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天文・宇宙物理関連メモ vol.1097 Muley et al. (2019) および Keppler et al. (2019) PDS 70 まわりの惑星候補と高度に構造化された遷移円盤について
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1902.07191
Muley et al. (2019)
PDS 70: A transition disk sculpted by a single planet
(PDS 70:単一の惑星で切り取られた遷移円盤)
PDS 70 はおよそ 500 万歳の年老いた遷移円盤であり,22 au の位置の数木星質量の惑星候補 PDS 70b と,~30 au のガスのギャップと ~60 au のダストのギャップがあることが報告されている.そのため,惑星による空洞形成仮説の研究に有用なケースである.
ここでは PEnGUIn 流体力学コードを用いて,PDS 70b の軌道進化と降着を系の年齢に渡って計算した.
その結果,降着する惑星が 2.5 木星質量に到達した段階で軌道離心率が自発的に増大し,PDS 70 の広い範囲からの物質を集めることが分かった.輻射輸送事後処理を DALI を用いて行い,観測されたギャップの分布を正確に再現できることを示した.
今回の結果は,スーパージュピター質量の惑星が独力で遷移円盤の空洞を開くことができることを実証した.また,このような巨大惑星で測定される高い軌道離心率は,円盤-惑星相互作用の自然な帰結である可能性を示唆している.
arXiv:1902.07639
Keppler et al. (2019)
A highly structured disk around the planet host PDS 70 revealed by high-angular resolution observations with ALMA
(ALMA を用いた高角度分解能観測で明らかになった惑星を持つ PDS 70 まわりの高度に構造化された円盤)
このおよそ 500 万歳の若い惑星系の特性を研究するため,星周円盤のガスとダスト放射における PDS 70b の直接的・間接的な兆候を追うことを目的とした観測を行った.ALMA band 7 観測で,ダスト連続波と 12CO (3-2) の遷移,およびその組み合わせをアーカイブデータから得た.
このデータの分解能はこれまでにないほどのもので,分解能はおよそ 70 mas (~ 8 au) である.
解析の結果,PDS 70b が存在する場所での周惑星物質の質量に対して,~0.01 地球質量という上限値を導出し,またダストとガスの両方で高度な構造を持った星周円盤があることを見出した.
外側のダストリングの極大は 0.65” (74 au) であり,また分解されていない二番目の極大の可能性がある特徴を 0.53” (60 au) に検出した.CO の積分強度は ~0.2” (23 au) の位置での放射の減少の証拠を示し,これの幅は ~ 0.11” (11 au) であった.
ガスの運動学からは,中心星から 0.8” (91 au) 以内でのケプラー回転からのずれの徴候があることが分かった.これはPDS 70b の場所から離れた場所でのダストリングの場所での圧力勾配の存在を示唆している.
さらに内側では,おそらく北西領域でガスとダスト両方でブリッジ状の構造と思われるもので繋がった内側円盤も検出された.
今回の観測を,過去の近赤外測光観測で導出された PDS 70b の推定質量の範囲 (5 - 9 木星質量) をカバーする,異なる質量の惑星を含めた流体力学シミュレーションと比較した.その結果,10 木星質量の惑星でも広いギャップの広がりを説明するには不十分と考えられ,さらなる低質量の天体が観測された円盤の形態を説明するには必要だと考えられる.
同じ天体 PDS 70 の周りの惑星候補と円盤についての論文.
Muley et al. (2019) では流体シミュレーションから,単独の惑星でも離心率が増大するために広いギャップが説明可能だとしています.
Keppler et al. (2019) は観測データを新たに解析した論文で,その中で流体シミュレーションも行っていますが,そこでは単独の惑星では広いギャップを説明可能だとしています.
arXiv:1902.07191
Muley et al. (2019)
PDS 70: A transition disk sculpted by a single planet
(PDS 70:単一の惑星で切り取られた遷移円盤)
概要
遷移円盤中の広く深い空洞は,円盤中に形成中の惑星によってくり抜かれたとものであると考えられている.PDS 70 はおよそ 500 万歳の年老いた遷移円盤であり,22 au の位置の数木星質量の惑星候補 PDS 70b と,~30 au のガスのギャップと ~60 au のダストのギャップがあることが報告されている.そのため,惑星による空洞形成仮説の研究に有用なケースである.
ここでは PEnGUIn 流体力学コードを用いて,PDS 70b の軌道進化と降着を系の年齢に渡って計算した.
その結果,降着する惑星が 2.5 木星質量に到達した段階で軌道離心率が自発的に増大し,PDS 70 の広い範囲からの物質を集めることが分かった.輻射輸送事後処理を DALI を用いて行い,観測されたギャップの分布を正確に再現できることを示した.
今回の結果は,スーパージュピター質量の惑星が独力で遷移円盤の空洞を開くことができることを実証した.また,このような巨大惑星で測定される高い軌道離心率は,円盤-惑星相互作用の自然な帰結である可能性を示唆している.
arXiv:1902.07639
Keppler et al. (2019)
A highly structured disk around the planet host PDS 70 revealed by high-angular resolution observations with ALMA
(ALMA を用いた高角度分解能観測で明らかになった惑星を持つ PDS 70 まわりの高度に構造化された円盤)
概要
PDS 70b は,現在のところ遷移円盤の中に撮像観測で検出されている最も確実な若い惑星であり,中心星から 195 mas (~22 au),位相角 155° の位置にある.そのためこの系は,形成段階における若い惑星の特性を特徴付ける良い観測対象である.このおよそ 500 万歳の若い惑星系の特性を研究するため,星周円盤のガスとダスト放射における PDS 70b の直接的・間接的な兆候を追うことを目的とした観測を行った.ALMA band 7 観測で,ダスト連続波と 12CO (3-2) の遷移,およびその組み合わせをアーカイブデータから得た.
このデータの分解能はこれまでにないほどのもので,分解能はおよそ 70 mas (~ 8 au) である.
解析の結果,PDS 70b が存在する場所での周惑星物質の質量に対して,~0.01 地球質量という上限値を導出し,またダストとガスの両方で高度な構造を持った星周円盤があることを見出した.
外側のダストリングの極大は 0.65” (74 au) であり,また分解されていない二番目の極大の可能性がある特徴を 0.53” (60 au) に検出した.CO の積分強度は ~0.2” (23 au) の位置での放射の減少の証拠を示し,これの幅は ~ 0.11” (11 au) であった.
ガスの運動学からは,中心星から 0.8” (91 au) 以内でのケプラー回転からのずれの徴候があることが分かった.これはPDS 70b の場所から離れた場所でのダストリングの場所での圧力勾配の存在を示唆している.
さらに内側では,おそらく北西領域でガスとダスト両方でブリッジ状の構造と思われるもので繋がった内側円盤も検出された.
今回の観測を,過去の近赤外測光観測で導出された PDS 70b の推定質量の範囲 (5 - 9 木星質量) をカバーする,異なる質量の惑星を含めた流体力学シミュレーションと比較した.その結果,10 木星質量の惑星でも広いギャップの広がりを説明するには不十分と考えられ,さらなる低質量の天体が観測された円盤の形態を説明するには必要だと考えられる.
同じ天体 PDS 70 の周りの惑星候補と円盤についての論文.
Muley et al. (2019) では流体シミュレーションから,単独の惑星でも離心率が増大するために広いギャップが説明可能だとしています.
Keppler et al. (2019) は観測データを新たに解析した論文で,その中で流体シミュレーションも行っていますが,そこでは単独の惑星では広いギャップを説明可能だとしています.
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