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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1512.04341
Sing et al. (2015)
A continuum from clear to cloudy hot-Jupiter exoplanets without primordial water depletion
(初期に水が欠乏していないホットジュピターの雲無しから雲有り大気への連続性)

概要

これまでに数千個の系外惑星が発見されているが、大気の分析がされているものはごく一部であり、また波長の範囲も狭い (1.1 - 1.7 μm)。最近の観測では、いくつかのホットジュピターは予想されていたよりも水の吸収が近赤外線領域で弱いという結果が報告されている。水による吸収の特徴が弱いのは、水の存在度が低いということを意味する。恐らく、原始惑星系円盤の惑星が形成されている場所で水が欠乏していたことを意味する。

しかしこの水の欠乏が発生するかどうかは不明瞭である。また、可視光での観測から、ホットジュピターの大気中に雲やもや (haze)が存在することによる、スペクトルの特徴の不明瞭化による可能性もある。

ここでは、0.3 - 5 μmの波長域で 10個のホットジュピターの比較研究を行った。この波長域では、可視光での散乱と、赤外線の分子吸収を分光学的に観測することが出来る。その結果、雲が無い晴れ渡った大気から雲に覆われた大気まで、連続的な分布を持つ様々なホットジュピターの大気特性が明らかになった

また、可視光領域と赤外線領域での見かけの惑星半径の違いが、異なる大気のタイプを区別するための良い基準となり得ることが分かった。この大気のタイプの違いは、水のスペクトル強度と相関がある。雲のない晴れた大気では強い水の吸収が見られ、雲やもやがある場合は最も弱い吸収の特徴を示す。

この結果は、惑星形成時から原始惑星系円盤内で水が欠乏していたというモデルには否定的である。水の弱い吸収は、水の存在量が少ないのではなく、雲ともやによるものであることを示唆する。

観測

ハッブル宇宙望遠鏡を用いて、WASP-6b, WASP-12b, WASP-17b, WASP-19b, WASP-31b, WASP-39b, HAT-P-1b, HAT-P-12bの 8個のホットジュピターを観測した。これらの惑星は、表面温度、表面重力、質量、半径において様々な値を持つ。Space Telelscope Imaging Spectrograph (STIS)を用いて、0.3 - 1.01 μm の全可視領域で観測を行った。

また WASP-31b, HAT-P-1b はWide Field Camera 3 (WFC3) を用いて近赤外線 (1.1 - 1.7 μm)でも観測を行った。また別の WFC3 プログラムで、WASP-12b, WASP-17b, WASP-19b, HAT-P-12b の観測も行った。これらのハッブル宇宙望遠鏡でのサーベイは、スピッツァー宇宙望遠鏡の Infrared Array Camera (IRAC)で補完を行った (3.6, 4.5 μm)。

これらの結果を、ハッブル宇宙望遠鏡とスピッツァー宇宙望遠鏡で最も良く知られている系外惑星である 2つのホットジュピター、HD 209458b と HD 189733b を合わせ、計 10個の惑星について解析を行った。

結果

様々な惑星において、ナトリウム、カリウム、水などのスペクトルの特徴が検出された。また可視光領域での散乱のスペクトルスロープも確認された (WASP-6b, HAT-P-12b)。

WASP-39b は強いアルカリ金属の吸収と、スペクトル線の圧力による広がり (pressure broadening wing)を持つ。しかし WASP-31b は強い吸収を持つものの、スペクトル線の広がりは狭かった。これは吸収が起きている場所の圧力が低いことを意味する。

WFC3で観測した 8個の惑星のうち、5個で水を検出した。しかし強度はまちまちであり、WASP-31b のようにほぼ検出されなかった例も存在する。

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