 Don Quixote (ドン・キホーテ)も、小惑星として発見された後に30年近く経ってから彗星活動が確認されたものもある (Mommert et al. 2014)。
ドン・キホーテは死んだ彗星 (extinct comet)と考えられているが、休眠した彗星 (dormant comet)とするほうがより正確である。
なぜなら、それらの活動が継続的で弱いものなのか、一時的なものなのかは明確ではないからである。
これら全ての天体が実際に死んでいるのかははっきりしないため、ここでは"dormant comet"、休眠した彗星という言葉を用いている。
その他の活動的な彗星と同様、休眠した彗星も地球に衝突して、地球に揮発性物質を運ぶ可能性がある。
そのためこれらの理解は、太陽系や惑星形成の理解にも繋がるものである。
ここでは、地球近傍天体の統計的な解析から、彗星起源の天体を識別している。
結論
・23個の、短周期NECに似た軌道とアルベドを持つNEAを識別した。これらは休眠した短周期地球近傍彗星だと考えられる。・NEOWISEサーベイのde-biasingから、等級 Hが21以下のNEAの 0.3 - 3.3%、直径が 1 km以下の天体の およそ9% (4 - 11%)のNEAが休眠した短周期NEC候補である。光度による制限から得られた値はこれまでの推定よりわずかに低い。しかしサイズからの制限はこれまでのものと一致する。
・今回用いたサンプル中の地球近傍彗星に類似した天体のうち~ 50%だけが、彗星と同じ程度のアルベドを持つ。しかし、NEAの中で木星とのティスランパラメータが 2.0 - 2.8で、幾何学的アルベドが 0.064以下のものは 96%の割合で彗星起源である。
PR
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック