×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1512.03428
Dupuy et al. (2015)
Orbital Architectures of Planet-Hosting Binaries: I. Forming Five Small Planets in the Truncated Disk of Kepler-444A
(惑星を持つ連星の軌道構造 I:ケプラー444Aの切り取られた円盤内での 5つの小さい惑星の形成)
ケプラー444は、金属量の少ない恒星 3つからなる三重星である。主星ケプラー444Aのまわりに 5つの準地球サイズの惑星が発見されている。また、M型矮星のペア (ケプラー444B, C)が、主星から投影距離 1".8 (= 66 AU)の位置に存在している。ケプラー444B と C は空間分解されていない近接した連星である。
Keck/NIRC2 の補償光学を用いたアストロメトリと、Keck/HIRES 視線速度観測の組み合わせから、ケプラー444A まわりの B, C のペアの詳細な軌道の決定を行った。また天体の質量への制約を与えた。
解析の結果、伴星ペアのケプラー444B, C のケプラー444A まわりの軌道は非常に高軌道離心率で、e = 0.864 と判明した。そのため、BC ペアは最短で主星から 5.0 AU の距離まで接近する。N体シミュレーションを用いて、この系は安定であることを確認した。ケプラー444A を公転する BC ペアの軌道と、ケプラー444A を公転する他の惑星の軌道は、98%の確度でほぼ一致しているとかんがえられる。
この系では、BC ペアは惑星形成が起きている時期に現在の軌道であったと考えられる。また BC ペアは、ケプラー444A まわりの原始惑星系円盤を ~ 2 AU あたりで "切り取る"。この切り取られた円盤は固体粒子が非常に欠乏していると考えられる (発見されている惑星の合計質量は ~ 1.5地球質量)。従って、固体物質がダストから惑星へ変換される効率に強い制限を与えられると考えられる。またケプラー444 系は、切り取られていない一般的な原始惑星系円盤内での、典型的な近接惑星の形成を説明するモデルと整合的である。
またこの伴星は、二重線分光連星 (double-line spectroscopic binary)である (Campanile et al. 2015)。中心星は、星震観測から 11.2 Gyr と推定されている。
さらに、主星のケプラー444A のまわりに、地球より小型サイズ (0.40 - 0.74 地球半径)の惑星候補が 5つ発見されている。このような階層的な構造の三重星が惑星を持つ系はこれまでに 3例発見されているが、いずれも伴星は中心星から離れた投影距離を持ち (240 - 330 AU, Bechter et al. 2014, Eastman et al. 2015)、また複数惑星が存在する系はケプラー444系以外には発見されていない。
また N体シミュレーションを用いた安定性の評価も行った。惑星の質量は、Lissauer et al. (2011)の質量-半径の関係性を用いて推定した。Campante et al. (2015)によると、惑星の半径は内側から外側へ 0.403, 0.497, 0.530, 0.546, 0.74地球半径であり、これは質量-半径の関係性から 0.15, 0.24, 0.27, 0.29, 0.54地球質量と推定できる。この質量を用いて N体計算で軌道安定性を評価した。
その結果、~ Myr の間は安定に存在できることを示した。ただし ~ Gyr 単位での不安定性の排除は出来ない。
インプットするパラメータは、
系の全質量:1.30太陽質量
AとBCペアの質量比:0.71
距離:35.7 pc
などである。
結果として得られたパラメータは、
(BCペアの) 軌道長半径:36.7 AU
軌道離心率:0.864
軌道周期:198年
近星点距離:5.0 AU
などである。
ケプラー444A は 0.76太陽質量、ケプラー444B と C はそれぞれ 0.29, 0.25太陽質量である。
arXiv:1512.03428
Dupuy et al. (2015)
Orbital Architectures of Planet-Hosting Binaries: I. Forming Five Small Planets in the Truncated Disk of Kepler-444A
(惑星を持つ連星の軌道構造 I:ケプラー444Aの切り取られた円盤内での 5つの小さい惑星の形成)
概要
惑星を持つ複数星系の軌道構造を調べるための Keckプログラムによる最初の結果を報告する。ケプラー444は、金属量の少ない恒星 3つからなる三重星である。主星ケプラー444Aのまわりに 5つの準地球サイズの惑星が発見されている。また、M型矮星のペア (ケプラー444B, C)が、主星から投影距離 1".8 (= 66 AU)の位置に存在している。ケプラー444B と C は空間分解されていない近接した連星である。
Keck/NIRC2 の補償光学を用いたアストロメトリと、Keck/HIRES 視線速度観測の組み合わせから、ケプラー444A まわりの B, C のペアの詳細な軌道の決定を行った。また天体の質量への制約を与えた。
解析の結果、伴星ペアのケプラー444B, C のケプラー444A まわりの軌道は非常に高軌道離心率で、e = 0.864 と判明した。そのため、BC ペアは最短で主星から 5.0 AU の距離まで接近する。N体シミュレーションを用いて、この系は安定であることを確認した。ケプラー444A を公転する BC ペアの軌道と、ケプラー444A を公転する他の惑星の軌道は、98%の確度でほぼ一致しているとかんがえられる。
この系では、BC ペアは惑星形成が起きている時期に現在の軌道であったと考えられる。また BC ペアは、ケプラー444A まわりの原始惑星系円盤を ~ 2 AU あたりで "切り取る"。この切り取られた円盤は固体粒子が非常に欠乏していると考えられる (発見されている惑星の合計質量は ~ 1.5地球質量)。従って、固体物質がダストから惑星へ変換される効率に強い制限を与えられると考えられる。またケプラー444 系は、切り取られていない一般的な原始惑星系円盤内での、典型的な近接惑星の形成を説明するモデルと整合的である。
ケプラー444系
主星のケプラー444A は、別名 BD+41 3306, HIP 94931, KOI-3158などを持つ。Lillo-Box et al. (2014)によって 1"8 の位置に伴星が発見されている。ヒッパルコスによる観測によるとこの系までの距離は 35.7 pc であり (van Leeuwen 2007)、従って 1"8 というのは 66 AU に相当する。またこの伴星は、二重線分光連星 (double-line spectroscopic binary)である (Campanile et al. 2015)。中心星は、星震観測から 11.2 Gyr と推定されている。
さらに、主星のケプラー444A のまわりに、地球より小型サイズ (0.40 - 0.74 地球半径)の惑星候補が 5つ発見されている。このような階層的な構造の三重星が惑星を持つ系はこれまでに 3例発見されているが、いずれも伴星は中心星から離れた投影距離を持ち (240 - 330 AU, Bechter et al. 2014, Eastman et al. 2015)、また複数惑星が存在する系はケプラー444系以外には発見されていない。
系の安定性
ケプラー444B, C のペアは、系の重心から 5.0 AU の距離まで近づく。連星中での安定な惑星軌道の経験的なフィッティング則 (Holman & Wiegert et al. 1999)の外挿によると、安定して存在できる軌道で最も大きいものは ~ 1.6 AU である。これは、この系で最も外側に存在する ケプラー444f の軌道長半径 0.08 AU の 20倍である。また N体シミュレーションを用いた安定性の評価も行った。惑星の質量は、Lissauer et al. (2011)の質量-半径の関係性を用いて推定した。Campante et al. (2015)によると、惑星の半径は内側から外側へ 0.403, 0.497, 0.530, 0.546, 0.74地球半径であり、これは質量-半径の関係性から 0.15, 0.24, 0.27, 0.29, 0.54地球質量と推定できる。この質量を用いて N体計算で軌道安定性を評価した。
その結果、~ Myr の間は安定に存在できることを示した。ただし ~ Gyr 単位での不安定性の排除は出来ない。
系のパラメータ
質量や軌道のパラメータについて、MCMC を用いて決定した。インプットするパラメータは、
系の全質量:1.30太陽質量
AとBCペアの質量比:0.71
距離:35.7 pc
などである。
結果として得られたパラメータは、
(BCペアの) 軌道長半径:36.7 AU
軌道離心率:0.864
軌道周期:198年
近星点距離:5.0 AU
などである。
ケプラー444A は 0.76太陽質量、ケプラー444B と C はそれぞれ 0.29, 0.25太陽質量である。
PR
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック