×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1903.07694
Espinoza et al. (2019)
HD 213885b: A transiting 1-day-period super-Earth with an Earth-like composition around a bright (V=7.9) star unveiled by TESS
(HD 213885b:TESS によって明らかにされた明るい (V=7.9) 恒星周りの地球類似組成を持つ 1 日周期のトランジットするスーパーアース)
軌道周期は 1.008 日であり,中心星は明るい (V=7.9) 恒星である.この惑星は TESS の測光観測によって発見された.半径は 1.745 地球半径であり,FEROS,HARPS,CORALIE を用いた視線速度観測で質量は 8.83 地球質量と測定された.これにより,全体の組成を制約するのに十分な情報が得られた.この惑星は,地球の組成に類似しているが鉄が多いと考えられる.
HD 213885b の半径,質量と受ける日射量は 55 Cancri e (かに座55番星e) とほぼ同じであり,物理的特性という意味での初めての「双子」の系外惑星である.しかし HD 213885b は 55 Cancri e よりも高密度である (9.15 g cm-3).
精密な視線速度測定からは,4.78 日周期のさらなるシグナルが検出された.これは 2 番目のトランジットしない惑星 (HD 213885c) によるものと解釈される.この場合,最小質量は 19.95 地球質量であり海王星質量の系外惑星であると考えられる.
HD 213885 系は将来の惑星大気の特徴付けの対象として非常に興味深い.これは,中心星である HD 213885 はトランジットする超短周期スーパーアースを持つ恒星としては 2 番目に明るいからである.なお,1 番明るいのは 55 Cancri である.
有効温度:5978 K
スペクトル型:G
金属量:[Fe/H] = -0.04
等級:V = 7.9960
質量:1.068 太陽質量
半径:1.1011 太陽半径
光度:1.376 太陽光度
年齢:38.0 億年
距離:47.97 pc
質量:8.83 地球質量
半径:1.745 地球半径
密度:9.15 g cm-3
表面重力:28.5 m s-2
軌道長半径:0.02012 AU
平衡温度:2128 K
最小質量:19.95 地球質量
軌道長半径:0.056798 AU
平衡温度:1265.4 K
仮に HD 213885c がトランジットを起こすとした場合,軌道傾斜角は 84.82° より大きくなる必要があり,この場合 HD 213885c の質量は 19.95-20.05 地球質量の範囲となる.HD 213885c のトランジットは検出されていないことから,HD 213885c の半径の上限を 1.7 地球半径とすると,HD 213885c の密度は HD 213885b の 2 倍と非常に高密度な天体でなければならない.そのような天体は希少であることからも,HD 213885c はトランジットを起こしていないであろうことを支持する統計的な証拠となる.
二次食は HD 213885b, c ともに非検出であった.これは TESS が観測を行っているバンドパスでの惑星の反射光と放射光両方は極めて低いと予想されることからも整合的な結果である.
またトランジットタイミング変化 (transit timing variation, TTV) の調査を HD 213885b に対して行った.その結果,TESS による 12 回目のトランジット時を除いて明確な TTV の兆候は見られなかった.12 回目は予測よりも 30 分ほど遅くトランジットが起きているように見えるが,おそらくは機器の影響と思われる,トランジットの egress 時 (惑星がトランジットを終える段階) の減光が起きている.
27 日間に渡る観測での TTV の振幅への上限はおよそ 2 分である.HD 213885c による HD 213885b のトランジット時刻への影響は,オーダー計算では 4 秒程度と見積もられており,これと観測からの上限は整合的である.
HD 213885c は,HD 213885b との相互軌道傾斜角が大きすぎない限り,短周期の海王星型惑星であると考えられる.トランジットを起こしていないことから傾斜角は 84.829° より小さく,真の質量は 18.54 地球質量より大きい.なお HD 213885b と c の相互軌道傾斜角への制約は与えられていない.
HD 213885b は 55 Cancri e (かに座55番星e,55 Cnc e) と類似している.
超短周期惑星を持つ恒星の中で,HD 213885 は 55 Cnc 続いて 2 番目に明るい中心星である.しかし K2 バンドではかに座55番星に比べて 2.4 等級暗く,V バンドでは 2 等級暗いため,大気の特徴付は 55 Cnc e よりも難しいものになるだろう.
arXiv:1903.07694
Espinoza et al. (2019)
HD 213885b: A transiting 1-day-period super-Earth with an Earth-like composition around a bright (V=7.9) star unveiled by TESS
(HD 213885b:TESS によって明らかにされた明るい (V=7.9) 恒星周りの地球類似組成を持つ 1 日周期のトランジットするスーパーアース)
概要
HD 213885 (TOI-141, TIC 403224672) まわりの超短周期スーパーアース HD 213885b (TOI-141b) の発見について報告する.軌道周期は 1.008 日であり,中心星は明るい (V=7.9) 恒星である.この惑星は TESS の測光観測によって発見された.半径は 1.745 地球半径であり,FEROS,HARPS,CORALIE を用いた視線速度観測で質量は 8.83 地球質量と測定された.これにより,全体の組成を制約するのに十分な情報が得られた.この惑星は,地球の組成に類似しているが鉄が多いと考えられる.
HD 213885b の半径,質量と受ける日射量は 55 Cancri e (かに座55番星e) とほぼ同じであり,物理的特性という意味での初めての「双子」の系外惑星である.しかし HD 213885b は 55 Cancri e よりも高密度である (9.15 g cm-3).
精密な視線速度測定からは,4.78 日周期のさらなるシグナルが検出された.これは 2 番目のトランジットしない惑星 (HD 213885c) によるものと解釈される.この場合,最小質量は 19.95 地球質量であり海王星質量の系外惑星であると考えられる.
HD 213885 系は将来の惑星大気の特徴付けの対象として非常に興味深い.これは,中心星である HD 213885 はトランジットする超短周期スーパーアースを持つ恒星としては 2 番目に明るいからである.なお,1 番明るいのは 55 Cancri である.
パラメータ
HD 213885
別名:TOI-141, TIC 403224672有効温度:5978 K
スペクトル型:G
金属量:[Fe/H] = -0.04
等級:V = 7.9960
質量:1.068 太陽質量
半径:1.1011 太陽半径
光度:1.376 太陽光度
年齢:38.0 億年
距離:47.97 pc
HD 213885b
軌道周期:1.008035 日質量:8.83 地球質量
半径:1.745 地球半径
密度:9.15 g cm-3
表面重力:28.5 m s-2
軌道長半径:0.02012 AU
平衡温度:2128 K
HD 213885c
軌道周期:4.78503 日最小質量:19.95 地球質量
軌道長半径:0.056798 AU
平衡温度:1265.4 K
HD 213885c のトランジット探査
TESS の測光観測データから,HD 213885c のトランジットが起きていないかの調査を行った.ここでは,双方の惑星が円軌道であることを仮定して調査した.仮に HD 213885c がトランジットを起こすとした場合,軌道傾斜角は 84.82° より大きくなる必要があり,この場合 HD 213885c の質量は 19.95-20.05 地球質量の範囲となる.HD 213885c のトランジットは検出されていないことから,HD 213885c の半径の上限を 1.7 地球半径とすると,HD 213885c の密度は HD 213885b の 2 倍と非常に高密度な天体でなければならない.そのような天体は希少であることからも,HD 213885c はトランジットを起こしていないであろうことを支持する統計的な証拠となる.
二次食は HD 213885b, c ともに非検出であった.これは TESS が観測を行っているバンドパスでの惑星の反射光と放射光両方は極めて低いと予想されることからも整合的な結果である.
またトランジットタイミング変化 (transit timing variation, TTV) の調査を HD 213885b に対して行った.その結果,TESS による 12 回目のトランジット時を除いて明確な TTV の兆候は見られなかった.12 回目は予測よりも 30 分ほど遅くトランジットが起きているように見えるが,おそらくは機器の影響と思われる,トランジットの egress 時 (惑星がトランジットを終える段階) の減光が起きている.
27 日間に渡る観測での TTV の振幅への上限はおよそ 2 分である.HD 213885c による HD 213885b のトランジット時刻への影響は,オーダー計算では 4 秒程度と見積もられており,これと観測からの上限は整合的である.
HD 213885 系について
HD 213885b は確実なスーパーアースである.惑星内部モデルから,組成の大部分は岩石であり,非常に薄い地球型の大気を持つのみであると推定される.HD 213885c は,HD 213885b との相互軌道傾斜角が大きすぎない限り,短周期の海王星型惑星であると考えられる.トランジットを起こしていないことから傾斜角は 84.829° より小さく,真の質量は 18.54 地球質量より大きい.なお HD 213885b と c の相互軌道傾斜角への制約は与えられていない.
HD 213885b は 55 Cancri e (かに座55番星e,55 Cnc e) と類似している.
超短周期惑星を持つ恒星の中で,HD 213885 は 55 Cnc 続いて 2 番目に明るい中心星である.しかし K2 バンドではかに座55番星に比べて 2.4 等級暗く,V バンドでは 2 等級暗いため,大気の特徴付は 55 Cnc e よりも難しいものになるだろう.
PR
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック