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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1601.04417
Sato et al. (2016)
A Pair of Giant Planets around the Evolved Intermediate-Mass Star HD 47366: Multiple Circular Orbits or a Mutually Retrograde Configuration
(進化した中間質量星 HD 47366まわりの 1対の巨大惑星:複数の円軌道か互いに逆行した軌道配置)
中心星はスペクトル型 K1 の巨星であり,1.81太陽質量,7.30太陽半径,太陽とほぼ同じ金属量を持つ.
2つの惑星は,最小質量がそれぞれ 1.75木星質量,1.86木星質量であり,軌道周期は 363.3日,684.7日,軌道離心率は 0.089,0.278 であった.これは視線速度データを 2つの惑星のケプラー運動のフィッティングをした結果である.
この系は,複数の巨大惑星が狭い軌道間隔で公転している系の一例である.このような系は,進化した中間質量星のまわりに多く発見されている.
しかし力学的な安定性解析からは,惑星が順行,すなわち同じ方向に公転している軌道配置では不安定であることが判明した.もし 2惑星が 2:1 平均運動共鳴に入っていれば安定だが,観測された公転周期と軌道離心率からは,平均運動共鳴に入っている可能性は低い.
現段階で有り得る可能性は,両方の惑星がほぼ円軌道であり,特に外側の惑星の軌道離心率が ~ 0.15 以下になっているか,あるいは 2 つの惑星が互いに逆行する軌道を持ち,相互傾斜角が 160°以上になっているというものである.
別名:HIP 31674, BD-121566, HR 2437, TYC 5373-2001-1
スペクトル型:K1 III
ヒッパルコス衛星による年周視差:12.5 mas
距離:80.0 pc
実視等級:6.11
有効温度:4866 K
金属量:[Fe/H] = -0.02
質量:1.81太陽質量
半径:7.30太陽半径
光度:26.1太陽光度
年齢:1.61 Gyr
・HD 47366b
軌道周期:363.3日
軌道長半径:1.214 AU
軌道離心率:0.089
最小質量:1.75木星質量
・HD 47366c
軌道周期:684.7日
軌道長半径:1.853 AU
軌道離心率:0.278
最小質量:1.86木星質量
両惑星の軌道長半径の比率は 0.6555.
この系が安定であるためには,いかのいずれかになっている必要がある.
(1) 2つの惑星が 2:1 平均運動共鳴に入っている
(2) 外側の HD 47366c の軌道離心率は ~ 0.15 より小さい
(3) お互いの軌道面の成す角が 160°より大きく,逆行している
(1) の場合,軌道長半径の比率は 0.63,HD 47366c の軌道長半径が 1.93 AU になっている必要がある.また軌道離心率は 0.5 - 0.7 か,0 - 0.2 の範囲内である必要がある.
しかし観測から両惑星の軌道長半径の比は 0.6555 (+0.0041, -0.0043) とよく決まっており,軌道離心率も 0.278 (+0.067, -0.094) となっている.軌道離心率 0.5 - 0.7 という値はベストフィットの値から 3 σ 以上離れており,大きな軌道離心率を持ち共鳴に入っているという可能性は極めて低い.
また軌道離心率 0 - 0.2 という値である可能性は完全には排除できないが,軌道長半径の比の値を考えるとやはり考えづらい.
(2) の場合,HD 47366c の軌道離心率が ~ 0.15 より小さいというのは有り得そうな解である.0.15 という値はベストフィット値と比べると 1.4 σ 小さい値である.そのため実際には 2 つの惑星はほぼ円軌道であると考えるのはリーズナブルである.
なおこの場合,軌道周期の比は 2 より僅かに小さく,2:1 の軌道共鳴には入っていない.
(3) は最も極端なケースである.視線速度法では,惑星の軌道傾斜角や昇交点を知ることは出来ない.そのため,観測的には軌道が順行なのか逆行なのかは決めることは出来ない.
複数惑星系において,逆行する軌道を持つ場合は力学的に安定で,かつ視線速度法の観測とも整合的だという先行研究がある (Gayon & Bois 2008. Gayon-Markt & Bois 2009).
力学的な安定性解析では,逆行軌道の場合は,順行だと不安定になるような軌道離心率を持つ状況も含め,広いパラメータの範囲で軌道は安定であった.今後の観測で,外側の惑星の軌道離心率が高いことを確認することによって,逆行軌道であることがはっきりするかもしれない.しかしこのような軌道を持つ惑星系の形成過程は不明である.
arXiv:1601.04417
Sato et al. (2016)
A Pair of Giant Planets around the Evolved Intermediate-Mass Star HD 47366: Multiple Circular Orbits or a Mutually Retrograde Configuration
(進化した中間質量星 HD 47366まわりの 1対の巨大惑星:複数の円軌道か互いに逆行した軌道配置)
概要
主系列星から進化した中間質量星 (intermediate-mass star)である HD 47366 まわりに.2つの惑星を発見した.Okayama Astrophysical Observatory,Xinglong Station, Australian Astronomical Observatory での詳細な視線速度観測から惑星を発見した.中心星はスペクトル型 K1 の巨星であり,1.81太陽質量,7.30太陽半径,太陽とほぼ同じ金属量を持つ.
2つの惑星は,最小質量がそれぞれ 1.75木星質量,1.86木星質量であり,軌道周期は 363.3日,684.7日,軌道離心率は 0.089,0.278 であった.これは視線速度データを 2つの惑星のケプラー運動のフィッティングをした結果である.
この系は,複数の巨大惑星が狭い軌道間隔で公転している系の一例である.このような系は,進化した中間質量星のまわりに多く発見されている.
しかし力学的な安定性解析からは,惑星が順行,すなわち同じ方向に公転している軌道配置では不安定であることが判明した.もし 2惑星が 2:1 平均運動共鳴に入っていれば安定だが,観測された公転周期と軌道離心率からは,平均運動共鳴に入っている可能性は低い.
現段階で有り得る可能性は,両方の惑星がほぼ円軌道であり,特に外側の惑星の軌道離心率が ~ 0.15 以下になっているか,あるいは 2 つの惑星が互いに逆行する軌道を持ち,相互傾斜角が 160°以上になっているというものである.
系のパラメータ
・HD 47366別名:HIP 31674, BD-121566, HR 2437, TYC 5373-2001-1
スペクトル型:K1 III
ヒッパルコス衛星による年周視差:12.5 mas
距離:80.0 pc
実視等級:6.11
有効温度:4866 K
金属量:[Fe/H] = -0.02
質量:1.81太陽質量
半径:7.30太陽半径
光度:26.1太陽光度
年齢:1.61 Gyr
・HD 47366b
軌道周期:363.3日
軌道長半径:1.214 AU
軌道離心率:0.089
最小質量:1.75木星質量
・HD 47366c
軌道周期:684.7日
軌道長半径:1.853 AU
軌道離心率:0.278
最小質量:1.86木星質量
両惑星の軌道長半径の比率は 0.6555.
系の力学的安定性について
系の力学的安定性の解析を行った結果,両惑星が順行公転をしており,観測結果のベストフィットの軌道は不安定であることが判明した.この系が安定であるためには,いかのいずれかになっている必要がある.
(1) 2つの惑星が 2:1 平均運動共鳴に入っている
(2) 外側の HD 47366c の軌道離心率は ~ 0.15 より小さい
(3) お互いの軌道面の成す角が 160°より大きく,逆行している
(1) の場合,軌道長半径の比率は 0.63,HD 47366c の軌道長半径が 1.93 AU になっている必要がある.また軌道離心率は 0.5 - 0.7 か,0 - 0.2 の範囲内である必要がある.
しかし観測から両惑星の軌道長半径の比は 0.6555 (+0.0041, -0.0043) とよく決まっており,軌道離心率も 0.278 (+0.067, -0.094) となっている.軌道離心率 0.5 - 0.7 という値はベストフィットの値から 3 σ 以上離れており,大きな軌道離心率を持ち共鳴に入っているという可能性は極めて低い.
また軌道離心率 0 - 0.2 という値である可能性は完全には排除できないが,軌道長半径の比の値を考えるとやはり考えづらい.
(2) の場合,HD 47366c の軌道離心率が ~ 0.15 より小さいというのは有り得そうな解である.0.15 という値はベストフィット値と比べると 1.4 σ 小さい値である.そのため実際には 2 つの惑星はほぼ円軌道であると考えるのはリーズナブルである.
なおこの場合,軌道周期の比は 2 より僅かに小さく,2:1 の軌道共鳴には入っていない.
(3) は最も極端なケースである.視線速度法では,惑星の軌道傾斜角や昇交点を知ることは出来ない.そのため,観測的には軌道が順行なのか逆行なのかは決めることは出来ない.
複数惑星系において,逆行する軌道を持つ場合は力学的に安定で,かつ視線速度法の観測とも整合的だという先行研究がある (Gayon & Bois 2008. Gayon-Markt & Bois 2009).
力学的な安定性解析では,逆行軌道の場合は,順行だと不安定になるような軌道離心率を持つ状況も含め,広いパラメータの範囲で軌道は安定であった.今後の観測で,外側の惑星の軌道離心率が高いことを確認することによって,逆行軌道であることがはっきりするかもしれない.しかしこのような軌道を持つ惑星系の形成過程は不明である.
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