×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:2001.07667
Kirk et al. (2020)
Confirmation of WASP-107b's extended Helium atmosphere with Keck II/NIRSPEC
(Keck II/NIRSPEC による WASP-107b の広がったヘリウム大気の確認)
Keck II/NIRSPEC を用いて,この惑星のトランジットの近赤外線の高分散 (R ~ 25000) スペクトルを取得した.超過吸収のピークは,波長10833 Å の He I 三重項で 7.26 ± 0.24% (30σ) であった.
ヘリウム吸収分布の強度と形状は,CARMENES およびハッブル宇宙望遠鏡を用いて行われた過去の散逸するヘリウムの観測結果と非常によく一致する.このことは,2 年間にわたって惑星から散逸するヘリウムの特徴には有意な時間変動が存在しないことを示唆している.
今回の結果は,Keck II/NIRSPEC が系外惑星からの大気散逸を検出する能力があることを示し,地上からの He I の観測を用いて系外惑星大気の蒸発を更に理解するための便利な装置であることを示すものである.
この検出に先立って,準安定な中性ヘリウム原子の 10833 Å の吸収は系外惑星の透過スペクトルにおいて強い特徴になることが指摘されていた (Seager & Sas- selov 2000; Turner et al. 2016; Oklopˇci ́c & Hirata 2018).しかし初期の検出の試みは成功していなかった (Moutou et al. 2003).
WASP-107b でヘリウムが検出される以前は,惑星周りの広がった大気の検出は主に紫外線波長の Lyman-α 線での観測によって行われていた.これはハッブル宇宙望遠鏡でのみ観測可能な波長である.これらの研究では大量の水素の散逸が検出されていた,例えば GJ 436b では Lyman-α の吸収深さは 56.3% である (Ehrenreich et al. 2015).
しかし Lyman-α 線は星間物質による吸収に伴う減光によって強い影響を受けるため,50 pc 程度より近い惑星でないと観測が難しく (Jensen et al. 2018など),さらに地球コロナ放射の混入の影響も受ける.
近年では Lyman-α での検出に加え,Hα 線でも広がった大気の検出が行われている.しかし Hα 線は,準安定ヘリウムの検出に比べて中心星の活動により強く影響を受ける.そのため惑星の吸収と恒星活動を誤認する可能性がある.準安定ヘリウムの場合は,中心星が活動的な場合であっても検出が可能という点で魅力的である.
Spake et al. (2018) によるヘリウムの検出報告以降,6 つの地上からの検出と,1 つの宇宙空間からの検出が報告されている.しかし,4 つの非検出も報告されており,おそらくは恒星の XUV フラックスが重要であると考えられる (Nortmann et al. 2018,Oklopcic 2019).
WASP-107b は Anderson et al. (2017) で検出された温暖なサブサターンであり,0.119 木星質量,0.924 木星半径,平衡温度は 736 K である.
この惑星では散逸する He I の検出の他に (Spake et al. 2018,Allart et al. 2019),Kreidberg et al. (2018) がハッブル宇宙望遠鏡を用いて水蒸気を発見しており,またメタンが欠乏し,高高度に凝縮物があるという兆候を発見している.
arXiv:2001.07667
Kirk et al. (2020)
Confirmation of WASP-107b's extended Helium atmosphere with Keck II/NIRSPEC
(Keck II/NIRSPEC による WASP-107b の広がったヘリウム大気の確認)
概要
サブサターン惑星 WASP-107b の,広がった大気中のヘリウムの検出について報告する.Keck II/NIRSPEC を用いて,この惑星のトランジットの近赤外線の高分散 (R ~ 25000) スペクトルを取得した.超過吸収のピークは,波長10833 Å の He I 三重項で 7.26 ± 0.24% (30σ) であった.
ヘリウム吸収分布の強度と形状は,CARMENES およびハッブル宇宙望遠鏡を用いて行われた過去の散逸するヘリウムの観測結果と非常によく一致する.このことは,2 年間にわたって惑星から散逸するヘリウムの特徴には有意な時間変動が存在しないことを示唆している.
今回の結果は,Keck II/NIRSPEC が系外惑星からの大気散逸を検出する能力があることを示し,地上からの He I の観測を用いて系外惑星大気の蒸発を更に理解するための便利な装置であることを示すものである.
背景
サブサターン系外惑星 WASP-107b の広がった大気中の中性ヘリウム原子は,ハッブル宇宙望遠鏡の WFC3 での観測を用いて検出された (Spake et al. 2018).この観測では,98 Å という広い波長幅のビンで 0.049 ± 0.011% の超過吸収が 10833 Å のヘリウム三重項において検出された.これは惑星が 1010 - 3 × 1011 g s-1 (あるいは 10 億年あたり 0.1-4% の質量) を失っていることを示唆している.この検出に先立って,準安定な中性ヘリウム原子の 10833 Å の吸収は系外惑星の透過スペクトルにおいて強い特徴になることが指摘されていた (Seager & Sas- selov 2000; Turner et al. 2016; Oklopˇci ́c & Hirata 2018).しかし初期の検出の試みは成功していなかった (Moutou et al. 2003).
WASP-107b でヘリウムが検出される以前は,惑星周りの広がった大気の検出は主に紫外線波長の Lyman-α 線での観測によって行われていた.これはハッブル宇宙望遠鏡でのみ観測可能な波長である.これらの研究では大量の水素の散逸が検出されていた,例えば GJ 436b では Lyman-α の吸収深さは 56.3% である (Ehrenreich et al. 2015).
しかし Lyman-α 線は星間物質による吸収に伴う減光によって強い影響を受けるため,50 pc 程度より近い惑星でないと観測が難しく (Jensen et al. 2018など),さらに地球コロナ放射の混入の影響も受ける.
近年では Lyman-α での検出に加え,Hα 線でも広がった大気の検出が行われている.しかし Hα 線は,準安定ヘリウムの検出に比べて中心星の活動により強く影響を受ける.そのため惑星の吸収と恒星活動を誤認する可能性がある.準安定ヘリウムの場合は,中心星が活動的な場合であっても検出が可能という点で魅力的である.
Spake et al. (2018) によるヘリウムの検出報告以降,6 つの地上からの検出と,1 つの宇宙空間からの検出が報告されている.しかし,4 つの非検出も報告されており,おそらくは恒星の XUV フラックスが重要であると考えられる (Nortmann et al. 2018,Oklopcic 2019).
WASP-107b は Anderson et al. (2017) で検出された温暖なサブサターンであり,0.119 木星質量,0.924 木星半径,平衡温度は 736 K である.
この惑星では散逸する He I の検出の他に (Spake et al. 2018,Allart et al. 2019),Kreidberg et al. (2018) がハッブル宇宙望遠鏡を用いて水蒸気を発見しており,またメタンが欠乏し,高高度に凝縮物があるという兆候を発見している.
PR
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック