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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1601.06832
Niedzielski et al. (2016)
Tracking Advanced Planetary Systems (TAPAS) with HARPS-N. III. HD 5583 and BD+15 2375 - two cool giants with warm companions
(NARPS-N での Tracking Advanced Planetary Systems (TAPAS) III. 暖かい惑星を持つ 2 つの低温な巨星 HD 5583 と BD+15 2375)

概要

進化した恒星は,惑星形成機構の恒星質量依存性や,恒星・惑星間の相互作用を理解するための重要な研究対象である.過去 10年程度に渡って,1000個にも及ぶ進化した恒星周りでの低質量の伴星の存在を視線速度法を用いて探査してきた.探査には,TAPAS プロジェクトの下,3.6 m Telescopio Nazionale Galileo にある HARPS-N を用いた視線速度観測を行っている.

ここでは,HD 5583 を,Hobby-Eberly 望遠鏡 (HET) を用いて 2313日に渡る詳細な視線速度データを取得した.また HARPS-N では 976日に渡る,超高精度のデータを取得した.
また BD+15 2375 については,HET で 3286日,HARPS-N で 902日間のデータを取得した.

これらの観測の結果,惑星を 2つ発見した.

パラメータ

HD 5583 系

・HD 5583
等級:7.60
質量:1.01太陽質量
半径:9.09太陽半径
光度:40.7太陽光度
有効温度:4830 K
表面重力:log g = 2.53
金属量:[Fe/H] = -0.50
年齢:~ 7.4 Gyr
距離:221 pc
自転周期:209日
変光周期:0.28日

・HD 5583b
軌道周期:138.35日
軌道長半径:0.53 AU
軌道離心率:0.076
最小質量:5.78木星質量

BD+15 2375 系

・BD+15 2375
等級:10.31
質量:1.08太陽質量
半径:8.95太陽半径
光度:37.2太陽光度
有効温度:4649 K
表面重力:log g = 2.61
金属量:[Fe/H] = -0.22
年齢:~ 7.4 Gyr
距離:153.22 pc
自転周期:181日
変光周期:0.25日

・BD+15 2375b
軌道周期:153.22日
軌道長半径:0.576 AU
軌道離心率:0.001
最小質量:1.061木星質量

議論

HD 5583 系

HD 5583 の惑星である HD 5583b は質量としては典型的な巨大ガス惑星である.しかし,ほぼ円軌道での軌道長半径 0.53 AU という値は,太陽型星 (1.2太陽質量未満) の進化した恒星周りに視線速度法によって検出された惑星の中では,最も近接した軌道を持っている.
(参考までに,BD+15 2940b は軌道長半径が 0.539 AU (Newak et al. 2013),HD 32518b は 0.59 AU (Döllinger et al. 2009))

また,中心星の HD 5583 は,この質量・光度に期待される視線速度の見かけの変動よりも 3 - 4 倍大きな値を示す.これは,この恒星が既に水平分枝 (horizontal branch) 段階に達している可能性を示唆する.

仮に水平分枝星である場合,HD 5583b は,中心星が赤色巨星分枝 (red giant branch, RGB) 段階にある時の,中心星による飲み込みと軌道長半径の減少を生き延びたことになる.そのため,この惑星は中心星の進化の段階の飲み込みを生き延びた稀なケースである可能性がある (Niedzielski et al. 2015c).

BD+15 2375 系

BD+15 2375 の惑星である BD+15 2375b は,進化した恒星付近では稀な木星質量天体であり,視線速度法で進化した恒星周りに発見された惑星としては最も軽い.
類似した惑星は 2つのみであり,BD+48 738b の,最小質量が 1.16木星質量 (Gettel et al. 2012, Niedzielski et al. 2015a),BD+15 2940b の最小質量が 1.17木星質量 (Nowak et al. 2013, Niedzielski et al. 2015a) である.

これらの惑星はともに 0.6 AU 以内の軌道を持ち,進化した恒星周りの惑星欠乏領域の端に位置している.

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