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天文・宇宙物理関連メモ vol.1359 Nugroho et al. (2020) および Stangret et al. (2020) MASCARA-2b/KELT-20b 大気からの中性鉄原子および鉄イオンの検出
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:2003.04856
Nugroho et al. (2020)
Searching for Thermal Inversion Agents in the Transmission Spectrum of MASCARA-2b/KELT-20b: Detection of Neutral Iron and Ionised Calcium H&K Lines
(MASCARA-2b/KELT-20b の透過スペクトル中の温度逆転要因の探査:中性鉄と電離カルシウム H&K 線の検出)
1 次元平行平板大気モデルに等温大気と太陽金属量での化学平衡を仮定して生成した分光テンプレートを用いて,恒星と地球のスペクトル線を除去してから相互相関を取った.尤度マッピングの手法を用いて,Fe I を >13σ で,Ca II H&K 線を >6σ で検出し,また過去の Fe II と Ca II IRT と Na I D の検出を確認した.
Fe I のスペクトル線の波長は -3.35 km s-1 だけ惑星の静止系からずれており,強い昼夜間の風の存在を示唆している.また,今回用いた尤度マッピング技術では,惑星大気の異なる高度に起因する分子種の検出も行われた.
相互相関に用いられたスペクトル線のリストが正確であることを仮定すると,その他の温度逆転を引き起こしうる原因物質候補 (NaH, MgH, AlO, SH, CaO, VO, FeH, TiO) は検出されなかった.このことは,非化学平衡メカニズム (コールドトラップなど) が Ti と V を含んだ物質を高層大気から取り除いた可能性を示唆している.
したがって今回の結果は,この惑星は TiO/VO による可視光の吸収に関連したメカニズムでは,大気の温度逆転層を保持できないことを示している.そのため温度逆転層の存在は,Fe I や Fe II などの金属原子に由来している可能性がある.
最後に,全ての Fe I のシグナルは「二重ピーク」構造であったことを報告する.これは大気の動力学を示す兆候である可能性がある.しかし,このシグナルの由来を明確に決定するためにはさらなる調査が必要である.
arXiv:2003.04650
Stangret et al. (2020)
Detection of Fe I and Fe II in the atmosphere of MASCARA-2b using a cross-correlation method
(相互相関手法を用いた MASCARA-2b の大気中の Fe I と Fe II の検出)
系外惑星大気による吸収の特徴は,トランジット最中の残余スペクトルのノイズの中に埋もれている.しかし大気の透過光モデルとの相互相関を行うことで,数百もの大気による吸収線の情報を復元でき,この技術により系外惑星大気のシグナルを大きく増加させることが出来る.
惑星大気の透過光の高分散スペクトルには,ロシター効果と center-to-limb variation が大きく寄与する.
ここでは,ウルトラホットジュピター MASCARA-2b/KELT-20b の大気中からの Fe I (中性鉄原子) の初検出と,Fe II (鉄イオン) の吸収特徴の確認を報告する.HARPS-N を用いた 3 回のトランジット観測から得られたスペクトルを元にしている.
検出された Fe I, II の吸収は青方偏移しており,それらの大きさは Fe I で -6.3 km s-1,Fe II は -2.8 km s-1 であり,惑星大気中の昼から夜側への風の存在を示唆している.これらの結果は,この惑星に対する過去の研究結果を確認するものである,
またこの惑星大気で検出されている数々の成分に,新たな原子種 (Fe I) が追加された.MASCARA-2b は KELT-9b と共に,現在最も特徴に富んだウルトラホットジュピターである.
arXiv:2003.04856
Nugroho et al. (2020)
Searching for Thermal Inversion Agents in the Transmission Spectrum of MASCARA-2b/KELT-20b: Detection of Neutral Iron and Ionised Calcium H&K Lines
(MASCARA-2b/KELT-20b の透過スペクトル中の温度逆転要因の探査:中性鉄と電離カルシウム H&K 線の検出)
概要
惑星大気の温度逆転層を引き起こしている原因物質を探るため,KELT-20b/MASCARA-2b の透過スペクトルを解析した.データは HARPS-N を用いた 3 回のトランジットと,CARMENES での 1 回の観測によって得られたものである.1 次元平行平板大気モデルに等温大気と太陽金属量での化学平衡を仮定して生成した分光テンプレートを用いて,恒星と地球のスペクトル線を除去してから相互相関を取った.尤度マッピングの手法を用いて,Fe I を >13σ で,Ca II H&K 線を >6σ で検出し,また過去の Fe II と Ca II IRT と Na I D の検出を確認した.
Fe I のスペクトル線の波長は -3.35 km s-1 だけ惑星の静止系からずれており,強い昼夜間の風の存在を示唆している.また,今回用いた尤度マッピング技術では,惑星大気の異なる高度に起因する分子種の検出も行われた.
相互相関に用いられたスペクトル線のリストが正確であることを仮定すると,その他の温度逆転を引き起こしうる原因物質候補 (NaH, MgH, AlO, SH, CaO, VO, FeH, TiO) は検出されなかった.このことは,非化学平衡メカニズム (コールドトラップなど) が Ti と V を含んだ物質を高層大気から取り除いた可能性を示唆している.
したがって今回の結果は,この惑星は TiO/VO による可視光の吸収に関連したメカニズムでは,大気の温度逆転層を保持できないことを示している.そのため温度逆転層の存在は,Fe I や Fe II などの金属原子に由来している可能性がある.
最後に,全ての Fe I のシグナルは「二重ピーク」構造であったことを報告する.これは大気の動力学を示す兆候である可能性がある.しかし,このシグナルの由来を明確に決定するためにはさらなる調査が必要である.
arXiv:2003.04650
Stangret et al. (2020)
Detection of Fe I and Fe II in the atmosphere of MASCARA-2b using a cross-correlation method
(相互相関手法を用いた MASCARA-2b の大気中の Fe I と Fe II の検出)
概要
ウルトラホットジュピターは,中心星からの強い輻射の影響で昼側の温度が 2200 K を超えている.このような惑星は,系外惑星の高層大気の化学を透過光分光観測を用いて研究する良い対象である.系外惑星大気による吸収の特徴は,トランジット最中の残余スペクトルのノイズの中に埋もれている.しかし大気の透過光モデルとの相互相関を行うことで,数百もの大気による吸収線の情報を復元でき,この技術により系外惑星大気のシグナルを大きく増加させることが出来る.
惑星大気の透過光の高分散スペクトルには,ロシター効果と center-to-limb variation が大きく寄与する.
ここでは,ウルトラホットジュピター MASCARA-2b/KELT-20b の大気中からの Fe I (中性鉄原子) の初検出と,Fe II (鉄イオン) の吸収特徴の確認を報告する.HARPS-N を用いた 3 回のトランジット観測から得られたスペクトルを元にしている.
検出された Fe I, II の吸収は青方偏移しており,それらの大きさは Fe I で -6.3 km s-1,Fe II は -2.8 km s-1 であり,惑星大気中の昼から夜側への風の存在を示唆している.これらの結果は,この惑星に対する過去の研究結果を確認するものである,
またこの惑星大気で検出されている数々の成分に,新たな原子種 (Fe I) が追加された.MASCARA-2b は KELT-9b と共に,現在最も特徴に富んだウルトラホットジュピターである.
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