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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1803.04278
Ionov et al. (2018)
Survival of a planet in short-period Neptunian desert under effect of photo-evaporation
(光蒸発の効果のもとでの短周期海王星型惑星砂漠での惑星の生存)
ホットネプチューンが少ないことに対する一般的な説明は,海王星の数倍程度の質量を持つガス惑星は,恒星からの輻射による加熱によって引き起こされる大気の大量の流出の影響で,中心星近傍の軌道では生き残れないというものである.この仮説を検証するため,ホットネプチューンの大気動力学の数値シミュレーションを行った.
ここでは,過去に開発された自己一貫性のある 1 次元の水素ヘリウム大気と超熱的電子を含むモデルを使用した.シミュレーションより,惑星の軌道距離と恒星の年齢の関数としての質量放出率を導出した.
結論としては,短周期海王星型惑星の欠乏領域は,中心星からの輻射による惑星大気の蒸発だけでは完全には説明できない.
軽い海王星型惑星に関しては,推定される質量放出率の上限値は光蒸発シナリオと整合的だが,重い海王星型惑星は,この光蒸発では大量の質量を失うことが出来ない.
また,今回の数値結果と,広く利用されている質量損失の近似的推定の間に大きな違いがある事を発見した.
この惑星欠乏領域は,観測バイアスで説明するのは難しい.一般に,系外惑星の観測手法はより重い惑星に対して感度がある.これまでの観測でスーパーアースの検出には成功していることから,同じような軌道に存在する短周期の海王星型惑星の検出に関しては,より効果的な検出効率になるはずである.そのため,短周期海王星型惑星の欠乏は観測バイアスではなく,物理的な起源を持つ特徴であると考えられる.
(i) 原始惑星系円盤の進化とその中での惑星移動に起因するという説
原始惑星系円盤の進化の最中に,惑星は円盤の外側から内側へと移動する.円盤と惑星の相互作用によって駆動されるこの移動は,惑星が円盤の内縁に来ると停止する.これは,それ以上惑星を内側へ押すことが出来ないほど円盤が低密度になるからである.円盤の内縁半径は円盤の質量に依存し,より重い円盤では小さくなることが示唆される.そのため,より重い惑星はより重い円盤で形成されやすく,そのような円盤は内縁半径が小さいため,惑星移動によってより近い軌道に落ち着く傾向がある可能性がある.
(ii) 小型ガス惑星からの大気散逸に起因するという説
海王星質量のガス惑星は,恒星からの輻射によって引き起こされる大量の大気の流出 (光蒸発) のため,中心星の近傍では生き残れない可能性がある.
2 番目の仮説は,Kurokawa & Nakamoto (2014),Kurokawa & Kaltenegger (2013),Tian (2015) で考察されている.
惑星からの大気散逸過程は,他の種類の惑星で観測されている.例えば重い惑星の場合,HD 209458b (Vidal-Madjar et al. 2003),HD 189733b (Lecavelier Des Etangs et al. 2010),WASP-12b (Fossati et al. 2010) で大気の散逸が観測されている,
低質量の惑星では,GJ 436b (Kulow et al. 2014,Ehrenreich et al. 2015) からの大気散逸が観測されている.
\[
\frac{dM_{\rm p}}{dt}=-\frac{\pi\eta F_{\rm XUV} R^{3}_{\rm XUV}}{GM_{\rm p}K_{\rm t}}
\]
で表される.\(M_{\rm p}\) は惑星質量,\(F_{\rm XUV}\) は中心星からの XUV フラックス,\(R_{\rm XUV}\) は XUV 放射が吸収される半径,\(K_{\rm t}\) は恒星からの潮汐力に対応する係数,\(\eta\) は大気の加熱効率である.
大気の加熱効率については,過去の研究では 0.25 という値がよく使用されている.しかし Shematovich et al. (2014) では,超熱的電子の生成を考慮に入れた場合,加熱効率は平均で 0.14 程度になることを示唆している.
arXiv:1803.04278
Ionov et al. (2018)
Survival of a planet in short-period Neptunian desert under effect of photo-evaporation
(光蒸発の効果のもとでの短周期海王星型惑星砂漠での惑星の生存)
概要
中心星に近接した軌道にある木星型惑星と地球型惑星は,これまでに多数が発見されているにも関わらず,”ホットネプチューン” (ここでは,海王星質量の 0.6 - 18 倍,軌道周期 3 日未満の惑星を指す) の数は非常に少ない.惑星質量-軌道周期分布における,ホットネプチューンの少なさに対応する領域は,“short-period Neptunian desert” (短周期海王星型惑星砂漠) として知られている.ホットネプチューンが少ないことに対する一般的な説明は,海王星の数倍程度の質量を持つガス惑星は,恒星からの輻射による加熱によって引き起こされる大気の大量の流出の影響で,中心星近傍の軌道では生き残れないというものである.この仮説を検証するため,ホットネプチューンの大気動力学の数値シミュレーションを行った.
ここでは,過去に開発された自己一貫性のある 1 次元の水素ヘリウム大気と超熱的電子を含むモデルを使用した.シミュレーションより,惑星の軌道距離と恒星の年齢の関数としての質量放出率を導出した.
結論としては,短周期海王星型惑星の欠乏領域は,中心星からの輻射による惑星大気の蒸発だけでは完全には説明できない.
軽い海王星型惑星に関しては,推定される質量放出率の上限値は光蒸発シナリオと整合的だが,重い海王星型惑星は,この光蒸発では大量の質量を失うことが出来ない.
また,今回の数値結果と,広く利用されている質量損失の近似的推定の間に大きな違いがある事を発見した.
背景
惑星欠乏領域
これまでに,木星型惑星と地球型惑星は多数が中心星に近接した軌道に発見されているが,ホットネプチューン (海王星質量の 0.6 - 18 倍,軌道周期 3 日未満) は発見数が少ない.これは,惑星質量-軌道周期の分布における “short-period Neptunian desert” (Mazeh et al. 2016) として知られている.この惑星欠乏領域は,観測バイアスで説明するのは難しい.一般に,系外惑星の観測手法はより重い惑星に対して感度がある.これまでの観測でスーパーアースの検出には成功していることから,同じような軌道に存在する短周期の海王星型惑星の検出に関しては,より効果的な検出効率になるはずである.そのため,短周期海王星型惑星の欠乏は観測バイアスではなく,物理的な起源を持つ特徴であると考えられる.
惑星砂漠の起源
Mazeh et al. (2016) では,"砂漠" の起源として以下の説に言及している.(i) 原始惑星系円盤の進化とその中での惑星移動に起因するという説
原始惑星系円盤の進化の最中に,惑星は円盤の外側から内側へと移動する.円盤と惑星の相互作用によって駆動されるこの移動は,惑星が円盤の内縁に来ると停止する.これは,それ以上惑星を内側へ押すことが出来ないほど円盤が低密度になるからである.円盤の内縁半径は円盤の質量に依存し,より重い円盤では小さくなることが示唆される.そのため,より重い惑星はより重い円盤で形成されやすく,そのような円盤は内縁半径が小さいため,惑星移動によってより近い軌道に落ち着く傾向がある可能性がある.
(ii) 小型ガス惑星からの大気散逸に起因するという説
海王星質量のガス惑星は,恒星からの輻射によって引き起こされる大量の大気の流出 (光蒸発) のため,中心星の近傍では生き残れない可能性がある.
2 番目の仮説は,Kurokawa & Nakamoto (2014),Kurokawa & Kaltenegger (2013),Tian (2015) で考察されている.
惑星からの大気散逸過程は,他の種類の惑星で観測されている.例えば重い惑星の場合,HD 209458b (Vidal-Madjar et al. 2003),HD 189733b (Lecavelier Des Etangs et al. 2010),WASP-12b (Fossati et al. 2010) で大気の散逸が観測されている,
低質量の惑星では,GJ 436b (Kulow et al. 2014,Ehrenreich et al. 2015) からの大気散逸が観測されている.
惑星からの光蒸発
光蒸発による質量放出率は,Lopez & Fortney (2014) によると\[
\frac{dM_{\rm p}}{dt}=-\frac{\pi\eta F_{\rm XUV} R^{3}_{\rm XUV}}{GM_{\rm p}K_{\rm t}}
\]
で表される.\(M_{\rm p}\) は惑星質量,\(F_{\rm XUV}\) は中心星からの XUV フラックス,\(R_{\rm XUV}\) は XUV 放射が吸収される半径,\(K_{\rm t}\) は恒星からの潮汐力に対応する係数,\(\eta\) は大気の加熱効率である.
大気の加熱効率については,過去の研究では 0.25 という値がよく使用されている.しかし Shematovich et al. (2014) では,超熱的電子の生成を考慮に入れた場合,加熱効率は平均で 0.14 程度になることを示唆している.
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