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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1906.02860
Flagg et al. (2019)
CO Detected in CI Tau b: Hot Start Implied by Planet Mass and MK
(Cl Tau b での CO の検出:惑星質量と MK で示唆されるホットスタート)
この観測で,惑星大気中の一酸化炭素の直接検出をもって惑星の存在を確認した.また,視線速度変動の振幅から,惑星質量は 11.6 木星質量と計算された.
中心星と惑星のフラックスのコントラストを推定し,K バンドでの惑星の絶対等級を 8.17 と推定した.この等級は,惑星 CI Tau b は “hot start” な形成過程で形成されたことを示唆するものである.
今回の発見により,おうし座CI星b (CI Tau b) は存在が確認された中では最も若い系外惑星であることが分かった.またおうし座T型星の周りの惑星としては,モデルに依存しない,直接測定された力学的質量が分かっている初めての系外惑星である.
巨大惑星の形成モデルでは,巨大惑星は形成の初期段階では大きく異なる温度で形成されることが示唆されている.具体的には,重力不安定を介して形成された場合は高温の惑星が,コア降着を介して形成された場合は比較的低温で暗い惑星が形成されると考えられる (Marley et al. 2007).
しかし実際には,どちらのモデルでも広い温度範囲の惑星を形成可能であることが指摘されている (Helled et al. 2014).これらのモデルをよりよく識別するためには,モデルに依存しない若い惑星の質量に関する情報が必要である.
これまでにいくつかの惑星が直接撮像によって前主系列星の周りに発見されており,その中にはおうし座T型星の周りで発見されているものもある.これらの惑星の等級の測定結果は,惑星形成理論を評価するのに使われている.
しかしこれらの系では,恒星と惑星の質量比が大きいことと,恒星と惑星との距離が大きく離れているために恒星の運動を測定するのが一般に不可能であり,そのため惑星質量はモデル依存にならざるを得ない.がか座ベータ星b の例外を除くと,これらの天体が惑星質量程度であることを確認するのは依然として不可能である.
若い恒星は主系列星よりずっと活発であり,これは惑星によるシグナルを隠し,視線速度法とトランジット法のどちらでも惑星の検出を難しくする.しかし過去数年の間に,視線速度を用いて前主系列星の回りに惑星候補が発見されている.例えば CI Tau b (Johns-Krull et al. 2016),V830 Tau b (Donati et al. 2016),Tap 26 b (Yu et al. 2017) である.
過去の研究では,視線速度法によって最小質量が 8.08 木星質量,軌道周期 8.989 日の惑星候補天体が検出されている.恒星周囲の円盤の撮像観測から,円盤の傾斜角は ~44° と推定されており (Guilloteau et al. 2014),この傾斜角を元にすると真の質量は ~11 木星質量と推定される.
もし惑星がいくつかの「ホットスタート」機構によって形成されたと考えると,理論モデルによると中心星とのフラックスのコントラスト比は 10-3 程度になることが期待される (Spiegel & Burrows 2012).このコントラスト比は分光観測で直接検出可能な値である.しかし,もし惑星が「コールドスタート」機構を介して形成された場合,コントラスト比は最大でも 10-5 に留まると予想され,これは現在の技術では検出できない.
また,惑星の大気から一酸化炭素を直接検出した.
この惑星は,存在が確認された系外惑星の中では最も若く,またおうし座T型星まわりでモデルに依存しない質量が測定された唯一の系外惑星である.
若い巨大系外惑星の理論モデルに基づくと,10 木星質量程度の天体が今回観測された明るさになるためには,この惑星は「ホットスタート」機構で形成されている必要がある.
さらに Spiegel & Burrows (2012) によると,200 万歳の段階での 10 木星質量の惑星の半径は ~2 木星質量であると推定され,また惑星の有効温度は ~2300 K と推定される.この明るさは他の若い恒星周りの惑星質量天体と整合的である.ただし,がか座ベータ星b と今回の CI Tau b を除くと,他の若い惑星は質量の推定値にモデル依存性が存在する.
arXiv:1906.02860
Flagg et al. (2019)
CO Detected in CI Tau b: Hot Start Implied by Planet Mass and MK
(Cl Tau b での CO の検出:惑星質量と MK で示唆されるホットスタート)
概要
おうし座CI星 (CI Tau) の赤外線での高分散スペクトルを取得した.この天体は.スペクトルを直接検出するのに適した若い惑星候補天体を複数持っている.この観測で,惑星大気中の一酸化炭素の直接検出をもって惑星の存在を確認した.また,視線速度変動の振幅から,惑星質量は 11.6 木星質量と計算された.
中心星と惑星のフラックスのコントラストを推定し,K バンドでの惑星の絶対等級を 8.17 と推定した.この等級は,惑星 CI Tau b は “hot start” な形成過程で形成されたことを示唆するものである.
今回の発見により,おうし座CI星b (CI Tau b) は存在が確認された中では最も若い系外惑星であることが分かった.またおうし座T型星の周りの惑星としては,モデルに依存しない,直接測定された力学的質量が分かっている初めての系外惑星である.
背景
若い系外惑星と惑星形成モデル
若い系外惑星の観測は,惑星形成を理解する上で重要である.巨大惑星の形成モデルでは,巨大惑星は形成の初期段階では大きく異なる温度で形成されることが示唆されている.具体的には,重力不安定を介して形成された場合は高温の惑星が,コア降着を介して形成された場合は比較的低温で暗い惑星が形成されると考えられる (Marley et al. 2007).
しかし実際には,どちらのモデルでも広い温度範囲の惑星を形成可能であることが指摘されている (Helled et al. 2014).これらのモデルをよりよく識別するためには,モデルに依存しない若い惑星の質量に関する情報が必要である.
これまでにいくつかの惑星が直接撮像によって前主系列星の周りに発見されており,その中にはおうし座T型星の周りで発見されているものもある.これらの惑星の等級の測定結果は,惑星形成理論を評価するのに使われている.
しかしこれらの系では,恒星と惑星の質量比が大きいことと,恒星と惑星との距離が大きく離れているために恒星の運動を測定するのが一般に不可能であり,そのため惑星質量はモデル依存にならざるを得ない.がか座ベータ星b の例外を除くと,これらの天体が惑星質量程度であることを確認するのは依然として不可能である.
若い恒星は主系列星よりずっと活発であり,これは惑星によるシグナルを隠し,視線速度法とトランジット法のどちらでも惑星の検出を難しくする.しかし過去数年の間に,視線速度を用いて前主系列星の回りに惑星候補が発見されている.例えば CI Tau b (Johns-Krull et al. 2016),V830 Tau b (Donati et al. 2016),Tap 26 b (Yu et al. 2017) である.
おうし座CI星
おうし座CI星 (CI Tau) は,年齢が 200 万〜 300 万歳,スペクトル型が K7 の,古典的おうし座T型星である.過去の研究では,視線速度法によって最小質量が 8.08 木星質量,軌道周期 8.989 日の惑星候補天体が検出されている.恒星周囲の円盤の撮像観測から,円盤の傾斜角は ~44° と推定されており (Guilloteau et al. 2014),この傾斜角を元にすると真の質量は ~11 木星質量と推定される.
もし惑星がいくつかの「ホットスタート」機構によって形成されたと考えると,理論モデルによると中心星とのフラックスのコントラスト比は 10-3 程度になることが期待される (Spiegel & Burrows 2012).このコントラスト比は分光観測で直接検出可能な値である.しかし,もし惑星が「コールドスタート」機構を介して形成された場合,コントラスト比は最大でも 10-5 に留まると予想され,これは現在の技術では検出できない.
結論
K バンドでの観測で,惑星の存在を強く支持する証拠を発見した.質量は 11.6 木星質量である.また,惑星の大気から一酸化炭素を直接検出した.
この惑星は,存在が確認された系外惑星の中では最も若く,またおうし座T型星まわりでモデルに依存しない質量が測定された唯一の系外惑星である.
若い巨大系外惑星の理論モデルに基づくと,10 木星質量程度の天体が今回観測された明るさになるためには,この惑星は「ホットスタート」機構で形成されている必要がある.
さらに Spiegel & Burrows (2012) によると,200 万歳の段階での 10 木星質量の惑星の半径は ~2 木星質量であると推定され,また惑星の有効温度は ~2300 K と推定される.この明るさは他の若い恒星周りの惑星質量天体と整合的である.ただし,がか座ベータ星b と今回の CI Tau b を除くと,他の若い惑星は質量の推定値にモデル依存性が存在する.
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