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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:2001.07196
Cabot et al. (2020)
Detection of neutral atomic species in the ultra-hot jupiter WASP-121b
(ウルトラホットジュピター WASP-121b の中性原子種の検出)
解析における Rossiter-McLaughlin 効果と Center-to-Limb 変化によるアーティファクトは無視できる.しかし,これらの効果がより慎重に扱われる必要がある場合について議論を行った.
今回の解析では,Hα 線での大気吸収の新しい検出を報告する.Hα 線でのトランジット深さは 1.87% である.また過去の Na I 二重項の検出報告を確認し,さらにモデルテンプレートとの相互相関を介して Fe I の新しい検出を報告する.
今回検出された Hα 線の吸収は,広がった水素大気によるものだと解釈することができ,おそらくは大気散逸を起こしている.また Fe I は惑星の光球での平衡化学過程の結果生じているものである.
Evans et al. (2016) では,ハッブル宇宙望遠鏡の WFC3 を用いた観測で透過スペクトル中に水蒸気が検出されている.また Evans et al. (2017) では水の検出と,昼側の大気での温度逆転層の存在が,同じくハッブル宇宙望遠鏡を用いた熱放射スペクトルをもとに報告されている.ただし TiO と VO の検出については,その後のトランジットと二次食の研究では存在が怪しいものとされた (Evans et al. 2018,Mikal-Evans et al. 2019).
TESS を用いた可視光の位相曲線では,昼側の大気に温度逆転層が存在することが指摘されている.温度逆転の起源としては,大気中の H-,TiO,VO による吸収が原因と示唆されている (Daylan et al. 2019,Bourrier et al. 2019),ただしその他の様々な吸収体も原因となりうる.
Salz et al. (2019) は,近紫外線の広帯域の吸収は Fe II に起因する可能性を示唆した,これは後に Mg II と共に検出されている (Sing et al. 2019).広がった電離ガスの存在が示され,磁場に沿った大気散逸が発生していることを示唆している.また Sindel (2018) は透過スペクトル中に Na の二重項を検出している.
arXiv:2001.07196
Cabot et al. (2020)
Detection of neutral atomic species in the ultra-hot jupiter WASP-121b
(ウルトラホットジュピター WASP-121b の中性原子種の検出)
概要
ウルトラホットジュピターは中心星から極めて強い輻射を受けている巨大系外惑星であり,軌道と大気特性という点で特に興味深い存在である.そのうちの一つである WASP-121b は,ロッシュ限界に近い距離にある,大きく傾いた軌道を公転している.またその大気は温度逆転層を持つ.ここでは,過去の観測で得られた高分散可視光スペクトルを解析した.解析における Rossiter-McLaughlin 効果と Center-to-Limb 変化によるアーティファクトは無視できる.しかし,これらの効果がより慎重に扱われる必要がある場合について議論を行った.
今回の解析では,Hα 線での大気吸収の新しい検出を報告する.Hα 線でのトランジット深さは 1.87% である.また過去の Na I 二重項の検出報告を確認し,さらにモデルテンプレートとの相互相関を介して Fe I の新しい検出を報告する.
今回検出された Hα 線の吸収は,広がった水素大気によるものだと解釈することができ,おそらくは大気散逸を起こしている.また Fe I は惑星の光球での平衡化学過程の結果生じているものである.
WASP-121b について
WASP-121b はウルトラホットジュピターと呼ばれる種類の系外惑星であり,平衡温度は 2358 K である.F 型星を公転しており,軌道長半径はロッシュ限界のわずか 1.15 倍という近距離を公転している.そのためこの惑星は潮汐破壊の縁にいる.潮汐変形モデルでは,恒星直下点での惑星半径は 2 惑星半径に達すると見られる.Evans et al. (2016) では,ハッブル宇宙望遠鏡の WFC3 を用いた観測で透過スペクトル中に水蒸気が検出されている.また Evans et al. (2017) では水の検出と,昼側の大気での温度逆転層の存在が,同じくハッブル宇宙望遠鏡を用いた熱放射スペクトルをもとに報告されている.ただし TiO と VO の検出については,その後のトランジットと二次食の研究では存在が怪しいものとされた (Evans et al. 2018,Mikal-Evans et al. 2019).
TESS を用いた可視光の位相曲線では,昼側の大気に温度逆転層が存在することが指摘されている.温度逆転の起源としては,大気中の H-,TiO,VO による吸収が原因と示唆されている (Daylan et al. 2019,Bourrier et al. 2019),ただしその他の様々な吸収体も原因となりうる.
Salz et al. (2019) は,近紫外線の広帯域の吸収は Fe II に起因する可能性を示唆した,これは後に Mg II と共に検出されている (Sing et al. 2019).広がった電離ガスの存在が示され,磁場に沿った大気散逸が発生していることを示唆している.また Sindel (2018) は透過スペクトル中に Na の二重項を検出している.
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天文・宇宙物理関連メモ vol.1314 Gibson et al. (2020) ウルトラホットジュピター WASP-121b での中性鉄原子の検出