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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1604.01781
Antonini et al. (2016)
Dynamical constraints on the origin of hot and warm Jupiters with close friends
(近い惑星を持つホットジュピター・ウォームジュピターの起源への力学的な制約)

概要

スノーライン (原始円盤内で水が気体でいられるか固体になるかの境界線) 内側にある巨大惑星は,スノーライン外側の遠方から現在の場所まで移動してきたと考えられている.ここでは,観測されている太陽系外の木星型惑星のうち,外側に別の惑星がいるホットジュピター・ウォームジュピターの起源と力学的な進化について考察する.

軌道の安定性解析から,2 つの木星型惑星のペアの大部分 (24例のうち 20例) は,もし内側の惑星が 1 AU より遠方に存在する場合は力学的に不安定であることを示した.これは,1 AU 程度より遠方からの軌道移動は,永年的な力学過程 (永年カオス,Lidov-Kozai 振動など) と潮汐散逸の組み合わせによって起きたとする説とは対立する結果である.

実際,N 体シミュレーションでは,力学的不安定な系の進化は潮汐による惑星の移動という結果よりも,惑星の系からの放出や主星との衝突を引き起こしやすいという結果を示す.これらの結果や議論から,観測されている,外側に別の惑星を持つホットジュピターやウォームジュピターは,永年的な惑星移動機構で移動してきたものではないことが示唆される

より一般的に数値計算と解析の組み合わせを用い,高軌道離心率状態を経由する Lidov-Kozai 機構は,0.1 - 1 AU にある巨大惑星の起源への寄与は 10%未満であるということを示した.複数惑星系のシミュレーションもこの結果を支持する.

この結果は,ホットジュピターやウォームジュピターは軌道周期が 1 年以上の高軌道離心率軌道から遷移したのではなく,大きな潮汐散逸を経験せずに現在観測されている位置にまで到達したのだろうという事を示唆する.

主要な結果

高軌道離心率仮説の検証

高軌道離心率軌道からの移動 (high eccentricity migration) 仮説によると,ホットジュピターとウォームジュピターはもともと ~ 1 AU より遠方で形成されたと考えられる.この可能性を検証するため,外側に別の惑星を持つホットジュピターやウォームジュピターのペアは,内側の惑星が 1 AU より大きい軌道長半径で高軌道離心率の軌道にいる状態で力学的に安定かどうか調べた.

先行研究の安定性解析での安定性の基準を元に判定すると,観測されている 24 の系 (外側に別の惑星を持つホットジュピターかウォームジュピターの系) のうち,4 つのみが安定であり,14 は軌道が交差する.

3 体の直接積分計算からは,惑星のペアが軌道不安定な場合,潮汐で軌道移動を起こす惑星が形成されるという進化を辿るよりも,主星に衝突するか,惑星が系からはじき出されるという進化に向かう.

これらの結果は,観測されている多くの系は,1 AU 以遠からの高軌道離心率軌道を経ての移動で形成されたというシナリオと対立する

高軌道離心率プロセスの寄与

ウォームジュピターを形成するための高軌道離心率仮説は,惑星の軌道周期の分布が観測と整合的でないという問題点がある.

シミュレーションの結果,Lidov-Kozai 機構などで高軌道離心率状態から形成されたウォームジュピターの割合は,観測されているもののうち 10%未満であることが示唆される

複数の形成過程の可能性

高軌道離心率軌道を経るプロセスは,ウォームジュピターよりもホットジュピターを形成しやすいことが判明した.その結果,外側に別の惑星をもつウォームジュピターの系の発見個数に対して,少なくとも同程度の「個数の外側に別の惑星を持つホットジュピターの系」が存在するはずである.

この予測とは対照的に,軌道長半径が ~ 5 AU 未満の巨大ガス惑星を外側に持つホットジュピターはわずか 2 つであり,period "valley" にあるウォームジュピターの場合は 74 個中 20 個が持っているという大きな違いがある.

この結果は,ホットジュピターとウォームジュピターの 2 つのグループは,異なるプロセスで形成されたことを示唆する.
※Period valleyについて
ここでは,軌道長半径が 0.1 - 1 AU の範囲内にある巨大ガス惑星をウォームジュピター (warm Jupiter) と呼んでいる.
ウォームジュピターの軌道周期は 10 - 100 日であり,この軌道周期の領域はは発見されている惑星の個数が少なく,分布の "谷" になっている (Santerne et al. 2015).

軌道離心率の分布

数値計算と解析的な手法から,軌道の潮汐進化モデルから予想される軌道離心率の分布は,観測と整合的ではないことが示された.惑星の内側への移動を生み出すのに必要な軌道要素の振動は,軌道移動を起こす惑星の軌道離心率を,観測されている値の分布より大きくする傾向にある.

また,0.1 - 1 AU 内の巨大ガス惑星の軌道離心率の分布は,1 AU 以遠の巨大ガス惑星の軌道離心率の分布と整合的である.これは両者に密接な関係が有ることを示唆する.また,おそらくは共通の形成過程があることを示唆する.

まとめ

これらの結果より,0.1 - 1 AU 内にある観測されている巨大ガス惑星は,高軌道離心率軌道からの形成ではなく,強い潮汐散逸なしで現在の場所に到達したものだと考えられる.同様の理由で,惑星-惑星散乱が起源とする説も整合的ではない.

ウォームジュピターの起源は一体どのようなメカニズムなのだろうか?
ここでの結果は,原始惑星円盤内での惑星移動が主要なメカニズムであることを示唆する.あるいはその場形成であるかもしれない (Huang et al. 2016).

しかしどちらのプロセスも,ほぼ円軌道で,小さい軌道傾斜角となる.そのため,観測されている軌道離心率の分布にまで軌道を励起するための機構が必要である.考えられる候補としては,軌道離心率は永年カオスで励起されたというものである (Wu & Lithwick 2011).この説が正しければ,period valley 内に惑星 (ウォームジュピター) を持つ系では,1 つか複数の未発見の惑星を持つことを示唆する.

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