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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1803.05437
Liu et al. (2018)
New constraints on turbulence and embedded planet mass in the HD 163296 disk from planet-disk hydrodynamic simulations
(惑星-円盤流体力学シミュレーションからの HD 163296 円盤中の乱流と埋め込まれた惑星質量に対する新しい制約)
さらに,真ん中と外側のダストギャップでは,一酸化炭素のガスの量も減少していることが分かっている.しかし一酸化炭素の減少は,内側のダストギャップでは検出されなかった.
ここでは,惑星-円盤の相互作用モデルを検証するため,二次元の二流体 (ガスとダスト) の流体力学シミュレーションを,3 次元輻射輸送シミュレーションと組み合わせた.
その結果,一番目のギャップにおける高いガス-ダスト比をフィットするためには,Shakura-Sunyaev の粘性パラメータ \(\alpha\) は,内側の円盤では非常に小さく,10-4 程度以下である必要があることが判明した.一方で円盤の外側領域では,ダスト面密度を再現するためには比較的大きな値である ~ 7.5 × 10-3 が必要である.
この円盤領域での \(\alpha\) の変化は,円盤内側領域での磁気回転不安定性 (magnetorotational instability, MRI) デッドゾーン (MRI が発生しない領域) から,円盤外側領域の MRI アクティブゾーン (MRI が発生する領域) への遷移の指標として解釈できる.
~ 100 au 以内では,この天体の円盤の電離度は低く,非理想 MHD 効果が MRI の発達を抑制する.そのため,円盤の外側領域は層流状態になっている.
一方で円盤の電離度は遠方に向かって徐々に上昇し,最も外側 (300 au 以上) では MRI の発達によって乱流的になる.この状況で,観測されたダスト連続波と一酸化炭素のガス輝線の構造は,木星の半分程度の質量を持つ惑星 3 つによってフィットできることが分かった.それぞれ 59, 105, 160 au の距離にある,0.46, 0.46, 0.58 木星質量の惑星で説明が可能である.
HD 163296 は class II の若い恒星状天体 (young stellar object, YSO) であり,2.3 太陽質量,有効温度は 9500 K である (Natta et al. 2004),地球からの距離はわずか 122 pc (van den Ancker et al. 1997) である.
この天体は,中心星から ~ 550 au の距離まで広がるガス円盤を持っている.
Isella et al. (2016) は,ダスト連続波中に 3 つの明暗リング構造を検出した.これは HL Tau まわりの円盤で発見されているものと類似している.さらに,12CO,13CO と C18O の J = 2-1 輝線も ALMA で取得した.その結果,中間と外側のギャップに対応する位置でガスが減少していることが検出されたが,内側ギャップではガスの減少は検出されなかった.
そのため,中間と外側のギャップは惑星-円盤相互作用シナリオで説明できるが,内側のギャップは,MHD 不安定や揮発性物質の凍結など,さらなる物理過程が必要であると示唆している.
ここでは,発見されている 3 つのギャップが全て惑星-円盤相互作用によるものであるという可能性を追求した.
arXiv:1803.05437
Liu et al. (2018)
New constraints on turbulence and embedded planet mass in the HD 163296 disk from planet-disk hydrodynamic simulations
(惑星-円盤流体力学シミュレーションからの HD 163296 円盤中の乱流と埋め込まれた惑星質量に対する新しい制約)
概要
最近行われた,アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計 (Atacama Large Millimeter/submillimeter Array, ALMA) での Herbig Ae 星 (ハービッグ Ae 星) HD 163296 まわりの原始惑星系円盤の観測では,円盤中に 3 つのダストのギャップ構造が検出されている.ギャップの半径はそれぞれ 60, 100, 160 au であり,観測は 1.3 mm 連続波で行われた.さらに,真ん中と外側のダストギャップでは,一酸化炭素のガスの量も減少していることが分かっている.しかし一酸化炭素の減少は,内側のダストギャップでは検出されなかった.
ここでは,惑星-円盤の相互作用モデルを検証するため,二次元の二流体 (ガスとダスト) の流体力学シミュレーションを,3 次元輻射輸送シミュレーションと組み合わせた.
その結果,一番目のギャップにおける高いガス-ダスト比をフィットするためには,Shakura-Sunyaev の粘性パラメータ \(\alpha\) は,内側の円盤では非常に小さく,10-4 程度以下である必要があることが判明した.一方で円盤の外側領域では,ダスト面密度を再現するためには比較的大きな値である ~ 7.5 × 10-3 が必要である.
この円盤領域での \(\alpha\) の変化は,円盤内側領域での磁気回転不安定性 (magnetorotational instability, MRI) デッドゾーン (MRI が発生しない領域) から,円盤外側領域の MRI アクティブゾーン (MRI が発生する領域) への遷移の指標として解釈できる.
~ 100 au 以内では,この天体の円盤の電離度は低く,非理想 MHD 効果が MRI の発達を抑制する.そのため,円盤の外側領域は層流状態になっている.
一方で円盤の電離度は遠方に向かって徐々に上昇し,最も外側 (300 au 以上) では MRI の発達によって乱流的になる.この状況で,観測されたダスト連続波と一酸化炭素のガス輝線の構造は,木星の半分程度の質量を持つ惑星 3 つによってフィットできることが分かった.それぞれ 59, 105, 160 au の距離にある,0.46, 0.46, 0.58 木星質量の惑星で説明が可能である.
研究背景
原始惑星系円盤の詳細構造の観測
ALMA による観測で,太陽系近傍の若い恒星まわりの星周円盤の構造が明らかになってきている.例えば HL Tau (おうし座 HL 星,ALMA Partnership et al. 2015),TW Hya (うみへび座 TW 星,Andrews et al. 2016) などである.HD 163296 まわりの円盤
Isella et al. (2016) は,ハービッグ Ae 星という種類の天体である HD 163296 の周りに存在するリング状の原始惑星系円盤についての,ALMA を用いたミリメートルサイズダスト粒子と分子ガスの空間分布についての初めての決定的な研究を発表した.HD 163296 は class II の若い恒星状天体 (young stellar object, YSO) であり,2.3 太陽質量,有効温度は 9500 K である (Natta et al. 2004),地球からの距離はわずか 122 pc (van den Ancker et al. 1997) である.
この天体は,中心星から ~ 550 au の距離まで広がるガス円盤を持っている.
Isella et al. (2016) は,ダスト連続波中に 3 つの明暗リング構造を検出した.これは HL Tau まわりの円盤で発見されているものと類似している.さらに,12CO,13CO と C18O の J = 2-1 輝線も ALMA で取得した.その結果,中間と外側のギャップに対応する位置でガスが減少していることが検出されたが,内側ギャップではガスの減少は検出されなかった.
そのため,中間と外側のギャップは惑星-円盤相互作用シナリオで説明できるが,内側のギャップは,MHD 不安定や揮発性物質の凍結など,さらなる物理過程が必要であると示唆している.
ここでは,発見されている 3 つのギャップが全て惑星-円盤相互作用によるものであるという可能性を追求した.
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天文・宇宙物理関連メモ vol.227 Andrews et al. (2016) ALMA による TW Hya の観測