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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1809.08436
Brady et al. (2018)
Kepler-1656b: a Dense Sub-Saturn With an Extreme Eccentricity
(ケプラー1656b:極端な離心率を持った高密度サブサターン)
ここでは,中心星ケプラー1656 の精密な視線速度を,Keck/HIRES で取得し,これを元にケプラー1656b の質量と軌道離心率に制約を与えた.
その結果,惑星質量として 48 ± 4 地球質量という値が得られた.この惑星は,同程度のサイズを持つ大部分の惑星の中でも,より重い部類に属する.この大きな質量は,惑星の総質量の大部分,大まかには 80% 程度が,岩石や鉄といった高密度の物質で出来ていることを示唆している.残りの質量は,低密度の水素・ヘリウムエンベロープであると考えられる.
またこの惑星の軌道離心率も高く,0.84 ± 0.01 という値が得られた.これは,100 地球質量未満の惑星のうち,軌道離心率が測定されている全ての惑星の中では最も大きい値である.
この惑星の大きな密度と軌道離心率は,原始惑星系円盤が消失した後かその最中における,一回か複数回の散乱・衝突イベントの結果である可能性がある.
Petigura et al. (2017) は 20 個のサブサターンのサンプルを研究し,あるサイズを持つ惑星の平均密度には 1 桁程度の分散があることを指摘した.このことは,サブサターンクラスの惑星のエンベロープ構造には,多様性があることを示唆している.
この惑星は,既知のサブサターンのなかでは最も重い惑星の一つである.
平均密度は 2.13 g cm-3 と推定され,サブサターンの中では最も高密度な部類であり,また太陽系のどのガス天体よりも高密度である.Lopez & Fortney (2014) の惑星構造モデルを仮定すると,82 ± 6% の質量がコアに含まれると推定される.これは観測されているサブサターンの中でも上限に近い.
この惑星の軌道離心率は 0.84 であり,最も軌道離心率が大きい部類に属する.
発見されている系外惑星の軌道離心率-軌道長半径の図を書くと,分布の上端は惑星の近日点距離がおおむね 0.03 au の線になるところに来る.これは,中心星の潮汐によって急速な潮汐円軌道化が起きていることによると考えられる.
低軌道離心率の惑星に関しては,離心率減衰のタイムスケールは
\[
\tau_{e}=\frac{4}{63}\left(\frac{Q’}{n}\right)\left(\frac{M_{\rm P}}{M_{*}}\right)\left(\frac{a}{R_{\rm P}}\right)^{5}
\]
と書ける (Goldreich & Roter 1966).ここで \(n=\sqrt{GM_{*}/a^{3}}\) は平均運動,\(Q’\) は改良潮汐の Q 値で,\(Q’=3Q2k_{2}/\).\(Q\) は specific dissipation function (比散逸関数),\(k_{2}\) はラブ数である.
離心率が減衰するタイムスケールは軌道長半径に対して強い依存性を持ち,これによって軌道離心率-軌道長半径平面上での分布の上端を形成する原因となる.しかし詳細は \(Q’\) の値に依存し,この値の推定値は桁のレベルで不定性がある.
この惑星の現在の近日点は 0.03 au の臨界値に近く,潮汐円軌道化が現在進んでいる可能性がある.この可能性を確認するためには,軌道離心率が大きい場合での潮汐理論を適用する必要があり,これは後の研究で扱う予定である.
arXiv:1809.08436
Brady et al. (2018)
Kepler-1656b: a Dense Sub-Saturn With an Extreme Eccentricity
(ケプラー1656b:極端な離心率を持った高密度サブサターン)
概要
ケプラー1656b は,5 地球半径の惑星で,軌道周期は 32 日である.この惑星は,ケプラーのメインミッション期間中の観測で初めて検出されたものである.ここでは,中心星ケプラー1656 の精密な視線速度を,Keck/HIRES で取得し,これを元にケプラー1656b の質量と軌道離心率に制約を与えた.
その結果,惑星質量として 48 ± 4 地球質量という値が得られた.この惑星は,同程度のサイズを持つ大部分の惑星の中でも,より重い部類に属する.この大きな質量は,惑星の総質量の大部分,大まかには 80% 程度が,岩石や鉄といった高密度の物質で出来ていることを示唆している.残りの質量は,低密度の水素・ヘリウムエンベロープであると考えられる.
またこの惑星の軌道離心率も高く,0.84 ± 0.01 という値が得られた.これは,100 地球質量未満の惑星のうち,軌道離心率が測定されている全ての惑星の中では最も大きい値である.
この惑星の大きな密度と軌道離心率は,原始惑星系円盤が消失した後かその最中における,一回か複数回の散乱・衝突イベントの結果である可能性がある.
議論
サブサターン惑星の密度の多様性
この惑星の分類は,海王星と土星の中間のサイズ,あるいはサブサターンと呼ばれる種類に属する.Petigura et al. (2017) は 20 個のサブサターンのサンプルを研究し,あるサイズを持つ惑星の平均密度には 1 桁程度の分散があることを指摘した.このことは,サブサターンクラスの惑星のエンベロープ構造には,多様性があることを示唆している.
この惑星は,既知のサブサターンのなかでは最も重い惑星の一つである.
平均密度は 2.13 g cm-3 と推定され,サブサターンの中では最も高密度な部類であり,また太陽系のどのガス天体よりも高密度である.Lopez & Fortney (2014) の惑星構造モデルを仮定すると,82 ± 6% の質量がコアに含まれると推定される.これは観測されているサブサターンの中でも上限に近い.
軌道離心率の特徴
現在のこの惑星の軌道離心率は,惑星の形成と移動の歴史を解く鍵となる,しかし軌道離心率を励起し得る経路は多数存在する.この惑星の軌道離心率は 0.84 であり,最も軌道離心率が大きい部類に属する.
発見されている系外惑星の軌道離心率-軌道長半径の図を書くと,分布の上端は惑星の近日点距離がおおむね 0.03 au の線になるところに来る.これは,中心星の潮汐によって急速な潮汐円軌道化が起きていることによると考えられる.
低軌道離心率の惑星に関しては,離心率減衰のタイムスケールは
\[
\tau_{e}=\frac{4}{63}\left(\frac{Q’}{n}\right)\left(\frac{M_{\rm P}}{M_{*}}\right)\left(\frac{a}{R_{\rm P}}\right)^{5}
\]
と書ける (Goldreich & Roter 1966).ここで \(n=\sqrt{GM_{*}/a^{3}}\) は平均運動,\(Q’\) は改良潮汐の Q 値で,\(Q’=3Q2k_{2}/\).\(Q\) は specific dissipation function (比散逸関数),\(k_{2}\) はラブ数である.
離心率が減衰するタイムスケールは軌道長半径に対して強い依存性を持ち,これによって軌道離心率-軌道長半径平面上での分布の上端を形成する原因となる.しかし詳細は \(Q’\) の値に依存し,この値の推定値は桁のレベルで不定性がある.
この惑星の現在の近日点は 0.03 au の臨界値に近く,潮汐円軌道化が現在進んでいる可能性がある.この可能性を確認するためには,軌道離心率が大きい場合での潮汐理論を適用する必要があり,これは後の研究で扱う予定である.
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