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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1904.02218
Katz et al. (2019)
Evidence against non-gravitational acceleration of 1I/2017 U1 `Oumuamua
(1I/2017 U1 オウムアムアの非重力的加速への反証)

概要

Micheli et al. (2018) では,オウムアムアの軌道の 7 個のパラメータでのフィットから,太陽とは反対方向への非重力的加速の存在が指摘され,これは彗星のような脱ガスに原因があるという可能性が示唆されている.ここで示唆された,ガスに対するダストの比率は,太陽系の既知の彗星よりも 100 倍大きいものである.軌道のフィットに非重力項を含めることで,ほぼ同時期の座標の残差が潰れるという報告は理解しにくいものである.

Meech et al. (2017) では,オウムアムアからのダストの流出の上限値は 1.7 × 10-3 kg/s と報告しており,彗星というよりは小惑星状の天体であるとした.しかし Micheli et al. (2018) では,太陽から逆二乗則の依存性での非重力的な加速度が存在している可能性が報告された.これは太陽からの放射加熱の影響下でのオウムアムアからの脱ガスの影響と考えられた.そこでは,脱ガス率は 3.6 kg/s と示唆され,アウトフロー中のガスに対するダストの割合は 0.5 × 10-3 未満と推定された.

Micheli et al. (2018) で主張された脱ガス率は,オウムアムアはいかなる既知の太陽系の彗星天体とも異なり,異常にきれいな氷でできていることを示唆している.このことが,報告された非重力的な加速の存在に対する疑義の理由である.

Micheli et al. (2018) では,オウムアムアからのガス流は比較的大きな粒子を含んでおり,これは光の散乱が非効率的であるため,ガスに対する固体の割合を太陽系の彗星天体と同程度にする一方で,彗星のようなコマがオウムアムアには見られないという状態を説明できると示唆した.

これを経験的に否定することは出来ないが,現象論的な違いはガスに対する微細なダストの比率にある.これらのより大きな粒子が存在した場合でも,オウムアムアでのガスに対する微細な粒子の割合は依然として太陽系の天体と異なる.このような大きな粒子の可能性は赤外線観測で制約が与えられている (Trilling et al. 2018).

さらなる疑義の理由は Micheli et al. (2018) の図 2 での,軌道のフィット結果での分散についてである.Micheli et al. (2018) では 6 個のパラメータ (重力のみ) で観測結果の軌道フィッティングが行われている.7 つめのパラメータとして非重力的な力の強度を追加することで,この分散は少なくともファクター 3 小さくなる.非重力的な力が正しかったとしてもこの結果は予想されない.なぜならこれらは滑らかに変化する時間の関数だからである.

オウムアムアの柱密度が 0.1-1 g/cm2 程度であれば,非重力的な加速が説明可能である.
Bialy & Loeb (2018) はオウムアムアが薄い人工的な構造である可能性を示唆したが,示唆された柱密度は光学的なソーラーセイルより一桁大きいものである.
また,Moro-Martin (2019) ではオウムアムアが空隙の多いフラクタル構造で密度が 10-5 g/cm3 であれば説明できるとした,しかしこのような天体は非常に壊れやすく,太陽系で観測されている微視的なフラクタル構造の集合体よりも低密度である.

ここでの議論は Rafikov (2018) のものとは独立しているが,同じ結論に到達した.オウムアムアは Micheli et al. (2018) で報告されたほどの大きな非重力的な力を持っていないだろうと結論付ける.

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