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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1602.01740
Maxted et al. (2016)
Five transiting hot Jupiters discovered using WASP-South, Euler and TRAPPIST: WASP-119 b, WASP-124 b, WASP-126 b, WASP-129 b and WASP-133 b
(WASP-South と TRAPPIST を用いた 5 つのトランジットするホットジュピターの発見:WASP-119b,WASP-124b,WASP-126b,WASP-129b,WASP-133b)

概要

WASP-South プロジェクトを用いて多数の恒星の測光観測を行って,トランジット法による惑星の検出を行っている.また Swiss Euler 1.2 m 望遠鏡の Euler Cam と,TRAPPIST 望遠鏡を用いて測光観測を行った.さらに,CORALIE 分光観測器を用いて分光観測から視線速度観測を行い,5つの新しい系外惑星の発見を確認した.

系のパラメータと特徴

WASP-119 系

・WASP-119
スペクトル型:G5
等級:12.2
質量:1.02太陽質量
半径:1.2太陽半径
有効温度:5650 K
金属量:[Fe/H] = 0.14

・WASP-119b
軌道周期:2.49979日
質量:1.23木星質量
半径:1.4木星半径
平均密度:木星平均密度の 0.5倍
軌道長半径:0.0363 AU
軌道離心率:0.058 未満
平衡温度:1600 K

WASP-119b は典型的なホットジュピターである.
中心星は太陽に類似した恒星である.しかし有効温度と平均密度の違いから,太陽よりは年老いた恒星である可能性がある.

中心星の WASP-119 のスペクトルの解析から算出した表面重力は,その他のデータからの算出よりも有意に大きな値を示す.これは,別の第三の星からの光が光度曲線に混入していると考えることで部分的に説明が可能であるかもしれない.この場合,トランジットは実際よりも浅く見えていることになる.

現在のところ,3つ目の天体の存在を示す直接的な証拠は無い.今後の高い S/N 比のスペクトル観測や,高精度の撮像観測から明らかになるだろうと考えられる.

WASP-124 系

・WASP-124
スペクトル型:F9
等級:12.7
質量:1.07太陽質量
半径:1.02太陽半径
有効温度:6050 K
金属量:[Fe/H] = -0.02

・WASP-124b
軌道周期:3.372650日
質量:0.60木星質量
半径:1.24木星半径
平均密度:木星平均密度の 0.32倍
軌道長半径:0.0449 AU
軌道離心率:0.017 未満
平衡温度:1400 K

WASP-124b も同じく典型的なホットジュピターである.

中心星の投影された自転速度は今回のサンプルの中で最も大きく,3 km s-1である.この高速の自転は中心星 WASP-124 の年齢が若いことを示唆するが,惑星を持っている恒星の gyrochronology (自転速度から年齢を推定する方法) については信頼性が微妙であることが指摘されている (Maxted et al. 2015b).

また,トランジット光度曲線の解析から示される恒星の高い平均密度は,恒星のスペクトルの解析から導かれる表面重力とは非整合的である.

WASP-126 系

・WASP-126
スペクトル型:G2
等級:10.8
質量:1.12太陽質量
半径:1.27太陽半径
有効温度:5800 K
金属量:[Fe/H] = 0.17

・WASP-126b
軌道周期:3.28880日
質量:0.28木星質量
半径:0.96木星半径
平均密度:木星平均密度の 0.31倍
軌道長半径:0.0449 AU
軌道離心率:0.18 未満
平衡温度:1480 K

WASP-126b は比較的低質量で大きな半径をもつガス惑星であり,表面重力が小さい,つまり大気のスケールハイトが大きいことを意味する.そのため,大気の透過スペクトル観測の対象として適していると考えられる.

WASP-129 系

・WASP-129
スペクトル型:G1
等級:12.3
質量:1.00太陽質量
半径:0.90太陽半径
有効温度:5900 K
金属量:[Fe/H] = 0.15

・WASP-129b
軌道周期:5.748145日
質量:1.0木星質量
半径:0.93木星半径
平均密度:木星平均密度の 1.2倍
軌道長半径:0.0628 AU
軌道離心率:0.096 未満
平衡温度:1100 K

中心星 WASP-129 は平均密度が大きい.これは,初期のヘリウムの存在度が多かったと考えると説明することが出来る.太陽型星の初期のヘリウム存在度の分布は不明な点が多く,中心星の年齢は質量の分布の理解にどの程度初期のパラメータが影響するのかも不明瞭である.

惑星の WASP-129b は多くのホットジュピターよりも軌道が大きく,軌道周期も長い.また同程度の質量のホットジュピターよりも半径が小さく,従って平均密度も高い値となっている.この WASP-129b の平均密度の高い値は,中心星の質量がより良い精度で決定されるまでは注意深く扱う必要がある.

WASP-133 系

・WASP-133
スペクトル型:G4
等級:12.9
質量:1.16太陽質量
半径:1.44太陽半径
有効温度:5700 K
金属量:[Fe/H] = 0.29

・WASP-133b
軌道周期:2.176423日
質量:1.16木星質量
半径:1.21木星半径
平均密度:木星平均密度の 0.66倍
軌道長半径:0.0345 AU
軌道離心率:0.17 未満
平衡温度:1790 K

中心星 WASP-133 は,古く金属量豊富な恒星であると考えられる.
中心星の表面のリチウム存在度は,他の似た年齢・有効温度の恒星よりも有意に高い値を示す.これは,惑星を持つ恒星は,似た物理量で惑星を持たない恒星に比較するとリチウムが欠乏しているという傾向の反例となる (Maxted et al. 2010など).

WASP-133b は今回発見された中では最も短い周期を持つホットジュピターである.

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