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日々の感想などどうでもよいことを書き連ねるためだけのブログ。
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1910.12988
Libby-Roberts et al. (2019)
The Featureless Transmission Spectra of Two Super-Puff Planets
(2 つのスーパーパフ惑星の特徴に欠けた透過スペクトル)

概要

ケプラーの観測によって,「スーパーパフ」と呼ばれる分類の惑星の存在が明らかになった.これは質量が地球の数倍程度しか無いが,半径が海王星よりも大きく,非常に低い平均密度を持つ惑星のことを指す.

若い太陽型星ケプラー51 を公転する 3 つの惑星は,いずれもスーパーパフである.そのためケプラー51 系は,惑星の形成と進化過程についての重要な情報を与えてくれるであろう,この謎めいた分類の惑星の構造と大気を比較研究する良い機会を与えてくれる.

ここでは,ケプラー51b, d のトランジットをハッブル宇宙望遠鏡の WFC3 で観測した.
この新しい観測データを,再解析したケプラーの観測データおよびアップデートした恒星のパラメータと合わせて解析することで,これらの 3 惑星がどれも 0.1 g/cm3 より低い密度を持っていることを確認した.

WFC3 で取得した透過スペクトルは 1.15-1.63 µm の波長帯において特徴に欠けており,0.6 スケールハイトを超える変動の存在は否定される (H/He 主体の大気を想定した場合).そのため,大気から有意な水の吸収の特徴は見つからなかったという結論となった.
この平坦なスペクトルは,大気高高度のエアロゾル層 (圧力 3 mbar 未満の領域に存在している) の存在に起因すると解釈できる.

他のサブネプチューン惑星で観測された平坦なスペクトルの結果と比較し,Crossfield & Kreidberg (2017) で導入された 2 つの仮説のうち,平衡温度が低いほうがより高高度のエアロゾルを持つという仮説を支持する証拠を得た.
もう一方の仮説である,H/He の質量割合が透過スペクトルの特徴の大きな振幅をもたらすという仮説については強く否定される結果となった.

ケプラー51 系およびスーパーパフについて

ケプラー51 系

ケプラー51 は,やや若い (5 億歳) G 型星で,軌道周期が 45, 85, 130 日の木星サイズの惑星を 3 つ持つ惑星系である (Steffen et al. 2013).

恒星は比較的暗く,視線速度法では現在の観測装置を用いて惑星の質量を測定するのは困難である.しかし惑星の軌道は共鳴に近い関係にあり,3 つの惑星は高い S/N 比のトランジット時刻変動 (transit timing variation, TTV) を示す.TTV の振幅は 5-45 分である (Masuda 2014).

ケプラーによって取得された光度曲線から Masuda (2014) は,3 つの惑星全てが,その 6-10 地球半径という大きな半径に対して異常に低質量 (10 地球質量未満) であることを明らかにした.密度は 0.1 g/cm3 未満で,これらの惑星は NASA Exoplanet Archive に登録されている中で最も低密度の惑星である.

この系は,異常に低密度な惑星についての研究の機会を与えてくれるだけではなく,サプネプチューン惑星の「ティーンエイジ」(10 億歳未満) における進化のスナップショットを得る機会でもある.

スーパーパフ

ケプラー51 系の惑星は非常に低密度であり,希少な分類であるスーパーパフの一員である (Lee & Chiang 2016).スーパーパフに分類される惑星としては,他にケプラー47c (Orosz et al. 2019),ケプラー79d (Jontof-Hutter et al. 2014),ケプラー87c (Ofir et al. 2014) があり,これらは膨張している低密度のホットジュピターよりも低温で軽い.

いくつかの熱進化モデルでは,水素・ヘリウムを多く含む低密度の系外惑星の存在を再現できるが,水素・ヘリウム豊富な外層を持つ惑星が存在し続けていることは,理論における興味深い困難点である.

ケプラー51 系の 3 つの惑星は 3:2:1 の共鳴に近いため,Lee & Chiang (2016) はこれらの惑星は内側に移動して現在の位置に来たという形成モデルを提案している.この形成過程が正しければ,3 惑星の大気は,形成過程における氷微惑星の降着や,内部核の融解により多くの水を含むことが予想される.
仮に大気中に水蒸気の特徴が観測されたとしてもこの形成仮説を直接証明することにはならないものの,これらの惑星が現在の位置まで移動する前に遠方で形成されたという仮説を補強するものにはなる.

代替の仮説としては,Millholland (2019) で提案されている,これらの惑星は異常に大きな水素・ヘリウムの外層は持っておらず,これらの惑星の大きな半径は,傾斜角潮汐 (obliquity tide) で膨張しているというものがある.これが事実であった場合.これらの惑星の低い密度は,惑星の形成過程ではなく中心星との継続的な相互作用の結果であることを意味する.
しかし現在のモデルでは,ケプラー51 の惑星は恒星から遠すぎるため,傾斜角潮汐の有効性は現在のところ未知である.

結果

透過スペクトルを観測した結果,ケプラー51b, d のどちらも平坦なスペクトルを示した.どちらの惑星においても,金属量が太陽の 300 倍未満で,雲の無い大気が存在する可能性を 7σ の確度で否定した.

大気の金属量が高く,従って平均分子量が大きく,大気のスケールハイトが小さい場合は,観測された平坦なスペクトルにフィットできる十分小さな吸収特性を示す可能性がある.

議論

惑星のバルク密度のみを考えると,両惑星は金属を含まない純粋な水素・ヘリウム大気を持つ可能性がある.そこで,これらの惑星が水素・ヘリウムのみの大気モデルを持つという仮説を検証した.

太陽組成の大気モデルにおいて,水素とヘリウム以外の分子による吸収の特徴を取り除き,またレイリー散乱と衝突誘起吸収の影響は残して,観測結果との比較を行った.

その結果ケプラー51d については,厳密に水素・ヘリウムのみしか含まない大気を持つ可能性には否定的な結果が得られた.ケプラー51b については完全には否定はできない.しかし完全に金属が存在しない大気の形成については理論的な裏付けがないため,ケプラー51b の平坦なスペクトルを再現する信頼できるモデルではないと結論付けた.

両惑星が大気中の高高度にエアロゾル層を持ち,それによって WFC3 のバンドパスでスペクトルを平坦にしている可能性がある.雲などのエアロゾルのモデルを考慮して,この可能性を考察した.

その結果,大気の金属量が太陽の 1 倍と 300 倍の場合,観測された平坦なスペクトルを説明するためには 0.1 mbar の高度にエアロゾル層が必要である.しかし,もし大気が太陽金属量の 100 倍の金属量を持つ場合,エアロゾル層はさらに高高度の 2 µbar よりも高いところに存在する必要がある.

太陽金属量の 1 倍と 100 倍でのこのエアロゾル層の変化は,この金属量の違いでは大気の平均分子量はあまり変化しない一方で,分子の吸収特徴の強度は金属量の増加に伴って増加を続けることに起因する.Crossfield & Kreidberg (2017) では,大気の金属量が太陽金属量の 100 倍になると,大気の平均分子量は急速に増加し,スペクトル特徴の振幅を消失させることが指摘されている.

推定されたエアロゾル層が存在する圧力水準を,雲のモデルと比較した.ここでは雲を形成する分子種として KCl,ZnS,Na2S を想定している.どちらの惑星でも P-T 分布は凝結線と交差するものの,エアロゾル層の高度として推定されたものよりもずっと深いところで交わってしまう.もし凝縮物が今回観測したエアロゾルである場合,強い鉛直方向の混合による高高度への輸送が必要である.

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