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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1602.03895
Buhler et al. (2016)
Dynamical Constraints on the Core Mass of Hot Jupiter HAT-P-13b
(ホットジュピター HAT-P-13b のコア質量の力学的な制約)
ラブ数は,惑星内部における質量の中心集中度と関係している量である.従って,惑星の軌道離心率を測定することによって惑星のラブ数の値に制限をかけることができ,これによってコア質量に制限をかけることも出来る.
ここでは,スピッツァー宇宙望遠鏡のInfrared Array Camera を用いた 2 回の二次食 (secondary eclipse) の観測から,軌道離心率を新たに算出した.この結果と視線速度観測を合わせてフィッティングを行い,HAT-P-13b の軌道離心率は 0.00700 ± 0.00100 となった.
また,octupole-order 永年摂動理論を用い,ラブ数は 0.31 (+0.08, -0.05) と求められた.
このラブ数と惑星の構造進化モデルより,68%の信頼度でコア質量は 25地球質量未満であるという制限を与えた.もっともらしい推定値は 11地球質量である.これは,暴走的なガス降着に必要なコア質量と近い値である.
この結果は,ホットジュピターのコア質量に対するこれまでで最も強い制限である.さらに,3.6, 4.5 µm における二次食の深さから,昼側では温度逆転層がある大気モデルと最も良く一致する結果が得られ,また比較的効率的な昼夜間の大気循環が発生していることを示唆している.
しかし,複数惑星系では,軌道配置は最も内側の惑星のラブ数に依存するとされている (Batygin et al. 2009).ラブ数 (k2) は,惑星の外力に対する弾性変形応答と関係した量である.従ってラブ数は,ガス惑星の固体コア質量を含む,内部の情報と関連している (Love 1909, 1911).
惑星系に 2 つの惑星が存在する時,内側の惑星のラブ数は以下の状況の時に求めることが出来る (Mardling 2007, Batygin et al. 2009).
(i) 内側の惑星の質量が中心星よりも十分に小さい.
(ii) 内側の惑星の軌道長半径が,外側の惑星の軌道長半径よりも十分に小さい.
(iii) 内側の惑星の軌道離心率が,外側の惑星の軌道離心率よりも十分に小さい.
(iv) 惑星がトランジットを起こしている.
(v) 潮汐による歳差が相対論的効果による歳差よりも大きくなるほど惑星が中心星に近い
現在のところ,HAT-P-13 系は上記の条件を満たす,初めてかつ唯一の系である.
HAT-P-13b はトランジット惑星であり,軌道離心率は低い.0.9木星質量,1.5木星半径であり,軌道周期は 2.9日である (Sourhworth et al. 2012).
また,2つ目の惑星である HAT-P-13c は,視線速度法で発見された天体であり,最小質量が 14.2木星質量,軌道周期 446日,軌道離心率は 0.66 である (Winn et al. 2010).また,12 - 37 AU の範囲内に,最小質量が 15 - 200木星質量の 3 体目の天体の存在を示唆する視線速度の観測結果もある (Winn et al. 2010, Knutson et al. 2014).
arXiv:1602.03895
Buhler et al. (2016)
Dynamical Constraints on the Core Mass of Hot Jupiter HAT-P-13b
(ホットジュピター HAT-P-13b のコア質量の力学的な制約)
概要
HAT-P-13b は,木星質量を持つトランジット惑星である.潮汐散逸と,系内の 2体目の大きな軌道離心率を持つ外側の天体の擾乱の結果として,この惑星は安定で短周期の,やや軌道離心率が大きい軌道を持っている.この特別な軌道配置のため,HAT-P-13b の軌道離心率の大きさは,惑星のラブ数 (Love number) によってある程度決まる.ラブ数は,惑星内部における質量の中心集中度と関係している量である.従って,惑星の軌道離心率を測定することによって惑星のラブ数の値に制限をかけることができ,これによってコア質量に制限をかけることも出来る.
ここでは,スピッツァー宇宙望遠鏡のInfrared Array Camera を用いた 2 回の二次食 (secondary eclipse) の観測から,軌道離心率を新たに算出した.この結果と視線速度観測を合わせてフィッティングを行い,HAT-P-13b の軌道離心率は 0.00700 ± 0.00100 となった.
また,octupole-order 永年摂動理論を用い,ラブ数は 0.31 (+0.08, -0.05) と求められた.
このラブ数と惑星の構造進化モデルより,68%の信頼度でコア質量は 25地球質量未満であるという制限を与えた.もっともらしい推定値は 11地球質量である.これは,暴走的なガス降着に必要なコア質量と近い値である.
この結果は,ホットジュピターのコア質量に対するこれまでで最も強い制限である.さらに,3.6, 4.5 µm における二次食の深さから,昼側では温度逆転層がある大気モデルと最も良く一致する結果が得られ,また比較的効率的な昼夜間の大気循環が発生していることを示唆している.
研究背景
太陽系内の天体の内部構造に関する研究はこれまでに多数行われてきた (Safronov 1969, Mizuno 1980など).これを太陽系外惑星に応用した研究も存在する.その例が,系外ガス惑星の内部構造のモデルであり,スーパーネプチューン HATS-7b (Bakos et al. 2015),ホットサターン HD 149026b (Sato et al. 2005) などに関する研究がある.しかし一般的に,ガス惑星の内部構造を探るのは困難である.しかし,複数惑星系では,軌道配置は最も内側の惑星のラブ数に依存するとされている (Batygin et al. 2009).ラブ数 (k2) は,惑星の外力に対する弾性変形応答と関係した量である.従ってラブ数は,ガス惑星の固体コア質量を含む,内部の情報と関連している (Love 1909, 1911).
惑星系に 2 つの惑星が存在する時,内側の惑星のラブ数は以下の状況の時に求めることが出来る (Mardling 2007, Batygin et al. 2009).
(i) 内側の惑星の質量が中心星よりも十分に小さい.
(ii) 内側の惑星の軌道長半径が,外側の惑星の軌道長半径よりも十分に小さい.
(iii) 内側の惑星の軌道離心率が,外側の惑星の軌道離心率よりも十分に小さい.
(iv) 惑星がトランジットを起こしている.
(v) 潮汐による歳差が相対論的効果による歳差よりも大きくなるほど惑星が中心星に近い
現在のところ,HAT-P-13 系は上記の条件を満たす,初めてかつ唯一の系である.
HAT-P-13系について
中心星は 1.3太陽質量,1.8太陽半径である (Southworth et al. 2012).HAT-P-13b はトランジット惑星であり,軌道離心率は低い.0.9木星質量,1.5木星半径であり,軌道周期は 2.9日である (Sourhworth et al. 2012).
また,2つ目の惑星である HAT-P-13c は,視線速度法で発見された天体であり,最小質量が 14.2木星質量,軌道周期 446日,軌道離心率は 0.66 である (Winn et al. 2010).また,12 - 37 AU の範囲内に,最小質量が 15 - 200木星質量の 3 体目の天体の存在を示唆する視線速度の観測結果もある (Winn et al. 2010, Knutson et al. 2014).
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