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無題
X^2 始めまして。おそらく天文学あるいは天体物理学の専門家の方とお見受けします。
> 太陽の近傍にある恒星の中では非常に明るく
概要を読んでいてこの部分に違和感があるのですが、M7.0というスペクトル型としては非常に明るいという意味なのでしょうか、それとも太陽近傍の恒星なので、視等級が比較的明るいという意味なのでしょうか?
X^2 始めまして。おそらく天文学あるいは天体物理学の専門家の方とお見受けします。
> 太陽の近傍にある恒星の中では非常に明るく
概要を読んでいてこの部分に違和感があるのですが、M7.0というスペクトル型としては非常に明るいという意味なのでしょうか、それとも太陽近傍の恒星なので、視等級が比較的明るいという意味なのでしょうか?
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1906.07196
Zechmeister et al. (2019)
The CARMENES search for exoplanets around M dwarfs. Two temperate Earth-mass planet candidates around Teegarden's Star
(M 矮星周りの系外惑星の CARMENES 探査.ティーガーデン星周りの 2 つの温暖な地球質量惑星候補)
CARMENES による M 型星回りでの系外惑星探査の一部として,ティーガーデン星の 200 回を超える視線速度観測を行い,系外惑星のシグナルを解析した.その結果,ティーガーデン星の視線速度に周期的な変動を発見した.
ティーガーデン星の測光測定を行い,恒星の光度変動が惑星シグナルを模倣している可能性を否定した.
解析の結果,ティーガーデン星の周囲に 2 つの惑星候補天体が存在する兆候を発見した.
最小質量は 1.1 地球質量で,軌道周期はそれぞれ 4.91 日と 11.4 日である.過去の観測データやフォローアップ観測では,これらの惑星がトランジットを起こしている証拠は得られなかった.
ティーガーデン星には小さい測光変動があり,この変動周期からは恒星の自転が遅いことと,恒星が年老いていることが示唆される.
今回発見された 2 つの惑星は,これまでに見つかった中でもかなり低質量の惑星であり,超低温矮星の周りで視線速度を用いて質量が決定された中では初めての地球質量惑星の発見例である.
系外惑星は多数発見されているものの,スペクトル型 M4.5V より晩期の恒星を公転する惑星は,これらのスペクトル型の恒星は非常に多数が存在するにもかかわらず,非常に少数しか発見されていない.
有効温度が 3000 K よりも低温な恒星で,惑星を持っているのが分かっているのはこれまでに 2 つのみである.ひとつはプロキシマ・ケンタウリ (M5.5V) であり,太陽に最も近い恒星で地球質量の惑星をハビタブルゾーン内に持つ (Anglada-Escudé et al. 2016).もう一つは TRAPPIST-1 (M8.0V) で 7 個のトランジット惑星を持ち,太陽系から 12.0 pc の距離にある (Gillon et al. 2016,2017).
非常に晩期型のスペクトルを持つ恒星周りでの惑星の検出個数が少ないのは,主に観測バイアスによる.CARMENES やその他のプロジェクトでは,このバイアスの解消を目指した観測に取り組んでいる.
太陽からの距離は 3.831 pc で,太陽から 24 番目に近い距離にある恒星である.スペクトル型は M7.0V である.
等級:V = 15.08,J = 8.39
有効温度:2904 K
光度:0.00073 太陽光度
半径:0.107 太陽半径
質量:0.089 太陽質量
金属量:[Fe/H] = -0.19
年齢:80 億歳以上
軌道長半径:0.0252 au
最小質量:1.05 地球質量
日射量:地球の 1.15 倍
軌道長半径:0.0443 au
最小質量:1.11 地球質量
日射量:地球の 0.37 倍
惑星半径は惑星質量に対する依存性は弱いが,惑星の組成には強く依存する.2 つの極端な組成の間,つまり惑星が純粋な鉄コアから成る場合と,冷たい水素・ヘリウムのミニネプチューンの組成と間で,想定される惑星半径はおよそ 3 倍ほど異なるものとなる.
これらの半径とともに,恒星と惑星のその他のパラメータを考慮し, Schulze-Makuch et al. (2011) で定義されている Earth Similarity Index (ESI) を計算した.ESI は系外惑星の主要なパラメータを地球と比較する指標であり,地球の値は 1 になるように定義されている.ここでは,平衡温度,大気の脱出速度,バルク密度,惑星半径を考慮に入れ,特に惑星の平衡温度を主要な寄与として重み付けした ESI を使用した.
その結果,ESI は ティーガーデン星b と c でそれぞれ 0.94 と 0.8 となった.ティーガーデン星b の 0.94 という値は,現在発見されている系外惑星の ESI 値としては最も高いものである.
しかし ESI は単なる推定に過ぎず,パラメータの異なる重み付けをした場合,ESI は異なる値になる.例えばここでの ESI の定義は,惑星の居住可能性に非常に影響を及ぼすと考えられる,恒星のスペクトルエネルギー分布とそれによる惑星大気組成は考慮に入っていない.
また,ティーガーデン星b は地球とほとんど同じ日射量を受けているため地球と同一の平衡温度を持っていると考えられるが.Kopparapu et al. (2014) の定義では保守的なハビタブルゾーンの外となる.これは,Kopparapu et al. (2014) での議論では,惑星大気中の水蒸気による暴走温室効果は,低質量の恒星周りではより低い日射量で開始すると考えられていることに起因する.この効果は ESI の計算では無視されており,そのために保守的なハビタブルゾーンの内側にあるティーガーデン星c よりも,保守的なハビタブルゾーンから外れているティーガーデン星b の方が高い ESI を持つという興味深い事実を導いている.
まず,ティーガーデン星b と c は超低温矮星の周りで視線速度法を用いて発見された初めての系外惑星である.
どちらの惑星も最小質量は地球に近く,岩石および部分的に鉄を含む組成か,あるいは水を主成分とする組成であった場合,地球と似た半径であることが予想される.
さらに,これらの惑星は保守的なハビタブルゾーンに近い軌道かその内部にあり,言い換えれば居住可能な環境である可能性がある.
ティーガーデン星の年齢の推定値は 80 億歳であり,これらの惑星は太陽系の惑星よりもおよそ 2 倍年老いていることになる.
興味深いことに,太陽系の惑星はティーガーデン星から見て太陽をトランジットする領域に入っている.仮にティーガーデン星まわりに生命がいた場合,地球は 2044-2496 年までの間,ティーガーデン星系からトランジット惑星として観測可能である.
arXiv:1906.07196
Zechmeister et al. (2019)
The CARMENES search for exoplanets around M dwarfs. Two temperate Earth-mass planet candidates around Teegarden's Star
(M 矮星周りの系外惑星の CARMENES 探査.ティーガーデン星周りの 2 つの温暖な地球質量惑星候補)
概要
ティーガーデン星 (Teegarden's Star) は,太陽の近傍にある恒星の中では非常に明るく,また非常に近い超低温矮星のひとつである.スペクトル型は M7.0V と晩期型星であり,比較的活動度が低く,CARMENES などでの近赤外線での視線速度を用いた系外惑星サーベイの主要なターゲットである.CARMENES による M 型星回りでの系外惑星探査の一部として,ティーガーデン星の 200 回を超える視線速度観測を行い,系外惑星のシグナルを解析した.その結果,ティーガーデン星の視線速度に周期的な変動を発見した.
ティーガーデン星の測光測定を行い,恒星の光度変動が惑星シグナルを模倣している可能性を否定した.
解析の結果,ティーガーデン星の周囲に 2 つの惑星候補天体が存在する兆候を発見した.
最小質量は 1.1 地球質量で,軌道周期はそれぞれ 4.91 日と 11.4 日である.過去の観測データやフォローアップ観測では,これらの惑星がトランジットを起こしている証拠は得られなかった.
ティーガーデン星には小さい測光変動があり,この変動周期からは恒星の自転が遅いことと,恒星が年老いていることが示唆される.
今回発見された 2 つの惑星は,これまでに見つかった中でもかなり低質量の惑星であり,超低温矮星の周りで視線速度を用いて質量が決定された中では初めての地球質量惑星の発見例である.
背景
晩期型星回りの系外惑星
1990 年代中頃に初めての系外惑星が発見されて以来,視線速度法を用いて 800 個以上の系外惑星が発見されてきた.またトランジット法では数千もの惑星が検出されている.系外惑星は多数発見されているものの,スペクトル型 M4.5V より晩期の恒星を公転する惑星は,これらのスペクトル型の恒星は非常に多数が存在するにもかかわらず,非常に少数しか発見されていない.
有効温度が 3000 K よりも低温な恒星で,惑星を持っているのが分かっているのはこれまでに 2 つのみである.ひとつはプロキシマ・ケンタウリ (M5.5V) であり,太陽に最も近い恒星で地球質量の惑星をハビタブルゾーン内に持つ (Anglada-Escudé et al. 2016).もう一つは TRAPPIST-1 (M8.0V) で 7 個のトランジット惑星を持ち,太陽系から 12.0 pc の距離にある (Gillon et al. 2016,2017).
非常に晩期型のスペクトルを持つ恒星周りでの惑星の検出個数が少ないのは,主に観測バイアスによる.CARMENES やその他のプロジェクトでは,このバイアスの解消を目指した観測に取り組んでいる.
ティーガーデン星
ティーガーデン星は,今世紀になって Teegarden et al. (2003) で発見された恒星である.太陽からの距離は 3.831 pc で,太陽から 24 番目に近い距離にある恒星である.スペクトル型は M7.0V である.
パラメータ
ティーガーデン星
距離:3.831 pc等級:V = 15.08,J = 8.39
有効温度:2904 K
光度:0.00073 太陽光度
半径:0.107 太陽半径
質量:0.089 太陽質量
金属量:[Fe/H] = -0.19
年齢:80 億歳以上
ティーガーデン星b
軌道周期:4.9100 日軌道長半径:0.0252 au
最小質量:1.05 地球質量
日射量:地球の 1.15 倍
ティーガーデン星c
軌道周期:11.409 日軌道長半径:0.0443 au
最小質量:1.11 地球質量
日射量:地球の 0.37 倍
議論・結論
Earth Similarity Index
今回発見された 2 つの惑星のトランジットは検出されなかったため,惑星の半径は導出できない.そのため,様々な組成での質量-半径関係からの推定を行った.惑星半径は惑星質量に対する依存性は弱いが,惑星の組成には強く依存する.2 つの極端な組成の間,つまり惑星が純粋な鉄コアから成る場合と,冷たい水素・ヘリウムのミニネプチューンの組成と間で,想定される惑星半径はおよそ 3 倍ほど異なるものとなる.
これらの半径とともに,恒星と惑星のその他のパラメータを考慮し, Schulze-Makuch et al. (2011) で定義されている Earth Similarity Index (ESI) を計算した.ESI は系外惑星の主要なパラメータを地球と比較する指標であり,地球の値は 1 になるように定義されている.ここでは,平衡温度,大気の脱出速度,バルク密度,惑星半径を考慮に入れ,特に惑星の平衡温度を主要な寄与として重み付けした ESI を使用した.
その結果,ESI は ティーガーデン星b と c でそれぞれ 0.94 と 0.8 となった.ティーガーデン星b の 0.94 という値は,現在発見されている系外惑星の ESI 値としては最も高いものである.
しかし ESI は単なる推定に過ぎず,パラメータの異なる重み付けをした場合,ESI は異なる値になる.例えばここでの ESI の定義は,惑星の居住可能性に非常に影響を及ぼすと考えられる,恒星のスペクトルエネルギー分布とそれによる惑星大気組成は考慮に入っていない.
ハビタブルゾーン
Kopparapu et al. (2014) によるハビタビルゾーンの定義では,ティーガーデン星b の軌道は保守的なハビタブルゾーンの高温側の端 (内縁) のすぐ外に位置するが,楽観的なハビタブルゾーンの内部にある.ティーガーデン星c は,保守的なハビタブルゾーンの中に位置している.また,ティーガーデン星b は地球とほとんど同じ日射量を受けているため地球と同一の平衡温度を持っていると考えられるが.Kopparapu et al. (2014) の定義では保守的なハビタブルゾーンの外となる.これは,Kopparapu et al. (2014) での議論では,惑星大気中の水蒸気による暴走温室効果は,低質量の恒星周りではより低い日射量で開始すると考えられていることに起因する.この効果は ESI の計算では無視されており,そのために保守的なハビタブルゾーンの内側にあるティーガーデン星c よりも,保守的なハビタブルゾーンから外れているティーガーデン星b の方が高い ESI を持つという興味深い事実を導いている.
ティーガーデン星系の特徴
ティーガーデン星周りの系外惑星系は CARMENES サーベイによる先進的な発見であり,いくつかの要素において特徴的である.まず,ティーガーデン星b と c は超低温矮星の周りで視線速度法を用いて発見された初めての系外惑星である.
どちらの惑星も最小質量は地球に近く,岩石および部分的に鉄を含む組成か,あるいは水を主成分とする組成であった場合,地球と似た半径であることが予想される.
さらに,これらの惑星は保守的なハビタブルゾーンに近い軌道かその内部にあり,言い換えれば居住可能な環境である可能性がある.
ティーガーデン星の年齢の推定値は 80 億歳であり,これらの惑星は太陽系の惑星よりもおよそ 2 倍年老いていることになる.
興味深いことに,太陽系の惑星はティーガーデン星から見て太陽をトランジットする領域に入っている.仮にティーガーデン星まわりに生命がいた場合,地球は 2044-2496 年までの間,ティーガーデン星系からトランジット惑星として観測可能である.
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この記事へのコメント
始めまして。おそらく天文学あるいは天体物理学の専門家の方とお見受けします。
> 太陽の近傍にある恒星の中では非常に明るく
概要を読んでいてこの部分に違和感があるのですが、M7.0というスペクトル型としては非常に明るいという意味なのでしょうか、それとも太陽近傍の恒星なので、視等級が比較的明るいという意味なのでしょうか?
> 太陽の近傍にある恒星の中では非常に明るく
概要を読んでいてこの部分に違和感があるのですが、M7.0というスペクトル型としては非常に明るいという意味なのでしょうか、それとも太陽近傍の恒星なので、視等級が比較的明るいという意味なのでしょうか?
Re:無題
コメントありがとうございます.
これは自分の書いた文章があまり良くなかったのですが,元の論文での記述では「太陽近傍の天体のうち,超低温矮星に分類される中では最も明るい」という意味が正しいです.超低温矮星については,スペクトル型が M7 かそれより低温の天体 (褐色矮星も含む) を指す場合が多いため,「太陽近傍の天体のうちスペクトル型が M7 より低温の天体の中では最も明るい」という意味になります.
紛らわしい書き方ですみませんでした.
これは自分の書いた文章があまり良くなかったのですが,元の論文での記述では「太陽近傍の天体のうち,超低温矮星に分類される中では最も明るい」という意味が正しいです.超低温矮星については,スペクトル型が M7 かそれより低温の天体 (褐色矮星も含む) を指す場合が多いため,「太陽近傍の天体のうちスペクトル型が M7 より低温の天体の中では最も明るい」という意味になります.
紛らわしい書き方ですみませんでした.
2019/08/18(日) 01:08 | HJ
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