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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1906.05048
Persson et al. (2019)
Greening of the Brown Dwarf Desert. EPIC 212036875 b -- a 51 MJ object in a 5 day orbit around an F7 V star
(褐色矮星砂漠の緑化.EPIC 212036875b -- F7V 星の周りの 5 日軌道にある 51 木星質量天体)

概要

これまでに 2000 個以上の褐色矮星が主に直接撮像によって検出されているが,これらの特徴付けは難しい.これは褐色矮星が暗いことと,特徴付けにはモデル依存性があることが原因である.

しかし主星をトランジットする褐色矮星の場合は,高精度な観測を直接行うことが可能である.ここでの目的は,現在 20 個未満しか発見されていないトランジットする褐色矮星のサンプルに,質量や半径,バルク密度がよく特徴付けられた新しいサンプルを加えることで,褐色矮星の性質と形成を探査することである.

ケプラー K2 ミッションの Campaign 16 での観測視野内から,KESPRINT コンソーシアムにより褐色矮星候補天体が 1 つ検出された.K2 の測光データを,多色測光観測,撮像,視線速度測定結果とあわせ,この検出が偽陽性である可能性を否定し,この系の基本的な特性を決定した.

今回検出されたのは,トランジットする褐色矮星 EPIC 212036875b である.軌道周期は 5.17 日で,離心軌道にある天体である.やや進化した F7V 星 EPIC 212036875 を公転しており.この恒星は 1.15 太陽質量,1.41 太陽半径,年齢は 51 億歳である.

伴星である褐色矮星 EPIC 212036875b は,51 木星質量,0.83 木星半径であり,天体の平均密度は 108 g cm-3 である.EPIC 212036875b は,褐色矮星砂漠 (brown dwarf desert) の中に存在する希少な天体である.

惑星・褐色矮星・恒星の質量-密度図上では,全ての巨大惑星と褐色矮星は ~ 0.3 木星質量から 73 木星質量程度の水素燃焼のターンオーバーに至るまで,同じ傾向に従うことを発見した.この天体は内部モデルおよび経験的なフィッティングから決定されるように,この図中での水素・ヘリウム主体の天体の理論モデルに近い.


また,この天体が円盤の外側領域における円盤の重力不安定を介して形成され,その後内側へ急速な移動をしたという形成過程の可能性について議論する.軌道の潮汐円軌道化は,まだ褐色矮星の半径が大きかった初期の早い段階に短い期間で発生したと思われる.
恒星の自転周期と褐色矮星の軌道周期の同期が見られないことから,恒星の散逸係数は弱い (Q’* > 108) と考えられ,円軌道化のタイムスケールは 230 億年以上であることを示唆する.あるいは,恒星と褐色矮星の間に磁気的な力および潮汐力の相互作用が存在することを示唆する.

背景

巨大ガス惑星と褐色矮星の境界

巨大ガス惑星と褐色矮星の区別は未だ不明瞭である.これは,この質量範囲にあるよく特徴付けられた天体が少ないことに起因する.

褐色矮星は,伝統的には大きい惑星と低質量の恒星の間に位置する天体とされてきた.これらの質量は 13 - 80 木星質量とされ (Burrows et al. 2001),典型的には 10 万年ほど継続する重水素燃焼が維持され,しかし水素燃焼を起こす限界の 75-80 木星質量よりは低質量である.また 65 木星質量よりも重い天体ではリチウム燃焼も発生する.正確な限界質量は,理論モデルと内部化学組成に依存する (Dieterich et al. 2014など).

巨大ガス惑星と褐色矮星のその他の区別は,その形成過程に基づくものである.褐色矮星は,星間物質と同じ化学組成を持ち,力学的タイムスケールで重力不安定によって恒星のように形成されたものだと考えられる.一方で,巨大惑星はコア降着によってより長いタイムスケールで形成し,中心星と比較すると大きな金属存在度を持つ (Chabrier et al. 2014).
この定義では,褐色矮星の最小質量はおよそ 3 木星質量で,惑星の最大質量は数十木星質量になりうるため,両者の質量領域はオーバーラップすることになる.

その他の意見としては,褐色矮星は惑星よりも恒星に類似しているとして,水素燃焼を起こす恒星とは区別されるべきでないとするものもある (Whiteorth 2018).

一方で Hatzes & Rauer (2015) では,天体の質量-密度関係に基づき,褐色矮星は独立した一つの分類としてではなく,むしろ巨大惑星に分類されるべきだという意見もある.彼らは,質量が 0.3- 60 木星質量の範囲の天体は,恒星の主系列 (main sequence) のアナロジーとして,ガス惑星系列 (gaseous planet sequence) として定義し,この限界より軽い天体は低質量惑星,重い天体は低質量恒星と分類されるべきだとしている.ただし,この分類の上限は 80 木星質量である.
この意見は,褐色矮星は最大で 80 木星質量に至るまで,質量-半径図において巨大惑星と同じ傾向に従うという,Chen & Kipping (2017) によって発見された関係によって補強される.

褐色矮星砂漠

これまでに 2000 個以上の褐色矮星が,主に大規模な直接撮像サーベイによって検出されているが (Skrzypek et al. 2016),検出された褐色矮星の大部分は他の天体に重力的に束縛されず自由浮遊しており,およそ 400 個のみが,主星から大きく離れた距離で重力的に束縛されている.

主系列星に近接した軌道を持つ褐色矮星伴星は非常に希少な存在である.いくつかのサーベイでは,中心星に近接した軌道 (3 AU 未満) を持ち主系列の FGKM 型星を公転する褐色矮星の存在頻度は,巨大惑星と近接連星のものよりもずっと低いことが示されている (Marcy & Butler 2000,Sahlmann et al. 2011など).これは一般に褐色矮星砂漠 (brown dwarf desert) と呼ばれており,軽い褐色矮星と重い褐色矮星の形成メカニズムに違いがある結果生じているものである可能性がある.

質量が 35-55 木星質量で軌道周期が 100 日未満の領域が,この「砂漠」で最も乾いた (存在密度が低い) 領域である (Ma & Ge 2014).0.2 AU 未満の非常に近接した軌道にある天体では,3-13 木星質量の低質量側の天体が欠乏していることが分かっている (Triaud et al. 2017).

結論

EPIC 212036875b という新しい褐色矮星を発見した.

中心星である EPIC 212036875 は赤道をこちらに見せている配置に近いため,今後のさらなる 8-10 m 級望遠鏡による観測で,三次元的な自転軸と公転軸の角度がロシター効果で測定できる可能性がある.

質量-密度図上において,褐色矮星と巨大惑星の間には違いが無いことを発見した.これは過去の Hatzes & Rauer (2015) の示唆を支持する結果であり,また Chen & Kipping (2017) の結果によっても支持される.つまり,褐色矮星は単に巨大惑星の大質量側の末端であり,成熟した褐色矮星と巨大惑星は観測的な違いが無いことを示唆している

褐色矮星砂漠は,おそらくはコア降着によって形成される巨大惑星の分布の大質量側の末端に向かって数が減っていくことと,重力不安定で形成される恒星の低質量側の末端に向かって数が減っていくことを反映している可能性がある.

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