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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1601.05672
Sicardy et al. (2016)
Pluto's atmosphere from the 29 June 2015 ground-based stellar occultation at the time of the New Horizons flyby
(ニューホライズンのフライバイの時期における地上からの恒星の掩蔽観測による冥王星大気)
この観測は,NASA の冥王星探査機「ニュー・ホライズンズ」の冥王星フライバイのわずか 2 週間前に行われたものであり,地上観測と宇宙からの観測の良い比較となる.
観測の解析の結果,冥王星大気は現在も拡大している最中であり,2013年の結果と比べると大気圧が 5 ± 2% 増加,さらに 1988年の結果と比べるとファクターで 3 増加している.この傾向は,冥王星が近日点通過後に太陽からの距離が大きくなることによって大気の縮小が起きるというモデルを排除する結果である.
また,稀少なイベントである "central flash" が,ニュージーランドの幾つかの地点で観測された.これは掩蔽の最中に,恒星が冥王星の見かけ上のちょうど真後ろに来た際に,恒星からの光が冥王星大気中で屈折を受けて地球の方向に集光されることによって,短時間の間僅かに増光する現象である.
掩蔽が起きている最中の光度曲線は通常フラットになるが,central flash が発生した際は光度曲線の中心にスパイクが立つ.
この central flash の形状と強度から,冥王星表面から 4 km の位置にベースがある,厚さ ~ 3 km の球対称で透明な大気層の存在を検出した.またその領域の平均熱勾配は 5 K km-1 であって.
モデルと観測された central flash の形状には微妙な違いがある.恒星光を隠す冥王星の縁の形状 (山脈など) によって違いが引き起こされているという可能性についても議論を行った.
また,2つの適用可能な温度構造と,今回得られた圧力構造の外挿より,冥王星表面での気圧は 12.4 - 13.2 μbar と推定された.
このような大気の縮小が起きないとするモデルとして,冥王星の北極に永続的な窒素分子の極冠を持つ高熱慣性モデル (Olkin et al. 2015) の予測と整合的である.また別のモデルでは,数年内に大気圧は減少へ転じるという予測もある (Hansen et al. 2015).
今後の冥王星による掩蔽観測の観測と解析,またニュー・ホライズンズのデータから大気モデルの区別が出来るだろうと考えられる.
また外挿した表面大気圧は 12.4 - 13.2 μbar であった.ニュー・ホライズンズの電波掩蔽観測からは,平均大気圧は 11 ± 1 μbar という値が得られている (Hinson et al. 2015).今回得られた値はニュー・ホライズンズによるデータよりはやや大きいものの,矛盾しない値である.この値の違いが有意なものであるのか,何らかの効果が入っていない結果なのかは,更なる研究が必要である.
arXiv:1601.05672
Sicardy et al. (2016)
Pluto's atmosphere from the 29 June 2015 ground-based stellar occultation at the time of the New Horizons flyby
(ニューホライズンのフライバイの時期における地上からの恒星の掩蔽観測による冥王星大気)
概要
2015年6月29日に,ニュージーランドとオーストラリアで観測された,冥王星による恒星の掩蔽 (stellar occltation) の観測結果について報告する.この観測は,NASA の冥王星探査機「ニュー・ホライズンズ」の冥王星フライバイのわずか 2 週間前に行われたものであり,地上観測と宇宙からの観測の良い比較となる.
観測の解析の結果,冥王星大気は現在も拡大している最中であり,2013年の結果と比べると大気圧が 5 ± 2% 増加,さらに 1988年の結果と比べるとファクターで 3 増加している.この傾向は,冥王星が近日点通過後に太陽からの距離が大きくなることによって大気の縮小が起きるというモデルを排除する結果である.
また,稀少なイベントである "central flash" が,ニュージーランドの幾つかの地点で観測された.これは掩蔽の最中に,恒星が冥王星の見かけ上のちょうど真後ろに来た際に,恒星からの光が冥王星大気中で屈折を受けて地球の方向に集光されることによって,短時間の間僅かに増光する現象である.
掩蔽が起きている最中の光度曲線は通常フラットになるが,central flash が発生した際は光度曲線の中心にスパイクが立つ.
この central flash の形状と強度から,冥王星表面から 4 km の位置にベースがある,厚さ ~ 3 km の球対称で透明な大気層の存在を検出した.またその領域の平均熱勾配は 5 K km-1 であって.
モデルと観測された central flash の形状には微妙な違いがある.恒星光を隠す冥王星の縁の形状 (山脈など) によって違いが引き起こされているという可能性についても議論を行った.
また,2つの適用可能な温度構造と,今回得られた圧力構造の外挿より,冥王星表面での気圧は 12.4 - 13.2 μbar と推定された.
議論
冥王星の大気圧は,1988年以降単調に増加している傾向がある.冥王星は現在近日点を通過後,太陽からの距離が大きくなっていく時期にあるが,これに伴って大気が縮小するというモデルは現時点では排除されることになる.このような大気の縮小が起きないとするモデルとして,冥王星の北極に永続的な窒素分子の極冠を持つ高熱慣性モデル (Olkin et al. 2015) の予測と整合的である.また別のモデルでは,数年内に大気圧は減少へ転じるという予測もある (Hansen et al. 2015).
今後の冥王星による掩蔽観測の観測と解析,またニュー・ホライズンズのデータから大気モデルの区別が出来るだろうと考えられる.
また外挿した表面大気圧は 12.4 - 13.2 μbar であった.ニュー・ホライズンズの電波掩蔽観測からは,平均大気圧は 11 ± 1 μbar という値が得られている (Hinson et al. 2015).今回得られた値はニュー・ホライズンズによるデータよりはやや大きいものの,矛盾しない値である.この値の違いが有意なものであるのか,何らかの効果が入っていない結果なのかは,更なる研究が必要である.
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