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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1911.01530
Zhang & Zhu (2019)
The effects of disk self-gravity and radiative cooling on the formation of gaps and spirals by young planets
(若い惑星によるギャップとスパイラルの形成における円盤の自己重力と輻射冷却の影響)
(1) 円盤の自己重力を含めた場合:より重い円盤には,より強く,きつく曲がった渦状腕と深いギャップが形成される.
より深いギャップが形成されるのは,重い円盤に励起される波による大きな角運動量フラックスが原因である.これは線形理論から予想される結果である.
また二次ギャップが形成される位置は,円盤が非常に重くない限り (Q ≳ 2),変化しない.
(2) 輻射冷却を含めた場合:惑星によって励起される渦状腕は,円盤の冷却タイムスケールが増加するにつれ,単調となり,より開いた構造になる (きつく曲がった構造ではなくなる).
一方で,形成される渦状腕の振幅と強度は,冷却時間が小さな値から ~1/Ω へと増加するに連れ減少するが,冷却時間がさらに増加すると再び振幅は増加を始める.このことは,冷却による散逸は冷却のタイムスケール Tcool が 1 程度になると波にとって重要になることを示唆している.
結果として円盤の冷却時間が ~1/Ω になった時は,誘起される主要ギャップは細くなり,形成される二次ギャップは非常に浅くなる.二次ギャップが存在する時,早い冷却のケースから遅い冷却のケースに向かって,その位置は内部円盤へと移動する.
惑星によって形成されるギャップ特性の冷却タイムスケールへの依存性は,円盤の光学的深さや円盤の面密度を制約するための新しい手段を与えると期待される.
円盤が重くなるにつれ (Q が小さくなるにつれ),
arXiv:1911.01530
Zhang & Zhu (2019)
The effects of disk self-gravity and radiative cooling on the formation of gaps and spirals by young planets
(若い惑星によるギャップとスパイラルの形成における円盤の自己重力と輻射冷却の影響)
概要
2 次元流体力学シミュレーションを用いて,若い惑星による原始惑星系円盤へのギャップとスパイラル構造の形成における,円盤の自己重力と輻射冷却の影響を調べた.(1) 円盤の自己重力を含めた場合:より重い円盤には,より強く,きつく曲がった渦状腕と深いギャップが形成される.
より深いギャップが形成されるのは,重い円盤に励起される波による大きな角運動量フラックスが原因である.これは線形理論から予想される結果である.
また二次ギャップが形成される位置は,円盤が非常に重くない限り (Q ≳ 2),変化しない.
(2) 輻射冷却を含めた場合:惑星によって励起される渦状腕は,円盤の冷却タイムスケールが増加するにつれ,単調となり,より開いた構造になる (きつく曲がった構造ではなくなる).
一方で,形成される渦状腕の振幅と強度は,冷却時間が小さな値から ~1/Ω へと増加するに連れ減少するが,冷却時間がさらに増加すると再び振幅は増加を始める.このことは,冷却による散逸は冷却のタイムスケール Tcool が 1 程度になると波にとって重要になることを示唆している.
結果として円盤の冷却時間が ~1/Ω になった時は,誘起される主要ギャップは細くなり,形成される二次ギャップは非常に浅くなる.二次ギャップが存在する時,早い冷却のケースから遅い冷却のケースに向かって,その位置は内部円盤へと移動する.
惑星によって形成されるギャップ特性の冷却タイムスケールへの依存性は,円盤の光学的深さや円盤の面密度を制約するための新しい手段を与えると期待される.
結果のまとめ
2 次元流体計算で,円盤の自己重力と輻射冷却の影響を調査した.計算設定は,異なる Toomre’s Q value と無次元化した冷却時間 Tcool において,低質量惑星の場合である.円盤が重くなるにつれ (Q が小さくなるにつれ),
- 渦状腕はわずかだがよりきつく曲がるようになる.特に Q ~ 2 の場合に顕著である.これは線形理論からの予測と整合的.
- 渦状腕の振幅はより強くなり,メインのギャップおよび二次ギャップは深くなる.これは重い円盤では角運動量フラックスが高くなることに起因し,これも線形理論と整合的である.Q = 2 の円盤での角運動量フラックスは,Q = 100 の円盤でのほぼ 5 倍になる.
- Q が 2 程度より大きい場合,二次ギャップが形成される場所は変化しないが,ギャップは深くなる.
- 冷却時間が比較的短い Tcool = 0.01 の場合でも,渦状波動が高温領域へ伝播する時は,背景円盤から角運動量フラックスをピックアップできない.これは局所等温円盤との結果とは異なる.
- 渦状腕は冷却時間が大きくなるに連れ,よりオープンな形状になる (曲がりが緩くなる).これは円盤の実効的な音速が増加するためである.渦状腕の開き具合は,Tcool が 0.1 から 1 になるにつれて大きく変化する.
- 冷却時間が小さい値から 1/Ω にかけて大きくなるに連れ,形成される渦状腕は弱くなる.そして冷却時間が 1/Ω からさらに増加すると強くなる.冷却時間が 0.01 程度未満から 0.1 に増加するにつれ,渦状腕の振幅は大きく変化する.
- 冷却時間が 0.1-1 程度の時,伝播する間の波の角運動量フラックスの散逸は最も速い.これは輻射減衰が重要であることを示唆している可能性がある.
- 渦状腕が弱い場合,冷却時間が 0.1-1 のときに,低質量惑星による二次ギャップが消失する.
- 二次ギャップが存在する場合,ギャップのアスペクト比 h/r が惑星の位置で 0.07 である円盤では,等温の極限から断熱の極限までの遷移の間に,二次ギャップの位置が ~0.5 惑星軌道から ~0.4 惑星軌道へと移動する.
- Q ≳ 5 の円盤では,輻射冷却の効果は自己重力よりも重要である.
- 自己重力を無視したシミュレーションを観測との比較に用いた場合,ギャップの深さから円盤内の惑星の質量を求めると,惑星質量を過大評価する可能性がある.ギャップ幅は,ギャップ深さに比べると円盤の自己重力に対して敏感ではない.そのため,円盤の自己重力の効果が重要な時は,惑星質量はギャップ幅を用いて制約したほうが良い.
- 輻射冷却を無視したシミュレーションを用いた場合,惑星質量を過小評価する可能性がある.これは特にTcool ~ 1 の場合に顕著である.
- 惑星質量が重い場合の深い一次ギャップの場合,このギャップの形状は冷却時間にあまり影響を受けないが,二次ギャップの位置と深さは冷却時間に依存する.一方で,ダストや輝度温度における二次ギャップは,冷却時間に対してあまり敏感ではない.これは,ダストは一次ギャップの縁に素早く移動して二次ギャップを形成するためである.Tcool = 1 のとき,三次ギャップはガスとダストの両方で検知できなくなる.
- ギャップ特性 (例えばギャップ深さ,幅,二次・三次ギャップの位置と深さ) の冷却タイムスケールへの依存性は,ガス円盤の面密度を制約する新しい手段を提供する.
- AS 209 の 24, 35, 61 au にあるギャップが全て 99 au にいる惑星によって形成されているものであると仮定すると,100 au 付近でのガス面密度は 20 g cm-2 程度よりも小さくなっている必要がある.この推定は Tcool ≲ 0.1 という制約を用いた場合のものであり,これは面密度の Q ≳ 1 からの制約と整合的なものである.
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