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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1912.03503
Bailer-Jones & Farnocchia (2019)
Future stellar flybys of the Voyager and Pioneer spacecraft
(ボイジャーとパイオニア探査機の将来の恒星フライバイ)
Gaia の第二次データリリースで公開された恒星の位置天文データと視線速度データから,探査機と 740 万の恒星の軌跡を積分した.探査機がどの恒星に接近遭遇するかを同定するため,銀河ポテンシャル中で計算を行った.
すべての探査機の恒星との最も近い遭遇は,今後数百万年の間に 0.2-0.5 pc の距離で発生する.最も近い接近はパイオニア10号による K8 矮星 HIP 117795 で,90000 年後に 0.23 pc の距離にまで接近する.接近時の相対速度は速く,291 km/s と推定される.
冥王星を探査したニューホライズンズも太陽系を脱出する速度に到達している.しかし今後さらに他のエッジワース・カイパーベルト天体への遭遇マニューバーを行う予定であることから (Arrokoth への接近は 2019 年 1 月に既に実施されている),ここでは計算に含めていない.
結果として,パイオニアとボイジャーのそれぞれの探査機について,2 pc 以内の距離にまで近づく恒星はおよそ 60 個あり,そのうち 1 pc 以内に接近するものはおよそ 10 個ある.
ただし同定されたこれらの天体のうち,いくつかは信じがたいまでに大きな視線速度を持っているため,データが信頼できない.これはおそらく不十分な位置天文測定の結果か,検出されていない連星に起因するものだと考えられる.
なお,シリウスやアルファ・ケンタウリのような明るい恒星は Gaia のデータリリースに含まれていないため,ここでは考慮していない.
ボイジャー1号の Gl 445 (AC +79 3888) への接近,およびボイジャー2号の Ross 248 への接近は過去の研究でも同定されていたが,今回の研究ではより精密な予測を行った.
なお 3 つの探査機にとって,1 pc 以内への接近を行う最初の恒星はプロキシマ・ケンタウリであるが,これはこの恒星が現在太陽系から 1.3 pc と最も近い恒星だからである.対象とした全ての 4 探査機がプロキシマ・ケンタウリにおよそ 1 pc の距離で遭遇する.そのためこれらは近接した遭遇ではない.
この恒星は色・等級図では主系列の上にあり,連星であることが示唆されている.この場合,位置天文データは信頼性が低いものになる.
2 番目の近接遭遇は Gaia DR 2091429484365218432 で距離は 0.392 pc (240万5300年後),3 番目は
HD 28343 で距離は 0.400 pc (48万7500年後) である.
1 pc 以内に接近するものとして最も早い時期に発生するのは Gl 445 への接近であり,4万4000年後,距離は 0.575 pc である.
なお,プロキシマ・ケンタウリへは 1万6700年後に最接近し,距離は 1.072 pc である.
2 番目の近接遭遇は Gaia DR2 4370380741264455296 で距離は 0.558 pc (224万5600年後) である.この天体は現在 160 pc 離れた位置にある.
4 番目は h1 Sgr (いて座h1星) で 0.708 pc である.この恒星は明るく青いたて座デルタ型変光星である
なお,プロキシマ・ケンタウリへは 2万300年後に最接近し,距離は 0.878 pc である.
HD 152311 も接近をする可能性がある候補天体であるが,この恒星は連星であり,位置天文データはおそらく正しくない.そのため HD 52456 が 2 番目の近接をする恒星であり,距離は 0.435 pc,125万0500年後である.
最も早い時期に近接遭遇を起こすのは Ross 248 であり,3万3800年後,距離は 1.041 pc である.同時期にプロキシマ・ケンタウリにも接近し,距離は 1.013 pc,3万4100年後である.
2 番目は Gaia DR2 454473057495679385 であり,256万8100年後に 0.439 pc の距離に接近する.また Gl 445 はパイオニア11号とも近接し,パイオニア11号にとっては 4 番目に近接する天体となる.最接近は 4万6500年後,距離は 0.586 pc である
パイオニア11号はたて座デルタ星から 0.782 pc の距離を 116万3400年後に通過する.この恒星は変光星の型 (たて座デルタ型星) の元になった天体である.この恒星は Gaia データに大きな誤差があるものの,視差と固有運動はヒッパルコスの値に似ている.そのため位置天文データは信頼できると思われる.
なお,プロキシマ・ケンタウリへは 1万8300年後に 1.040 pc の距離まで接近する.
arXiv:1912.03503
Bailer-Jones & Farnocchia (2019)
Future stellar flybys of the Voyager and Pioneer spacecraft
(ボイジャーとパイオニア探査機の将来の恒星フライバイ)
概要
1970 年代に打ち上げられたパイオニア10号,11号,ボイジャー1号,2号は,太陽系外に向かっている.Gaia の第二次データリリースで公開された恒星の位置天文データと視線速度データから,探査機と 740 万の恒星の軌跡を積分した.探査機がどの恒星に接近遭遇するかを同定するため,銀河ポテンシャル中で計算を行った.
すべての探査機の恒星との最も近い遭遇は,今後数百万年の間に 0.2-0.5 pc の距離で発生する.最も近い接近はパイオニア10号による K8 矮星 HIP 117795 で,90000 年後に 0.23 pc の距離にまで接近する.接近時の相対速度は速く,291 km/s と推定される.
冥王星を探査したニューホライズンズも太陽系を脱出する速度に到達している.しかし今後さらに他のエッジワース・カイパーベルト天体への遭遇マニューバーを行う予定であることから (Arrokoth への接近は 2019 年 1 月に既に実施されている),ここでは計算に含めていない.
結果として,パイオニアとボイジャーのそれぞれの探査機について,2 pc 以内の距離にまで近づく恒星はおよそ 60 個あり,そのうち 1 pc 以内に接近するものはおよそ 10 個ある.
ただし同定されたこれらの天体のうち,いくつかは信じがたいまでに大きな視線速度を持っているため,データが信頼できない.これはおそらく不十分な位置天文測定の結果か,検出されていない連星に起因するものだと考えられる.
なお,シリウスやアルファ・ケンタウリのような明るい恒星は Gaia のデータリリースに含まれていないため,ここでは考慮していない.
ボイジャー1号の Gl 445 (AC +79 3888) への接近,およびボイジャー2号の Ross 248 への接近は過去の研究でも同定されていたが,今回の研究ではより精密な予測を行った.
なお 3 つの探査機にとって,1 pc 以内への接近を行う最初の恒星はプロキシマ・ケンタウリであるが,これはこの恒星が現在太陽系から 1.3 pc と最も近い恒星だからである.対象とした全ての 4 探査機がプロキシマ・ケンタウリにおよそ 1 pc の距離で遭遇する.そのためこれらは近接した遭遇ではない.
各探査機の動向
ボイジャー1号
ボイジャー1号は,30万2000年後の TYC 3135-52-1 への接近が最近接であり,距離は 0.296 pc である.この恒星は色・等級図では主系列の上にあり,連星であることが示唆されている.この場合,位置天文データは信頼性が低いものになる.
2 番目の近接遭遇は Gaia DR 2091429484365218432 で距離は 0.392 pc (240万5300年後),3 番目は
HD 28343 で距離は 0.400 pc (48万7500年後) である.
1 pc 以内に接近するものとして最も早い時期に発生するのは Gl 445 への接近であり,4万4000年後,距離は 0.575 pc である.
なお,プロキシマ・ケンタウリへは 1万6700年後に最接近し,距離は 1.072 pc である.
ボイジャー2号
ボイジャー2号は,4万2000年後の Ross 248 への接近が最近接であり,距離は 0.529 pc である.2 番目の近接遭遇は Gaia DR2 4370380741264455296 で距離は 0.558 pc (224万5600年後) である.この天体は現在 160 pc 離れた位置にある.
4 番目は h1 Sgr (いて座h1星) で 0.708 pc である.この恒星は明るく青いたて座デルタ型変光星である
なお,プロキシマ・ケンタウリへは 2万300年後に最接近し,距離は 0.878 pc である.
パイオニア10号
パイオニア10号は,9万年後の HIP 117795 への接近が最近接であり,距離は 0.231pc である.この天体は Gaia のデータでは視線速度が非常に大きいが,別の報告でも整合的な値が得られている.この恒星は 100-200 年後に太陽から 1.05 pc の距離を通過する見込みである.HD 152311 も接近をする可能性がある候補天体であるが,この恒星は連星であり,位置天文データはおそらく正しくない.そのため HD 52456 が 2 番目の近接をする恒星であり,距離は 0.435 pc,125万0500年後である.
最も早い時期に近接遭遇を起こすのは Ross 248 であり,3万3800年後,距離は 1.041 pc である.同時期にプロキシマ・ケンタウリにも接近し,距離は 1.013 pc,3万4100年後である.
パイオニア11号
パイオニア11号は,92万8300年後の TYC 992-192-1 への接近が最近接であり,距離は 0.245 pc である,2 番目は Gaia DR2 454473057495679385 であり,256万8100年後に 0.439 pc の距離に接近する.また Gl 445 はパイオニア11号とも近接し,パイオニア11号にとっては 4 番目に近接する天体となる.最接近は 4万6500年後,距離は 0.586 pc である
パイオニア11号はたて座デルタ星から 0.782 pc の距離を 116万3400年後に通過する.この恒星は変光星の型 (たて座デルタ型星) の元になった天体である.この恒星は Gaia データに大きな誤差があるものの,視差と固有運動はヒッパルコスの値に似ている.そのため位置天文データは信頼できると思われる.
なお,プロキシマ・ケンタウリへは 1万8300年後に 1.040 pc の距離まで接近する.
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