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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:2003.04877
Komacek et al. (2020)
Re-inflation of warm and hot Jupiters
(ウォームジュピターとホットジュピターの再膨張)

概要

トランジットする高温な巨大ガス惑星の多くに見られる半径異常は,惑星科学における基礎的な問題である.最近報告されている,主系列を離れた後の恒星を公転するウォームジュピターの再膨張の検出と,主星が主系列の進化の段階におけるホットジュピターの再膨張の検出から,ホットジュピターの半径異常のモデルに制約をかけることが出来る.

ここでは,ガス惑星の再膨張を説明する進化モデルを提示し,注入される熱の深さと強度の変化が,主系列でのホットジュピターの再膨張と主系列後のウォームジュピターの再膨張の両方にどのように影響を及ぼすかを決定した.

その結果,ホットジュピターを再膨張させるためには,惑星の冷却を抑制するのに必要な場合よりも深い位置での加熱が必要であることを見出し,また再膨張の時間スケールは加熱率と深さの増加に伴って減少することを見出した.

惑星内部での加熱率と加熱が発生する深さの間には強い縮退があり,浅い位置での強い加熱と深い位置での弱い加熱は,どちらも主系列のホットジュピターの再膨張の説明となることを見出した.

この加熱率と深さの縮退は,中心星が主系列を離れた後のウォームジュピターの再膨張では破れる可能性がある.これは再膨張が主系列後の時間スケールの範囲内で急速に発生する必要があるためである.また,観測から示唆されている加熱率の恒星フラックスへの依存性は,ウォームジュピターとホットジュピター両方の再膨張を説明可能である.

TESS は主系列段階後の恒星を公転するウォームジュピターを多く発見することが期待されており,巨大惑星の半径異常を引き起こしているメカニズムを制約するのを助けるだろう.

ホットジュピターの膨張半径

膨張半径問題

多くのトランジットするホットジュピターは,一般的な進化モデルから予測されるよりも大きな半径を持っており,これは系外惑星科学における重要な未解決問題になっている.これを説明するために多数の仮説が提案されている.例えば,潮汐機構によるもの,ホットジュピター内での微小物理過程の修正によるもの,恒星から入射するフラックスが駆動する流体力学的な機構,オーム散逸などである.

ホットジュピターの半径分布の研究からは,半径異常は平衡温度が 1000 K を超える巨大ガス惑星のみで発生することが分かっている.また,膨張の度合いは中心星からの入射フラックスとの相関が見られる.結果として,ホットジュピターを膨張させているメカニズムは,主星からの入射フラックスに直接結びついていると考えられる.

最近では Thorngren & Fortney (2018) によって,熱として惑星内部に注入される輻射の割合は,平衡温度が中間的な 1600 K 程度で極大になり,それより高温側でも低温側でも,惑星内部に注入されるエネルギーの割合は低下することが示された.

半径の再膨張

Lopez & Fortney (2016) は,ウォームジュピターは中心星の進化に伴ってその平衡温度が 1000 K の閾値を超えるようになると,惑星の深部に十分な熱が注入されるために半径が再膨張すると予測した.
最近のケプラー K2 ミッションによるウォームジュピターの観測では,主系列段階から進化した恒星を公転するウォームジュピターの中で,半径が再膨張した可能性のある天体が 3 つ発見されている (Grunblatt et al. 2016, 2017, 2019).これらの惑星は 1.3-1.45 木星半径と大きく膨張しており,惑星に入射する中心星の輻射のうち 0.03% が惑星の非常に中心部に注入された場合に説明可能であるとされている (Grunblatt et al. 2017).

Hartman et al. (2016) では,中心星が主系列の進化の段階で明るくなることによってホットジュピターが再膨張することを指摘した.主系列段階での再膨張を起こすためには,惑星内部への熱の注入が必要である.これは,内部の冷却を遅くするだけのメカニズムでは,時間とともに惑星の半径が大きくなることはないためである.

Thorngren et al. (2020) では,232 個のホットジュピターのベイズ解析から,惑星半径と fractional age (主系列星の寿命で規格化した年齢) に相関がある兆候が指摘されている.

半径の再膨張の可否

Lopez & Fortney (2016) では,熱が惑星の中心部に注入される限定的なケースでのみ半径の再膨張が可能であるとした.しかし,ここの散逸機構に関する加熱分布を使用した研究では,浅い位置での加熱がホットジュピターを再膨張させることが出来るかについて,異なる意見が存在する.
Batygin et al. (2011) は,惑星内部でのオーム散逸はホットジュピターを再膨張させられると指摘した.一方で Wu & Lithwick (2013) と Ginzburg & Sari (2016) は,オーム散逸による加熱は半径の収縮を遅らせるだけであり,大きな再膨張は起こさないと指摘した.これは,加熱によって惑星は加熱水準から下方に再膨張し,惑星内部を加熱するための注入される熱のタイムスケールは加熱深さに反比例するためである.

オーム加熱の場合,Ginzburg & Sari (2016) では再膨張のタイムスケールは ~30 Gyr であり,冷却のタイムスケール ~1 Gyr よりずっと長いことが指摘されている.Batygin と Wu & Lithwick の数値モデルの違いは,Batygin は惑星半径の増加に伴う入射光の増加を含んでいるのに対し,Wu & Lithwick は含んでいないという点である.

入射エネルギーが惑星内部のエネルギー注入に変換される割合が固定値である場合,惑星半径が増加すると惑星内部に注入される熱も増加することになる.ここでは,惑星半径,入射エネルギー,加熱率の間にこのフィードバックを含めることで,惑星半径の再膨張を増幅できることを示す.

結論

  1. 進化が数十億年進んだ後のガス惑星を再膨張させるためには,惑星の冷却を加熱によって遅らせて同じ半径にする場合よりも深い位置での加熱を必要とする.これは,再膨張は加熱されている層から下方向にゆっくりと惑星内部を加熱する必要があり,加熱が深くなければ中心の温度に大きな影響を及ぼすことができないためである.結果として,再膨張後の半径は加熱深さと加熱率が大きくなるほど大きくなり,最大の膨張のためには中心での加熱が必要である.
  2. 注入される加熱率と深さの間には強い縮退があり,中心星の主系列の間におけるホットジュピターの再膨張の解釈を複雑にする.結果として,中心星のフラックスの 0.1% を惑星の非常に中心部で注入するのと,1% 以上を ~103 bar の深さに注入するのでは,主系列段階での再膨張をどちらも説明可能である.
  3. この縮退は,主系列後の恒星まわりでのウォームジュピターの再膨張の際に破れる可能性がある.主系列段階後の恒星周りの再膨張したウォームジュピターは,惑星中心部での弱い加熱か,浅い部分での強い加熱の両方で説明可能である.しかし主系列段階後の再膨張は深い加熱でより急速に発生し,浅い加熱は主系列星の進化の後期段階にわたる再膨張では説明できない.TESS によって得られる見込みの主系列段階後の恒星周りでの再膨張したウォームジュピターのサンプルが増え,恒星の年齢の精密な測定と合わせることで,膨張を起こしている加熱源の深さを決定できる.
  4. 熱が惑星の中心部に注入される場合,ホットジュピターに見られる入射フラックスに対する加熱率の依存性は,主系列での再膨張も主系列後の再膨張も説明可能である.加熱率は入射フラックスに単調に依存している必要はない.

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